この記事で分かること ・抵当権を理解するのに役立つ基礎知識 ・抵当権と根抵当権の違いについて ・抵当権の設定や登記に必要な手続き |
不動産を購入する際によく聞く「抵当権」
その仕組みや意味をきちんと理解できているでしょうか?
この記事では、抵当権に関する基礎知識から、抵当権の設定方法や登記に必要な手続きについて解説しています。
また、抵当権と一緒によく聞かれる「根抵当権」との違いについても紹介していますので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
この記事の目次
抵当権を理解する前に知っておきたい基礎知識
ここでは、抵当権を理解する前に知っておきたい基礎知識について解説します。
ここで、ご紹介する内容を理解しておくと、よりスムーズに抵当権について理解する事ができるので、ぜひチェックしてくださいね。
【債権】
特定の人に特定の行為や給付を請求できる権利のこと
例えば
・貸したお金を返済してもらう
・労力の提供
・物の受け取りなど
【債務】
特定の人に対して行為・給付をしなければならない法的義務
例えば
・借りたお金の返済
・労働
・代金の支払いなど
【債権者】
債権を持つ権利者のこと。
住宅ローンは金融機関等が債権者となっている。
債務者の所有している資産(不動産)に抵当権を設定していることが多い。
【債務者】
借りたお金を返す義務のある者。
住宅ローンはお金を借りた金融機関等に対して債務(お金を返す義務)がある。
【債権保全】
債権者に対する債権を最終的に現金として確実に回収するための様々な方策のこと。
債権保全の方策として
・連帯保証人
・抵当権
・質権
・仮差押
・仮処分などがある
【担保権】
お金を貸した際に返済されないことを想定し、お金の代わりとなるものを回収する権利を確保するもの。不動産は担保として多用されており、住宅ローンの抵当権がもっとも多い。
担保権の種類と抵当権の位置づけ
担保権には物的担保と人的担保の2種類があります。
物的担保:特定の財産に設定する担保 人的担保:債務者以外の人の財産全体を回収の対象とする担保。「保証」とも呼ばれる |
物的担保はさらに4つの権利に分類されます。
担保権の種類 |
主な特徴 |
---|---|
抵当権 |
不動産等を担保にとり、債務者は目的物を使用可能 |
質権 |
動産・有価証券等を債権者が占有して担保とする |
留置権 |
他人の物の占有者が債権を有する場合に物を留置できる |
先取特権 |
債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利 |
この中で抵当権は、不動産取引における最も一般的な担保権です。
債務者が担保となる物件を引き続き使用できる点が最大の特徴となっています。
担保権には順位制度があり、複数の担保権が設定された場合は順位の早い権利が優先されます。
抵当権は通常、第一順位で設定されることが多く、債権回収の確実性が高いとされています。
不動産取引において抵当権が重視される理由は、土地や建物といった価値の安定した財産を担保にできる点です。
債務者の事業継続を可能にしながら債権者の保護も図れる、バランスの取れた制度として評価されています。
抵当権とは?順位や根抵当権との違いについて
上記でご紹介したとおり、抵当権とは、担保権のなかの物的担保の4つの権利の一つということになります。
抵当権の位置づけが分かったところで、ここでは抵当権の中身について詳しく解説していきます。
抵当権とは?
