借地権の売却を考えている場合、「どうやって売却したらいいのか」「スムーズに売却できるのか」など、疑問や不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
借地権は売却が可能ですが、通常の売却よりもしくみが複雑であるため、スムーズな売却のためにはある程度知識が必要です。
本記事では、借地権のしくみや売却方法、価格相場や税金などについて解説します。トラブル回避策や売却のコツなども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
借地権とは
借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利のことをいいます。本来であれば、自分名義の建物を建てるためには土地を購入する必要があります。しかし、借地権を利用して土地を借りることで、土地を所有していない人でもマイホームを取得することが可能です。
借地権の購入は、土地の所有権を購入するよりも安価な場合が多く、初期費用を抑えられるメリットがあります。あくまでも土地を借りるだけなので、土地に対する固定資産税や都市計画税の支払いも必要ありません。
ただし、購入価格は安価なものの、地代の支払いは毎年必要になります。また、増改築や建て替えには地主の承諾が必要なので、土地の所有権を保有している場合と比べると、自由度は低くなってしまいます。
借地権の種類
借地権には「地上権」と「賃借権」の2種類があります。ここではそれぞれのしくみを解説します。
地上権
地上権とは、建物を所有することを目的に土地を使用する権利です。地上権の場合は自由に譲渡や売却ができ、増改築や建て替えの際も地主の承諾が不要です。地主にとってデメリットが多いため、戸建ての場合は地上権が設定されるケースは稀で、ほとんど用いられることはありません。
賃借権
賃借権とは、建物を所有することを目的に土地を借りる権利です。貸借権の譲渡や売却、増改築や建て替えの際には地主の承諾が必要です。流通している借地権のほとんどは、この賃借権であるといわれています。
賃借権の種類
賃借権には、「旧法借地権」と、1992年に施行された「新法借地権」の2種類があります。1992年以前に土地を借りていた場合は旧法借地権が適用され、1992年以降に借りた場合は新法借地権が適用されます。
旧法借地権と新法借地権とでは、契約期間に違いがあります。それぞれの契約期間は次の通りです。
契約期間 | 更新後の期間 | ||
---|---|---|---|
旧法借地権 | 木造 | 20年以上 ※期間の定めなし:30年 |
20年以上 ※期間の定めなし:20年 |
鉄筋コンクリート造 | 30年以上 ※期間の定めなし:60年 |
30年 ※期間の定めなし:30年 |
|
新法借地権 | 30年以上 ※期間の定めなし:30年 |
1回目:20年以上 ※期間の定めなし:20年 2回目以降:10年以上 ※期間の定めなし:10年 |
また、新法借地権には次の3種類の定期借地権があります。
契約期間 | 更新後の期間 | |
---|---|---|
一般定期借地権 | 50年以上 | 更新なし ※更地にして返還 |
事業用借地権 | 10年以上30年未満、または 30年以上50年未満 |
更新なし ※更地にして返還 |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 建物譲渡に伴い借地権は消滅 |
建物譲渡特約付借地権は、建物を地主に買い取ってもらうことが可能です。借地人にとっては解体費用の負担がなく、買取によって資金回収の目途がつくメリットがあります。地主にとっては建物付きで土地が返還されるため、返還後は家賃収入を得ることができます。
借地権を売却する5つの方法
借地権を売却する方法は、主に5つあります。ここではそれぞれの売却方法を解説します。
①第三者へ売却する
借地権を第三者へ売却する場合は、買主が個人か不動産会社かに関わらず、地主の承諾が必要になります。第三者へ売却する際は、売主が測量費用や解体費用、譲渡承諾料などを負担するのが一般的です。
名義書換料や売却後の借地料、契約期間の設定など、売却にあたってさまざまな交渉が必要になるので、借地権の取引経験がある不動産会社に間に入ってもらうと安心です。
