家の建て替えに必要な費用とは?相場や費用を安く抑えるコツを解説

木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、実際に22年で住めなくなってしまうことはあまりありません。しかし、30年、40年、50年と暮らしていけば、徐々に不具合のある箇所が増えていきます。場合によっては建て替えが必要になりますが、建て替えにかかる費用は新築住宅の購入費用とは異なります。そのため、家の建て替えにかかる金額の相場を知った上で、できるだけ費用負担を減らすための工夫が大切です。
この記事では、家の建て替えにかかる金額の相場や、費用を安く抑えるコツなどについて解説します。

家の建て替えのために必要な費用

家を建て替える場合、さまざまな費用がかかります。物件の建築費用だけを用意しておけばよいというわけではないので気をつけましょう。
具体的にどのようなお金が必要になるのか、12の項目別に解説します。

引越し・仮住まい費用

現在住んでいる家を建て替える場合、建て替え工事の間は別の場所に住まなくてはならないため、仮住まいが必要となります。そのため、仮住まい先へ引っ越すときと仮住まい先から出ていくときの計2回分の引越し費用と、引越し先で発生する仮住まい費用が必要となります。
仮住まい費用の内訳としては、仮住まい先の敷金、礼金、仲介手数料などの初期費用、仮住まい先の家賃などです。ペットを飼っている、ピアノなどの楽器を弾く、といった特殊な事情がある場合は、仮住まいの選択肢が限られる上に、家賃や敷金などが高額になることもあるため注意が必要です。
さらに、仮住まいの物件に荷物が入りきらない場合には、トランクルームなどを別途借りなければいけません。また、引越しに際して荷物の処分をするのであれば、粗大ごみの処分費用なども発生することを覚えておきましょう。

解体費用

建て替えには、既存の家を解体するための費用が必要です。既存の家を建て替える場合には、既存の家の解体と処分が必要となり、この2つは新築の家を建築する場合にはない工程です。
解体にかかる費用は、解体する家の構造によって変わります。木造の家の解体費用が最も安価で、鉄筋コンクリート造の家の解体費用は木造に比べると高価です。また、物件周辺の環境や解体業者によっても金額が変わります。

また、解体だけを業者に頼むケースはまれであり、基本的には、建て替え物件の建築を依頼する建設会社が解体工事もセットで行います。そのため、建て替え代金の相見積もりを取る際は、解体費用についても比較しておきましょう。

登記費用

家の建て替えにあたっては、法務局で行うさまざまな登記にかかる費用も必要です。法務局で行う主な登記としては、既存の家を解体した際の登記である建物滅失登記、建て替えた住宅の所在や所有者などに関する登記である建物表題登記、建て替えた住宅の所有権を第三者に主張するための登記である所有権保存登記の3つです。
このうち、所有権保存登記には、固定資産税評価額の0.4%(軽減税率適用中は0.15%)の登録免許税がかかります。また、各登記の手続きは、一般的には司法書士などに依頼して代行してもらうため、報酬も都度発生します。
さらに、既存の家の住宅ローンの残額を完済した上で建て替える場合は、住宅ローンを組んでいる金融機関がその家を競売にかけることのできる権利である抵当権を抹消するための抵当権抹消登記も必要です。また、新たに住宅ローンを組んで建て替える場合には、抵当権設定登記もしなければいけません。

測量費用

家を建て替える際には、測量費用も必要です。測量によって、自らの土地の範囲の把握ができ、建て替え後の家の図面の作成ができるようになります。
既存の塀や境界標のある既存の家の建て替えであれば、現在の境界をもとにできるため、簡易的な測量である現況測量を行うことができます。これは、現在の塀の内側で建て替えるのであれば、境界を越えてしまうとは考えにくいためです。また、既存の家を建築した際の測量図がある場合は、それをもとに建て替えを行うこともあります。
このように、測量に伴う対応は、それぞれの土地の境界の状態によって異なります。建て替えを依頼する建設会社に確認してもらいましょう。

地盤調査・地盤改良工事費用

新築の家を建てるときと同様、建て替えの場合でも地盤調査は必須であるため、それに伴う費用がかかります。また、地盤調査の結果によっては、地盤改良工事の費用も必要となります。
地盤調査を行っていない場合、住宅瑕疵担保責任保険に加入できないため、万が一不具合が起こったときの補償が受けられません。また、一部例外はあるものの、法律でも物件新築時の地盤調査が義務づけられています。

