離婚を考えたとき、「財産分与はどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
特に、家や預貯金、保険など、何が対象になるのか分からず悩むケースも多いでしょう。
財産分与は、夫婦が結婚生活の中で協力して築いた財産を公平に分ける大切な手続きです。
しかし、分け方や対象の範囲を正しく理解していないと、知らないうちに損をしてしまう可能性もあります。
この記事では、財産分与の基本から対象となる財産・ならない財産、トラブルになりやすい「持ち家」の分け方、さらに損を防ぐためのポイントまで分かりやすく解説します。
この記事の目次
離婚時の「財産分与」とは?

離婚時の財産分与とは、結婚生活の中で夫婦が協力して築いてきた財産を、公平に分ける手続きのことを指します。
名義が夫婦のどちらになっているかは原則として関係なく、結婚してから別居に至るまでの期間に形成された財産が対象となるのが一般的です。
分け方の基本は「2分の1ずつ」とされており、収入のない専業主婦(主夫)であっても例外ではありません。
家事や育児などを通じて、財産を築くことに関わってきたと考えられるためです。
また、財産分与は原則として拒否できない権利であり、離婚時に請求しなかった場合でも、離婚成立後に一定期間内であれば後から請求することが可能です。
なお、請求できる期間は離婚の時期によって異なります。
| ・2026年3月31日までに離婚した場合:従来どおり「2年以内」 ・2026年4月1日以降に離婚した場合:法改正により「5年以内」へと延長 |
財産分与の対象となるもの
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた「共有財産」です。
具体的には、次のようなものが該当します。
・結婚後に取得した土地や建物などの不動産
・預貯金
・株式や投資信託などの金融資産
・退職金(婚姻期間に対応する部分)
・自動車
・貴金属や高価な装飾品
・家具や家電製品
・確定拠出年金などの積立資産
これらは名義に関係なく、夫婦で協力して築いたと考えられるため、分与の対象となります。
財産分与の対象とならないもの
一方で、すべての財産が分与の対象になるわけではありません。
夫婦どちらか一方が個人的に保有している「特有財産」は対象外とされます。
具体例としては以下の通りです。
・結婚前から所有していた預貯金や不動産
・親や祖父母などから相続・贈与によって取得した財産
・相続した不動産から得られる家賃収入
これらは夫婦で一緒に築いたものではないため、原則として財産分与には含まれません。
離婚に伴い「持ち家」はどう分けるのがいい?

離婚時に持ち家をどう分けるかは、トラブルになりやすい重要なポイントです。
売却して分ける方法や、どちらかが住み続ける方法など、状況に応じて選択肢が異なります。
それぞれの特徴や注意点を理解したうえで、自分たちに合った方法を選ぶことが大切です。
家を売却する
自宅を売却し、売却代金から諸費用を差し引いた残りを夫婦で分ける方法は、シンプルで公平性が高いとされています。
この方法は「換価分割」と呼ばれ、トラブルを避けやすい点が特徴です。
なお、購入時に一方が自分の資産から頭金を出している場合は、その分を考慮して取り分が調整されることがあります。
また、売却しても住宅ローンが完済できないケースでは、不足分を他の共有財産で補う必要があるため、事前に資金状況を確認しておくことが重要です。
どちらかが住み続け、もう一方が現金を支払う
夫婦のどちらか一方がそのまま家に住み続ける代わりに、もう一方へお金を支払って分ける方法があります。
この方法では、家の価値の半分を目安にして、現金で支払うのが一般的です。この分け方は「代償分割」と呼ばれます。
多くの場合、現在の名義人がそのまま住み続けますが「家の価値をいくらと考えるか」で意見が合わず、話し合いが難しくなることもあるので注意が必要です。
そのため、それぞれが不動産会社に査定を依頼し、その結果を参考にしながら金額を決めていきます。
それでも決まらない場合には、専門家である不動産鑑定士に依頼して、公平な価格を出してもらうこともあります。
住宅ローンが残っている場合は注意が必要
離婚時に住宅ローンがまだ残っている場合は、以下のように注意が必要です。
①家の名義人や住宅ローンの契約者がそのまま住み続ける場合
相手に代わりのお金を支払えばよく、大きな問題になることは少ないです。
②名義人でもローンの契約者でもない人が住み続ける場合
家に住んでいない名義人が、住宅ローンを返済し続ける形になります。本来は住む人へ名義変更するのが理想ですが、収入などの条件で審査に通らず、借り換えできないケースもあります。
そのため、実務上は銀行の了承を得たうえで、「住んでいる側が名義人に毎月一定額を支払う」といった取り決めをすることもあります。
また、住宅ローンを完済した後には、実際に住んでいる人へ名義変更する手続きを行うのが一般的です。
「損をしない」ための財産分与・3つのポイント

