用途地域のひとつである近隣商業地域は、日々の生活でよくお世話になるエリアでもあります。用途地域の制限や特徴などを知れば、これまではただ過ごすだけだった近隣商業地域への理解が深まることでしょう。商業地域との比較をしながら、エリアの特徴をわかりやすく説明していきます。

商業系地域とは?近隣商業地域と商業地域の違い

近隣商業地域とは、都市計画法で定められた都市計画区域の用途地域のひとつです。用途地域とは、地域の用途を制限することで景観を統一したり、暮らしやすくしたりするための地域を指します。

用途地域は全部で13種類あり、そのなかで商業系地域は、近隣商業地域と商業地域の2種類に分かれます。

利便性のいい近隣商業地域

  • 近隣商業地域・・・近隣の住民が日用品や食料品を購入できるように、店舗の利便性を高めるための地域です。駅前や大きな道路周辺、電車が通っている周辺に商店街や商業施設があれば、近隣商業地域に指定されている確率が高いでしょう。
概要






交通の便が良い場所にある場合が多く、小規模な店舗が立ち並ぶ商店街や大型ショッピングモールなどの商業施設で賑わう

近隣には様々な形態の住居があるのが特徴

戸建て住宅共同住宅寄宿舎などの建物住居兼店舗も可能
ただ、住宅部分と店舗部分は用途別に扱われる

・店舗や事務所、ホテルや旅館
・パチンコ屋・カラオケボックス・ボーリング場・スケート場などの娯楽施設もOK
・客席が200平方メートル未満であればミニシアターも建設できる
・公衆浴場・病院・老人・ホーム
・小学校や中学校などの学校施設
・環境悪化の心配がない工場施設など

風俗関連の商業施設、危険度の高い工場はNG
  • 商業地域・・・名前の通り、商業の利便性を測るための地域です
概要

駅前や都心部に指定されているケースが多く、駅と直結しているタワーマンションや高層マンションのほか、住居はほぼ見られない
商業地域では百貨店やデパート、ブランドショップなどが立ち並ぶ繁華街になっている
建ぺい率80%以上は不可となっているが、容積率は最高1,300%まで許可されているので、高層ビルも建てられる
風俗関連も含めたあらゆる商業施設が建設できる

近隣商業地域と準住居地域と似ている?

建物の用途だけを見ていると、準住居地域と似ており、何が違うのかわからない人もいるのではないでしょうか。

準住居地域でOKな建物も、近隣商業地域とほぼ同じです。ただ、準住居地域はあくまでも住居の環境を保護するための地域で、近隣商業地域は商業に特化した地域です。

両方とも幹線道路沿いにあるケースがあるので混同しがちですが、準住居地域は自動車関連施設などの立地と住居環境の調和を保護する名目で作られました。

実際の街並みを見比べてみると、近隣商業地域はパッと見ただけで明らかにお店が多いことがわかります。準住居地域はいろいろな建物は建っているものの、これといって何かひとつ突出して目立つものがあるわけではありません。

近隣商業地域の用途制限とは?

近隣商業地域の用途制限の概要

近隣商業地域の用途制限概要



60%・80%



100・150・200・300・400・500%
※容積率が低いため、高層ビルや高層マンションなどは建てられない






勾配・・・1.5
適用距離・・・20・25・30・35・40・45・50メートル




建物の高さが10メートルを超えたら、適用。
※急勾配屋根で高さのある2階建てや、2階建て以上の住居、店舗は日影規制の対象になる。






近隣商業地域内では適用にならないケースもある。
住居地域でも、低層住居しかない第一種、第二種低層住居専用地域では採光や通風が十分に取れているため、規制がかからない。

利便性が良い!近隣商業地域のメリットとデメリット

近隣商業地域のメリットは、とにかく利便性の良さにつきます。食料品や日用品、消耗品、雑貨に至るまで、生活に必要なものはほぼ近隣商業地域内で手に入ります。飲食店も、カフェ、レストラン、お惣菜屋、パン屋、居酒屋など、さまざまなジャンルのお店が揃っています。

もちろん、近隣商業地域の商業エリアが栄えていればの話ですが、通常は便利に過ごせるケースが多いです。

また、店舗が多いので、それにともなう雇用も生まれやすいでしょう。アルバイトやパートとして家の近所で少しだけ働くには非常に都合が良いのではないでしょうか。

一方で、個人商店の場合は閉店時間が早いのが難点だと感じる人もいるかもしれません。大型ショッピングモールでも、21時、22時くらいに閉店になる店舗が多いです。商業エリアは、営業中は非常に賑やかな反面、閉店後は一気に人が減るので、24時間営業のコンビニエンスストアやファミリーレストランに慣れている人には、物足りなく感じることもあるでしょう。

