不動産売買では、多額の金銭が動きます。時には一生分の給料と言っていいほどの高額な不動産もあるでしょう。一方、土地によってはとてつもなく安い金額の場所もあります。

自分が所有している土地でも社会情勢により価格はさまざまで、いざ売却しようとしても何を基準にすればいいのかわからなくなりがちです。そのようなときに役立つのが「実勢価格」です。実勢価格とは、実際の市場で取引されている価格を指します。

また公示価格や路線価と言った言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。これらの違いは不動産売買や相続をする際に知っておくと便利な知識となります。
ここでは実勢価格や公示価格ついて、またみなし贈与について解説していきます。

実勢価格とは

実勢価格とは実際の市場で取引されている価格のことを言います。

例えば生鮮食品の場合、時期や天候によって値段が上下(時価)します。その場合、お店側は消費者がどれほどの値段だと注文するのか、もちろんお店の利益も考え値段の設定をしなくてはなりません。
そして消費者が基準とする値段が相場よりも高いか安いかで注文されたり、見送られるといったことがおきます。

土地の価格も同様に、さまざまな要因が引き金となり簡単に変動します。オリンピックや万博、国際情勢の変化など、あらゆるイベントが複雑に関係しあって土地の価格に影響を及ぼします。このような事情もあり、土地の価格というものは一定ではありません。なおかつ、土地にはそれぞれ特徴があり、それによっても全く値段が違うこともあり、なかなか相場観がつかみにくいものです。

加えて実際の価値とは別に、売主や買主の「早く売りたい」や「早く買いたい」などの思惑によっても価格は変動するため、売りたい人の売却希望金額や買いたい人の希望金額などでも、価格は大きく変わってきます。

このように土地の相場観を知っておきたい場合に利用されるのが、実際の売買の記録から平均値を出すという手段です。実勢価格とは、ある土地の平均的な価値ということです。相場価格だと思っていただくとわかりやすいかもしれません。

また、実勢価格は「常識の範囲内であれば」自由に決められます。
不動産売買では売主・買主双方の思惑が交錯するため、決断、見送りといった判断が大切になってきます。買主にとって、どうしても買いたい土地があれば相場より高額を出すこともあります。反対に、売主にとって、早く現金化したければ、相場より安く売り出す可能性もあるということです。
よって実際に取引される価格、実勢価格は大切な判断基準と言えます。

さらに、実勢価格は過去の取引の積み重ねが多いほど精度が増し、実勢価格が安定すればするほど価格が固定しやくなるという特徴があります。

土地の一物四価

ここまで実勢価格について解説してきました。
不動産の価値の指標としては、実勢価格の他にも公示価格固定資産税評価額路線価があります。このように1つの土地の価格には、4つの違った指標(=4つの値札)がつけられており、それらをまとめて土地の一物四価(いちぶつよんか)と言います。それぞれ詳しく解説していきます。

実勢価格

前述の通り、実際の市場で取引されている価格のことをいいます。買いたい人の需要と、売りたい人の供給のバランスが取れたときに決まります。

公示価格

公示価格とは、国土交通省が定める公的な土地の評価額です。一言でいえば土地の『目安価格』といえば分かりやすいでしょう。

不動産の売買は実勢価格でも説明したように、需要と供給のバランスで決まります。つまり、そんなに公平ではないということです。需要が多くあっても供給が少なければ当然値段はどんどん上がり、その逆であれば値段はどんどん下がります。
こういう状況は都市の中心部では必ず発生します。そうすると、この場所は本当は一体いくらくらいが適正価格なのか?という『目安』が必要になります。つまり、国が考えるこの場所の基準価格が公示価格という訳です。

公示価格は1月1日時点の価格を基準として、毎年3月末頃に発表されます。
これを決めるのは1地点について2人の不動産鑑定士がそれぞれ現地調査し、その近隣の最新取引の事例や対象となる土地からの収益性を分析して評価を行います。さらに、地点間や地域間のバランスなどを考慮して、最終的に国土交通省の土地鑑定委員会と呼ばれる人たちによって価格が導き出されており、全国一律に設定されています。

国が決めている土地の価値ということですが、国が隅から隅までくまなく土地を評価することは極めて困難であることから、標準地(全国で23,024地点)にしか設定されておらず、国が認めた土地については価格が設定されています。これは、全国どこでも金銭的な価値のある土地ばかりではないということを表しています。

