家の東側にマンションを建てる計画が進んでいるが、日が当たらなくなるから抗議を行いたい。

でも弁護士に依頼するにはいくらかかるのか?そもそも日照権は認められるのか?

そんな不安を抱いてこのページをご覧になっている方もいるのではないでしょうか。

このページでは

  • そもそも日照権とはどんな権利か
  • 過去にはどのような判例が出ているのか
  • どこに相談すればいいのか

などについて法律の知識が無い方でもわかるように説明しています。

1.そもそも日照権とは

なんとなく「日光」に関わる権利であることはわかる「日照権」。

しかし、具体的にどのような権利でどうなったら侵害されていると判断されているかまではわかりませんよね。

ここではそういった基本的なことを解説します。


1-1.実は「日照権」という権利は存在しない

「日照権」という言葉は比較的有名ですが、実のところ法律で明確に定められた権利ではありません。

日照権は、裁判の判例の集合体(過去の判例を基準にする)です。

建築基準法や都市計画法といった法律だけでは、全ての住宅に対して満足のいく日当たりを確保するのは難しいのが現状です。

そこで個別問題に対しては裁判所が民法を用いて総合的に判断することにしているのです。

ということは「これをしたら日照権の侵害だ!」と明確に基準が決められているわけではなく個々の場合において「受忍限度」を超えているかどうかを判断するわけです。


1-2.受忍限度とは

日照権が認められるかどうかの基準になる「受忍限度」とはひとことでいうと、我慢の限界です。

裁判所が「これは明らかに生活上不便だ」と判断した場合に日照権が認められ、賠償金の支払いや建物の建築差し止めが行われます。

建築基準法や都市計画法で定められた範囲を超えた建築が行われることはほぼないため、日照権に関する裁判は原則として「受忍限度を超えるかどうか」を争うことになります。


1-3.日照権に関わる法律

参考までに法律で定められている日照権についても触れておきます。

日照権に関係して法律で定められているものは「斜線制限」と「日影規制」があります。

斜線制限は以下の図のように建物が建てられる高さや大きさを制限することで近隣の日当たりを確保しようとするものです。

「北側の隣地との境界線」上、地上5メートル or10メートルのところから、1(水平ライン):1.25(垂直ライン)で90度の角度ができる直角三角形をつくり、その斜線の延長線でできたライン内に建物を作るといかにも日当たりを守っているっぽくうつるかもしれませんが、実際のところ、これではあまり日照は確保されない場合の図

斜線制限には

  • 道路斜線制限
  • 隣地斜線制限
  • 北側斜線制限

の3種類がありますが、このうち日当たりに関係するのは北側斜線制限のみです。

日影規制は冬至の日の8時から16時(北海道は9時から15時)を基準に建物によって出来る影の大きさを規制するものです。


具体的には敷地の端から5または10mを超える日影を作るような建物を建てられないという規制です。

日照権に関する法律について詳しく知りたい方はこちらの「日照権を確保する法律の仕組みを理解しよう」を読んでください。

斜線制限、日影規制ともに土地がある地域がどのような用途で使われるかによって適用される場合とされない場合があります。

土地の用途についてはこちらの「都市計画法の要:「用途地域」の理解を深めよう」で詳しく解説しています。


2.日照権についての判例集

日照権について明確な定義や決まりが無いことはわかっていただけたと思います。

しかし、実際問題として日光に関するトラブルは誰の身にも起こり得るもの。

そんな時は過去の判例が参考になります。

ここからは実際に起こった日照権についてのトラブルと裁判所がどのような判決を下したかを見ていきましょう。


2-1.太陽光発電設備に日光が当たらなくなったケース

屋根に太陽光パネルを取り付けて発電をしている家

これは平成30年の福岡地方裁判所で起こった裁判の判例です。

住宅開発事業を行う会社が太陽光発電設備がついた住宅地を建設したところ、隣の土地に別の会社が建物を建てました。

その建物によって出来た日影のせいで太陽光発電の発電量が落ちてしまったとして損害賠償を請求したのです。

裁判所はこの訴えを棄却しました。

その理由は・・・

  • 太陽光発電そのものが近年急速に普及したものであるため、どの程度まで日当たりが確保されれば権利・利益の侵害になるのかということが明確でない。
  • 太陽光パネルの建設位置が地上2.5mと隣に建物が出来ることで日影になることが簡単に想定出来る場所であること。
  • 太陽光発電によって生み出された電気は住宅地の共用部分へと供給されているが、日影ができることで共用設備の運営に大きな影響が出るとは言えない。

ということです。

太陽光発電が出来なくなるからといって住民の生活に悪影響が出るわけではないというのが判断のポイントですね。


2-2.マンション建設により住宅に日が当たらなくなってしまったケース

「日照権(にっしょうけん)」という日当たりのよい家に住む権利

続いては平成15年の神戸で起こった裁判の判例です。

木造2階建ての住居の住人が隣接した土地にマンションを建築した株式会社に対して日照権の侵害を理由に損害賠償請求を行いました。

裁判所はこの訴えを棄却。

その理由は・・・

  • マンションは建築基準法を守っている上、住宅から十分に間隔を空けて駐車場を設けているので春・夏・秋においては十分な日照時間が確保される。
  • 住宅の1階部分の窓は敷地協会から54.36センチメートル離れていなければ十分な日光が確保されないにもかかわらず、45センチメートルしか離れていないため元々採光の点で問題がある。
  • マンションの建築について事前説明こそ十分で無かったものの、近隣住民の住環境には一応の配慮が見られる。
  • 周辺の地域性を考えると今後、住宅の周りの建物は徐々に高層化する可能性が認められる。