離婚時の財産分与では「知らなかった」「見落としていた」ことで数百万円単位の損失につながるケースも少なくありません。
ここでは、損を防ぐために必ず押さえておきたい3つの重要ポイントを解説します。
①相手に財産を隠させない「財産の見える化」
財産分与を適正に行うためには、まず夫婦の共有財産を正確に把握することが不可欠です。これを「財産の見える化」といいます。
しかし、実際には以下のようなケースも多くあります。
・通帳を見せてもらえない
・保険契約の内容を教えてくれない
・収入や副業の実態を隠される
【相手が開示しない場合の対処法】
まずは調停を通じて、調停委員から開示を促してもらうのが一般的です。
それでも応じない場合は、弁護士による「弁護士会照会」や、家庭裁判所への「調査嘱託」を利用して、金融機関に調査を依頼する方法があります。
ただし、これらの手続きは銀行名や支店など、ある程度の情報が分かっていないと利用が難しい点に注意が必要です。
②学資保険や生命保険の「解約返戻金」を忘れない
見落とされがちな財産の代表例が「保険」です。
特に以下の保険は注意が必要です。
・学資保険
・生命保険(貯蓄型)
これらは「解約返戻金」がある場合、その金額が財産分与の対象になります。
特に、学資保険は「子供のための保険だから対象外」と思われがちですが、婚姻期間中に支払った保険料は夫婦の共有財産とみなされます。
そのため、「解約して現金化し分ける」「解約せず評価額で精算する」といった方法で分与されるケースが一般的です。
③将来もらえる「退職金」や「年金」の扱い
財産分与は、今ある財産だけでなく「将来受け取る予定の財産」も対象になる場合があります。
【退職金の扱い】
特に40代後半〜50代の場合、退職金は重要な分与対象です。
・すでに支給が確実な場合→分与対象になりやすい
・勤続年数が長い場合→婚姻期間分が対象
一般的には、結婚していた期間に応じて、割合で分けて計算されます。
【年金の分割制度】
年金は「年金分割制度」が利用可能です。
・厚生年金の記録を夫婦で分割できる
・合意分割(最大50%)または3号分割

財産分与で税金がかかるケース・かからないケース

財産分与では、基本的に税金はかからないとされていますが、内容や条件によっては課税されるケースもあります。
ここでは、「財産を受け取る側」と「財産を渡す側」それぞれに、どのような場合に税金が発生する可能性があるのかを分かりやすく解説します。
もらう側にかかる可能性がある税金(贈与税)
一般的に財産分与で財産をもらう側には、贈与税や所得税はかかりません 。
これは財産分与が夫婦の共有財産の清算や離婚後の生活を支えるためのものであるためです。
ですが、以下のように例外もあります。
ケース①:財産分与の額が一般的な範囲を大きく超えている場合。その超過分には贈与税がかかる可能性があります。
ケース②:税金を避ける目的の「形式的な離婚」と判断されると、分与された財産全体が課税対象になることもあります。
渡す側にかかる可能性がある税金(譲渡所得税)
不動産や株式を財産分与する場合、渡した時点の「時価」で相手に譲ったとみなされることがあります。
特に、慰謝料の代わりとして資産を渡す場合は、この扱いになることが多いです。
その際、購入時よりも価値が上がっていれば、その差額に対して譲渡所得税がかかります。
一方で、夫婦の共有財産を公平に分ける目的の財産分与であれば、原則として税金はかかりません。
譲渡所得税の計算方法とは?
譲渡所得の計算方法
| 売却したときの価格(財産分与では分与時の時価)-購入時の費用や売却にかかった費用 |
この利益に対して所得税と住民税が課され、税率はその資産をどれくらいの期間所有していたかによって異なります。
・所有期間が5年以下(短期譲渡):約39%
・所有期間が5年超(長期譲渡):約20% が目安となります。
財産分与で税金を抑える方法とは?

