住宅金融支援機構というと、字面から「お堅そう」なイメージを受けるのではないでしょうか。それもそのはず、実は住宅金融支援機構というのは、公的な特徴を多分に備えた組織なのです。

ここでは、住宅金融支援機構そのものの情報から、有名な「フラット35」という住宅ローンのメリットやデメリット、手続きの流れや利用条件などを詳しくご説明します。

住宅金融支援機構とは?

住宅ローンの借り入れを検討している人の多くが目にするのが、「住宅金融支援機構」と商品の1つである「フラット35」でしょう。

住宅金融支援機構

「住宅金融支援機構」は、正式名称を「独立行政法人住宅金融支援機構」といいます。独立行政法人は、本来政府が行う事業をより専門的かつ効率的に運営していくために考案された特殊法人です。

つまり、住宅金融支援機構は株式会社や有限会社のような法人とはちがって、公的な機関であると言えます。ちなみに、住宅金融支援機構は「住宅金融公庫」という組織の事業をひきついだ形になっています。

住宅金融支援機構は、住宅ローン金融における資金供給の安定化を通じて「国民の住環境の水準向上」を達成するべく、2007年に発足しました。そして、独立行政法人という公的な性質をあわせ持った組織ならではの、住宅ローン事業を展開しています。その中でも特に知名度が高いのが「フラット35」です。

この「フラット35」といえば住宅金融支援機構の代名詞といっても過言ではないほどのメイン事業で、多くの人が利用しています。

フラット35とは?どういったメリットがあるのか

フラット35は、住宅金融支援機構が提供する「住宅ローン」商品のひとつです。他にも、「フラット20」や「フラット35S」などの住宅ローン商品が用意されていますが、ここでは基本的な「フラット35」に的をしぼってご紹介します。

フラット35の特徴かつ大きなメリットの1つは、何といっても「長期間の固定低金利」です。住宅ローンの借り入れを検討する際に、多くの人の心配のタネになるのが「金利の変動」ではないでしょうか。

借入時は低金利でも、その後の金融情勢の変化によっては大きく変動するおそれがあるとなると、返済の見通しがつきにくくなります。金利の変動による返済額の上昇はそれまでの額の1.25倍以内と定められているので、月々の返済額が極端に上がるおそれ自体は少ないでしょう。

しかし、金利の変動のつど返済計画を立て直さなければならなかったり、最悪の場合返済自体が困難になったりする可能性も否定できません。変動金利型の住宅ローンはそういったリスクをはらんでいるのです。

ただ、変動金利型の住宅ローンにもメリットはたくさんあります。借入時の低金利のまま金利が上昇しなければ、固定金利のローンに比べて全体的な返済額が少なくなる可能性が高いといったメリットです。ですから、一概に「固定金利型の住宅ローン」のほうが良いとは言い切れませんが、フラット35を「変動金利のリスク回避のため」に選ぶ人が多いのもまた事実でしょう。

さらに、固定金利のフラット35なら、利息額や全体の返済金額が借入時にわかるため、返済計画ひいては人生設計もたてやすいというメリットもあります。民間の金融機関でも、固定金利の住宅ローンを取り扱っているところはたくさんありますが、フラット35ほどの長期間固定金利の商品はなかなかありません。フラット35は、住宅金融支援機構が公的な機関であるからこそ実現した、安全度の高い「長期間固定金利」ローンなのです。

フラット35のメリットは、借入の「審査」面においても存在します。というのも、フラット35の融資審査は、民間銀行の住宅ローン審査よりも緩やかだとされているからです。

もちろん、フラット35による借り入れを行うためには、いくつかの条件をクリアしなければいけません。公的な機関が運営しているとはいえ、誰でも利用できる商品ではないので、まずは自分がフラット35の利用条件にかなっているかを確かめておきましょう。

