加速する人口減少や超高齢化によって全国に空き家が急増しています。「借り手や買い手がつかない」「固定資産税を払い続けなければならない」などの悩みを抱える持ち主も多く、不動産ならぬ“負動産”という造語まで生まれました。
この記事では、悩ましい“負動産”を処分するための方法についてご紹介します。
この記事の目次
不動産じゃない負動産とは?
かつては安定した資産であったはずの不動産ですが、利益も得られず価値もないという意味で”負動産”と呼ばれる物件が増えてきました。
そんな“負動産”の例として、以下のようなものがあります。
リゾート地の別荘やマンション
バブル時代に資産として購入した別荘やリゾートマンションの価値が激減し、頭を抱えているオーナーは少なくありません。場所が不便なため借り手や買い手は見つからず、そのくせ管理費や固定資産税は払い続けなくてはならないという負動産です。
空室の多い賃貸物件
アパートやマンションなどの賃貸物件は、満室で稼働できないと利益にはなりにくいものです。土地建物の購入・建設でローンを組んでいた場合は、赤字経営になります。
親から相続した家や農地
ライフスタイルの多様化、核家族や単身世帯の増加などの影響で、空き家の急増が大きな社会問題になっています。
総務省統計局が5年ごとに行う「住宅・土地統計調査」では、2013(平成25)年に全国で確認された空き家は約820万戸と発表されました。空き家の数は年々増加し、2030年ごろには全国で約2000万戸、3軒に1軒が空き家になってしまうという試算もされています。
空き家問題は人口の少ない地域だけでなく、都市部でも抱えている問題です。誰も住まず手入れがされない建物は、倒壊のおそれや犯罪の増加といった危険性をはらんでいます。国も対策に乗り出し、2015(平成27)年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
このような“負動産”を処分するにはどういった方法があるか、次にご紹介していきます。
処分方法1:売却
処分方法として手っ取り早いのは「売却」することです。
不動産業者に買取を依頼するのが簡単な方法ですが、あまりに価値が低く買い取ってもらえなかったり、タダ同然の安い金額を提示されたりすることがあります。
そこで不動産業者に相談するときには、買取専門の業者ではなく、仲介を行う業者に依頼するのがおすすめです。
仲介業者を通じて情報が拡散されるため、売却がむずかしいと思われる物件でも買い手が見つかる可能性があります。
処分方法2:空き家バンク
各自治体で行っている「空き家バンク」という制度を利用する方法もあります。
空き家バンクとは、所有する物件を「売りたい・貸したい」と考えている持ち主と、移住や交流のために物件を探している人をマッチングするサービスです。
2017(平成29)年に全国の自治体を対象に行われた調査では、「空き家バンクを実施している」と答えた自治体は約62%。さらに約20%の自治体が「今後実施する計画がある」と回答しています。空き家対策と移住促進に効果があるとして、多くの自治体が力を入れている制度です。なかには空き家の改修工事に補助金を出してくれる自治体もあります。
空き家バンクへの登録は無料で行えるため、相談してみてはいかがでしょうか。
処分方法3:自治体へ寄付
処分したい物件の所在地や規模によっては「寄付」をするのもひとつの方法です。
売却ではないため利益にはなりませんが、固定資産税や物件の維持コストからは解放されるでしょう。公共施設にする、新しい道路を敷くなど、不動産の有効活用にもつながります。
寄付の候補先としては、自治体、個人、法人、町内会や自治会などの団体があげられます。
自治体(市町村)への寄付
「どうせ寄付をするなら公益に」と、まずは自治体への寄付を考える人が多いのではないでしょうか。しかし自治体では、使用目的がなければ寄付を受け入れてくれることはほとんどありません。自治体の所有物件になることで税収にも関係してくるためです。
受け入れてくれるかどうかは自治体の判断になりますが、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
個人への寄付
物件近隣の人に寄付をするという方法もあります。
とくに隣地の所有者であれば、受け取ってくれる可能性は高いのではないでしょうか。
注意したいのは、受け取る側に贈与税が課税されるということです。
贈与税は110万円の基礎控除があり、物件の評価額が110万円以下の場合は無税になります。110万円を超えたとしても、一般に売却がむずかしいほどの物件であれば、それほど高額にはならないでしょう。そのほかに所有権移転の登記費用が必要です。
贈与税と登記費用が発生することは相手に了承してもらうようにしましょう。
さらにトラブルを避けるために、贈与契約書を作成して双方で保管することが大切です。
法人への寄付
あまり例がないことかもしれませんが、個人から法人への寄付は可能です。
法人は営利法人と公益法人の2種類に分かれます。
営利法人への寄付
会社関係者からの寄付でなければ、受け入れてくれる可能性はほとんどないでしょう。
不動産を受け取ることで、不動産取得税や登録免許税、法人税などが課税されたり、管理費が発生したりします。持ち主が「タダでもいいから手放したい」と思うほど価値が低い不動産は、会社の利益にはなりません。
また、営利法人へ寄付した場合、寄付した側に譲渡所得税が課税されます。
公益法人への寄付
社団法人、財団法人、NPO法人、学校、寺社などの非営利団体への寄付では譲渡所得税が発生しません。ただし、非課税になるためには税務署の承認を受ける必要があり、手続きがやや面倒です。
町内会や自治会への寄付
公益性の高い団体のため、公益法人への寄付と同じように譲渡所得税が発生しません。ただし、市町村長に地縁団体として認可されていることが条件です。
寄付を申し出る前に確認するようにしましょう。
処分方法4:相続放棄
「相続放棄」で不動産の所有を回避する方法もあります。
相続放棄ができるのは「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3カ月以内とされています。被相続人(亡くなった人)の死亡が1年前だったとしても、それを知ったのがつい最近という場合には、知った日から3カ月以内であれば相続放棄が可能です。
相続人全員が相続放棄をして不動産の所有者がいなくなると、不動産は国庫に入り、固定資産税の支払い義務はなくなります。
ただし、相続放棄しても管理責任は残ります。建物の老朽化が進んでいるならば、倒壊しないように補強工事などを行わなくてはなりません。
それがむずかしい場合は、家庭裁判所に申立てをして相続財産管理人を選任してもらう必要があります。
また、「預貯金は相続したいけど、不動産は相続放棄したい」ということはできません。
相続するかしないかはすべての財産に関わるということに注意しましょう。
不動産の価値を把握しておこう
不動産を処分したいと考えたとき、まずはその価値を把握することが大切です。
売却を希望するなら「少しでも高く売りたい」と誰もが考えるのではないでしょうか。
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