「新しい家に引っ越ししたい」「諸事情で住めなくなった」など購入したマンションを売却する人はたくさんいます。そんなときに気になるのが「いくらで売れるのか」という点です。マンションの価格には決まった相場というものがないため、どういう売却活動を行うのかによって売却額が大きく変わります。
そこで、今回は少しでも高く売るための注意点やポイントを紹介します。
この記事の目次
マンション査定の大まかな流れとスケジュール
マンションの査定から売却までの大まかな流れは
「売却相場の調査」⇒「査定の依頼」⇒「業者の比較」⇒「媒介契約の締結」⇒「売却活動の開始」⇒「売却」⇒「物件の引き渡し」になります。
売却相場の調査
マンションを売却することになれば、まず行うのが「売却相場の調査」です。自分が希望している売却価格が実際の相場と比べてどれくらい離れているかをきちんと把握しておく必要があります。もし、希望価格とおよその相場から500万円以上離れている場合は売却するのに時間がかかるおそれがあるので注意しましょう。
また、住宅ローンの残債がある場合は希望売却価格で完済できるのかについても重要です。希望価格が完済に必要な金額と同じ場合、そのあとの値引き交渉で価格が下がる場合もあるので希望価格と残債との差をきちんと把握しておく必要があります。
不動産のおよその相場は「不動産価格比較のwebサイトを利用する」もしくは「類似物件の価格を調べる」ことで把握できます。
大手不動産会社はそれぞれのホームページで不動産の買い取り査定の概算を計算できるようにしているので、積極的に利用してみましょう。また、実際に売りに出されている物件のなかから、売却予定の不動産と条件が同程度の物件を探し出して相場を知る方法もあります。ただし、完全に条件が一致する物件はほとんどないのであくまでも目安としておきましょう。
大まかな相場を知ったあとは「査定の依頼」「業者の比較」に移ります。
査定依頼と業者比較
不動産会社には全国規模で展開している会社と地場に根付いた会社の2パターンがあります。大手不動産会社は全国への販売網を持っているので売却するまでの時間が早いのが特徴です。
一方、地場の会社は大手会社がカバーしていないような独自のツテやコネクションがあります。どちらが良い悪いということでもないので、査定に出す際は両方の会社に依頼しましょう。目安としては5社~6社程度の会社に査定を依頼すると業者間での比較がしやすくなります。
業者からの査定が返ってきたら、次はどの業者と契約を決めるかを選びます。このときに注意したいのは、結ぶ契約の種類です。
媒介契約の締結
不動産を売却する場合に結ぶ契約は主に「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類です。
専属専任媒介契約
専任媒介契約
自分で探した相手に対しては不動産会社を利用せずに売買契約を締結することが可能
一般媒介契約
販売窓口が増えるため業者間の競争によって適正な販売価格になる傾向がある
どの契約内容にもメリットとデメリットがあるため「自分は何を優先して売却活動を行いたいのか」をはっきりとさせましょう。「話を聞いて一つひとつ丁寧に進めていきたい」というのであれば、専属専任媒介契約や専任媒介契約がピッタリです。「できるだけ高い価格で売り出したい」というのであれば、業者間の競争がある一般媒介契約がよいでしょう。
媒介契約を結ぶ会社を選定すれば、いよいよ売却活動に移ります。
売却活動
販売価格や売り出し時期について業者と話し合い、実際に売り出していきます。販売方法は会社によって異なりますが、インターネット上で不動産の売買情報を一括管理しているサイト「レインズ」に登録するのが一般的です。
売却活動によって買い取り手が見つかれば、販売交渉に入ります。「販売価格はいくらにするのか」「引き渡し時期はいつにするのか」などを決定していきます。
売却・引き渡し
そして、交渉がうまくまとまれば売却・物件の引き渡しです。
これが査定から売却までの一連の流れとなります。査定から売却まで早い場合は2カ月~3カ月、一般的には半年程度で売却が完了します。
査定額に影響する項目
マンションの売却で一番気になるのは「業者の査定額」ではないでしょうか。査定額は業者によってかなり差がでますが、どの業者でも高額査定となるポイントがいくつかあります。
そのポイントとは「立地条件」「周辺の環境」「築年数」「管理・修繕の状態」です。
立地条件
まず、立地条件として根強い人気があるのが「駅が近い」ということです。「駅徒歩5分」と物件情報に掲載できるだけで不動産の価値はぐっと高まります。また、車で移動するのが一般的な地域では「駐車場の有無」「周辺駐車場の料金」などもポイントです。
周辺の環境
