この記事でわかること ・相続放棄の手続きに必要な書類一覧 |
相続放棄の手続きに必要な書類は、相続人の立場によって異なります。
申述書や戸籍謄本といった基本書類から、特定の状況で必要となる追加書類まで、取得方法と共に詳しくご説明します。
また、収入印紙や切手の金額、申請時の注意点も含め、スムーズな手続きのために必要な情報を網羅的にまとめました。
この記事の目次
相続放棄の手続きに必要な基本書類一覧
相続放棄の手続きには、複数の公的書類の提出が必要です。
また、被相続人(亡くなった方)との続柄ごとに、必要な書類は異なります。
ここでは、相続放棄の手続きに必要な書類を相続人の続柄ごとにご紹介します。
共通の必要書類
家庭裁判所への申立てに向けて、以下の基本書類を準備する必要があります。
必要書類 |
取得方法 |
詳細 |
---|---|---|
相続放棄申述書 |
家庭裁判所で入手または裁判所ウェブサイトからダウンロード |
被相続人や相続放棄を行う人の住所や名前、相続財産の内容や相続放棄する理由などを記した書類のこと |
被相続人の住民票除票か戸籍附票 |
居住地の市区町村役場で申請 |
住民票除:転出や死亡などにより、住民登録が削除された住民票のこと。 戸籍附票:戸籍がつくられてから、その戸籍が除籍されるまでの住所が登録された書類のこと。 |
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 |
居住地の市区町村役場で申請 |
相続放棄する本人と同じ場合は不要 |
相続放棄する人の戸籍謄本 |
居住地の市区町村役場で申請 |
_ |
相続放棄申述書は、相続人本人が自筆で記入する必要があります。
また、戸籍謄本は、相続開始時から現在に至るまでの相続関係を証明できる一式を提出しなければなりません。
本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカードなどの提示も必要です。
これらの書類は申立て時から3ヶ月以内に発行されたものを用意しましょう。
被相続人との続柄別で必要となる書類
ここからは、上記の必ず必要となる書類とは別に続柄別で必要な書類をご紹介します。
相続は優先順位が民法で決められており、基本的に下記の順になります。
なお、被相続人の子が死亡している場合は孫に、被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合、兄弟姉妹の甥や姪になります。
そのため、たとえ被相続人と遠縁であっても、相続人となる可能性はあるので、下記の続柄別で必要となる書類をしっかりと確認しておきましょう。
また、被相続人の子の有無や、子や孫が既に死亡している場合などでも、必要となる書類は異なるため、自分はどのケースに当てはまるのか、こちらも合わせてチェックしておきましょう。
続柄 |
必要書類 |
---|---|
子 |
・被相続人と同じ戸籍の場合、上記共通の必要書類のみ ・結婚などで別の戸籍の場合は、自分の戸籍 |
代襲相続人※の孫 |
被相続人の子(孫の親)の死亡記載のある戸籍謄本 |
父母(被相続人に子がいない場合) |
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
父母(被相続人の子や孫が既に死亡している場合 |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の子や孫の出生から死亡までの戸籍謄本 |
兄弟姉妹 |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の配偶者、子の死亡記載のある戸籍謄本 ・被相続人の親、祖父母の死亡記載のある戸籍謄本 |
甥や姪 |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・親の死亡が分かる戸籍謄本 |
甥や姪(被相続人の子、孫が既に死亡している場合) |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・親の死亡が分かる戸籍謄本 ・被相続人の子、孫の出生から死亡までの戸籍謄本 |
※【代襲相続人とは?】
本来相続人となるはずだった者が相続開始前に死亡などにより、相続権を失っている場合、その者の子などが代わって相続する制度のこと。
相続人の立場で異なる追加提出書類
相続人の状況によって、基本書類に加えて必要となる追加書類が異なります。
相続人の立場ごとに、具体的な追加提出書類をまとめました。
相続人の状況 | 必要な追加書類 |
---|---|
未成年者 | 法定代理人の住民票、法定代理人の戸籍謄本 |
海外在住者 | 在留証明書、サイン証明(署名証明) |
未成年者の場合、親権者など法定代理人の証明が不可欠です。
そのため、法定代理人の現在の住所や資格を証明する書類の提出が求められます。
