不動産取引は非常に大きなお金の動く取引であり、またその取引においては、売り主・買い主共に法律に沿った手続きを行わなくてはなりません。
特に売り主は不動産売却するにあたって、様々な書類を作成・準備する必要があります。
ここでは、それらの書類について解説します。
この記事の目次
不動産を売却するにあたって必要な書類
不動産売却をするにあたっては、いくつか書類を準備する必要があります。
どの様な不動産を売却するかによっても、必要な書類が異なるため、何を準備すればいいか分からないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、一戸建て、マンション、土地でそれぞれ必要な書類をご紹介します。
不動産売却における必要書類リストと取得方法
土地 | 一戸建て | マンション | 取得方法 | |
---|---|---|---|---|
登記済証(権利証) または登記識別情報 |
必要 | 必要 | 必要 | 不動産購入時に不動産会社から受け取っている |
確認申請書、確認済証 検査済証 |
不可 | 必要 | 不可 | |
物件の間取図・測量図 | 不可 | 必要 | 必要 | |
固定資産税、 都市計画税納税通知書の写し |
必要 | 必要 | 必要 | 納付用紙が4月~6月の間に自宅に届く |
実印・印鑑証明書 | 必要 | 必要 | 必要 | 住んでいる市区町村の役所 |
固定資産評価証明書 | 必要 | 必要 | 必要 | |
住民票 | 必要 | 必要 | 必要 | |
本人確認書類 | 必要 | 必要 | 必要 | 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど |
土地測量図・境界確認書 | 必要 | 必要 | 不可 | 法務局 |
抵当権抹消書類 | 必要 | 必要 | 必要な場合のみ | 銀行 |
耐震診断報告、 アスベスト使用調査報告書 |
不可 | 必要な場合のみ | 必要な場合のみ | 手元にあるか、紛失した場合は診断・調査実施した会社へ依頼 |
買主に引き渡す書類(管理規約やパンフレットなど) | 不可 | 不可 | 必要 | 不動産購入時に不動産会社から受け取っている |
これらが一般的な必要書類です。ただし、不動産の種類・売り主の状態などによって異なってきますので、全てが必須というわけでございません。
不動産売却における必要な書類の概要
ここからは、上記でご紹介したそれぞれの必要書類の詳細をご紹介していきます。
1登記済証(権利証)または登記識別情報
よく「権利証」と呼ばれるもので、正確には登記済権利証と呼びます。
これは、法務局から登記名義人(不動産を取得した人)に対して交付される書類で、登記名義人がその不動産の真正な所有者であることを証明するものです。
これがなければ不動産売買は決して成立しないので、最重要書類と言ってもよいでしょう。不動産を売却し、その代金を受け取る際に、この登記済権利証について所有権を移転することになります。
2確認申告書、確認済証、検査済証
確認申告書は、新築時に、確認申請を行った書類です。この確認申請が通った時の書類が確認済証です。
また、検査済証とは、建物が完成し、建主がその状態で建物を引き渡しても問題が無いか検査をしたという証明書になります。
これらの書類は、引き渡し時に買主へ引き渡す書類となります。
3物件の間取り図・測量図
物件の構造や広さの情報が記載されているのが、間取り図や測量図です。
この間取り図や測量図があることで、物件のイメージもわきやすく、よりスムーズに売却する事も可能となるでしょう。
基本的には、物件購入時にもらう書類ですが、万が一紛失している場合は、法務局に登録してあるので、申請すれば、いつでも取得可能です。
4固定資産税、都市計画税納税通知書の写し
固定資産税には、固定資産税の納税額や評価額が記載されています。
一方で、都市計画税とは、都市計画事業や、土地区画事業の費用に充てる事を目的にした市町村税の事です。
どちらも、売主と買主の間でこれらの税金を精算するために必要となる書類です。
固定資産税や都市計画税は、1月1日時点でその不動産を所有する者に、その年の4月〜翌年3月までの年度を納税する必要があります。
納付用紙は4月~6月の間に到着するので、最新のものを保管しておくようにしましょう。
5実印・印鑑証明書
不動産売買の契約は、売主と買主が不動産売買契約書へ署名捺印をすることによって行います。
不動産売買契約書への捺印は実印で行わなければなりません。
したがって、実印を用意する必要があります。
また印鑑証明書は、売買によって登記申請を行う際に必要な書類となります。
印鑑証明書とは、その印鑑が「本人が登録した印鑑である」ということを証明した書類のことです。
注意点は、印鑑証明書の有効期間が3ヶ月しかないという点です。必ず3ヶ月以内に発行されたものを用意するようにしましょう。
6固定資産評価証明書
不動産を所有していると固定資産税という税金を払わなくてはなりません。
固定資産税評価証明書は、この固定資産税の確認をするために必要となる書類です。
また、不動産の登記を行う際にかかる税金、「登録免許税」の計算において必要となる課税標準額を確認するためにも必要です。
7住民票
万が一登記上の住所と売り主の現住所が異なる場合、住民票が必要になります。
住民票の有効期間は3ヶ月なので、必ず3ヶ月以内に発行されたものを用意しましょう。
8本人確認書類
本人を確認するために必要な書類です。
運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどを準備しておきましょう。
9土地測量図・境界確認書
一戸建てや土地の売買において必要となります。
簡単に言えば「どの部分を売却するか」ということを明確にするための書類で、買い主が購入後に周囲のトラブルに巻き込まれないようにするためのものと言えます。
そのため、境界がはっきりしていない場合は、その不動産に隣接した土地所有者全ての了解を得た測量図を作成することになるのです。
10抵当権抹消書類
住宅ローンを既に完済している方は、事前に抵当権の抹消手続きを行っておきましょう。
また、住宅ローンがまだ残っている場合でも、引き渡しと同時に抵当権の抹消手続きを行う事が可能です。
抵当権の抹消登録は義務ではありませんし、抵当権が残ったままでも売却する事は可能です。
しかし、仮にローンが残っている状態で、抵当権を残したまま売却した場合、売主の方が、残りのローンを停滞してしまうと、せっかく売った物件が競売にかけられてしまい、買主のとっては家を失うリスクになります。
後々のトラブルを防ぐためにも、抵当権の抹消登録はしておきましょう。
抵当権の抹消を行うには、自分で行うか、司法書士に依頼する2つの方法があります。
抵当権とは?