などです。


3.様々なパターンの日照権

裁判で結論こそ出ていないものの、日常で起こり得る日照権についてのトラブルについてまとめてみました。

全てのパターンでこの通りに行くとは限りませんが、参考になれば幸いです。


3-1.樹木に関する日照権

隣人の庭に生えている木が大きくなってくるにつれて洗濯物に影が落ちるようになってしまった。

この木の枝を切ってもらうことは可能なのでしょうか?


残念ながら日照権の侵害だけを理由に木を切ってもらうことは難しいでしょう、それどころか勝手に切ってしまえばこちらが損害賠償を払うハメになるかもしれません。

もし、自分の敷地内まで枝が伸びてきており

  • 自分の敷地内の通行に不便が生じる
  • 家に当たって壁が壊れた

などの損害があれば裁判をすることも出来ますが、そうなる前に一度隣人と話し合われることをおすすめします。


3-2.畑などの農地の場合

大切な畑の隣に高い建物が出来てしまって、作物に影響が出てしまうので建物の建築をやめさせたい。

この場合も重要になってくるのは「受忍限度」です。

  • その建物が建つ事で農作物にどのくらいの影響があるのか
  • 農作物にどの程度の日当たりが必要なのか
  • 農地全体の中で日影になる割合はどのぐらいなのか

といった客観的な証拠に基づいて受忍限度を超えるかどうかが判断されます。

そのため裁判を起こすとするなら信頼性の高いデータを集める必要があります。


3-3.商業地域の場合

デパートなどの商業施設が立ち並ぶ商業地域の場合はどうでしょうか。

買い物に便利だからという理由で商業地域に家を建てたはいいものの後から出来たデパートのせいで日がまったく当たらなくなってしまった・・・。

残念ながら商業地域で日照権を主張するのは非常に難しいです。

というのも商業地域は日影規制を作らず、ビルを建てて商業を発展させる事が目的の地域です。

住宅向けに設定された地域では無いところなのでそこに住む以上は日光についてはかなりの我慢を必要とします。


4.日照権とお金

トラブルが起こってしまい、実際に裁判をする時にやっぱり気になるのはお金のことですよね。

賠償金としてどの程度のお金がもらえるのか、訴えを起こすのに必要な費用は?

そもそもどうやって訴えればいいの?

などの疑問にお答えします。


4-1.日照権についての相談はどこにするべきか

日照権について疑問に思うことや不満に思うことが出てきた時の相談先としては「各都道府県」「弁護士」と二通りあります。

まず各都道府県の窓口へ相談すると建築紛争調整といって無料で相談に乗ってくれます。

その際にはきちんと土地の資料や法律の知識も提供してくれます。

ただ、損害賠償請求がもらえないことやトラブルの相手と直接話し合う必要があるなどのデメリットがあります。

次に弁護士へ相談する場合についてです。

この場合は当然ながら弁護士費用が必要になります。

一方で弁護士を通したやり取りを行うためトラブルの相手と直接会う必要が無かったり、損害賠償を請求したりすることが出来ます。

無料相談を行っている弁護士もいるのでまずは相談からしてみてはいかがでしょうか。

いずれの場合でも、マンションを建てようとする建設会社などを相手にとって訴えを起こす場合は近隣住民と集団で行う方が効果的です。


4-2.弁護士に依頼する費用の相場は?

実際に訴えを起こすとなると弁護士を雇う必要が出てきます。

とは言っても一体どのくらいかかるのか想像もできませんよね。

請求する賠償金の額や裁判の日数、担当する弁護士によっても大きく変わるので一概には言えませんが裁判前の着手金が20万円前後、賠償金を獲得できた場合の報奨金が30万円前後というのが一般的なようです。

あくまで目安なので実際に相談された時に担当の弁護士に確認することをお忘れなく。


4-3.賠償金や迷惑料はどのくらいもらえるのか

賠償金や迷惑料は一概にいくらもらえる!というのは言えません。

というのも日照権自体が判例や状況を総合的に鑑みて判断するものでそれによって下される賠償金の支払い命令ともなると本当にケースバイケースであるため一概にこれ!という金額を出すことが出来ないのです。

ちなみに賠償金と迷惑料は同じような意味に捉えられがちですが賠償金は裁判所から支払い命令が出るため支払う義務があります。

一方で迷惑料は支払う義務がないため「迷惑料を払え」などと発言してしまうと恐喝罪などの罪に問われる必要があるため気をつけてください。

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5.まとめ

住居を構える上で重要な日当たり。

そんな日当たりを守る権利が日照権なのですがその実態は厳密に法律で決められているわけではありません。

そのため何かトラブルがあった際はその都度解決する必要があります。

裁判になった時には信頼できるデータや写真などの証拠が非常に重要なのでもし日当たりに関する悩みや不満を抱えているのなら何時間ぐらい日が差さない時間があるのか、日影が多くなることでどういった損失があるのかをきちんと記録しておきましょう。