抵当権とは、借入れなどの債務を返済できない場合に、担保として設定された不動産を現金に換えて処分し、優先的に債権を回収できる法的権利です。
民法第369条に規定されており、債権者の債権保全を確実にする重要な制度として広く活用されています。
抵当権の大きな特徴は、担保となる不動産の所有権が債務者に残されたまま設定できる点です。
債務者は通常通り不動産を使用・収益することができ、事業や生活に支障をきたすことなく資金調達が可能です。
住宅ローンは抵当権の代表的な活用例です。
金融機関は購入する不動産に抵当権を設定することで、万が一返済ができない場合にも確実な債権回収が見込めます。
事業融資でも、会社所有の不動産を担保に運転資金を調達するケースが一般的です。
抵当権の主な活用場面 |
具体例 |
---|---|
個人向け |
住宅ローン、リフォームローン |
法人向け |
事業資金融資、設備投資資金 |
抵当権と優先順位の仕組み
抵当権には順位制度があります。
同一の不動産に複数の抵当権が設定された場合、その優先順位は原則として登記の前後関係によって決定されます。
先に登記された抵当権が優先的に債権を回収できる権利を持ちます。
順位 |
内容 |
債権回収の優先度 |
---|---|---|
第1順位 |
最も早く登記された抵当権 |
最優先で回収可能 |
第2順位 |
2番目に登記された抵当権 |
第1順位の次に回収 |
第3順位以降 |
3番目以降の抵当権 |
順次回収 |
当事者間の合意により同順位の抵当権を設定することも可能です。
この場合、担保不動産から得られる売却代金は、各抵当権者の債権額に応じて振り分けして配分されます。
また、抵当権の順位は、関係者の利益を害さない範囲内で、当事者の合意と登記により変更や譲渡が可能です。
ただし、他の権利者の利益を損なうような順位の変更は認められないため、実務上は慎重な判断が求められます。
根抵当権と一般の抵当権との違い
一般の抵当権 |
特定の債権のみを担保 債権額が確定している 1回限りの取引に適する |
---|---|
根抵当権 |
将来債権を含む不特定の債権を担保 極度額の範囲内で変動可能 継続的取引に適する |
根抵当権とは簡単にいうと、「あらかじめ決められた一定額の範囲内であれば、いつでも必要に応じて簡単に借り入れることができる制度」です。
民法上は根抵当権が設定された物件は「一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するために不動産上に設定される担保物権(民法398条の2)」と呼ばれます。
例えば、会社を経営しているとします。
銀行からお金を借りる必要ができたので、持っている土地を担保にお金を借りました。 そして経営が軌道に乗り、借りたお金を返しました。 しかし、またすぐにまとまったお金が必要になってしまいました。 |
このような時に抵当権の登記を毎回行うのは面倒ですし、費用もかかってしまいます。
そんな時に登場するのが根抵当権です。
担保となる土地に根抵当権を設定すれば必要な時にお金を借りれるのです。
もちろん極度額という上限がある点には注意が必要です。
極度額の上限とは?
極度額は根抵当権の担保となる不動産の価値によって決められます。
また、根抵当権の極度額を決定するときには複数の担保を設定することが可能です。
これは共同担保と呼ばれ、複数の担保を差し出すことで極度額を上げることができます。
具体例としては、自宅と不動産資産として所有しているマンションの2つを共同担保として設定する場合などです。
抵当権の設定や登記に必要な手続きと費用
抵当権の設定には、さまざまな書類の準備や手続きが必要です。
ここでは、抵当権の設定や必要な手続き、さらに司法書士への報酬費用などについて詳しく解説します。
抵当権設定に必要な書類
まずは基本的な必要書類をご確認ください。
必要書類 |
---|
・印鑑証明書(発行後3ヶ月以内) |
なお、印鑑証明書を取得するには1通300円 の手数料がかかります。
また、金融機関によって追加で必要となる書類は異なるため、事前に確認が必要です。
書類によっては、有効期限が設定されているものもあるので、 期限切れに注意して、計画的に取得しましょう。
【抵当権設定契約書とは?】
住宅ローンを借り入れる際に自己の不動産を担保にし、その返済が出来なくなった場合に、自己の不動産を処分し、返済に充てることを承諾した証明書。
