固定資産税は、不動産を保有していると毎年かかります。固定資産税の負担が大きい場合は、所有している不動産の売却を検討する理由の1つになるでしょう。また、不動産の売却時における固定資産税の精算は特殊ですので、方法を理解しておくことが大切です。
そこで、固定資産税の概要や計算方法、軽減特例さらには固定資産税の節税におけるポイントなどについてお伝えします。
この記事の目次
固定資産税とは?
不動産の売却時や保有時に関係がある固定資産税のことを知るためには、特徴を把握することが大切です。税金にはさまざまな種類があるため、いくつかの切り口で分類して理解することが有効です。
主な分類方法としては、課税主体による分類や課税対象となるものによる分類、税額の計算方法の違いによる分類があげられます。
1.課税主体による分類
固定資産税の課税主体は地方公共団体です。
国が課税する税金は国税と呼ばれますが、固定資産税は地方自治体によって課税されるため地方税に分類されます。地方税はさらに都道府県税と市町村税に細分されています。
固定資産税は市町村税です。固定資産税は、継続的な税収として期待できますので市町村の重要な税収のひとつとされています。
2.課税対象による分類
所得税や住民税などのように所得に対して課税する税金は収得税、たばこ税や消費税などのように消費されることに対して課税する税金は消費税、譲渡・保有資産などの財産価値に着目して課税する税金は財産税と呼ばれています。
固定資産税の課税対象は、土地や建物などの不動産や事業用の償却固定資産です。そのため、固定資産税は財産税としての性格を有しています。
固定資産税以外の財産税としては、贈与税や相続税があげられます。贈与税や相続税は、それぞれ贈与時・相続があった場合に1回だけ課税される税金です。一方、固定資産税は不動産などを保有している限り継続して課税されるという特徴があります。
3.税額の計算方法による分類
ほとんどの税金は、課税標準と呼ばれる課税対象の評価額に対して一定の税率をかけて税額を方法がとられています。ただし、一定の課税標準の範囲内の税額を一定にする印紙税や、課税標準の金額に応じて税率を変動させる所得税などのような税金もあります。
固定資産税も課税標準に一定の税率をかけるタイプの税金です。税率は、原則として1.4%に設定されています。ただし、この税率は標準税率で、地方公共団体の条例によって変動させることが可能です。
固定資産税の基礎知識として理解しておきたいそのほかのポイントは、固定資産税評価額と納税方法です。固定資産税の課税標準は、地方公共団体が設定する固定資産税評価額で、通常は3年に1回、地価の実勢などを考慮して改定されます。固定資産税評価額は、改定される年の1月1日時点で評価されます。
納税方法は、毎年送られてくる1年分の固定資産税を4回に分けて納税するのが一般的です。納税義務者は、賦課期日である毎年1月1日時点において土地や家屋、償却固定資産の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人とされています。
固定資産課税台帳とは、市町村に備えられている課税対象すべての固定資産を管理している台帳です。それぞれの資産の所有者や資産の概要、固定資産税評価額などを確認できます。
不動産売却時における固定資産税の処理
不動産を売却する場合、売却価格を決めることになります。売却代金の受け取りにあたっては、固定資産税の精算を行うことが必要です。固定資産税の精算に関することを理解しておかないと、資金負担が増加することになりますので注意が必要です。
不動産の売却価格を決定する場合は、まず固定資産税以外の要素について考慮して価格を決定します。価格決定においては、さまざまな要素を考慮して決めることが重要です。
近隣で似たような条件の不動産売買が行われている場合は、その価格を参考にすることになるでしょう。また、取引の目安として国が公表している公示価格も考慮する必要があります。
さらに、売却する土地や建物を賃貸した場合に得られる将来の収益を、現時点の価値に換算して不動産の経済的な価値を算出する方法も価格評価方法の1つです。通常は、これらの方法により算出した評価額を総合的に判断して売却価格を決めることになります。
一般的な売買契約においては、売買対象となる資産などの経済的価値で売買価格を決め資産の譲渡・取得と売買代金のやりとりが行われて売買契約は完了します。
しかし、不動産の売買においてはもう1つやるべきことがあります。それが、固定資産税の精算です。
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して課税されます。仮に、年の途中で売却して所有者でなくなったとしても年初に所有者であった人が、その年分の固定資産税を全額負担することになっています。そのため、年の途中に売却したとしても売却後の期間に対応する固定資産税は、売却した人が負担することになります。つまり、所有者ではない期間分の固定資産税の負担が生じるということです。
この分については、不動産の売買を行う時点で売主と買主の間で精算するのが一般的です。
例えば、1年間の固定資産税が100万円で9月の末日に売買を行った場合は、売主は買主から10月から12月分までの固定資産税に相当する約25万円を不動産の売却代金と合わせて受け取ります。そうすることによって、約25万円を年初の所有者であった売主が市町村に対して納税することが可能です。
一方、買主は不動産を取得した時点では約25万円が持ち出しとなりますが、10月から12月間における所有者としての納税分については売主が負担してくれますので問題ありません。
固定資産税の精算は日数案分で計算します。売主・買主がそれぞれ公平に固定資産税を負担するように売買時点で精算を行うということを知っておきましょう。
固定資産税の計算方法と注意点
固定資産税の税額は、原則として課税標準である固定資産税評価額に標準税率の1.4%をかけて求めます。ただし、納税者自身が計算するのではなく市町村が計算して税額を通知してくる方法がとられています。そのため、固定資産税の計算方法まで知らなくてもよいだろうと考えている人も多いでしょう。しかし、市町村が行った税額計算に誤りがある可能性もあります。