不動産を購入する時には、たいていの方が金融機関からローンを組んで購入すると思います。
このローンを組む際に、土地や建物を金融期間に担保として出すことで、お金を借りる事が出来ます。
万が一、ローンの返済が滞った場合には、金融機関は担保になっている土地や、建物を売る事で、優先して弁済を受ける事が出来るのです。
11耐震診断報告書、アスベスト使用調査済報告書
近年、大きな地震が相次いで起こっているということもあり、建物の耐震性については強い注目が集まっています。
もし売買する不動産が古く、新しい耐震基準が導入する前に建築された場合、この書類が求められるケースがあります。
また、アスベスト使用済調査報告書では、建物に使用している建材に石綿が含まれているかどうかの調査結果を提示する事ができます。
どちらも、なければ売買できないというものではありませんが、やはり後のトラブルを避けるためにも、必要な書類になってくると考えるべきでしょう。
12買主に引き渡す書類
マンションなどの場合は、物件を購入時のパンフレットや規約・説明書は売却する際に買主に引き渡しましょう。
不動産売却の必要書類の入手方法
不動産売却の際には、色々な書類が必要という事をここまで紹介してきました。
ではその書類はどの様に準備したらいいのでしょうか。
ここでは、それぞれの書類の入手方法について、ご紹介していきます。
不動産購入時に手元にある書類
- 登記済証
- 物件の間取り図
- 確認申請書、確認済証、検査済所
- 管理規約やパンフレット(マンション)
これらは、不動産を購入した際に、不動産会社から受け取っている書類になります。
その為、新しく入手する必要はありません。
万が一紛失してしまっている場合は、速めに不動産会社へ再発行を依頼しておきましょう。
役所で発行する書類
- 印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 住民票
これらの書類はお住いの市区町村の役所で取得する事が可能です。
また、取得の際は300〜400円ほどかかるので、事前に準備しておきましょう。
その他
- 土地測量図・境界確認書
土地の測量図に関しては、法務局に出向けば誰でも調べる事が可能です。登記情報の確認に特別な資格は必要なく、すべての人へ情報が開示されています。
また、境界確認書は、測量士に専門の調査を依頼する事も可能です。
- 抵当権抹消書類
抵当権の抹消に必要な書類は銀行が所有しているため、銀行に連絡を取り必要な書類を送ってもらいましょう。
不動産売買契約の流れを確認しておこう!
不動産売買は手続きが複雑で、法律や税務に関する知識も要求されます。
したがって、不動産を売却する際、不動産会社へ仲介を依頼するのが一般的です。
ここでは、不動産会社へ仲介を依頼してから売買契約に至るまでの流れをご紹介していきます。
不動産売却の流れ
- 不動産会社へ仲介を依頼
- 不動産会社が販売活動を開始
- 買主が不動産会社へ購入の申し込みを行う
- 売主と買主は売却条件を詰めていく
- 不動産売買契約日時を設定する
- 売主と買主で不動産売買の契約を締結
- 買主は売主へ手付金を支払う
- 契約締結後1ヶ月程度後に残代金の決済を行う
- 物件の所有権が売主から買主へ移転する
売主が不動産会社へ売却手続きを依頼した後、不動産会社は販売活動を開始し、買主を探します。
売却物件を購入したい人が現れて、不動産会社へ購入の申込を行った後、売主は買主と売却条件を詰めていくのです。
売主と買主の間で、お互い納得いく売却条件が決定した場合、不動産売買の契約日時を設定します。
不動産売買の契約をする前に、不動産会社は買主へ重要事項の説明を行わなければなりません。物件の内容を把握しないまま、不動産売買の契約をしてしまうと買主は大きな損害を被ってしまう可能性があるからです。
実務上では、契約当日、不動産売買の契約を締結する前に宅地建物取引士が買主に対して重要事項の説明を行います。
その後、売主と買主で不動産売買の契約を締結し、買主は売主へ手付金を支払うのです。
そして、契約を締結してから、1カ月程度後に残代金の決済を行います。このときに物件の所有権が売主から買主に移転することになるのです。
残代金の決済当日、売主は物件の引渡しを行うと同時に買主から残代金を受領します。
関連記事:不動産売却の流れとは?売買契約の手順や査定前のポイントを解説!
