不動産を売却したら、確定申告をする必要があります。確定申告をして利益が出ていれば所得になり、税金が発生します。簡単に言うと、これが譲渡所得税です。
税金は少しでも支払いを少なくしたいものです。しかし、大切なのは支払う税金を少なくすることを考えるのではなく、総合的に最後に残るお金を最大にするのがゴールのはずです。そのためには、この税金の仕組みをよく知る必要があるので詳しく説明していきます。
この記事の目次
そもそも譲渡所得とは何か
簡単に言うと、資産の譲渡による所得です。
譲渡とは、辞書によると「権利、財産、地位などを他人に譲り渡すこと」とあります。これは、有償無償どちらでも構いません。本題の不動産の話に戻すと、所有している不動産(土地や建物)を売却することを譲渡、そして、譲渡によって得た所得を譲渡所得と言います。
譲渡所得には、譲渡資産の種類によって、分離課税と総合課税に対象が分けられます。
一般的に、所有されている不動産の売却によってかかる税金は、分離課税に分類されます。(分離課税とは、譲渡所得による税額を、給与所得などとは区別して、租税特別措置法に定められた税率で計算すること。
毎年年末に会社からもらう源泉徴収票で説明するとわかりやすいでしょう。源泉徴収票には一年間の給与収入に関する税金などが計算されます。その給与所得とは別に計算するのが分離課税です。)
譲渡所得の計算
譲渡所得の計算は下記の通りです。
しかし、売却における税金については単純に上記の式に当てはめるだけでは、答えが出ないことが多いのです。なぜならば、上記の式にある単語を理解しその材料を集めなければならないからです。
単語をひとつひとつ説明すると、
収入金額
取得費
※但し、建物の取得費は、購入代金から減価償却費相当額を差し引いた額売却金額-購入金額ではないので注意が必要
譲渡費用
特別控除額
これには、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ることと言う条件がある。
例えば、マンションから戸建てに住み替えようとしているAさんがいました。土地を購入して注文で戸建てを建てたいと考えていました。間もなく、マンションは売却できて、譲渡所得の計算をすると、税額が50万円ほどとなりました。
特別控除額を使えば、もちろん税金は免除されます。しかし、住み替え先の戸建てで、住宅ローン控除を使いたいと考えたAさん。住宅ローン控除を使う場合、特別控除額を利用することはできません。
住宅ローン控除を使う場合の条件にあてはまるのです。Aさんは住宅ローン控除の額を比較してどちらが得するか計算し、住宅ローン控除を選択しました。注意をしていただきたいのは、取得費です。
マンションなどを購入した時の金額ですが、その購入した価格をそのまま使えないという事です。建物の減価償却をして差し引いた金額と購入した時の土地の金額を足した金額が、取得した時の価格になるという事です。
ここを勘違いされて、マイナスになると思われている方が多いのですが現在、中古の不動産の価格が上昇傾向にあると利益が出ることが多いのです。
税額の計算
税額の計算ですが、全項目で説明した計算式より特別控除額(3000万円特別控除)を差し引くと、一般的にはほとんど課税される人はいないでしょう。買い替えにより購入の方で住宅ローンを利用するために、特別控除額を利用しないケースとして考えてみましょう。
全項目から課税譲渡所得金額を算出し、 課税譲渡所得金額×税率=税額となり、税率は用途や不動産の所有期間によって変わってきます。マイホーム(自己居住用財産)として所有し、所有期間が長期と短期でも変わります。
居住用の不動産の場合
■短期
所有期間が5年以下の場合
所得税30.63%
住民税 9%
(39.63%)
■長期
所有期間が5年を超える場合
所得税15.315%
住民税 5%
(20.315%)
10年超所有軽減税率の特例
②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%・住民税5%)
また、上記の税率には平成49年まで復興特別所得税として所得税の2.1%相当が上乗せされている
■非居住用の不動産の場合(投資用不動産など)
10年超所有軽減税率の特例はない
税額は、譲渡益が出た場合に発生するもので申告して譲渡損が出た場合は、一定の条件を満たせば譲渡損失の特別控除の利用が可能となる
不動産の所有期間によって税率は変化する!?
全項目より、所有期間で税率が変わることは、理解できたと思います。では、自分で購入したのではなく相続によって所有することになった不動産を売却するときは、税率はどのようになるのでしょうか?
相続により所有権を得た不動産は、相続登記された日から計算するのですか?という質問が非常に多いので説明しますと、相続により得た不動産は、所有期間も継承できるという事です。
例えば、親が1975年に購入し所有した不動産を2014年に相続し現在に至る場合は、1975年から通算して計算することができるので40年所有したことになります。
また、購入した時点の売買契約書は、取得費として計算するために重要な書類となるので、購入した時点の売買契約書など一式は手元にあるか確認しておくことをおすすめする。
譲渡所得に関わる特例
先に述べてきているが、一般的には譲渡所得に関する特例では、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例が一般的です。買い替えの場合は、買い替え先の住宅ローン控除が同時には使えないので注意が必要です。
マイホームを、平成27年12月31日までに売却し、住み替え先のマイホームに買い替えたとき、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。(譲渡益が非課税となるわけではない)
このことを、特定の居住用財産の買換えの特例と言います。 そこで、どちらの制度を利用した方がよいのでしょうか?これは、ケースによって変わってくるため、最初からどちらが良いというのはありません。
それぞれのケースによって、使い分けていく必要があります。
確定申告と提出書類について
その年度の確定申告で、不動産を売却した場合は申告が必要になります。必要な書類は売却した不動産を購入した時点の売買契約書など一式(契約時の印紙の領収書など)、売却した時の売買契約書一式です。
売却するときにリフォームなどを行った場合、経費になる場合もあるので領収書なども一式用意しておきましょう。今回書いた内容は、譲渡益が出る場合を想定し書いていますが譲渡益が出なかった場合、損失が出た場合も確定申告は必要です。
譲渡損失の場合は、その特例があり譲渡損失控除があるので最大限に活用することをオススメします。
まとめ
昨今、不動産市況は首都圏を中心に上昇傾向となっています。バブル崩壊後、譲渡損失が中心だったところから現在は譲渡益が出るケースが増えてきています。これは、経済的に見ても喜ばしいことです。
しかし、無駄に税金は払いたくないと思うのも理解できます。そのためにも、譲渡所得の意味をきちんと理解し譲渡所得だけ考えるのではなく、買い替えの場合は買い替え先の不動産の住宅ローン控除なども考慮し考える必要があります。
不動産を売買した時の、売買契約書一式は無くさないよう気を付けておくのも節税につながることになります。相続を考えたとき、親の取引した書類も重要な要素になります。
なかなか、親の不動産の書類をわかるところに保管というのは難しかもしれませんので、一度、ご両親と話しておくことも重要です。譲渡所得は、ほとんどの人が売却価格・購入価格と間違っています。
概算の金額は、不動産会社でも計算してくれるので聞いてみるのも良いでしょう。ただし、税理士法に抵触するので詳しくは難しいと思われます。