実勢価格とは、市場で取引されている実際の価格のことです。しかし、実際にどのようなものなのか説明出来る人は少ないかもしれません。
これから不動産の売買をする方もまだの方も、必ず必要な知識になるので見ていきましょう。
気になる実勢価格
実勢価格と言うとわかりにくいかもしれませんので例えば、メーカーがあるデジタルカメラに3万円の希望小売価格をつけていたとしましょう。ところが、ほとんどの店舗ではそのデジタルカメラが2万円前後で販売されています。
この場合は、2万円がそのデジタルカメラの実勢価格となります。となれば、一般消費者にとって大切なのはメーカー小売希望価格ではなく、実勢価格ということになりますよね。
土地や建物についても同じことが言えて、土地の売り手と買い手にとってもっとも重要な価格、それが実勢価格です。相場価格だと思っていただくとわかりやすいかもしれません。実際、実勢価格は相場価格な場合が一般的ですが「常識の範囲内であれば」自由に決められます。
■売主にとって、早く現金化したければ、相場より安く売り出す可能性も
株取引のように異常な急騰・暴落を防ぐための値幅制限のような公的取り決めはありません。
常識の範囲内で値幅制限はある
しかし、株の値幅制限のように有名でないだけで、値幅制限はあります。「常識の範囲内であれば」というのがネックですが、現実問題としてはあまりに安い値段、あまりに高い値段で不動産売買ができないようになっているのです。
それはなぜでしょうか。ひとことで言えば脱税防止のためです。なかでも、一番厳しく売買取引価格の値幅制限を受けるのは、親族間での土地取引です。
脱税防止の「みなし贈与」
相場よりもかなり安く販売した場合
例えば、 Aさんが親族のBさんに土地を100円で売買したとしましょう。その後、売り手のAさんが亡くなりました。そうすると、土地に対する相続税は0円ということになります。
もしも、Aさんが、Bさんに土地をプレゼント(贈与)した場合は、贈与税というものがかかり、贈与税は相続税より割高となります。当然ながら、そんなことは許されません。
そして、上記のように、AさんがBさんに土地を100円で販売した場合、実質にはプレゼント(贈与)と同じことなので、贈与税がかかってしまいます。この実質的贈与の状態を「みなし贈与」と呼びます。
特に親族間での土地売買の場合は、国税庁に「みなし贈与」だと判断されない価格をつける必要があります。ちなみに、このボーダーラインは、路線価であるといわれています。
路線価とは国税庁が相続税を算定するために定めている価格で、おおよそ相場価格の8割だといわれています。※詳しくは路線価のページをご参照ください。
国税庁/路線価ページ
http://www.rosenka.nta.go.jp/
相場よりもかなり高く販売した場合
一方、AさんがBさんに対して、過度に高く販売した場合はどうなるのでしょうか。
この場合は、土地の値段以上にBさんがAさんにプレゼントをあげたということになり、お金をもらったAさんのほうに贈与税がかかります。(1年あたり110万円以内の贈与なら、贈与税はかからないことになっています)
第3者へ売買する場合は、それほど厳しくはありません。けれどもやはり、実勢価格の2分の1以下だとみなし贈与と判断され、贈与税がかかることがあるようです。
土地の贈与の仕組みはとても複雑になっています。ケースバイケース、判例ベースで価格を定めることが多いのです。そのため、実勢価格から離れた価格で土地売買をするときは、事前に専門家のところへ相談することをおすすめします。
個人間での土地のやりとりではなく法人が絡んできた場合は、所得税の対象になります。
まとめ
このように安すぎても高すぎても税金を取られてしまいます。いくら自由に決められる実勢価格と言っても、脱税が簡単にできるようになっては法律にふれてしまうので、「相続税」や「(みなし)贈与税」があります。
常識の範囲内で価格を決め、安心安全な取り引きをしていきましょう。