一戸建てやマンションなどの不動産を所有していても、家族構成の変化などで買い替えを考える方もいらっしゃるでしょう。その際に住宅ローンが残っていても、売却して買い替えることは可能なのか不安に思うかもしれません。不動産は売却して買い替えることは可能です。ただその際のポイントは、売却して得たお金で住宅ローンを完済して抵当権を抹消できるかどうかということです。

今回は家を売って買い替えるときの基礎知識や買い替えまでの流れを解説します。

住宅ローンが残っていても売ることはできる

住宅ローンが残っている不動産を、売ってはいけないということはありません。問題なく売却は可能なのですが、その際のポイントとなるのが、買主が見つかるかどうかです。

ただし抵当権を抹消するためにはローン完済が必須条件

買主を見つけるには、ローン完済して抵当権を抹消できる状態にあることがほぼ必須条件となり、残金決済時に抵当権を抹消し、買主に引き渡すのが通常です。

抵当権が残っている状態というのはどういうことかと言うと、ローンを組んでいる売主がローンの滞納をした場合、不動産を提供するという約束をしている状態が抵当権がついている状態です。

この状態では、買主はいつ金融機関に物件を取られるかわからないので怖くて買えません。

オーバーローンは買主を見つけることが難しい

住宅ローンの残高よりも家の価値のほうが大きい状態のことをアンダーローンと呼びます。反対に、住宅ローンの残高よりも家の価値のほうが低い状態をオーバーローンといいます。

家を売ったお金でローンを完済できないオーバーローンの場合には、抵当権を抹消することができません。抵当権が残ったままの物件は、債務者がローンの返済を滞納したり、債務整理をすれば競売にかけられてしまいます。いつ売られてしまうのかがわからない物件となるため、そんな物件を買いたいと望む買主はほとんどいないでしょう。オーバーローンとなっている物件は、買主が見つからないのが現実問題です。

一方で、不動産会社に直接買取りをしてもらえば、比較的すぐに現金を手に入れることが可能です。しかし、不動産会社に直接買取りをしてもらうと、不動産価格は相場よりも安くなります。そのため、ローン返済のためにできるだけ高く売りたい状況では、買取り依頼をする人は少数です。多くは不動産会社と仲介契約を結び、買主を探すことになります。

買い替えの流れ

不動産売却と抵当権抹消

買主を見つけるために、不動産会社に不動産サイトや広告・チラシなどで宣伝をしてもらうという方法が主流ですが、自身で親族や知人から見つけてくる人もいます。

買主が見つかれば、売買契約を結びます。ただ、買主が住宅ローンの審査に落ちてしまったら契約は白紙に戻ってしまうため、契約を結んだからといって安心はできません。無事に買主が住宅ローンの審査に通り、引き渡し日に金融機関での買主の住宅ローンの実行が行われて初めて売買金額残額分指定口座にお金が振り込まれます。

売主はそのお金で、住宅ローンの残金を一括決済し抵当権の抹消手続きに移り、抵当権を抹消したうえで不動産を買主に引き渡すという流れが一般的です。これを金融機関と司法書士とで同日にすべて終わらせます。

抵当権の抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、抵当権抹消手続きが失敗した場合、所有権移転登記手続きにも影響が出るため司法書士に依頼する方が確実です。何より買主に迷惑がかかるため、司法書士に依頼しましょう。

家の買い替えにかかる費用

ここまでローンが残っている状態で売却する際の流れについて解説してきました。ここからは実際に不動産を売却する際と買い替え先の物件を購入する際に発生する費用について解説していきます。

売却にかかる費用

・仲介手数料 売買価格の3%+6万円+消費税が上限(売買代金400万円超の場合)
・収入印紙代
・登記費用(抵当権抹消登記や住所が変わっている場合の住所変更登記など)
・土地の測量費(売主にて測量を行うことが決まっている場合)
・建物の解体費(売主にて解体を行うことが決まっている場合)
・その他費用(ハウスクリーニング代・引っ越し費用など)

購入にかかる費用

・価格(土地・建物)
・仲介手数料 売買価格の3%+6万円+消費税が上限(売買代金400万円超の場合)
・収入印紙代
・登記費用(所有権移転登記、抵当権設定登記など)
・住宅ローンの手数料
・住宅ローンの保証料
・火災保険・地震保険料
・水道加入負担金(新築一戸建てや新築マンションなどの場合)
・その他費用(家具代・引っ越し費用など)