海外在住者は、日本の相続人と同様に、相続人自身が相続放棄に必要な戸籍謄本や住民票といった必要書類を用意する必要があります。
相続放棄に必要な書類の取得手順と費用
相続放棄に必要な書類は戸籍謄本や住民票などです。
また、戸籍謄本を取得するのには費用も発生します。
ここでは、相続放棄に必要な書類の取得手順とその費用についてご紹介します。
戸籍謄本と住民票の正しい取得手順
相続放棄に必要な戸籍謄本は、被相続人と相続人それぞれの本籍地の市区町村役場で取得できます。
申請から発行まで通常1〜2営業日かかり、3ヶ月以内に発行された原本が必要です。
住民票は現在の居住地の市区町村窓口で取得します。
本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカードなどの提示が求められます。
また、各種証明書の取得には手数料がかかります。
必要な手数料は以下の通りです。
証明書の種類 |
手数料(1通あたり) |
---|---|
戸籍謄本 |
450円 |
住民票 |
300円 |
同一世帯以外の代理人が申請する場合は、委任状が必要です。
委任状には委任者の住所・氏名・生年月日、請求する証明書の種類と通数、使用目的を明記し、委任者の実印を押印します。
印鑑登録証明書の添付も忘れないようにしましょう。
なお、マイナンバーカードをお持ちの方は、コンビニのマルチコピー機でも各種証明書の取得が可能です。
収入印紙と切手の必要金額と購入方法
相続放棄の申述には、収入印紙(800円分)と切手の準備が必要です。
収入印紙は、郵便局又は法務局で購入することができます。
申述書を郵送で提出する場合は、返信用封筒に84円切手を貼り、宛先と差出人を明記して同封します。
必要な書類の取得にかかる費用は、以下の通りです。
書類名 |
必要金額 |
購入場所 |
---|---|---|
収入印紙 |
800円 |
郵便局・法務局 |
返信用切手 |
84円 |
郵便局・コンビニ |
戸籍謄本 |
450円程度 |
各市区町村役所 |
戸籍謄本や住民票の手数料は自治体により異なります。
事前に取得予定の役所へ確認することがおすすめです。
相続放棄の申述期限と延長手続きの重要ポイント
相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に申述しなければなりません。
期限内の判断が難しい場合は、正当な理由があれば期限延長が認められることもあります。
重病による入院や海外在住など、具体的な4つのケースと必要書類について解説します。
遺産調査を丁寧に行い、慎重に判断することで、後悔のない相続放棄の手続きを進めることができるでしょう。
相続開始を知った日から3ヶ月以内が申述期限
相続放棄の申述期限は、民法第915条により「相続開始を知った日から3ヶ月以内」と定められています。
この期限を過ぎると原則として相続放棄はできなくなるため、期限をしっかり確認し、忘れずに手続きを行うことが重要です。
「相続開始を知った日」とは、被相続人の死亡の事実を知った日を指します。
具体的には、以下のような状況が起算点となります。
状況 |
起算点 |
---|---|
死亡に立ち会った場合 |
死亡した当日 |
連絡を受けた場合 |
連絡を受けた日 |
公的書類で確認した場合 |
確認した日 |
病気や海外在住など、3ヶ月以内の判断が困難な「正当な理由」がある場合は、家庭裁判所に期限延長の申立てを行うことが可能です。
申立ては書面で行い、延長が必要な理由と状況を具体的に説明する必要があります。
なお、相続放棄の申述は一度行うと取り消すことができないため、期限内であっても慎重に判断することが重要です。
期限内の判断が難しい場合の延長申立方法
相続放棄の期限延長を申し立てる場合、家庭裁判所に「期限延長申立書」を提出する必要があります。
申立書には、延長が必要な具体的な理由と希望する延長期間を詳しく記載します。
延長が認められるためには、「正当な事由」の存在が不可欠です。
以下のような理由と、それを証明する資料の提出が求められます。
・遺産の範囲や内容の調査に時間を要する場合:預金通帳や不動産登記簿の写し
・遠隔地に居住しており現地での調査が困難:住民票や海外在留証明書
・重病による入院で手続きが困難:診断書や入院証明書
・共同相続人との連絡・協議に時間を要する:協議経過を示す書類
申立には800円の収入印紙も必要です。
提出された申立書と疎明資料は裁判所で審査され、正当な理由があると認められれば延長が許可されます。
なお、延長が認められても必要以上に手続きを先延ばしにはせず、できるだけ早期に判断を行うことが大切です。
遺産調査と慎重な判断で後悔のない選択を
相続放棄を選択する前には、相続財産の詳細な調査を行うことが不可欠です。
調査なしでの判断は、予期せぬ不利益を招く可能性があります。
相続財産の調査項目
調査対象 |
確認方法 |
---|---|
不動産 |
法務局で登記事項証明書を取得 |
預貯金 |
金融機関に対して残高証明書を請求 |
