不動産情報を見ていて、特別用途地区という文字を目にすることはないでしょうか。特別用途地区とは、用途地域に関連しているものの扱いはやや異なる地区です。また、特定用途制限地域と混同しやすいので注意しましょう。
特別用途地区とはどのようなものか、さらに特定用途制限地域との違いについて解説していきます。
この記事の目次
特別用途地区とは?
特別用途地区とは、地方公共団体がその地域の特性に合わせて制限を強化したりまたは緩和したりできる地区のことを指します。
特別用途地区
「地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため、用途地域の指定を補完して定める地区」
■建築基準法第49条第1項
「建築物の制限又は禁止に関して必要な規定が、地方公共団体の条例で定められる」
■建築基準法第49条第1項
「建築物の制限又は禁止に関して必要な規定が、地方公共団体の条例で定められる」
特定用途制限区域とは?
特別用途地区と混同しやすいものに「特定用途制限区域」があります。
特定用途制限区域
のいずれかに指定される区域のこと
つまり、用途地域が定められていない土地の区域が対象
非線引き都市計画区域または準都市計画区域のいずれかにおいて、その区域の環境や利便性などを保持することを目的にしたもので、建設の制限がかけられた地区が特定用途制限区域になります。
制限されるのは
などです。
特別用途地区とは違い、特定の条件を持った施設の建設だけが制限されるという特徴を持っています。特定用途制限地域は、建築基準法第49条の2によって地方公共団体が建築物の用途を制限できる制度です。
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特別用途地域の特徴
特別用途地区の一番の特徴は、用途地域内に設定されるという点です。用途地域内の一定の地区に限定されるという点も、特定用途制限区域との大きな違いになります。それぞれの用途地域の目的をさらに強化したり、または緩和したりすることで土地利用の増進や環境の保護を図るというのが特徴です。
さらに、特別用途地区の設定に関してはそれぞれの地方公共団体が自由に行えるのも特徴と言えます。用途制限を緩和している例を見ていきましょう。
第二種低層住居専用地域内で別荘地等で特別用途地区を設定した地域では、ホテルや旅館のような宿泊施設の建設が可能になっています。もうひとつは、用途制限を強化したケースです。
第二種低層住居専用地域内の大学周辺の住宅地を特別用途地区に設定し、500平方メートルを超える店舗の建設が制限されています。これは、環境保護を目的としているケースです。
この2つのケースのように、用途地域の特性を活かしたり環境を保護したりすることを目的に、各地方公共団体が自由に制限を緩和または強化できるのが、特別用途地区の特徴です。特別用途地区内にある不動産を売却するには、強化や緩和によって生まれる快適さや利便性をアピールするといいでしょう。
特別用途区域の例
特別用途地区には11の例があります。国が定めているもので、それぞれに特徴が異なるので見ていきましょう。また、11例以外にも地方公共団体が独自に定めてもいいことになっています。
特別工業地区
特別工業地区には2つのタイプがあります。
ひとつは、工業地域・工業専用地域、そして準工業地域内の業種を制限する公害防止型です。そして、もうひとつに準工業地域と商業地域、住居系の用途地域において制限が緩和される地場産業保護型があります。
実際に設定している事例は、京都の第一種および第二種特別工業地区と、埼玉県川口市の特別工業地区です。京都の事例は制限型で、埼玉県の事例は緩和型になります。
文教地区
教育や研究、そして文化活動を優先した環境の維持向上を目的としています。研究機関や学校・文化施設などが集中する地域に設定されるのが特徴です。映画館やホテルなど宿泊施設のほか、風俗営業などの規制があります。
小売店舗地区
近隣商業地域のような、近隣住民に向けた日用品などを扱う店舗の多い地域が対象の地区です。専門店舗の保護や育成を目的にしています。ホテルやデパートの建設、さらに風俗営業が規制されます。
事務所地区
商業地域において、企業の事務所等の他、官公庁の集中した立地を保護する地区のことです。
厚生地区
病院や診療所をはじめとした医療機関や、保育所・託児所、さらに母子寮といった社会福祉等の環境保護を目的にした地区です。
娯楽・レクリェーション地区
商業地域と住宅地周辺において設定される2つのタイプがあります。
商業地域は、映画館や劇場、バーやキャバレーなどが集中する場所に設定する歓楽型です。住宅周辺は、ボーリング場やスケート場のような遊技場を対象としたもので、レクリェーション施設型とよばれます。
用途地域の緩和と強化は、それぞれの目的によって決められます。
観光地区
温泉地や観光地を中心に、景勝地などにも設定される地区です。主に観光設備の維持や整備を図ることを目的にしています。
特別業務地区
