この記事の概要
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不動産の売却はあまり経験することがないため、どれくらいで売れるのか、高く売れるのかと不安になる方もいることでしょう。
本記事では、不動産査定とはなにか、査定方法や流れ、注意点などを解説します。
不動産の売却がはじめての方でも不動産査定についてしっかりと理解すれば、はじめての不動産売却でも安心できるでしょう。
この記事の目次
不動産査定は売却へのスタートライン
不動産査定とは、不動産の売り出し価格を決める大切なプロセスです。
「いくらくらいなら売却できるのか」という疑問を解決し、「売却できる価格の目安」がわかります。
買い替えを希望する方にとっては、つぎに購入する不動産の予算が把握できるメリットもあるでしょう。
しかし、不動産査定はあくまで売り出し価格の目安となるため、実際の成約価格とは異なります。
公益財団法人東日本不動産流通機構が発表した「首都圏 中古戸建住宅価格の推移(2023年8月度)」をご覧ください。
引用:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報Market Watchサマリーレポート2023 年8月度」
売り出し価格である新規登録価格と成約価格では、平均して500〜600万円ほどの差があります。
したがって、実際に売却できる価格と不動産査定額が異なる可能性が高いことをあらかじめ把握する必要があるでしょう。
依頼する不動産会社によっても査定額は異なります。
不動産査定は無料でおこなえるため、複数の不動産会社から見積りをとり、依頼先を決めることをおすすめします。
不動産の査定方法は3パターン
不動産会社がおこなう査定方法は次の3パターンです。
- AI査定
- 簡易査定
- 訪問査定
それぞれに査定額の精度が異なるため、状況に応じて査定方法を選びましょう。
また、具体的な金額に基づいて計画を進めるためにも、不動産査定で売却価格を把握することは大切です。
こちらの記事でも不動産の査定方法について解説していますので合わせてお読みください。
不動産査定とは?査定方法や査定の流れ、査定額の決定方法などを解説 - イエイ
①AI査定
AI査定とは、インターネット上で気軽に不動産査定ができる不動産シミュレーターです。
売却予定の不動産について、所在地・築年数・面積・構造などの物件情報を入力すると、AI(人工知能)が自動的に不動産の査定をおこないます。
過去の成約データをもとに査定価格を導き出すため、対象不動産の個別要因は考慮されず、査定価格の精度は低いと言えます。
しかし、売却を検討しはじめた方であれば、おおよその売却価格を瞬時に把握できるAI査定は便利で最適な方法と言えるでしょう。
②簡易査定(机上査定)
簡易査定(机上査定)とは、物件情報や過去の近隣取引事例、市場動向などをもとに不動産会社がおこなう不動産査定です。
電話やメールなどで得た物件の基本情報にもとづいて不動産会社の担当者が査定するため、実際に足を運ばなくても不動産の現在価格がおおよそ把握できます。
依頼する不動産会社によって査定結果が出るまでの期間は異なり、最短で即日、長いと数日ほどかかるでしょう。
不動産そのものを目視確認した査定を実施していないため、訪問査定よりも査定額の精度は下がります。
売却までに時間のある方や、査定価格を確認して売却を決めたい方などに向いていると言えるでしょう。
不動産簡易査定の流れや費用などを詳しく知りたい方は、こちらの記事でも紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
不動産の簡易査定の方法と流れ、かかる費用を徹底解説!
