近所の人や親族間など個人間で不動産の売買をする場合、仲介手数料が節約できることや、知り合いと取引するためトラブルにならなそうとポジティブに考えがちですが、不動産の個人売買ではデメリットも多く、正しい知識が必要になります。

今回は不動産の個人売買のメリットやデメリット、必要な書類、売買の流れ、個人売買する際の注意点などについて解説していきます。

そもそも不動産の個人売買は可能?

「個人で不動産を売買することは法的に問題ないのか」と思われる方も少なくないと思いますが、不動産の個人売買は誰でも可能で、法律上も問題ありません。

不動産会社を挟む場合に比べて仲介手数料や消費税がかからないので一見お得に見えますが、不動産の売買は多額のお金が動く取引で、実際の取引をするには正しい知識が必要となります。知識のない素人同士の個人売買は、トラブルに発展するケースもあるため、多くの人が不動産会社に仲介を依頼しています。

次に不動産の個人売買のメリット・デメリットについて説明します。

不動産の個人売買のメリット・デメリット

メリット①仲介手数料や消費税を節約できる

不動産会社に仲介を依頼して不動産を売買する場合、仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は売買価格によって異なりますが、最大「売買価格の3%+6万円」の手数料が発生します。しかし個人売買の場合、仲介する業者はいないため仲介手数料がかかりません。

また個人売買では建物を売る際の消費税も発生しません。もともと土地は非課税ですが、建物は課税事業者が行う国内取引の場合には消費税がかかるので、不動産会社に仲介を依頼する場合の取引は、家屋には消費税がかかります。しかし個人売買の場合は非課税となります。

不動産売買において負担となる仲介手数料や消費税を節約できる面について、個人で売買する際のメリットといえるでしょう。

メリット②取引における自由度が高い

不動産の個人売買では売主と買主の自由に取引をすることができます。
売却金額や条件、いつどのように入金してもらうかなどを自由に決めることができます。また不動産会社に仲介を依頼する場合、売主・買主・不動産会社のスケジュールを合わせる必要がありますが、個人売買の場合はスケジュール調整もしやすいため売主と買主で納得するまで話し合うことができるでしょう。

次に個人売買のデメリットについて説明していきます。

デメリット①トラブルが起きやすい

個人売買の場合、不動産売買に精通したプロによる介入がないためトラブルに発展することもあります。不動産の売買は多額のお金が動く取引で確認事項や必要書類も多く正しい知識が必要です。また売買するにはそれなりに労力が発生します。

不動産に関する知識がなく、書類の準備や手続きに少しでも不安を感じる方はお互いが安心して取引をするためにも不動産会社に仲介を依頼することをおすすめします。

デメリット②住宅ローンが組めない

個人売買の場合、住宅ローンの審査に必要な重要事項説明書が提出できないため住宅ローンを組むことが難しいです。重要事項説明書は不動産の売買契約を行う際に重要である契約の条件や不動産の権利関係などを記載したもので、宅地建物取引士の資格がないと作成することができません。

宅地建物取引士が介入しない個人売買ではローン審査を受けることができないため、買主は住宅ローンを使わず資金を用意するか、売主に対して他に支払いの取り決めを行う必要があります。

以上により不動産の個人売買を行うためには、正しい知識や不動産購入の資金が必要であり、またそれなりの労力も発生します。メリットとデメリットを比較した上で、必要であれば仲介手数料を支払ってでも不動産会社を利用するほうが安心して取引を進めることができるでしょう。

不動産の個人売買に必要な書類

ここまで不動産の個人売買に関するメリット・デメリットについて述べてきました。
ここからは、個人間の不動産取引に必要な書類について説明します。

不動産売買契約書

業者を介して取引する場合には、宅地建物取引業者による『重要事項説明』を要することが宅建業法によって定められています。しかし、個人間の取引の場合には、その義務はありません。

ただ、トラブル回避のためには、売主側ができるだけ情報を集め買主に説明するべきであり『不動産売買契約書』を作成することをおすすめします。
不動産売買契約書は後のトラブルを避けるため売主・買主でどのような条件で売買をするのか取り決め内容を明示した書類になります。