実勢価格は取引の平均値から算出されますが、公示価格については価格の根拠となる条件にひとつずつ照らし合わせて算出されるため、実勢価格に比べて客観性の高い価格と言えます。
ちなみに、公示価格のおおまかな相場は実勢価格の90%程度となります。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は固定資産税の算定基礎用に算出する価格のことです。こちらは地方自治体が決める価格なので、税金といっても国や国税庁で決定しません。
また、土地だけでなく建物にも課税されるため、土地と建物の両方に算出されます。

固定資産税評価額は、3年に1度見直されており、その間に変動してしまった分で不公平にならないようにしています。
なお、固定資産税評価額は概ね実勢価格の70%程度に収まることが多いです。

路線価

路線価という言葉は、実勢価格・公示価格とならび頻繁に不動産関係で使用されています。

路線価とは路線(一般的な道路)に面する宅地の約1平方メートルあたりの土地評価額のことを指します。
国土交通省が定める公示価格とは違い、路線価は金融関係の流れをコントロールしている国税庁が価格を定めます。路線価には相続税用と固定資産税用の2種類の路線価ありますが一般的には相続税用のことを指しています。

価格は年一回の更新で、日本中の道路の評価を毎年1月1日時点で行い、その年の7月1日に発表され、国税庁のホームページで閲覧もできます。
仮に8月に土地を相続する場合、1月に高かった土地が8月時点で安くなっていても、相続税は土地の価値が高い状態である1月時点で計算されるため、タイミングが重要になります。
路線価は実際の売買価格の60~80%といわれていますが、場所など様々な条件によって結構違いがある場合が多いです。よって、この路線価で売却価格が決まってしまうことはないため心配はいりません。
むしろ路線価と実際の販売価格の差が大きい方が価値の高い土地といえます。

相続税や贈与税の計算のために、路線価を知りたい場合は国税庁のWEBサイトより検索することができます。しかし前述した通り、そのままの価格が反映されるわけではありませんのであくまで目安の1つとして考えてください。
特に近年ではタワーマンションなどの、本来階層が上階と下階で大きく価格の違う物件を購入し、階高を考慮に入れない路線価との価格乖離を利用した相続税対策(いわゆるタワマン節税)などが頻発したため、相続税などは場合により実勢価格を評価軸とする動きも出ています。

ここまで不動産の価値について、実勢価格公示価格固定資産税評価額路線価といった4つの違った指標から見てきました。これら「一物四価」は説明の通り、それぞれ目的と用途が違います。
実際の不動産取引においては、実勢価格と公示価格以外の価格から相場を判断することは難しいと言えます。タイミングが少し違うだけで売買の代金や税金が変わることも知っておくと良いでしょう。

土地は人が所有できる一番高価なものだからこそ、持っているだけでも税金や管理にお金がかかりますが、その分財産として大きな価値を持っています。
そして「不動産」という、その「動かせない財産」は、それを国や自治体が全て管理・把握できるようになっているということなのです。土地の急騰・暴落を未然に防ぐためにもある程度の公的な指標はあるべきなのです。 

不動産売買において重要な価格が実勢価格

実勢価格の調べ方

土地の売買取引において役に立つ実勢価格ですが、これを確認する方法のひとつとしてインターネットの使用が挙げられます。オンラインで見られる情報に、国土交通省の「土地総合情報システム」というサイトがあります。このサイトには公的な情報が記載されており、これを使用することで実勢価格を調べることができます。

トップページから「不動産取引価格情報検索」をクリックすると、日本地図が表示されるため、取引事例を調べたい都道府県を選択します。
取引の時期や種別、市区町村などの条件を指定する欄があり、取引しようとしている土地の条件に近いものを検索すると、その地域で行われた取引価格を調べることができます。

自分で調べるのであれば上記のようにインターネットで調べることも可能ですが、より確実な実勢価格を調べたい場合は、直接不動産業者に確認するという手もあります。不動産業者は売買取引の最先端にあり、常にその動向を把握しています。つまり、取引の平均値である実勢価格がリアルタイムで反映されやすい環境にあるということです。
これは業者によって価格が異なるという場合もありますが、具体的に価格を知りたければこのような手段もあるということを覚えておくと役に立ちます。

みなし贈与について

実勢価格は「常識の範囲内であれば」自由に決められますが、株取引のように異常な急騰・暴落を防ぐための公的取り決めはありません。

しかし現実問題としてはあまりに安い値段、あまりに高い値段で不動産売買ができないようになっています。これはひとことで言えば脱税防止のためです。
なかでも、一番厳しく売買取引価格の値幅制限を受けるのは、親族間での土地取引です。
親族から不動産などの財産をプレゼント(贈与)されたときに発生する税金を贈与税と呼びますが、不動産においては、一見して贈与に見えないケースでも贈与税の対象になる場合があり、これをみなし贈与と呼びます。
みなし贈与について、具体例を交えながら詳しく解説していきます。