③訪問査定
訪問査定とは、不動産会社が現地調査をおこない、不動産の外観や内観、立地条件、周辺環境などを総合的に判断して査定する方法です。
不動産価格を決めるうえでの高精度な査定と言えます。
訪問査定実施後に査定額の提示を受けるまでは、約1〜2週間ほどかかると想定しておきましょう。
不動産会社の営業担当者との関わり合いが密にできるため、担当者との相性や信頼できる不動産会社かどうかの見極めも可能です。
早く売りたいのか、時間がかかったとしてもなるべく高く売りたいのかなど、売却方針によって売り出し価格は変わります。
訪問査定では売主の状況に応じた柔軟な相談ができるため、売却することが決定している方に向いています。
有料査定と無料査定の違い
不動産の査定方法には、以下の2種類があります。
有料査定 | 無料査定 |
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不動産鑑定士(国家資格)による鑑定査定 | 不動産会社による査定 |
個人で不動産売却を検討している場合は、一般的に無料査定で対応可能です。しかし、無料査定の場合「営業の電話がかかってくる」「高い査定額を提示して媒介契約を結びたがる」といったトラブルも想定されるので注意が必要です。
こちらの記事では、不動産無料査定のトラブルを避ける方法も合わせて紹介しているので参考にしてみてください。
不動産査定は無料でできる!有料査定との違いや流れ、注意点を解説
不動産の査定額の決め方
不動産の査定額の決め方は次の通りです。
- 取引事例比較法
- 原価法
- 収益還元法
対象となる不動産によって、上記の3つの方法で査定額を決めています。
不動産会社が算定した査定額が適正なものかどうかを判断するためにも、査定額の計算方法は把握しておきたいですよね。
こちらの記事でも不動産査定の計算方法を紹介しているので、合わせてお読みください。
どうやって算出する?不動産価格の査定方法
ここからは、それぞれどのような査定内容なのかを解説します。
取引事例比較法(マンション・土地向き)
取引事例比較法では、過去の成約事例から査定額を算出します。
土地売却時の価格を決める計算式は次の通りです。
土地の価格=「平均坪単価(成約事例) × 面積(売却物件)」
たとえば、近隣の成約事例が㎡あたり50万円、売却する土地の面積が50㎡だった場合、計算式は次の通りです。
50万円 × 50㎡=2,500万円
算出結果をもとに、土地の形状や方角、日照条件、高低差などを加味して精度を高め、査定額を導き出します。
対象不動産と類似性がある売却データをもとに査定額を算出するため、マンションや土地の売却時に用いられることが一般的です。
>> メリットとデメリットを把握しておこう!取引事例比較法とは
原価法(一戸建て向き)
原価法では、不動産の再調達原価をもとに築年数など減価修正を加味して算出します。
中古住宅の建物部分を計算する方法で、算出式は次の通りです。
不動産価格=「再調達原価 × 延床面積 × 残存年数(耐用年数−築年数) ÷ 耐用年数」
再調達原価とは、今ある建物を壊して新たに建築するときにかかる費用の目安です。
また、残存年数(耐用年数−築年数) ÷ 耐用年数で求められる減価修正率は、建物の経年劣化分を差し引くことを意味します。
ちなみに木造住宅の法定耐用年数は22年です。
築12年の延床面積が100㎡の木造住宅で、再調達原価が20万円の場合の計算式は次の通りです。
20万円 × 100㎡ × (22−12) ÷ 22=約909万円
耐用年数である築22年を超過している木造住宅の場合、建物部分は資産価値なしとみなされます。
収益還元法(投資用不動産向き)
収益還元法とは、不動産の将来的な収益を現在価値に割り引いてから査定額を算出する方法であり、次の2パターンあります。
- 直接還元法:1年間の純利益(家賃収入から管理修繕費・税金など運用コストを差し引いた金額)を還元利回りで割って算出
- DCF法:将来的に予想される収益と売却価格から算出
直接還元法の算出式は次の通りです。
不動産価格= 「1年間の純収益 ÷ 還元利回り」
還元利回りは、賃貸用の住宅であれば一般的に5〜8%ほどが目安と考えられています。
たとえば、毎月15万円の家賃収入があり維持管理で年間30万円の運用コストがかかる、還元利回り7%の不動産で算出すると、査定額は次の通りです。
(15万円 × 12ヶ月−30万円) ÷ 7%=約2,142万円
一方、DCF法については、不動産を所有している期間中の家賃下落率や空室率などを加味し、家賃収入が得られないリスクを想定した不動産価格の算出方法です。所有不動産から将来的に得られる利益や売却価格を現在価値に換算して、その合計額から不動産価格を算出します。
