建築物は建築基準法などの法律に沿って建てることを義務付けられています。ところが、実際には法律に適合していない「違法建築」や「既存不適格」と呼ばれる建物が存在します。自宅のリフォームや売却を考える際には、それらに該当していないかを確認することが大切です。
そこで、この記事では、違法建築と既存不適格のそれぞれの内容と2つの違いについて説明をしていきます。
この記事の目次
どんな建物が違法建築?
違法建築とは一言でいうと、建築基準法などの法律に違反して建築された建物のことです。具体的には、建ぺい率や容積率の上限を超過している、敷地の接道義務を果たしていないなどといったものがあります。
建ぺい率
たとえば、建ぺい率の上限が60%のところを70%の割合で建築物を建ててしまうと違法建築になる
容積率
これにも定められた上限があり、それを超えると違法行為になる
接道義務
建築に関してはその他にもさまざまな決まりごとがあり、一つでもそれに違反しているとすべて違法建築になります。したがって、家を建てようと思えば、建築基準法などの法律に違反してないかをしっかり確認する必要があるわけです。
また、建築した時点では適法であっても、その後、建築確認申請をせずに増改築を行った場合も違法建築となります。これは改築内容が適法か違法かは関係なく、申請をしなかったこと自体が違法行為となるのです。
そして、家が違法建築である事実が判明すると、最悪の場合、建物の取り壊しや使用禁止などの是正措置がとられることになります。さらに、建設中に違法の事実が判明した場合には工事停止命令が下されます。
どんな建物が既存不適格?
既存不適格とは、建築した当時は適法な建物だったものの、法律の改正によって現在では適法ではなくなったものを指します。
たとえば、建ぺい率や容積率、高さ制限などの上限が変更されて規定の数字を超過してしまったなどといったケースです。
建築基準法などの建築関連の法律は建築技術と密接な関係にあるため、その進歩によって頻繁に改正される可能性があります。つまり、自分の知らない間に自宅が既存不適格になってしまったという事態も十分にありうるわけです。
また、道路として敷地の一部が買収されたため、敷地面積が減少して建ぺい率・容積率が規定の数値を超過したといった具合に、不可抗力で法律に抵触した場合も既存不適格扱いになります。
家が既存不適格の建物となると罰則があるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、その心配は不要です。既存不適格自体は違法ではなく、そのままの状態での存在が認められています。
ただし、既存不適格の状態のまま、増改築を行ってしまうと違法建築になってしまうので注意が必要です。増改築を行う場合には、不適格となった状態を解消して、現在の法律に適合するようにしなくてはならないのです。
仮に、建ぺい率が70%の既存不適格の家があったとして、現法では上限が60%だとすると増改築するには建築部分を大幅に小さくするしかなくなってしまいます。そのため、家の増改築をあきらめるといった例も少なくないのです。
とはいえ、既存不適格の増改築に関しては一定の緩和措置が設けられている例もあるため、まずは現在の法律がどうなっているかをしっかり確認することが大切です。
違法建築と既存不適格の違い
違法建築物を担保にして住宅ローンを利用しようとしても、多くの場合、金融機関から断られることになってしまいます。なぜなら、法律から逸脱した物件なので正確な価値を算出するのが困難だからです。
また、売却をしようと思ってもその際には違法建築である事実を告知しなければなりません。そうなると、当然、買主は限定されることになりますし、資産価値そのものが大幅に下がってしまいます。
一方、既存不適格の建物なら違法ではないので、原則として住宅ローンが利用できなくなるようなことはありません。ただ、建築当時と現在の規制数値の差が大きい場合には、住宅ローンの利用に影響する可能性があります。また、売却の際には既存不適格である事実を買主に伝えなければならないという点は違法建築の場合と同じです。
同時に、改築や建て替えの際に制限がかかるという事実も説明しなければならないため、買主の印象が悪くなって購入を避けられるというケースは十分に考えられます。それでも、既存不適格物件が得意な不動産業者に依頼するなどして、それなりの価格で売却することはできないわけではありません。
少なくとも、法律違反の違法建築物件を売却するのと比べると、そのハードルは低いといえるでしょう。
違法建築でないことを確認する方法
自分の家を担保にして金融機関の融資を利用する際には、建物が違法建築でないことを証明する必要があります。
その方法として最も簡単なのは検査済証を確認することです。検査済証とは建物の建築工事が全て完了したのちに、検査をして敷地・構造・建築設備などがすべて適法だった場合に交付される証明書です。それがあれば、たとえ現在は法律に沿っていなくても建築した時点では適法であった事実を明らかにすることができます。
ただ、古い建物の場合は検査済証が紛失してどこにあるのかわからないといったケースも珍しくありません。そのときは建物を所管する役所の建築指導課で完了検査を受けているかどうかを確認することができます。
仮に、金融機関の融資などを利用する場合は、その確認をした上で、台帳記載事項証明書や建築基準法の法適合調査等の裏付書類を取得して金融機関に提出すればよいわけです。
ちなみに、「増改築をするために違法建築でないことを確認したいが、検査済証がない」といったケースでは建築士に依頼するという手もあります。そうすれば、依頼を受けた建築士が一定の調査をした上で、特定行政庁や指定確認検査機関に増改築工事などの相談や確認申請をしてくれます。
それから、検査済証があったにも関わらず違法建築だったという場合があることは一応知っておいた方がよいでしょう。
たとえば、建売住宅の吹き抜けだった部分を検査済証が交付されてから業者自身が床を張り、容積率が規制値をオーバーしたというケースです。無許可で改築すること自体が違法ですが、建売住宅を建てた業者は自社で改築ができるのでそのようなことが可能となります。
そのため、極めてレアなケースではあるのですが、業者側に悪意があった場合には検査済証があるのに違法建築だったという事態も起こりうるのです。
既存不適格でないことを確認する方法
検査済証を確認できたとしても、それだけでは違法建築ではないことを証明したにすぎず、既存不適格でないという証明にはなりません。
既存不適格かどうかを知るためには建築された後に関係法令や都市計画区域がどのように変わったのかを把握しなければならないのです。その上で、建ぺい率や容積率といった数値が現在の規制数値内に収まっているかを確認して、初めて既存不適格でないという事実が証明できたことになります。
それには専門的な知識や情報が必要であり、一般人が正確な判断を行うのはきわめて困難です。そこで、既存不適格かどうかを知りたい場合は役所の建築指導課や専門家に相談することをおすすめします。
既存不適格建築物をリフォームする方法
リフォームを検討する際には、まず、自分の家が既存不適格でない事実を確認することが大切です。その結果、既存不適格でないと分かれば、法律に定められている範囲内で自由に増改築を行うことができます。
その一方で、既存不適格だと判明すると床面積などを小さくしないとリフォームができないのかとがっかりするかもしれません。しかし、実際は既存不適格建築物であっても、建築確認が必要のないリフォームであれば床面積はそのままにしておくことが可能です。
また、リフォームの業者選びをするのであれば、最大5社まで見積りが無料で取れる「リノコ」を利用するのがおすすめです。違法建築や既存不適格 などについてよく理解し、上手なリフォームをしていきましょう。