空き家の解体費用がない場合、どう対処したらよいのかわからないという方もいるでしょう。解体費用がないからといって空き家をそのまま放置するのはリスクが大きいため、早めに対処することが大切です。
本記事では空き家の解体費用の相場や支払えない場合の対処法、注意点などを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
実家(空き家)の解体費用は誰が支払うのか
空き家になった実家の解体費用は誰が負担すべきなのかを理解していないと、家族や親戚などの間でトラブルに発展する恐れがあります。
ここでは空き家になった実家の解体費用の負担について解説していきます
相続をした人が支払うのが基本
空き家の解体は、相続をした人が費用を負担するのが基本です。相続をした人とは、空き家となった実家の登記簿謄本に記載されている所有者の名義人です。解体の判断や費用の負担は、基本的にすべて所有者が行うことになります。
兄弟であっても所有者が兄であれば、兄が解体費用を支払います。「兄弟なのだから弟も一緒に負担すべきなのでは」と思う方もいるかもしれませんが、相続によって所有者の名義変更をした以上は、所有権のある人が費用を負担しなければなりません。
所有者は資産の活用方法においてすべての権限をもつため、解体するのであれば当然費用も所有者が負担することになります。
共有名義の場合は持分割合に応じて支払う
実家の所有者が複数人いる場合、それぞれの所有権の割合を「持分割合」といいます。そのため兄弟が共有名義で実家を相続した場合は、持分割合に応じて解体費用を支払います。
たとえば兄弟で50%ずつ所有権をもっている場合は、解体費用も半分ずつ負担しなければなりません。また、兄弟3人が均等に所有権をもっている場合は、3人が3分の1ずつ解体費用を負担する形になります。
相続放棄した場合は相続財産管理人が清算
兄弟全員が相続放棄をした場合は、「相続財産管理人」を選任して解体の手続きや費用の清算を行います。相続財産管理人とは、相続放棄などによって正式な相続人がいない場合に、遺産の管理を任される人です。
相続人がいない財産は最終的に国へ返還されますが、返還にかかる手続きを行う人が必要になるため、相続財産管理人の選任が必要です。相続財産管理人は家庭裁判所の判断によって選任され、一般的には弁護士や司法書士などが選ばれます。
空き家の解体費用がないときの6つの対処法
空き家の解体費用がないときの対処法は、主に次の6つです。
- 補助金を利用する
- ローンを組む
- 建物つきで売却する
- 売却利益を解体費用にする
- 不動産会社の買取を利用する
- 賃貸に出す
それぞれについて解説していきます。
①補助金を利用する
空き家の解体では、自治体の補助金を利用できる場合が多いです。空き家が放置されていると、倒壊の危険性や不審者の出入りによる治安の悪化など、地域にとってのデメリットが多いため、補助金制度を推進している自治体が増えています。
補助金の支給額は自治体によって異なりますが、解体費用の5分の1から3分の1かつ上限50万円程度であるのが一般的です。支給額や申請条件などについては、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。
②ローンを組む
空き家の解体では、空き家解体ローンを利用できる場合があります。空き家解体ローンとは、空き家の解体を目的として、主に地方銀行や信用金庫などが取り扱っているローンです。空き家の解体を推進するために自治体と提携している場合が多く、住宅ローンよりも審査に通りやすいのが一般的です。
比較的低金利で担保や保証人も不要な場合が多いため、利用しやすいといえるでしょう。金融機関によって商品の内容が異なるため、お住まいの地域にある金融機関のホームページなどで詳しい内容を確認してみるとよいでしょう。
③建物つきで売却する
空き家を解体せずに売却できれば、そもそも解体費用が必要なくなります。ただし、築年数の古い戸建てはほぼ資産価値がなく、建物つきの場合でも売却の際には土地の価格で売却価格が決まることを理解しておきましょう。
また、購入希望者が少ないエリアの場合はなかなか買い手が見つからずに売れないケースもあります。まずは空き家があるエリアの不動産会社に査定を依頼し、「建物つきでも需要がありそうか」「いくらくらいで売れそうか」などの相談をしてみるとよいでしょう。