実際に発生する費用はそれぞれ状況によって異なるため不動産会社の担当者の指示を仰ぎながら必要書類等については余裕を持って用意することをおすすめします。

買い替えローンとつなぎ融資

買い替え(住み替え)ローン

抵当権を抹消することができなければ、買主が現れることは期待できません。しかし、オーバーローンとなってしまっている状態でも買い替えローン(住み替えローンとも呼ばれています)を利用すれば、前のローンの残高も上乗せして借りることが可能であるため、買い替えることが可能です。

買い替えローンは、一見するととても便利なようですが、実はデメリットは大きいです。

デメリット

前のローン残高を上乗せするということは、当然、新しく購入する家の価値よりも大きな金額を、買い替えローンで借りるということになります。そうすると、利息の負担が大きくなります。

また、担保に入れる家の価値よりも大きな金額を借りるということは、フルローンで住宅ローンを組むことよりも難易度が高いため、ローン残高に制限がある場合など、審査が厳しくなっています。前のローンを延滞せずに返済していたことはもちろん、安定した収入があり生活にも余裕がある人でないと、審査には通らないかもしれません。

つなぎ融資

竣工前の新築戸建てへの住み替えは、つなぎ融資を利用する可能性が高いです。つなぎ融資は、まだ完成していない新築戸建てを購入する際に購入物件の支払が売却物件の代金受け取りよりも先に来てしまった場合、一時的な資金不足を補うために費用を借りる短期間の融資です。

買い替えをする際は売却が決まる前に、気に入った物件が見つかるかもしれません。その場合、売却が決まるまで待っていると良い条件の物件を逃してしまう可能性があります。つなぎ融資を利用すれば売却を待たずに気に入った物件を手に入れることができます。

また、住宅ローンは原則として、建物が完成されていない状態では担保となる家の価値が正確に把握できないことから、家が完成してからの融資となりますが、注文住宅では住宅ローンの融資が下りるよりも先に、土地取得資金、着工金や中間金などが必要となるため、竣工前の新築戸建てへの住み替えを希望する人は特に、つなぎ融資を利用する可能性が高いです。

つなぎ融資を利用

デメリット

しかし、つなぎ融資の金利は住宅ローンよりも高く設定されている傾向があり、手数料などの諸費用もそれなりにかかります。また、利息だけを返済していくことになるので、利息の負担が大きくなるというデメリットも存在します。また融資期間内に売却しない場合、遅延損害金が発生するため余裕を持った資金計画が重要です。

金融機関によっては、家が完成しないうちでも土地取得資金や着工金、中間金などを住宅ローンで融資してくれるところもありますが、多くは、家が完成していなければ融資してくれません。

ちなみに、すでに親などから相続した土地を保有していてその上に注文住宅を建てる場合は、土地を担保にして低金利でローンを借りるという方法があります。

買い替えの際の注意点

家の買い替えでは、売却を先にする「売り先行」か、購入を先にする「買い先行」かどのように進めていくか悩む場合があるでしょう。売り先行の場合、焦って値引きせずに売却ができます。また売却代金がわかるため、買い替え先の新居についても予算が把握しやすいでしょう。一方買い先行の場合、良い物件を手に入れるチャンスは掴みやすいです。先に新居購入を行うことで、ゆっくりと時間をかけて希望の物件を見つけることができ、賃貸に住むためのコストも節約することが可能です。
ここでは買い替えの際の注意点について解説していきます。

仮住まいの費用がかかる

売り先行の場合、売却を先にしてしまうと新居を早く見つけなければならないという焦りから、物件選びで妥協をしてしまう傾向にあります。また、一時的に賃貸に住む場合には敷金・礼金や仲介手数料などの初期コストの負担が大きくなります。

一方買い先行の場合、現在住んでいるマイホームの売却を急がなければならなくなります。相場価格で売りに出し、すぐに買主が見つかれば問題ありませんが、もし買主が見つからなければ、当然焦りが生じますし、 建物は年月が経過するごとに価値が下がっていきます。さらに、固定資産税や都市計画税などのコストもかかります。

なかなか売れずに100万単位の大幅な値下げに応じる結果になりかねないため、売り先行で発生する仮住まいの費用は経費として捉えるのもひとつでしょう。

家の売却を終わらせてみなければわからないその後の生活費など、不確定要素が多くなることから、なるべく新居の購入と不動産の売却は同じタイミングで行うことが理想的です。