建築費用

建て替えの際には、建て替え作業を行うハウスメーカーや工務店などに支払う建築費用がかかります。具体的な金額は、依頼する業者や建設する家の設備、広さ、間取りなどに応じて変わります。
建築費用の内訳は、家そのものを建てるための費用だけではありません。ガス工事や電気工事などにかかる費用や、外構などの工事契約も併せて締結すれば庭や塀といった外構にかかる費用なども建築費用に含まれます。
なお、建築費用は、ハウスメーカーや工務店から最初に出された見積もりよりも最終的な実費が高くなるケースが多いため、注意が必要です。特に、住宅の設備や間取りなどに対して強いこだわりを持っている方の場合は、予算を多めにとっておいた方が安心といえます。最初に提示された見積もりよりも多少高くなっても対応できる予算を、あらかじめ設定しておくことが大切です。

設計費用

家の建て替えを行う際、設計事務所に設計を依頼する場合は、建設会社に支払う建築費用とは別に、設計事務所に支払う設計費用が発生します。設計費用の具体的な金額は、各設計事務所によってさまざまです。
ただし、一般的には設計事務所ではなく、ハウスメーカーや工務店などに建て替えを依頼するケースが多く、その場合の設計費用は家の建築費用に含まれるため、別途支払う必要はありません。

地鎮祭、上棟式の費用

家を建て替える際には、安全祈願と完成祈願の儀式である地鎮祭と上棟式を行うため、それらに伴う費用がかかります。
ただし近年では、地鎮祭や上棟式を行わないケースもあり、基本的には家主の希望に合わせて実施の有無を選択することができますが、地域によっては、地鎮祭や上棟式を行うのが当たり前というところもあります。最近は減っているものの、近所の方を集めて餅撒きをするようなケースもあるため、その地域の慣習に合わせることも大切です。
地鎮祭や上棟式を行う場合は、地鎮祭を行う神主へのお礼やお供え物、お酒などの費用が発生します。通常、儀式に必要な物品の手配は工事を担当する建設会社などが進めてくれる場合が多いため、あらかじめ必要な金額やスケジュールなどを相談しておきましょう。

住宅ローン関連費用

建て替え費用を住宅ローンでまかなう場合は、事務手数料や保証料、抵当権の設定登記費用といった費用が発生します。
既存の土地に家を建て替える場合、土地を新たに買う必要はありません。しかし、解体費用や建設費用だけでもまとまった金額になってしまいます。全額を貯金でまかなえれば住宅ローンは必要ありませんが、そうでない場合は、新築住宅を購入する際と同様に、住宅ローンを組むことになります。
住宅ローンに関する初期費用は、借入をする金融機関によって大きく異なります。手数料が高額で保証料が必要ないプランや手数料が低く保証料がかかるプランなど、複数のプランを用意している金融機関もあるため、確認してみましょう。金利だけでなく、初期費用の額や最終的に支払う金額なども併せて金融機関ごとで算出してもらい、それぞれで細かい見積もりを取って比較するのがおすすめです。
なお、建て替えの場合でも一定の要件を満たしていれば、年末時点のローン残高をもとに所得税と住民税の一部が減額される住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用することができます。

各種税金

家の建て替えを行うことで、さまざまな税金がかかります。具体的には、工事請負契約書や住宅ローン契約書などに印紙を貼付することで納税する印紙税、物件を取得した際にかかる不動産取得税、前述した登記の際にかかる登録免許税の3つです。
印紙税は契約金額によって異なり、住宅建設時に必要な工事請負契約書を作成する際に、必要に応じた印紙を工事請負契約書に貼る形で納税します。また、不動産取得税として納めるべき金額は、その家の固定資産評価額の3%です。ただし、不動産取得税は実際の建築費用ではなく、固定資産税評価額をもとに計算されるため、地方税法により定められた要件を満たせば1,200万円の控除が受けられ、実際にはほとんどかからない場合が一般的です。
ただし、金額にかかわらず、各種税金の申告は必要です。建て替えが完了したら、都道府県税事務所で手続きを行いましょう。