業者の場合は、売手側が作成しますが、個人間であれば、言い出した方が主体となり、お互いに相談しながら納得いくものを作ります。
不動産の売却価格や、残りの固定資産税はどちらが支払うのかなどを記載します。引き渡しの時期に関する事項には、所有権の移転・引き渡し・登記の時期について明示しましょう。通常は、原則として買主による売買代金の支払いと同時に行われ、契約書もそれを前提とします。

他に売買契約書に記載するべきことは下記の通りです。

不動産売買契約書に記載するべきこと

登記記録に記録された情報
抵当権やその他の権利についてなど

法令に基づく制限の事項
対象物件のある市区町村の役所で、用途地域・建蔽率・容積率・都市計画を確認します

不動産に付帯する道路やインフラ等に関する事項
(飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の設備状況)

私道があれば負担分の割合・電気・ガス・水道の設備状況・配管など(各事業所に確認)配管図があるものは必ず添付します。

取引の条件に関する情報
手付金の内訳や支払い方法・登記の費用負担・契約解除する際の処理方法なども記載します。

個人売買では金銭的な問題等のちのちトラブルにならない為にも売買契約書をしっかり作成しましょう。また売買契約書は売主と買主がそれぞれ所有するため、2部用意し、引き渡し完了後も大切に保管しておきましょう。

続いては売買をするにあたって、売主に必要なもの、買主に必要なものについて説明していきます。

業者を介して取引すると当然(業)として行っている取引なので業法で定められている宅地建物取引主任者による『重要事項説明』

売主に必要なもの

①不動産の権利証(登記済権利証または登記識別情報)
②印鑑証明書(3か月以内のもの)
③住民票(登記簿上の住所と印鑑証明証の住所が異なる場合)
④写真付き身分証明書1点(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなどの原本)
⑤実印
⑥登記簿謄本(抄本)(土地・建物両方を用意します)
⑦固定資産税評価額証明証(土地・建物両方を用意します)
⑧公図(土地の形状や位置を表した図面)
⑨領収証(買主が売買代金を現金で支払う場合)

買主に必要なもの

①住民票
②印鑑証明書(3か月以内のもの)
③写真付き身分証明書1点(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カードなどの原本)
③印鑑

主な必要書類等は上記の通りとなりますが、場合によって別途書類が必要となります。またこれらの書類を発行する際には手数料がかかります。さらに契約時には手付金や売買契約書に貼付する収入印紙代が必要となります。
書類の不備や不足がないかを確認し、余裕を持って準備することをおすすめします。

ここまで不動産の個人売買におけるメリット・デメリットまた必要な書類について解説してきました。
それでは実際に個人で売買する際の流れについて説明します。

不動産の個人売買の流れ

契約締結までに不動産の取引を管轄する公的機関に相談している二人の女性

①売買価格の決定

取引の一番初めにしなければならないことは売買価格の決定です。価格が決まらなければ、売買も始まりません。個人売買の場合、前述の通り自分で売買価格を決める事が出来ます。

しかし相場が分からないまま金額を決めてしまうと、なかなか買手が見つからない場合や、自分自身が損をしてしまうことがあります。そのため適切な売買価格を知ることはとても重要になってきます。

相場を知るのにオススメの方法は「一括査定サイト」の利用です。
一括査定サイトは、フォーム内に物件情報を入力することで複数の不動産会社に同時に売却金額の査定依頼を出すことができます。同時に複数の不動産会社に問い合わせることで手軽に相場を知ることが可能です。

また売買価格を決定する際のポイントとして、購入希望者から値下げ交渉があることは一般的なため、最初に設定する価格を少し高めにしてもいいかもしれません。

②買主を探す

売買価格が決まったら、買主の候補となる人に声を掛けるか、個人売買で利用できるインターネットサイトに不動産情報を掲載して購入希望者を募りましょう。
その際、提示した価格から値下げ交渉をされることもあるでしょう。前述の通り、初めは値下げを前提とした価格を提示し、売主の値下げ交渉に寄り添った姿勢を見せることで購入に繋がる場合があります。

ただ、購入希望者の申し出通りに値段を下げすぎてしまうと売主が損をしてしまうことがあります。売主は価格のボーダーラインを決めて、お互いが納得できるよう取引を進めましょう。