フラット35の手続きや利用要件について

フラット35を利用するためには、「フラット35を取り扱っている金融機関」の窓口で申し込みを行う必要があります。注意したいのは、住宅金融支援機構と直接やりとりを行うわけではないという点です。

全体の流れとしては、まず取り扱っている民間銀行などの金融機関を介して住宅金融支援機構へフラット35の申し込みを行います。その後も、民間金融機関の担当者とやりとりをして、銀行の審査を受けたり必要書類を提出したりするなどの手続きを進めていくのです。

窓口は民間の金融機関でも、実際に住宅ローンの融資を行うのは住宅金融支援機構という、二重の構造になっている点に注意しましょう。

また住宅取得の方法によっても、手続きや必要書類が異なるので簡単にご説明します。中古住宅を購入する場合・新築建物を購入する場合、そして建物を新築する場合と、それぞれ取扱金融機関への申し込みが必要なのは共通です。

しかし、中古住宅を購入するならそれに加えて検査機関もしくは適合証明技術者に物件検査を申し込まなければいけません。新築建物の購入や建築にあたっては、検査機関への物件検査の申し込みが必要です。

詳しくは取扱金融機関の担当者に尋ねるのがよいでしょう。また、申し込みをしてから融資が実行されるまでにかかる期間も、取得する物件によって異なります。

フラット35の利用要件

「申し込み時に満70歳未満」であること
親子リレー返済という返済方法をとる場合はこの限りではない
フラット35の借り入れを含めたすべての借り入れ金額が、年収ごとに定められた割合よりも下であること
たとえば年収400万円未満なら、すべての借り入れの年間返済額が年収の30パーセント以下でなければいけない

ちなみに年収400万円以上なら、年間返済額は年収の35パーセント以下までと定められています。

つまり、年収に占める返済額の割合が多すぎるとフラット35を利用できないということです。ここでいうところの「借り入れ」には、車のローンやカードローンなどあらゆるローンを含みます。また、申込者本人が、フラット35の対象となる物件の所有者(または共有者)でなくてはいけないという条件もあります。

フラット35の対象となる物件や、借入の限度額、期間、返済方法は?

住宅金融支援機構のフラット35の対象となるためには、申し込む物件が、住宅金融支援機構が定めた技術基準をクリアしている必要があります。また床面積による条件もあって、戸建て住宅などであれば床面積が「70平米以上」、マンションなどの集合住宅のうちの一部屋なら「30平米以上」でなければいけません。

ただし、面積の制限があるのはあくまで建物についてであるので、敷地の面積はとくに検討する必要はないといえます。

フラット35の対象となるためにはその物件が住宅金融支援機構が定めた技術基準をクリアしている必要がある

また住宅ローンであるため、もちろん「店舗」の取得や建築のための利用は不可です。さらには、住宅の取得(建築)費用も1億円以下であること、と定められています。フラット35を利用する際は、申込者に対する要件だけではなく物件の条件もクリアしておかなければならないことを踏まえたうえで検討しましょう。

フラット35の借入額は「100万円から8000万円」とされています。また借入額は、住宅の取得費用(建築費用)以下でなければいけません。ここでいう「取得費」は住宅のみならず土地の取得費用も含みます。しかし物件のうち、居住用の部分以外については住宅ローンの対象外となるため、注意が必要です。

フラット35の借入期間には幅があります。基本的には最低15年以上と定められていますが、申込者本人あるいは連帯債務者の年齢が60歳を超えているときは「10年以上」からになるのです。そして借入期間の上限は、「80」から「申込時の年齢」を除いた数と「35年」のどちらか短い期間と定められています。親子リレー返済での申し込みであれば上限を算定する際の基準となるのは、ローンを引き継ぐことになる「子」の年齢です。

フラット35の返済方法は2種類あります。

元利均等返済
◇返済のスタート時から返済終了まで、毎月同額を返済し続けることになる
◇毎月の住宅ローン費用が固定されるため、返済計画もたてやすいといえる
元金均等返済
◇返済スタート時から返済終了にかけて、毎月の返済額が徐々に少なくなっていく
◇初期の支払い額が高くなる分、のちのちの返済が楽になっていくというメリットがあるということ