利便性はいいけれどそれ故の問題も。。。

ファミリー世帯にとっては、利便性の良さは大きなメリットになるものの、商業エリア特有の騒がしさは子供の情操教育上、不安に思うのではないでしょうか。カラオケやボーリング場などの娯楽施設も豊富ですので、子どもにとっては少々誘惑の多い地域と言えます。

近隣商業地域は、利便性の良い地域で暮らしたい、周辺環境が騒がしくても気にならない、という人に向いています。人の往来が多い地域ですから、近隣住民とのコミュニケーションも頻繁になる可能性が高いです。あまり人と関わるのが好きではない人も、近隣商業地域はわずらわしく感じるのではないでしょうか。

生活するには便利な場所ですが、人それぞれ相性があります。もし、近隣商業地域での生活を考えているなら、実際に生活している様子を想像してみると良いでしょう。

土地の用途地域を確認するには?

用途地域はそれぞれの用途がはっきり分かれているとはいえ、一見するとどの用途地域なのかわからないケースがあります。用途地域は市区町村とは関係なく区切られており、別々の用途地域が隣り合って入り組んでいるエリアも存在しています。

そのようなときに問題になるのが、不動産売却を検討しているときでしょう。不動産の価格は周辺環境によっても影響を受けるので、不動産の周辺環境は非常に重要です。

たとえば、第一種低層住居専用地域のすぐそばに近隣商業地域や準工業地域が指定されているなど、住居系地域のそばに商業系、工業系がある場合は注意が必要です。

近隣商業地域と住居系地域が近い位置にあった場合、日照条件や通風、閑静など住居環境が良い不動産でも、道路を隔てたすぐそばに娯楽施設ができて住居環境が悪化するケースがあります。

物件を探している買い主があまり知識のない人であれば、気づかずに購入してもらえるかもしれません。しかし、買主側の仲介業者がしっかりしていて用途地域について警戒しているようだと、なかなか買い手がつかない可能性もあります。

買い手が用途地域について知っておくのはもちろんですが、売り手側も売り出し期間を短くするために、所有不動産と周辺の用途地域については、調べておくようにしましょう。

用途地域を確認するには、自治体の都市計画課で都市計画図を見ればOKです。インターネットで公開している自治体もあるので、一度検索をかけてみましょう。近隣周辺を実際に見て回るのも良いでしょう。

近隣に更地になったままの空き地がある、居住者のいない集合住宅やお屋敷があるなどの場合は、将来的に別の建物が建つ可能性がありますので要注意です。

不動産売買では重要事項説明で用途地域の詳細がわかる

土地の所有で注意が必要なのは、どの用途地域であっても住居専用ではない点です。それは、第一種低層住居専用地域であっても変わりません。厳しく規制があるとはいえ、ある日突然、自分の家の隣に店舗が建って、これまでは快適だった住環境が脅かされるおそれがあります。

住居系地域の近くに位置する近隣商業地域の場合は、住居系地域から疎まれる可能性もあるので、無用なトラブルを防ぐために用途地域について知っておいても損はないでしょう。

もし、不動産売却を考えている人がいたら売買契約を結ぶ前にぜひ、用途地域について勉強してみましょう。用途地域についてすべてを覚えなくても、知識として頭に入れておくだけでOKです。不動産売買契約を結ぶときは、不動産業者から重要事項説明があります。

不動産に関する情報を宅地建物取引士が重要事項説明の書面をもとにすべて説明してくれます。用途地域についても話があるので、しっかり聞くようにしましょう。

地域との相性は人それぞれ!土地売買はよく検討して

 用途地域のなかでも近隣商業地域の利便性の高さはトップクラスです。しかし、人によっては必ずしも使い勝手の良い地域とは限りません。大切なのは、自分に合っている地域はどこなのかということです。

近隣商業地域はマンションも多く、県道や国道沿いに立地していることも珍しくありません。人の往来や交通量の多さから、近隣商業地域を躊躇する人も出てきます。もし、近隣商業地域の宅地売却を考えている人がいたら、買い主側の心理を把握するために、近隣商業地域の特徴やメリット・デメリットについて、しっかり勉強しておきましょう。そして売却の際には、頼れる不動産会社に任せましょう。

不動産売却査定サイト「イエイ」では、優良な不動産会社1000社以上との取引があるので自身との相性が合う不動産会社を見つけやすいのでおすすめです。比較査定はもちろん大事なことではありますが、不動産売買に重要なのはそれだけではありません。

信頼できる不動産業者選びをしっかりおこない、如何に賢く確実に売却できるのかも重要なことといえるでしょう。