不動産売買には、ときとして専門的な知識が求められます。もしも知識が不足しているまま売買に挑んだら、トラブルを起こしてしまうリスクもあるかもしれません。考えられるトラブルを予測し、対策を練っておきましょう。ここでは、不動産売買でよくあるトラブルを紹介していきます。
この記事の目次
仲介手数料に関するトラブル例と対処法
「仲介手数料以外の料金を請求された」「法定仲介手数料に準じない料金設定をされた」などのトラブルに遭遇しても、知識がない人は業者の言葉どおりに支払ってしまいかねません。しかし、原則としてコンサルタント手数料、売却のための広告宣伝費など、仲介手数料以外の手数料は請求できないルールがあります。ただし、契約書に手数料以外の記載があるなら、支払わなければならないケースも出てくるので注意しましょう。
宅地建物取引業法違反の可能性も考慮し、都道府県の不動産会社を管轄する部署に相談してみるのが無難です。また、契約前に契約書の内容もしっかりと把握しておきましょう。
さらに、「業者の決める仲介手数料の上限が法定仲介手数料だ」として、法外な手数料を請求してくる業者もいます。しかし、法律で決まっているのは「売買価格×3パーセント+6万3000円」を上限とするルールです。誤った認識なのか、故意に誤った情報を伝えているのかは分かりませんが、どちらにしても不動産仲介会社として信用できません。ほかの会社を当たってみましょう。
媒介契約に関するトラブル例と対処法
媒介契約の自動更新についても多くのトラブルがあります。一度契約した業者に勝手に更新されてしまい、不必要な契約料を求められるケースです。
専属専任媒介契約、専任媒介契約の有効期間は3カ月以内と決まっています。一般媒介契約は法令上の制限こそないものの、行政指導では3カ月以内とされています。契約の自動更新は認められず、依頼者の申し出によってのみ更新可能です。業者に自動更新されたら契約書に自動更新の規定があるかを確認して、都道府県の所轄部署に相談をしましょう。また、媒介契約打ち切り後に仲介手数料を請求してくる業者もいます。
しかし、媒介契約の有効期限が過ぎて契約打ち切りになったら、不動産仲介会社は仲介手数料を請求できません。手数料はまったく払う必要がないでしょう。仲介手数料はあくまで「仲介を成功させた場合の成功報酬」です。仕事を依頼しただけでは手数料が発生しません。請求はしっかり断って、今後その会社とは縁を切った方が賢明です。
不動産購入時のトラブル例と対処法
不動産売却だけでなく、購入時にもトラブルの種はたくさんあります。たとえば、「ローン特約」については詳しく覚えておきたいところです。
住宅ローンが下りず売買契約違反になりかけたとき、ローン特約が利用できます。売主と売買契約を結んだにも関わらず、住宅ローンが下りなかったら、結果として売買契約違反になってしまうときがあります。売主から「違約金を払え」などと要求されて、困る人は多いでしょう。そんなとき、ローン特約によって売買契約は解除可能です。売買契約の際は必ずローン特約がついているか確認しましょう。
住宅ローンが下りるかどうか確証がないときには、ローン特約付きの物件に限定して探した方が無難です。ローン特約ではローン審査のほか、「ローンの額」「ローンを組む金融機関」などの設定を盛り込むことができます。また、売主から「せめて手付金は払ってもらう」と主張されても、ローン特約によって手付金まで返還できることもあります。
瑕疵担保責任のトラブル例と対処法
瑕疵担保責任を隠して不動産売買を行うと、トラブルに巻き込まれるリスクがあります。瑕疵担保責任とは、不動産売却後の物件に瑕疵があった場合、売主が賠償を負う取り決めです。売買契約では瑕疵担保責任の期間を限定するのが一般的です。
たとえば、期間を「1年」と定めた場合、買主が1年経ってから瑕疵に気づいたとしても、売主は補償する義務が失効しています。そのため、わざと瑕疵を黙ったまま物件を売ったり、瑕疵担保責任そのものを教えないまま買主を探したりする売主もいるのです。
しかし、売主が故意に瑕疵を買主に告げなかったと発覚すれば、限定期間がすぎても賠償請求をされてしまいます。それどころか、「瑕疵担保責任を隠す売主」としての評判が広まってしまい、今後の不動産売買に悪影響を及ぼしかねません。
売主による瑕疵隠しは、あとで買主との間にトラブルを招きがちです。絶対にやめておきましょう。
無用なトラブルを防ぐなら書類はよく読む
売買契約についてはさまざまなルールがあり、基本的に法律で認められていない契約内容が見つかったら、売主は買主に従う必要はありません。法律に基づいて契約内容を変更してもらう権利があります。
ただし、法律で明確に定められていないグレーの部分や、あくまでも行政指導によって「こうした方が良い」とされている程度の部分については、売主の拡大解釈で都合よく書き換えられます。そのため、「契約は公正に行われているに違いない」と買主が売主を信用しすぎると後で痛い目を見がちです。無用なトラブルを防ぐために、契約関連の書類は目を通すようにしましょう。
特に、売買契約書と重要事項説明書は確認が必須です。
契約や物件に関する取り決めが事細かに書いてあるので、契約を交わす前と交わしたあとにじっくり読みましょう。交渉の場で売主から間違ったことを言われても否定できますし、勘違いによるトラブルも防げます。不利な契約でも一度交わしてしまうと「内容を承諾した」と捉えられるので注意しましょう。
トラブル事例を調べるなら?
未然防止や早期解決のサイト
不動産売買で不安があるなら、過去のトラブル事例を調べてみましょう。よくあるトラブルを未然に防げるだけでなく、悪徳業者を知るきっかけにもあります。おすすめなのは、「不動産トラブル事例データベース」を使った調査です。
トラブルの未然防止や早期解決のために開設された機関であり、不動産に関するトラブル事例が満載です。また、「公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター」にもトラブルの相談事例が掲載されています。住宅の取得やリフォームのトラブルに関してのトラブルを中心に学べるでしょう。
事例を調べるなら「どんなことが起こったか」だけではなく、「何が原因だったのか」「どうやって解決したのか」まで読み込むのが賢明です。トラブルの原因が分かれば、自分の不動産売買にも役立てられます。トラブルの解決策を把握しておくと、万が一トラブルに遭遇してもあわてずに対処できます。不動産売買のトラブルには似た傾向や対策があるので、知識量は多い方が交渉の場で有利です。
不動産トラブル事例データベース/国土交通省
http://www.retio.or.jp/trouble/index.html
まとめ
どんなに気をつけていても、不動産売買でトラブルに遭遇してしまう可能性は消えません。悪徳業者は巧妙に手口を変えながらターゲットを探し続けているからです。また、不動産に関する法律は複雑なうえ改正も多いので、取引に慣れていない人は内容をしっかり把握していないこともあります。
意図していないにもかかわらず、取引相手から間違いを指摘されていさかいに発展するケースも起こりえるでしょう。
不動産売買のトラブルを起こしてしまったら、まずは落ち着いて契約書を確認します。契約書にない内容を請求されても原則として従う必要がありません。契約書そのものが間違っていたり、先方が納得しなかったりするようであれば、しかるべき場所に相談するのが得策です。
もしも自分が誤って「トラブルを招く立場」になったとしても、過去の事例をもとにして専門機関に相談すれば円満な解決方法を探れるでしょう。