「周辺の環境」も重要な点になります。スーパーや飲食店が近くにあるか、もしくは学校や保育園などが近くにあるかという点も高評価のポイントです。逆に、電車の路線が近くにある、幹線道路が家のそばを走っているなどはマイナス評価につながります。
築年数
築年数は「浅ければ浅いほうが良い」です。築年数の古い物件は生活様式が現代の生活にマッチしていない場合や、水回りの設備が老朽化し使いづらい場合があります。価格にも直接影響してくるので、売却を検討している人はできるだけすぐに相談するほうが良いでしょう。
管理・修繕の状況
築年数が古いマンションでも普段の管理・修繕がきちんと行われている建物は比較的高額査定が出やすい傾向にあります。逆に、何年間も大規模改修工事が行われていないようなマンションは、査定評価が下がりやすいので注意しましょう。
査定前のリフォームは必要ない
査定額を少しでも上げるために、売却前にリフォームを行う人がいますがその必要はありません。もちろん、内装がきれいなほど条件としては良いですが、リフォームにかけた費用を売却益でまかなうことは実際に難しいからです。
不動産買い取り業者に買い取ってもらう場合であれば業者はより売り出しやすいように独自のリフォームを行いますし、個人に売却する場合でも買主の趣味・趣向に応じてリフォームをする可能性があります。
査定に影響するのは内装のきれいさよりも、上記であげたような「立地条件」や「築年数」などの「建物自体の価値」です。したがって、査定前に自前でリフォームするのは避けておきましょう。
査定前にできることといえば「隅々まで掃除をしておくこと」です。「クロスや床は汚れていないか」「窓や桟に汚れが溜まっていないか」など、購入希望者が内覧しに来たときに印象として「綺麗に管理されているな」と感じさせるのが大切です。
特に、「排水溝のつまりやヌメリ」などは見落としがちなポイントなので徹底的に掃除しておきましょう。
高額査定を出す業者が必ずしもいいわけではない
複数の業者に査定を出してみると、業者間でバラつきがあることがわかります。場合によっては数百万単位で違いが出ることもあります。このとき注意したいのは「必ずしも高額査定を出す業者が優良な業者ではない」ということです。なぜかというと、査定額とはあくまでも「業者が提示している目安の売却金額」に過ぎないからです。
「うちならこのぐらいの金額で売れますよ」と提示してきているだけなので、実際に売れる金額は異なります。業者のなかには、初めに高い金額を提示しておきながら、物件のマイナスポイントを指摘して「これだったら売り出し価格は下がりますね」と言ってくる業者もいます。
もちろん、提示してきた査定額できちんと売ってくれる業者もいるので「なぜその査定額なのか」「どういう売り出し方をするのか」をきちんと聞いておきましょう。そのなかで「この業者の説明は納得がいく」「誠実な対応をしてくれそう」と思えるような業者と媒介契約を結ぶことが大切です。
特に、専属専任媒介契約を締結してしまうとその業者を通してでなければ売却活動ができないので注意しましょう。
査定に必要な書類と手数料
簡単な査定であれば運転免許証や保険証だけでも査定を行ってもらえます。しかし、売却金額が高額になる場合であればより正確な査定額を出しもらうほうがよいでしょう。
そのために必要な書類は
◇納税通知書
◇マンション管理規約
◇管理費、修繕積立費が分かる書類
などです。
固定資産税評価証明書や納税通知書は「固定資産税はいくらか」「納税はきちんと行われているか」の確認に利用されます。マンション管理規約や管理費・修繕積立費がわかる書類は、マンションの管理状況の確認と管理費の滞納はないかなどをチェックするために必要です。もし、住宅ローンの残債がある場合は「住宅ローン残高証明書」も必要になります。
また、必須ではありませんが
◇重要事項証明書
◇アスベスト使用調査報告書
◇耐震診断報告書
なども用意できると、購入希望者にとっては有益な情報となります。購入希望者に対して準備できる書類や情報は多ければ多いほど、相手方に好印象です。
不動産の売却において「相手方を信頼できるか」は非常に重要なポイントになるので、前もって準備しておきましょう。
余裕をもった売却活動を心がけよう
不動産の売却は一般的に3カ月~半年ほどかかる長期的な活動です。
自分が望む価格で購入希望者が現れない場合は、半年~1年以上かかる場合もあります。「この額以下では売りたくない」と売却を渋っていると、いつまで経っても売れないままになる可能性もあるのです。
時間的に余裕のある人であれば希望価格で購入してくれる買主が現れるまで待つのもよいですが「いつまでには現金化したい」という人であれば、ある程度の妥協をする必要もあります。どちらにせよ、売却には時間がかかるということを念頭において余裕を持った売却活動を行うことが大切です。
そのためにも、きちんと対応してくれる不動産会社を選ぶことはとても重要だと言えます