④売却利益を解体費用にする
建物つきでの売却が難しい場合は、解体を前提に売却する方法もあります。建物の状態や築年数にもよりますが、一般的には建物つきの土地よりも更地のほうが売れやすい傾向にあります。更地のほうが土地の用途の自由度が高いため、より幅広い購入希望者にアプローチできるでしょう。
解体費用がなく土地を更地にしてから売り出すのが難しい場合は、「更地渡し」という、売却後に解体するという約束で売り出す方法があります。売却で得た利益を解体費用に充てられるため、建物と土地を手放したい場合には有効な方法といえるでしょう。
⑤不動産会社の買取を利用する
市場での売却が難しい物件は、不動産会社に直接買い取ってもらう方法もあります。不動産会社に仲介を依頼して買い手を探すよりも、早く確実に売却が可能です。査定を依頼して、納得のいく価格で買い取ってもらえる不動産会社があれば、早ければ数日〜1週間程度で売却が完了します。
ただし、買取の場合は市場の相場価格よりも安くなってしまう点には注意が必要です。売却価格は安くても、早く売りたい場合にはおすすめの方法といえます。
⑥賃貸に出す
需要があれば、空き家を解体せずに賃貸として活用するのもよいでしょう。賃貸運用がうまくいけば定期的な収入が見込めるため、今後解体する際の費用に充てることもできます。
賃貸先を探す際には、空き家バンクを利用してもよいでしょう。空き家バンクとは、自治体が主体となり、空き家を貸したい人や売りたい人を、借りたい人や買いたいしたい人につなげるサービスです。
築年数が古い場合や田舎にある空き家の場合は、0円に近い賃貸料になってしまうケースもあります。しかし、空き家の状態で放置すれば荒廃してしまうところを、居住者がいれば維持管理が行き届くため、賃料が低かったとしても賃貸に出すのは有効な方法であるといえるでしょう。
空き家を自分で解体するリスク
解体費用を抑えるために空き家を自分で解体しようと考えるのは、事故やトラブルのリスクが高いため、避けたほうがよいでしょう。
重機は特別な免許がなければ操作や運転ができないため、専門的な知識や経験がないと解体作業はできません。手作業で解体作業をするにも、かなりの時間と労力がかかるだけでなく、高所作業での事故の危険性や、近隣住民とのトラブルにつながる恐れもあります。
また、古い建築物にはアスベストを含む建材が使われている恐れもあります。アスベストは吸入すると人体に悪影響を及ぼす危険があるため、特殊な作業工程での撤去が必要です。
素人が安易に空き家を解体しようとするのは危険なので、安全性やトラブル回避などの観点からも、必ず解体業者に依頼しましょう。
空き家の解体費用の相場
空き家の解体費用の相場は、建物の大きさや構造によって異なります。空き家の解体費用のおおよその目安は次の通りです。
木造 |
鉄骨造 |
鉄筋・コンクリート造 |
|
---|---|---|---|
30坪 |
90〜150万円 |
150〜210万円 |
180〜240万円 |
40坪 |
120〜200万円 |
200〜280万円 |
240〜320万円 |
50坪 |
150〜250万円 |
250〜350万円 |
300〜400万円 |
坪単価 |
3〜5万円 |
5〜7万円 |
6〜8万円 |
上記の相場はあくまでも目安で、空き家のある場所の立地や付帯工事の有無でも費用に差が出ます。たとえば住宅密集地や狭小地、細い道や高低差のある場所では、特殊な車両や仮設部材が必要になることもあり、相場よりも費用が高額になる場合があります。
また、カーポートやガレージ、庭木など、建物本体以外にも解体や撤去が必要なものがある場合は、その分の費用も必要です。アスベストが使用されている建物の場合も特殊な作業が必要になるため、追加の費用がかかります。
関連記事:空き家の売却方法とかかる費用・税金について徹底解説
空き家の解体に関する注意点
空き家の解体を検討する際には、次のことに気をつけておくとよいでしょう。
- 解体しないでおくとリスクがある
- 家族で解体の予定について事前に話し合っておく
- すぐに解体できない場合は防犯対策をしておく
- 不用品は早めに処分しておく
それぞれの注意点について解説していきます。
解体しないでおくとリスクがある