抵当権設定契約書には、債権者と債務者の権利義務関係を明確にするための重要な記載事項が含まれています。
契約内容を正確に理解し、慎重に確認することが必要です。
以下の項目は、抵当権設定契約書で特に注意して確認すべき重要事項です。
・債務と担保物件(債務額や利息、遅延損害金の具体的な金額と計算方法)
・期限の利益喪失事由(債務不履行時の即時弁済義務など
・担保物件の処分・賃貸・用途変更などの制限事項
・抵当権の実行方法と費用負担に関する取り決め
・担保物件の所在地・地番・地目・面積などの物件特定事項
契約書の作成時は、専門家のアドバイスを受けながら内容を精査することをお勧めします。
不明な点があれば、必ず金融機関や司法書士に確認を取りましょう。
抵当権設定時の費用
抵当権設定には、登録免許税と司法書士報酬という2種類の主要な費用が発生します。
登録免許税は抵当権の債権額(課税標準額)の1000分の4(0.4%)です。
司法書士への依頼は任意ですが、手続きの正確性と効率性を考慮すると専門家への依頼をおすすめします。
司法書士への報酬は、平均「3〜10万円」が目安です。
債務額が多くなる程、費用も高くなります。
登記手続きの流れ
①住宅ローン契約の締結
(金銭消費賃借契約ともいう。借主と金融機関との間で締結)
②抵当権設定契約の締結
(①で結んだ契約を前提に、債権者と不動産所有者の間で、「不動産に対し抵当権を設定する」という契約を締結する)
③必要な書類の準備
④抵当権設定登記申請
(不動産の所在地を管轄する法務局で登記の申請を行う)
➄登記完了による書類の受け取る
(登記完了後に抵当権がきちんと設定された事を証明するために、登記事項証明書を取得し、抵当権者へ提出する)
申請から登記完了までは通常1~2週間程度を要します。
しかし、金融機関での審査状況や、法務局の混雑具合によって、この期間は前後する可能性があります。
特に注意が必要なのは、法務局での審査中に追加書類の提出を求められるケースです。
この場合、提出が遅れると手続き全体の遅延につながります。
登記完了証が発行されたら、抵当権設定契約書の内容と登記事項が正確に一致しているか、必ず確認してください。
もし不一致だった場合は、後日トラブルの原因となる可能性があります。
事前に必要書類を揃え、期限に余裕を持って手続きを進めることが重要です。
住宅ローン完済後の抵当権抹消手続き
住宅ローンを完済した後は、不動産に設定された抵当権を抹消する手続きが必要です。
金融機関への申請から必要書類の準備、法務局での登記まで、手続きの流れや費用、所要期間について詳しく解説します。
抹消手続きは司法書士に依頼するか自分で行うか選択でき、費用や期間は状況によって異なります。
手続きを確実に進めるためのポイントや注意事項もご紹介していきます。
抵当権抹消に必要な書類と手続きの進め方
抵当権抹消に必要な書類は下記の通りです。
必要書類 | 詳細 |
---|---|
抵当権抹消登記申請書 |
・法務局で抵当権抹消の手続き申請の際に必要 |
登記原因証明情報 | ・登記について、権利変動があったことを証明するための書類 ・住宅ローンを完済した際に、金融機関から送られてくる書類 ・抵当権解除証書とも言われる。 |
委任状 |
・抵当権保有者であった金融機関から、発行される抹消手続きのための委任状 |
登録識別情報通知または 抵当権設定契約書の原本 |
・住宅ローン契約時に、不動産会社から金融機関へ送付されていた書類 |
申請手順 |
金融機関へ申請→書類受領→法務局で登記申請 |
処理期間 |
金融機関での書類準備:1-2週間、法務局での登記:1-2週間程度 |
「抵当権抹消登記申請書」に関しては、自分で用意する必要があるので、スケジュールに余裕をもって準備しておきましょう。
また、抵当権抹消には、始めに金融機関で必要な書類を準備してもらわなければなりません。
書類の発行には、1〜2週間程度かかるので、こちらも余裕をもって依頼しておきましょう。
抹消登記の費用相場と具体的な内訳
抵当権の抹消登記にかかる費用は、登録免許税と司法書士報酬の2つが主な要素となります。
基本的な費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
費用項目 |
金額目安 |
---|---|
登録免許税 |
不動産の数×1,000円 |