相場よりもかなり安く販売した場合

通常Aさんが、親族のBさんに相場2,000万円の土地をプレゼント(贈与)する場合は、贈与税というものがかかります。
しかしAさんが相場2,000万円の土地をBさんに100万円で売買したとします。
これは差額の1,900万円を実質的にプレゼント(贈与)したことと同じとみなされ、贈与税がかかってしまいます。贈与税を節税するために格安で売買することいったことは許されないのです。

この実質的贈与の状態を「みなし贈与」と呼びます。

相場よりもかなり高く販売した場合

一方、AさんがBさんに対して、過度に高く販売した場合はどうなるのでしょうか。

この場合は、土地の値段以上にBさんがAさんにプレゼントをあげたということになり、お金をもらったAさんのほうに贈与税がかかります。(1年あたり110万円以内の贈与なら、贈与税はかからないことになっています)

第3者へ売買する場合は、それほど厳しくはありません。しかし、親族間での土地売買の場合は、国税庁に「みなし贈与」だと判断されない価格をつける必要があり、このボーダーラインが路線価であるといわれています。
しかし土地の贈与の仕組みはとても複雑になっています。ケースバイケース、判例ベースで価格を定めることが多いのです。そのため、実勢価格から離れた価格で土地売買をするときは、事前に専門家のところへ相談することをおすすめします。
また、個人間での土地のやりとりではなく法人が絡んできた場合は、所得税の対象になります。

このように安すぎても高すぎても税金を取られてしまいます。実勢価格がいくら自由に決められると言っても、脱税が簡単にできるようになっては法律にふれてしまうので、「相続税」や「(みなし)贈与税」があります。

常識の範囲内で価格を決め、安心安全な取引をしましょう。

まとめ

実勢価格を不動産取引で活用する

実勢価格とは、ある土地の取引における平均値ということですが、実際の売買であればこの実勢価格より上下することが大半です。不動産を売る側の視点では、実勢価格より高く売りたいと考えるものでしょう。実勢価格500万円の土地で、売却しようとした時点では800万円になっていたとすれば、相場から考えると300万円高くなったということが言えます。
反対に実勢価格500万円の土地が、売却の時点で300万円に下落しているということもあります。

このようなときは価値が変動した原因を考えないといけなません。
いくら土地の値段が変わりやすいといっても、変わるということ自体には必ず何かしらの理由があります。土地の値段が上がるのであれば、近隣に新しく公共施設が建つ予定でもあるのか、近いうちに大きなイベントでもあるのか、逆に下がるのであれば、その土地に何かしらごみ問題などの欠陥が見つかったか、不動産やそれに関わっている業者間で忖度があったかなど、考えられることは無数にあります。実勢価格を理解するためには、バックグラウンドを知っておく必要があるのです。
ここで成り行き任せに「土地の価格は変わるものでしょう」と考えることをやめてしまうと、いつまでも不動産取引において真贋を見極める力をつけることはできません。

更に業者や買主にいわれるがままという姿勢で臨めば、気づいたときには自分の納得できない取引になっているという事態になることもあります。不動産取引で損をしないためには、自分から積極的に動いて確認するという行為が必要不可欠です。
そして、売主を思い通りに動かすような不動産業者を選ばないことが重要です。売主に寄り添い親身になってくれる、信頼できる不動産業者を探しましょう。

一括査定サイトを使って効率的に不動産会社選びをしよう

不動産売買に関する知識がなく、所有している不動産を売却するためにどこの不動産会社に依頼すればいいか分からないという方は一括査定サイト「イエイ」の利用をオススメします。「イエイ」では、国内主要の不動産会社や地元に強い地元密着の不動産会社などとの取引があり、多様な不動産会社から自身に合う不動産会社を見つけやすいのが利点です。
フォーム内に物件情報を入力することで複数の不動産会社から売却査定金額を確認することができ、簡単に相場を知ることも可能です。また信頼できる担当者が見つかれば、そのまま不動産会社に仲介を依頼することもできるので、安心して売却活動を進めることができるでしょう。

スムーズに、そして相場より少しでも高く売却するためにも、事前に実勢価格を把握しておくことが重要です。「イエイ」を使って信頼できる不動産業者を探しておきましょう。