実際に、税額計算に間違いがあり何年にもわたって余分な固定資産税を払い続けていたという事例も存在します。自ら計算方法を理解して、送られてきた納税通知の計算が正しいかどうかをチェックすることも大切です。
納税計算が正しいかどうかをチェックするポイントは、面積の確認です。
土地に関しては地積、建物に関しては延べ床面積ということになります。固定資産税評価額の計算においては、登記簿の面積を参考にして計算されていることが多いです。そのため、登記簿の面積が間違っているまま放置されている場合などは固定資産税の負担が過大になっている可能性があります。また、建物については減築することによって延べ床面積は減少します。
しかし、減築したことについて市町村に申請しておかないと減築分の延べ床面積まで固定資産税を負担することになる可能性がありますので、注意が必要です。
また、固定資産税の計算における延べ床面積は共用部分を含むことになっています。マンションなど共有部分がある建物の場合、占有している部屋の床面積よりも大きな面積が固定資産税の納税通知書に記載されているはずです。そのため、所有している不動産に関して共用部分を含めた面積をあらかじめ把握してからチェックするようにしましょう。
通知された固定資産税の課税標準である固定資産税評価額が過大だという場合は、その評価額に関して不服申し立てを行うことも可能です。さらに、地方公共団体によっては一定の条件に該当すると固定資産税を減免してくれる措置をとっているところもあります。
自分が住んでいる自治体特有の規定がないかどうかをチェックしておくことも必要でしょう。
固定資産税の軽減特例
固定資産税の負担を考えるうえでは、税額を軽減してくれる特例の存在を知っておくことも重要です。土地に関しては、小規模住宅用地の軽減特例、建物については新築の場合の軽減特例を理解しておきましょう。
1.小規模住宅の軽減特例
人が住むための建物が建っている土地を宅地といいます。宅地は、人が生活するうえで欠かせない資産であるため、税負担が重すぎないように配慮がなされています。それが小規模宅地の軽減特例です。
小規模宅地とは、住宅1戸あたりにおける200平方メートル以下の敷地部分のことです。宅地面積が200平方メートルを超える場合は200平方メートルまでの部分は小規模宅地、超える部分については一般住宅地という扱いになります。
小規模宅地については、課税標準が6分の1に軽減される点が特徴です。課税標準が6分の1になれば、固定資産税も自動的に6分の1に軽減されます。
小規模宅地の軽減特例を受けられる対象は、自己の居住用の建物が建っている敷地に限らず賃貸アパートなども対象です。賃貸経営などの不動産投資をしている人については、知っておくべき特例といえます。ただし、空き家については注意が必要です。居住用の建物が建っている敷地でも、空き家である場合は対象外となります。
空き家の放置は、防犯や災害などの面で社会的な問題となっています。以前は小規模宅地の軽減特例の対象でしたが、法改正により適用除外となっていますので注意しましょう。
2.新築の場合の特例
一般的な家屋については、固定資産課税台帳の評価額に対して税率をかけて税額を求めることになっています。しかし、延べ床面積50平方メートル以上などの一定要件を満たす新築の建物については、一定期間、固定資産税が半額になる特例の適用が認められています。
軽減される期間は建物の種類によって異なり、3階建て以上の耐火・準耐火建築物については5年間、それ以外については3年間です。敷地の場合と同様に、賃貸マンションなどについても適用されます。
売却前に知っておきたい固定資産税の節税方法
固定資産税の負担が大きければ、不動産を売却することによって負担を軽減できます。特に、有効活用できていない土地や建物をただ保有しているだけの状態は固定資産税は資金の流出原因となりますので、避けた方がよいでしょう。しかし、不動産を売却する前に不動産に対する固定資産税の負担を軽減できる方法がないかどうかを確認しておくことも重要です。
節税方法を適用しても税負担が重いと感じる場合に売却の決断をするようにしましょう。
固定資産税を軽減する主な方法としては、2つあげられます。
1.更地に住宅を建設する予定がある場合
自己の居住用・賃貸アパートいずれも、住宅が建っている敷地に関しては一定の要件を満たすことによって小規模宅地の軽減特例を受けて固定資産税を6分の1に減らすことができます。しかし、1月1日時点で更地である場合は何もしないと軽減措置を受けられません。
事前に市町村に対して年の途中で住宅を建設する予定であることを通知しておけば、住宅用として取り扱われ軽減特例の適用を受けられます。
2.土地の利用方法に応じて分筆を検討する方法
固定資産税は、登記の単位である1筆ごとに評価されます。例えば、自宅と駐車場がまとめて1筆になっている場合、固定資産税の負担が過大になるケースがあります。
住宅が建っている側の土地の評価額基準となる道路の路線価が60万円で駐車場側の路線価が40万円の場合、60万円の路線価が付されている道路が全面道路であれば敷地全体に適用される路線価は60万円になり、それをベースの固定資産税が計算されます。
しかし、住宅部分と駐車場部分について分筆を行えば駐車場部分について40万円の路線価をベースにした固定資産税評価額となり、税負担を軽減できる場合があります。
売却前に固定資産税の仕組みを理解しよう
土地や建物などの不動産は、所有しているだけで毎年固定資産税の負担が発生します。
賃貸経営をしていれば固定資産税を家賃や地代に含めて回収でき税負担は問題になりません。また自宅として利用している場合も、必要なコストとして認識できるでしょう。宅地や新築住宅については固定資産税の負担を軽減できる特例もあります。
一方、更地のままにしてあるなど有効利用できていない状態では固定資産税の負担が大きくなり、売却を検討することになるでしょう。
売却を決断する場合は、固定資産税を軽減する方法がないかどうかを確認したうえで最終的な判断を行うことが大切です。