特別業務地区が設定されるのは、商業地域や準工業地が主です。商業地域の場合は、特に卸売店舗を中心にした高い卸売業務機能を備えている地区に設定されるもので、卸売業務型といいます。
準工業地域に設定されるのはトラックターミナルや倉庫といった流通関連施設に向けた、ターミナル・倉庫型です。準工業地域には、他にも幹線道路沿いにあるガソリンスタンドや自動車修理工場のための、沿道サービス型もあります。
中高層住居専用地区
大都市の都心部に設定される地区です。夜間人口が過疎化しやすい地域が対象で、一定地域にあるビルの中高層階の使用を住宅に制限します。これによって、住民の定住化と増加を図り夜間人口の過疎化を防ぐのが目的です。
商業専用地区
事務所や店舗などが集中する市街地において、それ以外の用途を規制する地区のことを指します。
規制によって、ショッピングセンターのような大型の商業施設や業務ビル・商業ビルなどの集約的な立地の保護をするのが目的です。横浜市のみなとみらい21や、千葉の幕張メッセなどが例にあげられます。
研究開発地区
研究開発に関連した工場や研究施設などを対象にした地区のことです。商品開発の研究を目的とした製造を主に請け負う工場や、商品開発に向けた研究所や施設などを集積することで、商品開発に関わる環境を保護したり利便性の増進を図ったりします。
特別用途地区を活用している例
市区町村によっては、特別用途地区を設定することで柔軟に用途地域を使い分けている地域も見られます。函館市がその一例です。
函館市では市内に特別工業地区と観光地区、レクレーション・スポーツ地区、特別業務地区、そして大規模集客施設制限地区の5種類の特別用途地区を設定しています。
特別工業地区では、土地利用の適正化と効率化が目的です。
第一種特別工業地区でいえば、地区内の住宅を事業所の管理人または従業員といった関連性のある層だけに限定し、それ以外の店舗や遊戯施設は建設できません。観光地区は、温泉地という地域性を活かした制限があります。
観光地区では、学校や工場などの建設が規制され観光地としての環境維持が実現されています。レクレーション・スポーツ地区は、土地利用の位置づけをはっきりさせることで、施設の利便化と都市機能を適正化するのが目的です。
特別業務地区では、流通団地での卸売市場や店舗に事務所などの流通業務を利便化し合理化が図られています。特別業務地区も特別工業地区同様、従業員など関連する層の住居以外の建物は建設に規制があります。大規模集客施設制限地区の目的は、まちのコンパクト化です。
準工業地域での大規模集客施設の建設を規制しています。大規模集客施設制限地区は、歩いて暮らせるまちづくりを推進した地区設定です。特別用途地区では、特定の利用に特化したい層に向けて不動産売却を考えていけば良い条件で売りやすくなるでしょう。
特別用途地区の注意点
特別用途地区は、用途地域のなかだけでしか設定されません。その地域の制限を強化するのか緩和するのかは、それぞれの地方公共団体が自由に決められることになっています。
地域による自由度がかなり高いこともあり国があげている11の例以外にも、地域に特化した独自の特別用途地区もあるので、不動産を売却する際には価値を下げてしまうような規制がないかどうか確認が必要です。
また、強化と緩和のいずれの場合の設定も自由という点ではどちらの特別用途地区として設定されているかを事前にチェックしましょう。思わぬ規制がかかっていることで、せっかくの不動産の価値が下がってしまうことがあるかもしれません。また、売却を検討している不動産が特別用途地区に設定されている地域にあるかどうかは、地方行政で確認しましょう。インターネットでも検索は可能です。
特別用途地区でも、強化か緩和ではできることは全く違ってきます。実際にどのような条件になっているのか不明な場合には、宅地建物取引士や不動産会社など専門家に相談してみましょう。
特別用途地区の良さを売却に反映させる
特別用途地区には、地域によってさまざまな制限があることで自由度が下がる場合もあります。しかし、その一方で逆に制限を活かすことも可能です。
たとえば、中高層住居専用地区のような規制は通常であれば飲食店や事務所などが集中しやすい場所でも住居として使うことができます。ビル全体または一部が住宅として扱われることで、夜間でも住居としての安心感を得られるかもしれません。
中高層住居専用地区で指定された用途地区に勤務先があるような場合は、通勤の面で考えてもさらに利便性が増します。また、商売を目的にする場合には関連事業が優先的に集中する環境なら、業務の円滑や業績のアップを期待できるでしょう。
景観を優先したい店舗なども、観光地区であれば規制によって守られることになります。特別用途地区が設定されている地域の不動産を売却するには、その地域の特性や規制を利用する売り方を考えましょう。
素人では難しい場合は、地元のことをよく知りアピールの得意な不動産会社に依頼することが望ましいでしょう。不動産売却査定サイト「イエイ」では、全国の地元に強い不動産会社との取引きがあるので一度利用してみてはいかがでしょうか。
不動産会社に相談すると価値がアップするような売却方法を発見できるかもしれません。