火災保険料

家の建て替えを行う際には、火災保険の契約内容を変える必要があるため、契約内容に応じた火災保険料を支払う必要があります。
既存の家に対して火災保険や地震保険をかけている場合は、保険会社に連絡をし、状況に応じて保険内容の変更や解約、再加入の手続きをしましょう。
なお、住宅ローンを組む際には、同時に火災保険への加入を求められるケースがほとんどです。火災保険への加入は義務ではありませんが、火災保険に加入していなければ、災害で住宅が損害を受けたときの保障が受けられなくなります。災害はいつ起こるかわからないため、保険の空白期間ができないよう注意が必要です。

照明・家具などの費用

家の建て替えをきっかけに、照明や家具、カーテンなどを買い替える場合に備えて、その分の費用を用意しておく必要があります。
もちろん、元々使っていたものを使うこともできますが、サイズや数などが合わなかったり、新しい家のインテリアに合わなかったりする可能性があります。買い替える予定がない場合でも、ある程度の予算はとっておくようにしましょう。

建て替えにかかる平均費用

2022年3月に国土交通省が発表した「令和3年度住宅市場動向調査報告書」によると、注文住宅の建て替えにかかる費用の平均は3,299万円です。このうち、自己資金は平均1,828万円、住宅ローンは平均1,471万円で、自己資金率は55.4%でした。
一方、土地を購入して注文住宅を新築した場合の平均額は5,112万円で、自己資金は平均1,203万円、住宅ローンは平均3,909万円で、自己資金率は23.5%です。このことから、新築よりも建て替え時の方が潤沢な自己資金を用意する方が多いことがわかります。

建て替えは新築よりも高齢になってから行う場合が多いため、その分、自己資金も増える傾向にあるといえるでしょう。また、高齢であることから多額の住宅ローンを組むのが難しい可能性もあります。上記「令和3年度住宅市場動向調査報告書」に記載された住宅ローンの有無に関する調査でも、家の建て替えの際に住宅ローンを利用する世帯は全体の47.8%であることがわかっており、この数字は、新築注文住宅を建てる場合の84.1%や分譲戸建て住宅の70.9%などに比べ、非常に低くなっています。

ただし、上記はあくまでも平均です。平均値は一部の非常に高額な住宅の影響で高く算出されるケースがあるため、あくまでも参考に留めましょう。
実際にかかる費用は、希望する住宅の種類や広さ、依頼する建設会社などによって大きく変わります。自宅を建て替えた場合の相場が知りたい方は、工務店やハウスメーカーで見積もりを取ってみてください。

家の建て替え費用を安く抑えるコツ

家の建て替え費用は、事前にある程度の上限金額を決めておかないと、後々にどんどんかさんでしまうものです。
ここでは、家の建て替え費用をなるべく安く抑えるためのコツを紹介します。

給付金や補助金、減税措置を利用する

それぞれの自治体ごとで用意されているさまざまな補助制度を利用することで、家の建て替え費用を安く抑えることができます。
まずは、自身の住んでいる自治体にどのような制度があるのか調べてみることが大切です。例えば、一定以上年数が経過した住宅を解体する場合の解体費用を補助している自治体もあります。要件に当てはまれば、解体費用の一部が助成されます。中には、ブロック塀を壊して生け垣を造る際や、生け垣を新たに設置する際に補助金が交付されるなど、外構部分の補助制度を用意している自治体もあるため、チェックしてみてください。
また、太陽光発電や雨水タンクの設置など、特定の設備を導入した場合に受け取れる助成金や補助金もあります。特に、環境に配慮した住宅や、太陽光発電などを活用することで消費エネルギーを実質的にゼロ以下にするZEH住宅などを建築しようとしている場合は、助成金の対象になる場合があるため、よく調べてみましょう。

シンプルな形や間取りの家にする

できるだけシンプルな形や間取りの家にすることで、建て替え費用を抑えることができます。反対に、複雑な形の家やこだわりの間取りの住宅を造ろうとすると、その分建築費用は高額になっていきます。
ただし、予算削減だけに気を取られすぎるのではなく、大前提として何年、何十年と毎日の暮らしを送る家であることも意識しましょう。譲れるところと譲れないところの優先順位をつけて検討することが大切です。