DCF法は専門的な価格算出方法になるため、査定を依頼する不動産会社に算出してもらうことをおすすめします。
>> 利回り「○%」って?不動産投資の基礎知識「収益還元法」
不動産査定の流れ
実際に不動産査定(訪問査定)をおこなう際の流れを解説します。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 査定日時の打ち合わせ
- 査定に必要な書類を揃える
- 現地調査の立ち合い
- 査定結果の確認
- 不動産会社が査定書を作成
まずは、不動産会社に査定の依頼をします。
不動産の訪問査定時は基本的に立ち合いを求められるため、不動産会社とのスケジュールを調整しましょう。
現地調査では査定の実施のほか、どれくらいの価格でいつまでに売却したいのかなどの要望も伝えることも大切です。
査定結果が出たら「なぜこの査定額なのか」をヒアリングし、査定額が妥当性を確認しましょう。媒介契約を結びたいがために、意図的に相場より高めの査定額を提示する不動産会社も存在します。売却を安心して任せられる不動産会社かどうかを見極めることも重要です。
その後、不動産会社が「不動産査定書」の作成を行います。査定書は不動産を売却する際の売り出し価格を決めるために必要な書類となりますが、基本的に3ヶ月以内の売却を前提として作成されますので、3ヶ月経過すると不動産市況の変化により査定額が変わってしまう可能性があります。
不動産査定書について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
不動産査定書は2種類ある⁉特徴やそれぞれどんな時に利用するかご紹介
不動産査定時の必要書類
不動産査定時に必須な書類と、あるとよい書類は次の通りです。
必須書類 |
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あるとよい書類 |
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必須書類は、不動産の査定額を正確に見積もるために必要です。
あるとよい書類は、提出することで査定の精度が向上し、査定額が高くなるケースもあります。
不動産会社によっても必要書類が異なるため、査定の依頼時に確認するとスムーズに査定を進められるでしょう。
不動産査定時にチェックされる3つのポイント
不動産の訪問査定時に不動産会社がチェックするポイントは次の通りです。
- 依頼者へのヒアリング
- 現地での調査(敷地内)
- 現地での調査(周辺状況)
それぞれの項目の詳しい内容を解説します。
①依頼者へのヒアリング
依頼者へのヒアリングでチェックされるポイントは次の通りです。
- 売却理由
- 築年数や建物の構造
- 住宅ローンの残債
- 瑕疵や不具合箇所の有無
売却理由によっては売却の戦略が異なります。
売却先行で買い替えを行う場合、引き渡しまでの期間について買主と調整が必要になるケースがあります。そのため、査定時に伝えておくとよいでしょう。
築年数は、査定額を決めるうえでの大きなポイントです。
中古住宅の建物の価値は築年数の経過と共に減少しますので、経年減価分を加味して査定がおこなわれます。
また、不動産の売却時には、住宅ローンをすべて返済しなければなりません。
ローンの残債がある場合、手持ちの資金がいくらあるのか、どうやって一括返済するのかなど、不動産会社に相談する必要があります。
そのほか、売却後のトラブルを防止するため、雨漏りや設備不良などの不動産の瑕疵(欠陥)や不具合がある場合は包み隠さずに伝えましょう。
②現地での調査(敷地内)
住宅のある敷地内で現地調査する際に、不動産会社が確認するポイントは次の通りです。
- 土地や立地条件
- 建物の外装
- 住宅設備や内装
- 境界
建築基準法では、道路に2m以上接していないと接道義務を果たしていないとされ、再建築不可となります。
再構築不可の不動産は金融機関から融資を受けることができず、査定額が低くなるほか売却方法が限られる可能性があります。そのため、査定時には必ず確認します。
土地の面積や形状のほかにも、高低差があるかどうか、日照に問題はないかなども調査対象です。
住宅の室内では、内装や水回り、住宅設備の経年劣化について確認します。
太陽光発電などが設置してある住宅では付加価値が付き、正常に動作することが前提ですが、査定額が高くなる傾向にあります。
>> 建築基準法の接道が丸わかり!条件と満たさない場合の対処法
③現地での調査(周辺状況)
不動産の査定では、周辺環境の調査も重要なポイントです。
- 嫌悪施設の有無
- 騒音の有無
- ゴミ置場の管理状況