土地の所有権よりも借地権のほうが販売に時間がかかるケースが多いため、スケジュールに余裕をもって計画するとよいでしょう。
②地主へ売却する
地主に借地権を買い取ってもらうことで、地主は土地の完全所有権を得られます。地主はもともと借地権付きの土地の所有権である「底地権」をもっており、借地権を買い取ることで、その土地の完全所有権を得られることになります。
底地権よりも完全所有権のほうが資産価値が上がり、底地権単体の場合よりも高く売れることが多いため、地主にとってメリットが大きいといえます。
③買取業者に売却する
買取業者は、借地権付き建物であっても問題なく買い取ってくれる場合が多いです。買取業者に売却すれば、売主は解体費用や契約不適合責任を負う必要もありません。
また、売却完了までの期間も他の売却方法と比べて短い傾向にあります。地主との交渉がスムーズに進めば1ヶ月以内に売却が完了することも多く、とにかく早く売却したい場合にはメリットが大きい売却方法といえるでしょう。
ただし、買取価格は他の売却方法と比べて安くなってしまう場合が多いというデメリットがあります。
④借地権と底地権を一緒に売却する
地主が承諾した場合は、借地権と底地権を一緒に第三者へ売却する方法もあります。借地権と底地権を合わせた完全所有権として売却したほうが、それぞれ単体よりも高く売却できる可能性が高いです。
ただし、地主にとっては財産を処分することになるため、交渉のハードルは高い場合が多いといえます。
⑤等価交換をして売却する
借地権の売却における等価交換とは、借地権の一部と底地権の一部を交換することを意味します。等価交換をすることで、互いに分割した分の土地の完全所有権をもつ形になり、それぞれの土地の資産価値も高くなるというメリットがあります。
交換比率の交渉や建物の解体、測量や分筆登記などの手間や費用がかかるものの、完全所有権となった土地は売りやすくなります。
借地権を売却する際の価格相場
借地権の売却には地主の意向が大きく関わるため、明確な取引相場はありません。売買価格は地主と交渉しながら決めていくので、同じような条件の土地であっても、地主の意向によって実際の価格は異なってきます。
しかし、おおよその売却相場の目安を算出する方法はあります。一般的に用いられる算出方法は、「自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合)」と「更地価格×借地権割合」です。
「自用地評価額」とは、所有権の場合の土地の評価額のことで、相続税や固定資産税を算出する際に用いられるものです。
「借地権割合」とは、その土地の権利のうち、借地が何割を占めるかを示す数字のことをいいます。30〜90%の間で設定され、割合が高くなるにつれて、利用価値も高くなります。
自用地評価額や借地権割合を用いて売却価格を算出すると、更地価格の半分以下になることも多いです。ただし上記の方法で算出した価格はあくまでも目安でしかなく、実際の価格は地主によって異なります。
地主との交渉材料として、事前に不動産一括査定サービスを利用して所有権価格の目安を知っておくとよいでしょう。
借地権の売却に関わる税金
借地権売却では、「譲渡所得税」がかかります。譲渡所得税とは不動産を売却する際に得た利益にかかる税金のことです。借地権を譲渡したときに譲渡所得が発生した場合は、所得税と住民税が課税されます。
「譲渡所得」は、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて算出します。譲渡費用には、建物の解体費用や土地の測量費なども含めることが可能です。
譲渡所得税の税率は、次の通りです。
区分 | 税率 | |
---|---|---|
所有期間が5年以内の場合 | 短期譲渡所得 | 所得税30.63%+住民税9%=39.63% |
所有期間が5年を超える場合 | 長期譲渡所得 | 所得税15.315%+住民税5%=20.315% |
ただし、一定の条件を満たせば、確定申告をして3,000万円の特別控除を受けられます。
スムーズに借地権を売却するコツ
借地権の売却は通常の売却と比べてしくみが複雑で、さまざまな交渉や手続きが必要になります。ここでは借地権をスムーズに売却するために知っておきたいコツを2つ紹介します。