二世帯住宅は完全分離型にしない

二世帯住宅を建て替える場合や、同じ敷地内に建っている2つの住宅を1つに建て替える場合は、完全分離型にしない方がコストを抑えられます。玄関やキッチンなどをそれぞれの住宅ごとに造るのか共同にするか、十分に検討することが大切です。
とはいえ、二世帯住宅の構造をどうするかという点は、その後の暮らしに大きな影響を与えます。コストを抑えるためとはいえ、二世帯住宅のキッチンを共同にしたら、結局両世帯の生活リズムが合わず、結果的に不便になってしまうこともあり得ます。

不便になってしまったり、結局別居してしまったりするようであれば、余計なお金がかかってしまいます。費用削減にとらわれすぎることなく、家族全員がストレスなく暮らせる住まいづくりを第一に考えましょう。

仮住まい費用をできるだけ抑える

仮住まいにかかる費用は、建て替える家そのものや将来の生活に影響しないお金であるため、最も節約しやすい費用です。
具体的には、礼金・仲介手数料が0円の物件や賃料の安い住宅を探したり、繁忙期の引越しを避けたりすることで、仮住まい費用を抑えることができます。
なお、物件の中には当初1ヵ月の賃料無料といったフリーレントを行っているところもあります。しかし、フリーレント物件は一定以上継続して賃貸しないと解約金を取られることが多いため、建て替え時の仮住まいには適さない可能性が高いでしょう。

贈与税の非課税枠を活用する

一般的に贈与を受ける場合、年間110万円を超える額に関しては贈与税の対象となります。しかし、家を建て替えるにあたって、両親や祖父母といった直系尊属から贈与を受けたときには、住宅資金贈与の非課税の特例を利用して、贈与税が免除され、建て替え費用を抑えられる場合があります。
住宅資金贈与の非課税の特例を利用するための条件は、以下のとおりです。

<住宅資金贈与の非課税の特例の利用条件>
・建て替える住宅の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下
・贈与を受ける方の合計所得額が2,000万円以下(住宅が40平方メートル以上50平方メートル未満なら1,000万円以下)
・2009年から2021年までに該当の特例を利用していない(2022年に贈与を受ける場合)
・2023年3月15日までに贈与された全額を使って住宅を新築する(2022年に贈与を受ける場合)

その他、親族などから譲渡される家でないこと、日本国内に住所があること、といった細かい要件はありますが、おおよそ上記を満たせば特例を利用できる可能性が高いでしょう。
なお、合計所得額は、年収とは一致しません。給与収入だけの場合、年収2,195万円は所得2,000万円に該当します。
ただし、贈与税の特例を利用する場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署で申告しなければいけません。申告をしないと脱税とみなされる可能性があるので、必ず手続きを行ってください。

複数のハウスメーカーに見積もりを依頼する

建て替えを依頼する建設会社選びを工夫することでも、価格を下げることが可能です。工務店やハウスメーカーなど、複数社に依頼して比較してみましょう。
ただし、どこに依頼するかは家の仕上がりにも関わってきます。見積もり金額だけでなく、希望する設備や間取り、テイストの家を建てることができるのかといった点も考えて総合的に判断するのが大切です。モデルハウスなどを参考にするのがおすすめです。

建て替えと住み替えの判断は総合的に検討しよう

住宅の建て替えをする際は、コストの総額と、建て替え後に希望したとおりの暮らしを実現できるかどうかについて、十分検討する必要があります。
コスト面や暮らしについて懸念点がある場合は、買い替えについても考えてみましょう。状況によっては、既存の土地で建て替えをするよりも、今の住まいを売却して新しい家に住み替えた方が、メリットがより大きいかもしれません。
例えば、しばらくの間は3階建ての住宅に住む予定であるものの、足腰が弱った後は住みやすい平屋に住みたいと考えている場合、土地が狭いと必要な広さを確保できない可能性があるでしょう。また、自宅の周辺環境が、子育てには向いているものの老後の生活には適さないといったケースも考えられます。
そのため、早い段階で、あらかじめ住み替えと建て替えの両方を視野に入れて幅広く検討することで、各世帯にとって最適な選択肢を見つけやすくなるはずです。

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