空き家を解体せずに放置してしまうと、さまざまなリスクがあるため注意が必要です。とくに金銭面でのデメリットとして、固定資産税が最大6倍になってしまう点があげられます。
固定資産税には住宅用地の特例措置があり、住宅が建っている土地は固定資産税が3分の1または6分の1に減税されます。しかし、空き家が「特定空き家」に認定されてしまうと特例措置の適用外となってしまうため、翌年からの固定資産税は減税されません。
特定空き家とは、倒壊の危険性や衛生面での有害性、景観を損なう恐れがある場合などの空き家に対して、行政が認定するものです。特定空き家に認定され、行政からの助言や指導に従わない場合は、最大で50万円以下の過料の対象となります。
また、空き家を放置すると、ゴミの不法投棄や雑草の繁茂、害虫やねずみの繁殖などにより近隣住民とのトラブルに発展することもあります。不審者の出入りや放火の危険もあるため、リスクが大きいといえるでしょう。
家族で解体の予定について事前に話し合っておく
事前に家族で解体の予定について相談をしておくと、トラブルを防ぐことにつながります。解体や売却をしてもよいのか、解体するのであればいつするのか、誰が費用を負担するのかなど、なるべく具体的に相談しておきましょう。
相続のタイミングや実家が空き家になる前のタイミングなど、なるべく早めに話し合っておくと、いざというときに慌てなくて済みます。
すぐに解体できない場合は防犯対策をしておく
空き家を放置するのはリスクが大きいので、すぐに解体できない事情がある場合は防犯対策をしておくことが大切です。
まずは空き家を定期的に見に行き、郵便受けのチラシや郵便物を回収したり、庭の手入れをしたりしましょう。不審者に対して「所有者がよく見に来ている」「管理されている」という印象を与えられれば、犯罪の巣窟となるリスクを回避できます。
また、人感センサーつきライトや防犯カメラの設置、防犯ステッカーの貼り付けなども効果的です。住んでいる場所から遠い場合は、空き家管理の代行サービスなどを利用するのもよいでしょう。
不用品は早めに処分しておく
解体費用を抑えるために、空き家にある不用品は早めに処分をしておくとよいでしょう。建物を解体する際に、なかにある家具や家電などはそれぞれ処分費用が発生します。
自治体の粗大ごみ回収や量販店の買取サービスなどを利用して自分たちで処分すれば、無料、もしくは低価格での処分が可能です。
関連記事:空き家を売却する方法とは?流れや注意点をわかりやすく解説!
空き家の処分を考え始めたらやること
空き家を処分したいと思ったら、まずが解体の前に売却を検討してみるとよいでしょう。ここでは空き家の処分を考え始めたらやるべきことを2つご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
まずは売却を見据えて不動産会社に相談をする
空き家の処分にはさまざまな選択肢がありますが、まずはそのまま売却できないかを検討するところから始めるのがおすすめです。解体費用がない場合も、まずは売却を検討してみてください。
そのまま売却できればそれで空き家の処分が完了するため、スムーズに空き家を手放せます。もし買い手が見つからなければ、次の手段として「リフォームをして売却する」「解体して更地にしてから売却する」「不動産会社に買い取ってもらう」などを考えるとよいでしょう。
まずは不動産会社に空き家の査定をしてもらい、空き家を手放すにあたっての方針について相談できると安心です。
複数の不動産会社を比較して、信頼できるところに依頼する
空き家が売れるかどうか、いくらで売れるのかなどは、不動産売却のプロである不動産会社に相談するのが適切な方法です。まずは複数の不動産会社に空き家の査定を依頼し、どのくらいの価格で売却できそうなのかを把握しましょう。
査定の根拠など気になる点を質問したり、今後の方針について相談したりするなかで、信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
空き家の解体費用がないときの対処法を知り、スムーズに手放そう
空き家の解体費用がないときは、まずは売却を見据えて不動産会社に相談するのがよいでしょう。空き家がいくらで売れるのか目安を知りたい場合は、不動産一括査定サービスの利用がおすすめです。
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