司法書士報酬 |
1万円~2万円程度 |
司法書士に依頼する場合、一般的な報酬は1万~2万円程度です。
自分で手続きを行う場合は登録免許税の1,000円のみで済みますが、書類の不備があると再申請が必要となり、その都度手数料が発生するリスクがあります。
また登記申請書の作成や法務局での手続きに関してしっかり理解しておく必要もあります。
そのため、費用はかかりますが、書類作成から法務局での手続きまで一括して代行してもらえ、確実な処理をしてもらえる、司法書士へ依頼するのがおすすめです。
抹消手続きの注意すべきポイント
手続きを円滑に進めるために、以下の点に注意が必要です。
・住所や氏名の変更が必要な場合がある
引っ越しや結婚などで、登記簿に記載されている所有者や抵当権設定者の住所や氏名が代わっている場合は、抵当権抹消登記と一緒に、住所や氏名の変更が必要になります。
なお、住所に変更があった場合、住民票と住所変更登記申請書が必要です。
・書類の期限切れに注意する
金融機関から受け取る書類には、期限が設定されているものがあります。
万が一期限が切れてしまった場合は、再発行が必要となり、費用もかかってしまいます。
そのため、書類を受け取ったら、早めに手続きを行うようにしましょう。
(例:登記事項証明書は、発行から3ヶ月以内)
抵当権付き不動産売買の流れ
抵当権が付いた不動産の売買で注意したいのが、元の所有者のローンの支払いが滞った場合に、金融機関によって競売をかけられてしまう恐れがあることです。
そうなると、買主はせっかく購入した不動産を手放さなくてはならないので、そのような不動産を購入しようと考える人は、まずいないでしょう。
そのため、抵当権付き不動産を売却する場合、抵当権の抹消手続きを行うのが一般的です。
ここでは、抵当権付き不動産の売買について、流れや注意事項を解説していきます。
【ローン完済後の売却の場合】
①残りの住宅ローンを一括返済
②抵当権の抹消手続き
③通常の不動産売却と同じ流れで売却可能
資金に余裕がある場合は、残りの住宅ローンを完済し抵当権を抹消しましょう。
抵当権を抹消した後であれば、通常の売却を行うことが可能です。
ただし、住宅ローンの一括返済は、金融機関に手数料を支払うのが一般的です。
手数料は各金融機関で異なりますが、約3万〜5万円程度になるので、事前に手数料がいくらになるのか問い合わせておきましょう。
【売却代金でローンを完済する場合】
①売買契約締結
②不動産売買の決済
③売主は残りの住宅ローンの完済
⇅(平行して)
①売主は住宅ローンの抵当権抹消
②売主から買主へ所有権移転登記
③買主の住宅ローンの抵当権設定登記
抵当権付きの不動産を売却し、その代金で残りの住宅ローンを完済した後、抵当権を抹消することも可能です。
その場合は、不動産売買の決済と抵当権抹消登記、所有権移転登記を同じ日に行う必要があります。
これを「同時決済」といいます。
なお「同時決済」には
・不動産の売主、買主
・金融機関
・司法書士
が同時に集まり、すべての手続きを一斉に行います。
この方法は金融機関によっては認められないケースもあるので、事前に確認しておくことが大切です。
【任意売却の場合】
①金融機関に任意売却の許可をもらう
②任意売却の手続き、売却をスタートする
③売買契約成立、不動産売買の決済
④所有権の移転登記
金融機関と事前に話し合ったうえで、抵当権を抹消し、売却することもできます。
一般的に、住宅ローンの支払いができないと、不動産は競売にかけられてしまいます。
しかし、競売は通常の市場価格よりも、安くなることがほとんどで、不動産所有者や金融機関にとっては、マイナスな面が大きいのです。
そのため、事前に金融機関と話し合いを行い任意売却を行うこともできます。
ただし、そもそも任意売却を認めていない金融機関もあるので、こちらも事前に確認しておくことが大切です。
抵当権が残っている不動産の売買はプロに相談しよう
抵当権の設定には、色々な書類の準備や手続きが必要となります。
また、抵当権が残っている不動産を売買する際は、ローンの完済後の売却なのか、ローンが残っている状態での売却かによっても、売買の流れは異なります。
どれが適切な売買かは、その時の状況によって異なりますので、迷った際はプロに相談してみるのもおすすめです。
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