フラット35と団体信用生命保険について

住宅ローンを検討するときに、切っても切れない関係にあるのが「団体信用生命保険」略して「団信」です。団信に加入していると、ローンの借入人が万が一「死亡」または「重度障害」のような状況になった場合に、加入している生命保険会社がローンを代位弁済してくれます。

住宅ローンは一般的に高額である場合がほとんどなので、残された家族に負担をかけないためにも住宅ローン借入時に団信へ加入する人は多いでしょう。

民間金融機関の住宅ローンの商品の多くでは団信への加入が義務付けられていますが、フラット35は、団信への加入は「任意」です。

ちなみに2017年10月までは、フラット35で団信に加入すると保険料を別払いする必要がありました。しかし、2017年10月以降の申し込みでは、民間金融機関と同様に保険料が返済に含まれることになったため、フラット35の団信もより利用しやすくなったといえます。

団信は、万が一のための備えとして検討しておきたい保険ですが、だれでも加入できるものではありません。というのも、団信に加入するためには、一般的な生命保険と同様に「良好な健康状態」が要求されるからです。これはつまり、団信が義務付けられている住宅ローンであれば、裏を返すと、団信に加入できなければ住宅ローンも組めないということになります。

その点、団信への加入が任意のフラット35は、利用へのハードルが民間金融機関よりも低いといえるでしょう。ただし、フラット35の団信利用についてはいくつかの注意点があります。

借入時にしか団信に申し込めない点
フラット35を申し込んだあとになって団信に加入することはできない
団信の内容変更ができない点
団信の特約(三大疾病特約など)をつけるかどうかなど、決めたら後戻りはできないと心得て、先々までよく考えること
フラット35の団信について生命保険料控除を受けることができない点

ということがあげられます。

住宅金融支援機構のフラット35はどういう人に向いているのか

フラット35は何よりも「安定感」を重視する人におすすめだと言えるでしょう。

まず、フラット35の「長期固定金利」という特徴から、借入時に返済額を確定しておくことができます。借入時に金額が確定していることで、借入期間中ずっと返済額が変わらないという安心感を得ることができるのです。

住宅金融支援機構が公的な機関であることも、長期固定金利の安心感を支えているのではないでしょうか。また、フラット35は任意とはいえ、団信による将来の保証もできます。団信加入で保険料が別途必要だった時代は、別払いの手間がネックでフラット35の利用がしにくいという声もありました。

そういったことを踏まえても、今やフラット35という制度自体が格段に利用しやすくなっているといえるのではないでしょうか。

住宅金融支援機構での借り入れなら、まずは提携金融機関での相談から

住宅金融支援機構のフラット35は、住宅ローン商品としては抜群の安定感を誇っています。

利用要件や取得物件自体の条件が細かく定められてはいますが、民間金融機関の住宅ローンよりも審査がゆるやかとされているため、ぜひ選択肢のひとつとして検討したいところです。

住宅金融支援機構のフラット35を利用するなら、まずはお近くの提携金融機関を探すところから始めましょう。住宅金融支援機構のホームページ内に、金融機関を探すための検索ページが用意されているので、利用をおすすめします。すでに利用したい金融機関の目星がついているのであれば、その金融機関がフラット35を取り扱っているかどうかを調べることもできます。

また、住宅を新しく取得する人だけでなく、住宅のリフォームを検討している人にうれしい「フラット35リノベ」などの商品も必見です。そもそも固定金利にするか変動金利にするか、また、団信を利用するかしないかというのは、簡単には決められないポイントではありますが、相談してみて初めてわかることもあります。

ですから、まずは話を聞いてみるだけという気軽な気持ちで、住宅金融支援機構の商品を扱っている金融機関に行ってみてはいかがでしょうか。