日頃から地主と良好な関係を築いておく
借地権は地主の承諾がないと売却ができないため、さまざまな交渉をスムーズに進めていくためにも日頃から地主と良好な関係を築いておくことが大切です。
借地権を売却したいと思ったら、まずは地主に相談をしましょう。なかには地主への相談なしに査定をするだけでも関係が悪化するケースもあります。また、地主との関係がよくないからといって、承諾のないまま勝手に売却を進めると民法違反になってしまいます。
売却の際にトラブルにならないよう、地主とは日頃から良好な関係を築くことを心がけ、必ず相談をしてから売却の話を進めましょう。
信頼できる不動産会社に相談する
一般的な不動産売却と違って借地権の売却は複雑で、地主との交渉や買主探しが難航するケースもよくあります。スムーズな売却を目指すなら、借地権の取引に精通した不動産会社に相談すると安心です。
借地権売却の実績が豊富な不動産会社であれば、地主や買主との間に入り、借地人に代わって引き渡しまで円滑に進めてくれるでしょう。
借地権の売却の流れ
借地権の売却は、一般的に次のような流れで行われます。
1 | 買取または仲介を依頼する不動産会社を選ぶ |
2 | 地主と交渉し、借地権売却の承諾を得る |
3 | 不動産会社に借地の査定を依頼する |
4 | 売却活動を行う |
5 | 売買契約を結ぶ |
6 | 借地権譲渡承諾書を作成する |
7 | 借地権を引渡す |
借地権の売却は地主との交渉が難航したり、一般的な不動産よりも買い手が見つかりにくかったりと、売却が容易ではないケースが多いです。
交渉が難航したり、複雑な手続きに困難が生じたりした際には、経験が豊富で中立的な立場である不動産会社にアドバイスをもらいながら進めるとよいでしょう。
借地権を売却する際によくあるトラブルと回避策
借地権の売却で失敗しないためにも、一般的に起こりうるトラブルについて事前に知っておくと安心です。ここではよくあるトラブルの例と回避策を紹介します。
地主が売却を承諾してくれない
借地権の売却には地主の承諾が必要です。しかし、地主がどうしても売却を承諾してくれない場合は、裁判所で借地非訟の手続きをすることで売却できる可能性があります。
借地非訟とは、地主と借地人との間に起きたトラブルについて、裁判所が解決する手続きのことをいいます。借地人が裁判所へ申し立てを行い、裁判所が地主に代わって売却の許可を与えます。
ただし借地非訟は弁護士費用がかかったり、売却の許可を得るまでに8ヶ月程度かかったりと、デメリットもあります。地主との関係が悪化する恐れもあるため、あくまでも最終手段であると考えておきましょう。
地主から高額な承諾料を要求された
地主が借地権の売却を承諾してくれたものの、高額な承諾料を要求されてしまうケースがあります。承諾料とは、借地を売却することを地主に承諾してもらうために支払う費用のことです。しかし、承諾料の金額は法律で明確に定められているわけではなく、相場としては借地権価格の5〜10%といわれています。
もし地主から相場より明らかに高い金額の承諾料を要求された場合、裁判所で借地非訟裁判を受けられます。借地非訟裁判では、裁判所が正当と思われる金額の承諾料によって譲渡を認めます。
あくまでも借地非訟裁判は最終手段とし、承諾料の金額交渉は不動産会社に仲介役を依頼するのがよいでしょう。地主はできるだけ多くの承諾料を受け取りたいもので、素人である借地人が交渉してもうまくいくとは限りません。借地権の取引に精通した不動産会社のほうが、金額交渉がスムーズに進むでしょう。
借地権の売却方法を理解し、スムーズな売却を目指そう
借地権の売却は、売却方法もさまざまで、地主との交渉や買い手を探す際にも時間と手間がかかるケースが多いです。売却の流れや手続きも複雑なので、スムーズな売却のためには正しい知識が必要になります。
トラブルを回避し円滑に売却を進めるためには、信頼できる不動産会社に依頼することが重要です。また不動産会社を選ぶ際には、1社ずつ査定を依頼していては時間も手間もかかってしまうので、一括査定サービスの利用がおすすめです。
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