住みやすい環境かどうかは周辺環境によっても大きく変わります。
風紀の乱れていない静かな住宅街であるかなど、周辺の嫌悪施設について調査し現地で確認します。
そのほか、スーパーや医療機関、学校の有無も重要なポイントです。
ゴミ置場の管理状況を把握すると、自治会等が機能しているかどうかを把握できます。
人が住みやすい環境であるほど、査定額は高くなると言えるでしょう。
不動産査定時の注意点3選
不動産の査定時に注意したいポイントは次の通りです。
- 売却のタイミングを決めておく
- 周辺相場と比較する
- 設備の不具合や瑕疵がないか確認する
あらかじめ確認しておくと査定から売却までスムーズにおこなえるため、注意したいポイントを把握しておきましょう。
①売却のタイミングを決めておく
買い替えを売り先行で行う不動産売却の場合、売却のタイミングを決めておく必要があります。
不動産の売却をスタートしてから成約までに、3〜6ヶ月程度かかるのが一般的です。
また、売買契約が締結した後も引渡しまでには1〜2ヶ月ほどかかります。
したがって、売却開始から引渡しまでに最短でも半年前後かかることを想定しながら、スケジュール調整をする必要があると言えるでしょう。
不動産会社には「いつまでに売却したいのか」を伝えて、売却価格や売却方法をプランニングしてもらうことをおすすめします。
②周辺相場と比較する
不動産の査定価格は依頼する不動産会社によって異なるため、周辺の類似売却物件との相場を比較する必要があります。
売却価格が高すぎると買主が現れにくくなり、安すぎると早期に売れる可能性は高くなりますが損をしてしまう可能性があります。
立地や面積など条件が似ている不動産を物件情報サイトで探し、売却価格を比較して適正範囲であるかを見極めることが重要です。
③設備の不具合や瑕疵がないか確認する
売却する不動産の不具合や瑕疵(欠陥)については、売買契約書内に現況について記載が必要です。記載をせずに売買契約をおこなうと、売主として契約不適合責任を問われる可能性があります。
たとえば、雨漏りがあるのを知りながらもその旨を隠して売却し、引渡し後に買主とのトラブルに発展した場合には、売主は損害賠償の請求や契約解除される恐れがあります。
不動産の設備不良は査定額に影響するため、事前に申告することを躊躇してしまうかもしれません。しかし、売却後のトラブルを避けるためにも、契約内容との相違が生じないように設備を確認し、査定時には必ず不動産会社に伝えましょう。
>> 不動産売却における契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いを解説
不動産売却を成功させる2つのコツ
不動産売却を成功させるためのコツは次の通りです。
- 売却までのスケジュールに余裕をもつ
- 信頼できる不動産会社に依頼する
トラブルや不安感なく進めるためにも、それぞれを確認しておきましょう。
①売却までのスケジュールに余裕をもつ
立地条件や築年数など不動産の状況によっては、売却までに1年以上かかることも珍しくありません。
売却までに時間がかかると売却価格を下げなければいけないケースも出てくるため、スケジュールに余裕を持ちながらも適切に売却活動を進めることが重要です。
また、土地や戸建てを売却する場合、隣接地との境界が曖昧であると、確定測量をおこなってからでないと売却が進められません。
確定測量には3ヶ月前後かかりますので、測量が必要であれば早めに準備をおこないましょう。
②信頼できる不動産会社に依頼する
信頼できる不動産会社であるかどうかを判断するポイントは次の通りです。
- 売却実績や知識が豊富か
- 相談しやすい営業担当者か
売却実績が豊富な不動産会社の場合、売却の意向に沿ったスムーズな売却活動が期待できるでしょう。
希望の売却価格、売却期間で買主が見つかりやすいと言えます。
疑問点や不安点に寄り添った対応をしてくれる営業担当者であるかという点も重要です。
不動産売却は大きなお金が動くため、期待通りのサポートを受けられないと精神的にも疲れてしまうケースもあるでしょう。
相談しやすい真摯な対応をしてくれるかどうかも不動産売却を成功させるコツです。
まとめ
不動産査定は、売却時の売り出し価格を決める大切なスタートラインです。
査定時には、建物の築年数や外観、内装、設備などの状況のほか、土地や立地条件、周辺状況などのさまざまなポイントから査定額を算出します。
査定価格が高ければよいわけではありません。
周辺相場と相違ない査定額であるかどうか、売却のタイミングも考慮しながら、スムーズに売却できることが理想です。
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