また、新しい住宅ローンはオーバーローンのリスク回避のためには、頭金を1割程度用意しておきましょう。予算がギリギリという場合には、住宅ローンの審査に通らないという可能性もあります。

売却を先にすると新居を探す焦りから妥協した物件を選ぶ傾向に。。。

査定価格と売出価格は異なる

査定価格は客観的な価格の評価ですが、売出価格は売主の事情や希望をくみ取り、不動産会社が販売戦略を立てて提案されるものです。
提案する売出価格を決めるために、不動産会社は訪問査定時に売主の売却理由や希望などを聞き取ります。売出価格は、売主が売り急いでいる場合には低めに、高値売却を希望している場合には高めに設定されます。

ただ、不動産会社の販売戦略によってこの価格は変わってきます。最も優先されるのは売主の意向ですが、誠実な不動産会社であれば実際の売却に支障をきたすような売主の難しい要望については、率直にアドバイスをしてくれるでしょう。

経済的なメリットと手間のバランスを考慮する

不動産売買ではどうしても「なるべく高値で売りたい」「かかる費用は抑えたい」と考えがちです。不動産売買は高額であるため費用面も重要ですが、一方で発生する手間や時間、精神的なストレスも忘れないようにしましょう。

不動産売買が長引いてしまうと不安が募るうえ、複雑な手続きはストレスに繋がります。手間や時間を節約し、売却と購入のタイミングをあわせることで、ダブルローンを避けることができるなど結果的にメリットが出てくる可能性もあります。

買い替えをスムーズに行うには、不動産会社と「売り先行」か「買い先行」かよく相談し、どう進めていくべきか事前に決めておくと判断がしやすくなります。

まとめ

オーバーローンのまま、家を売ることは困難です。抵当権を抹消するためには、ローン完済が条件です。オーバーローンとなっていても住み替えローンを利用することで解決はしますが、審査は通りにくいでしょう。また予定通りに家が売れずに前ローンを完済できない可能性もあるということも念頭に入れておきましょう。

満足のいく買い替えを行うためには不動産会社に、ローン残債以上の金額で家を売ってもらうことが、ひとつの手段となります。どこの不動産会社に仲介依頼しても同じように思えますが、不動産会社もさまざまです。得意としているものが違うのです。実力があり信頼できる不動産会社を探しましょう。

家の売却価格を把握するためには、まず不動産会社の査定を受けることが一番です。一括査定を活用して、複数の業者から査定を受けてみましょう。その際、より正確な価値を把握するためには、複数社の査定を受けることが肝心です。その結果、査定額が残債額よりも上回った場合は、高い確率でローンを完済できるということになります。

しかし、査定額はあくまで不動産会社の予想に過ぎません。査定額通り売却できるかは、販売戦略計画・宣伝活動・購入希望者への説明・アピール・内覧対応などを行う担当者の実力にかかっているのです。そのことからも、不動産会社選びはとても重要です。不動産の価格査定は、単に価格を知るための手段ではありません。実際に売却を依頼する不動産会社を選別するための重要な機会なのです。

どのような販売活動を行うのか、なぜその査定額になったのかというポイントについては、しっかり説明を受けておくべきです。そして、自分自身でも査定価格や売出価格の意味をきちんと理解し、価格相場に関心を持つことが重要です。できるだけたくさんの質問をして、その対応などから信頼できる担当者かどうかを見極めましょう。信頼できる不動産会社を選択できれば、売却成功の可能性は大きく高まるのです。

一括査定サイトを使って効率的に不動産会社選びをしよう

不動産売買に関する知識がなく、所有している不動産をどのような方法で売却すればいいかわからないという方は一括査定サイト「イエイ」の利用をオススメします。「イエイ」では、国内主要の不動産会社や地元に強い地元密着の不動産会社などとの取引があり、多様な不動産会社から自身に合う不動産会社を見つけやすいのが利点です。

フォーム内に物件情報を入力することで複数の不動産会社から売却査定金額を確認することができ、簡単に相場を知ることも可能です。また信頼できる担当者が見つかれば、そのまま不動産会社に仲介を依頼することもできるので、安心して売却活動を進めることができるでしょう。

イエイ」を使って効率的に不動産会社選びを行いましょう。