【財産分与契約書を作成する】
分与が夫婦の共有財産の清算であることを明確にしておくと、贈与とみなされるリスクを減らすことにつながります。
【控除や特例を活用する】
「居住用財産の3,000万円特別控除」などを利用するには、離婚成立後に分与を行うなど、実施のタイミングが重要になります。
【分与の時期を工夫する】
上記でもご紹介しましたが、不動産は所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります。事前に確認しておくと安心です。
・所有期間が5年以下:約39%
・所有期間が5年超:約20%
トラブルなくスムーズに決着させるための3ステップ

離婚時の財産分与は、進め方を間違えると大きなトラブルにつながる可能性があります。
そこで重要なのが、事前準備から合意・書面化までを段階的に進めることです。
ここでは、トラブルを避けながら、スムーズに解決へ導くための3つのステップをご紹介します。
ステップ①:財産の全貌をチェックリストで整理する
まず最初に行うべきは、夫婦の共有財産を漏れなく洗い出すことです。
預貯金や不動産だけでなく、保険の解約返戻金や退職金見込み額なども含めて整理します。
この段階で曖昧な点を残してしまうと、後から「そんな財産は知らない」といったトラブルにつながる可能性があります。
チェックリスト化して、客観的に把握することが重要です。
ステップ②: 家の「正確な現在の価値(査定額)」を把握する
不動産がある場合は、現在いくらで売れるのかを把握することが非常に重要です。
査定額が分からなければ、財産分与が公平かどうか判断できません。
また、住宅ローンが残っている場合は「売却価格 − ローン残債」で実際の資産価値が決まります。
査定額は不動産会社によって差が出るため、複数社に依頼して相場を把握することが重要です。
とはいえ、1社ずつ問い合わせるのは手間がかかります。
そこで便利なのが、一括査定サービスの「イエイ」です。
一度の入力で複数の不動産会社にまとめて査定依頼ができるため、効率よく適正価格を知ることができます。
早めに査定額を把握しておくことで、財産分与の交渉も有利に進めやすくなります。
ステップ③:夫婦間で協議し「離婚協議書(公正証書)」を作る
財産分与の内容が決まったら、必ず書面に残します。
特に「公正証書」にしておくことで、万が一相手が支払いを守らなかった場合でも、強制執行が可能になります。
口約束だけで済ませてしまうと、後から請求できなくなるリスクがあるため注意が必要です。
離婚時の財産分与に関するよくある質問

離婚時の財産分与については、進め方や判断基準に悩む方も多いのではないでしょうか?
ここでは、実際によくある疑問とその考え方について、分かりやすく解説します。
Q.財産分与の話し合いを専門家に頼むべきか悩んでいます
A.財産分与は夫婦間の話し合いでも進められますが、状況によっては専門家への相談が有効です。
【弁護士に相談すべきケース】
・相手が財産の開示に応じない
・親権、養育費、慰謝料などでも揉めている
・法的なアドバイスや交渉が必要
→ 代理交渉やリスク回避ができ、スムーズな解決につながる
【司法書士へ相談すべきケース】
・不動産の名義変更(登記)が必要
→ 登記手続きの専門家であり、正確に対応できる
→ 放置すると税負担や権利関係のトラブルの原因になる
【行政書士へ相談すべきケース】
・すでに条件に合意している
・離婚協議書などの書類作成のみ依頼したい
→ 費用を抑えられるが、法的助言や交渉は不可
まずは一度専門家に相談することで、自分に合った進め方や必要な対応を判断しやすくなります。
Q.財産分与の割合が変わるケースもありますか?
A.状況によっては割合が調整されることがあります。
ケース①:一方の特別な能力や資格が影響している場合
夫婦のどちらかが専門的な資格や突出した能力を持ち、それによって大きな財産を築いた場合は、その点が考慮されることがあります。
(例:医師や弁護士、芸術家、スポーツ選手など)
ケース②:財産額が非常に大きい場合
経営者などが莫大な資産を形成しているケースでは、もう一方の貢献度が相対的に小さいと評価されることがあります。明確な基準はありませんが、数億円規模の資産がある場合に判断が分かれることがあります。
ケース③:財産形成への貢献度に差がある場合
共働きであっても、一方が主に家事や育児を担っていた場合などは、その負担が評価されます。結果として、家庭を支えていた側の貢献度が高いと認められ、分与割合に反映されることがあります。
「現在の資産価値」を正しく把握することから始めよう

離婚時の財産分与は、夫婦で築いた財産を公平に分けるための重要な手続きです。
特に「持ち家」は金額が大きく、分け方によってはトラブルに発展しやすいポイントでもあります。
売却して分けるのか、どちらかが住み続けるのかによっても対応は大きく異なり、住宅ローンの有無や家の価値によって判断が変わるため、慎重に進めることが大切です。
その中でもまず重要なのが、「家がいくらで売れるのか」を正確に把握することです。
適正な価格を知らないまま話し合いを進めてしまうと、不公平な分与につながるリスクがあります。
とはいえ、不動産会社に1社ずつ査定を依頼するのは手間がかかります。
そこでおすすめなのが、不動産一括査定サービス「イエイ」です。
簡単な入力だけで複数の不動産会社にまとめて査定依頼ができるため、効率よく相場を把握できます。
財産分与で損をしないためにも、まずは家の価値を知ることから始めてみましょう。




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