③売買契約を締結する

価格交渉を行い、売買価格が決まれば、詳細な契約事項などの取り決めを行い、不動産売買契約書を作成していきます。

近所の人や親族など、知り合い同士の取引では、口約束などで取り決めを行う場合が多いですが、それらはトラブルのもとになります。売主・買主間で取り決めた確認事項は、必ず契約書の中に記載しておきましょう。
詳しい記載事項は本記事【不動産の個人売買に必要な書類―不動産売買契約書】内に記述しています。

個人売買では、金銭的な問題などトラブルが起きやすいです。トラブルにならない為にも契約書をしっかり作成し、お互いが必ず確認をして契約を締結するようにしましょう。

④引き渡し

契約が完了し、代金のやり取りをした後は、物件の引き渡しになります。
引き渡しが終わった後に、欠陥が見つかる場合や、契約内容と物件の状態が異なる等トラブルが発生することも多くあります。
そのようなことが発生した際のアフターフォローも非常に大切です。もちろんトラブルが起きないよう事前に最善の注意を払って契約を進めましょう。

契約締結までに不動産の取引を管轄する公的機関に相談しておく

個人間の取引では、一般的には双方が不動産に関する専門知識がない者同士です。

念のため公的機関の指導課などで、互いに作った書類等に不備がないか確認してもらうことをお勧めします。また、民間の各不動産取引業協会の相談窓口などで相談するのもいいです。

個人売買より不動産会社に仲介を依頼する方が多い理由

やはり、一番はトラブル回避のためではないでしょうか。

先述の通り、売主・買主双方で速やかに進めるには至難の業です。取引に対する温度差や考え方は、当然異なります。相手に対して不満が出る場合もありますし、契約前に喧嘩となり取引が白紙に戻るということもあり得ます。このような時でも、個人売買であれば当事者間で解決しなければいけません。これには、時間と忍耐と許容が必要になります。
これらを回避するために、業者を介した売買を行う人が多いのです。
 

「契約前のすり合わせでケンカになって取引をやめた」というよくある場合

不動産を個人売買する際の注意点

個人売買においてのデメリットとして、お金に関することの他に、個人では対応できないトラブルがいくつかあります。

不動産を個人売買する際の注意点についてまとめていきます。

契約不適合責任

不動産売買には『契約不適合責任』というものがありますが、高額な不動産取引では問題になることが多いです。

契約により引き渡したものが契約内容と異なった場合に売主が買主に対して責任を負うというもので、主に雨漏り・シロアリ被害などがあげられます。
契約時にきちんとした確認を双方がして明記していない場合、大きなトラブルに発展する可能性が大きいです。
契約締結時に契約不適合責任の保証期間や詳細を取り決めていた場合、その規則に基づいて契約の破棄や修繕費用の支払いなどを進める事が可能です。

このようなトラブルを起こさないためには、契約締結時に契約不適合責任の保証期間やペナルティーの内容などを詳細に記載しておく事が重要です。

個人売買は注意深くおこなう

何度も述べている通り不動産の個人売買ではプロの介入がないためトラブルがつきものです。
そのため契約締結時には売主・買主双方が細かな部分まで確認しましょう。

また取り決め内容を口約束で済ますことはトラブルのもとです。
口約束ではトラブルが起きた際、約束の内容の立証が難しいことや水掛け論になることもあるため、取り決め内容は契約書に記載し、文字として残すことがとても重要です。

まとめ

ここまで不動産の個人売買の流れを説明してきました。

流れを知ったうえで個人売買ではなく、不動産会社に依頼したほうがいいのでは、と考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産業者を介すれば、仮にトラブルが起きたときにも間に入りきちんと対処してくれます。手数料はかかりますが、不動産売買は安心して円滑に進めていくことができます。

不動産会社に仲介を依頼することを検討する場合、まずは「一括査定サイト」の利用をオススメします。
一括査定サイトは、フォーム内に物件情報を入力することで複数の不動産会社から売却査定金額を確認することができ、簡単に相場を知ることも可能です。また信頼できる担当者が見つかれば、そのまま不動産会社に仲介を依頼することもできます。

個人売買のメリットとデメリットを比較した上で、必要であれば仲介手数料を支払ってでも不動産会社を利用するほうが、売主・買主ともに安心して売却活動を進めることができるでしょう。