借金・債務 |
金融機関や信用情報機関へ照会 |
相続放棄は一度行うと取り消すことができません。
そのため、プラスの財産とマイナスの債務を正確に把握し、将来的な影響まで考える必要があります。
判断に迷う場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
共同相続人がいる場合は、家族間で十分な話し合いを行い、それぞれの意向を確認しましょう。
3ヶ月という期限に追われすぎず、できる限り詳細な調査と慎重な検討を行うことで、後悔のない選択につながります。
家庭裁判所への提出手順と申述書の正しい書き方
相続放棄の手続きを確実に進めるため、と手順を詳しく解説します。
管轄裁判所の特定から、申述書の正しい記入方法、本人確認書類の準備、そして手続き後の報告義務まで、一連の流れをしっかり確認しておきましょう。
管轄の家庭裁判所を確実に特定する方法
相続放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行う必要があります。
被相続人が亡くなった場所ではなく、生前の最後の住所地が基準となることに注意が必要です。
管轄の家庭裁判所を特定するには、以下の手順で確認していきましょう。
・被相続人の住民票や戸籍謄本で、最後の住所地を確認
・裁判所ウェブサイトの管轄区域検索システムに住所を入力
・該当する本庁または支部の所在地と連絡先を記録
複数の相続人がいる場合でも、それぞれが別々の家庭裁判所で手続きを行うことができます。
たとえば、東京在住の相続人が大阪の家庭裁判所まで行く必要はありません。
最寄りの家庭裁判所で手続きを行う場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に書類が送付されるため、手続きがスムーズに進みます。
不明な点がある場合は、事前に家庭裁判所に電話で確認することがおすすめです。
申述書の入手方法と記入のポイント解説
申述書は、相続放棄の手続きに必要不可欠な書類です。
入手方法は2つあり、最寄りの家庭裁判所の窓口で無料で受け取るか、裁判所ウェブサイトからPDFをダウンロードできます。
申述書の記入には、いくつかの重要なポイントがあります。
特に注意が必要な項目が以下になります。
・相続人本人の署名は必ず自署で行い、代筆は認められない
・「相続開始を知った日」には、被相続人の死亡を知った具体的な年月日を記入
・申述人の住所・氏名は戸籍謄本と完全に一致させる
・被相続人との続柄は法定相続分の確認のため正確に記載
記入に不安がある場合は、家庭裁判所の窓口で事前に確認することをおすすめします。
書き間違えた場合は修正液での訂正が認められないため、新しい用紙で書き直す必要があります。
記入が完了したら、署名・押印漏れがないか、記載内容に誤りがないかを確認しましょう。
不備があると受理されず、手続きに遅れが生じる可能性があります。
本人確認書類の準備のコツ
相続放棄の手続きには、本人確認書類の提出が必須です。
手続きがスムーズに進むよう、以下の書類を適切に準備しましょう。
・官公署発行の顔写真付き身分証明書
(運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど)は有効期限内のものを用意
・顔写真付き身分証明書をお持ちでない場合は、健康保険証・年金手帳など、2種類以上の証明書を組み合わせて準備
相続放棄後の報告義務と必要な手続き
相続放棄の申述が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」が交付されます。
この証明書は大切な法的書類となりますので、必ず安全な場所に保管しておく必要があります。
相続放棄後は、関係各所への報告手続きが必要です。
以下の機関に対して、相続放棄申述受理証明書の写しを提出しましょう。
・被相続人が取引していた金融機関(銀行・証券会社など)
・不動産登記所(被相続人名義の不動産がある場合)
・年金事務所(遺族年金に関する手続きが必要な場合)
・税務署(相続税の申告が必要な場合)
共同相続人がいる場合は、相続放棄を行った事実を書面で通知することが望ましいです。
これにより、以後の相続手続きにおける権利関係を明確にし、後々のトラブルを防ぐことができます。
相続放棄は一度行うと取り消すことができない重要な法的手続きです。
関係機関への報告を漏れなく行い、証明書類は適切に保管しておきましょう。
相続放棄は期限や必要書類を正しく理解しよう
相続放棄の手続きを適切に進めるには、期限や必要書類を正しく理解することが大切です。
家庭裁判所への申述期限は原則3ヶ月以内ですので、期限を忘れず手続きを進めていきましょう。
提出書類は戸籍謄本や住民票などの本人確認書類が必須となります。
期限内に手続きを完了させ、相続放棄申述受理証明書を確実に受け取りましょう。
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