住宅の履歴が分かる!その他にもあるといい書類
不動産売却の仲介手続きを依頼すると、不動産会社から物件に関す書類の準備を指示されます。
しかし、不動産会社から指示された以外にも物件に関する書類があれば、準備しておきましょう。
例えば、地盤調査報告書、住宅性能評価書、既存住宅性能評価書の3つです。
地盤調査報告書があると敷地の地盤の状態がわかります。
また、住宅性能評価書、既存住宅性能評価書からは、建物の構造に関する性能を客観的に把握できるのです。
これらの書類を見ると住宅の履歴がわかるので、事前に準備しておくと買主との契約に結び付きやすくなるでしょう。
不動産売却にあたってよくある質問
ここからは、不動産売却にあたってよくある質問をまとめてみました。
ぜひ参考にしてみてください。
不動産売却の必要書類の名義が旧姓の場合どうすればいいのか?
結婚などによって必要書類の名義が変わった場合、氏名変更の登記申請を行う必要があります。
この申請は、法務局などで行う事が出来ます。
参照:東京法務局
不動産売却後確定申告したい必要な書類は?
不動産売却後の確定申告で必要な書類は主に下記の通りです。
- 確定申告書B様式(第一表)
税務署や市役所などで入手可能。
- 確定申告書第三表(分離課税用)
税務署や市役所で入手可能。不動産所得を記入する用紙。
- 本人確認書類
マイナンバーの記載と、免許書、保険証、住民票などの提示や写しの添付
※インターネット(e-Tax)による申告では必要なし
- 譲渡所得の内訳書
不動産売却後に国税庁から郵送される書類
土地や建物の売却による譲渡所得金額の詳細を記載する。
- 登記事項証明書
不動産の所有者や担保などの登記記録が記載されている書類。法務局で入手可能。
- 領収書の写し(取得費用が確認できるもの)
不動産売却の際にかかった譲渡費用が確認できるもの
仲介手数料や印紙税、登記免許税、解体費用などの写し
- 領収書の写し(譲渡費用が確認出来るもの)
譲渡費用を計上すれば、課税額を抑えることが可能なため、不動産売却時の際にかかった譲渡費用が確認出来る領収書も準備しておきましょう。
こちらも、仲介手数料や印紙税、登記免許税、解体費用などの写しとなります。
- 不動産購入時、売却時の売買契約書の写し
購入時の売買契約書の写しは、確定申告時の課税の増額を抑えるため、
売却時の売買契約書の写しは、確定申告の際と土地や建物を売却した価格を証明するために必要となる。
- 源泉徴収票
源泉徴収票は提出する必要はありませんが、申告書に記入する金額を確認するため、必要となります。
不動産を売却するにあたって司法書士に依頼する場合費用はどのくらいか?
売主が司法書士に依頼する場合、
- 抵当権抹消登記
- 登記名義人住所、氏名変更登記
などが主な依頼内容となります。
抵当権抹消登記の場合、
- 司法書士への報酬1~3万程度
- 登記免許税 4,000円
- その他実費
が主に必要となります。
※登記免許税は1筆あたり1,000円で一般的に建物と土地で2筆必要です。
不動産の名義が両親のままで、所有権が売主でない場合、所有権を移す必要があります。
その際の必要な手続きが、登記名義人住所・氏名変更登記になります。
司法書士へ依頼する場合、相場は11〜19万円ほどになります。
相続した不動産、名義が変わっていなくても売却は可能なのか?
名義が変わっていない場合の不動産の売却は不可です。
名義人が既に亡くなっている方の場合、遺言書がなければ、遺産分割協議書を作成し、相続登記する必要があります。
必要書類の準備を徹底して!依頼や契約をスムーズに
不動産を売却する際、売主の身分や物件の所有者を確認するための書類が必要です。
また、建物が売却の対象となる場合、建物に関する書類も求められます。さらに、不動産の売却を依頼するときと契約をするときの必要書類も違うのです。
そのため、書類の種別や売買の時期ごとに場合分けしながら、必要書類を把握しておくことが大切です。
それにより必要書類をスムーズに準備でき、不動産の売却を依頼するときや契約するときに困ることもなくなるでしょう。