建物の新築や増築をする際には、その建築内容が建築基準法や各種条例などに適合している必要があります。

適合しているかどうかの確認は、着工前・工事中・竣工後と各段階で行われます。その際に必要となる書類が、建築確認申請書や建築確認済証です。

この記事では、建物を建てる際の工程や着工から竣工までの各段階で必要となる書類にどのようなものがあるかについて説明します。

建物を建築する際の流れとは?

建物を建築するときの一般的な作業の流れは、大まかに次の8つの段階が必要になります。

法令関係の認証については「建築確認」と「確認済証」、「中間検査」と「中間検査合格証」、及び「完了検査」と「検査済証」がセットになる点がポイントです。

建一般的な作業の流れは大まかに8つの段階が必要

1.建築計画の作成

クライアントからの問い合わせに対して、条件を整理して、建物の計画案を作成します。

敷地・予算・目的などを勘案し、クライアントとの打ち合わせを繰り返して、最適な建物を検討して図面化します。

2.事前審査

平成19年6月20日施行の建築基準法改正によって、軽微な修正以外の確認申請書の訂正が難しくなりました。

そのため、特定行政庁や指定確認機関で、本申請の前に提出書類の不備をチェックする機会を設ける場合があります。これを「事前審査」と呼んでいます。

3.建築確認

建築基準法などを守った設計になっているかどうか、着工前に建築主事または、民間の指定確認検査機関に対して、建築確認の申請が必要です。これを「建築確認」と呼んでいます。

申請に必要な書類は、建築基準法に適合していることを証明できるものです。

申請に必要な書類
■仕様書
■工法についての認定書
■設計図
■付近見取り図などの設計図面

一定の規模の建物の場合
■耐震性能が記載された構造計算書

なお、申請する建物が消防法上の防火対象物となるときには、建築確認申請前に所定の手続きを終えておく必要があります。建築確認が完了すると、確認済証が交付されるのです。

4.着工

確認済証の交付後に、建築工事が始まります。

厳密な意味での「着工」とは、根切り工事や杭工事などの基礎工事を開始した時点です。伝統的な慣習としては、着工前に地鎮祭を行うことが一般的でしたが、省略されることもあります。

5.中間検査

建物の用途や規模により、建築確認で申請・承認された内容通りに工事が進められているかどうかの確認が法律で義務付けられています。これが「中間検査」です。

中間検査では、構造体が主な検査対象で、確認検査機関が行います。検査で重大な問題が見つかれば、再度建築確認を受けることになります。

6.工事完了

すべての建築工事が終わった状態を「工事完了」と呼びます。

7.完了検査

工事が完了したら、設計図どおりに建物ができているかどうかをチェックします。チェックは

■設計事務所などの設計監理者
■工事施工者(竣工検査)
■クライアント(施主検査)

など、それぞれの責任範囲で行うのです。

建築主事などにより行われる建築基準法に基づいた検査は「完了検査」と呼ばれます。工事完了後4日以内に建築主が建築主事宛に「工事完了通知書」などを提出して、完了検査を依頼するのです。

完了検査後、完成した建物が建築基準法に適合している場合は、建築主事により建築主に「検査済証」が交付されます。

8.引き渡し

検査がすべて完了した後で、建築主に鍵などが渡されて「引き渡し」となります。

通常は、この時点で、設計事務所などへの工事監理費、施工会社への請負契約工事代金、追加工事代金などの残金の支払いを完了します。

建築確認申請書とは?

新築はもちろんのこと、増改築であっても建物を建てる際には、その建物が建築基準法や自治体の各種条例などに適合しているかどうかの確認を受ける必要があります。この確認は、着工前に済ませておかなければなりません。

建物が建築基準法や自治体の各種条例などに適合しているかどうかの確認を受ける必要がある

確認を受けるための自治体や民間の指定確認検査機関に提出する書類が「建築確認申請書(けんちくかくにんしんせいしょ)」です。

同時に提出する書類に「建築計画概要書(けんちくけいかくがいようしょ)」があります。

建築計画概要書は、敷地面積・建物の規模・配置図などが記載されており、建築確認がおりたものに関しては一般に公開されます。

これらの書類は、同じ書類を2部作成して、それぞれ正・副とします。建築主事や指定確認検査機関に提出し、確認で問題なければ、副本が確認済証と共に返却されるのです。

一般的に建物が建築主に引き渡されるまでは、依頼先の建築会社が保管します。

建築確認済証とは?

建築確認申請書を提出し、建築する建物が建築基準法や条例などに適合していて問題ないと確認された場合に「建築確認済証(けんちくかくにんずみしょう)」が交付されます。

建築確認済証の交付があって、初めて建築工事に着工できるのです。また、建物の規模や構造によっては、建築確認申請書どおりに工事が行われているかを確認するために、中間検査があります。

木造3階建てや一定以上の規模を持つ鉄骨造、及び鉄筋コンクリート造の建物が対象になるのです。

中間検査が必要な建築工事の場合、その工程は中間検査をはさんで、特定工程と後続工程に分けられます。

特定工程
■一般的には鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの1階の建て方工事
■木造の屋根工事
■それ以外の構造の場合は2階の床工事が完了するまでを指す

中間検査に合格しないと後続工程に着手することはできません。

なお、規模が大きい建物の場合は、基礎の配筋工事の完了時にも中間検査が必要になることがあり、合計で2回の中間検査が必要です。

検査済証とは?

建物の完成後に行われる完了検査に合格すると「検査済証(けんさずみしょう)」が発行されます。検査済証の交付がないと、建物が完成していても使用に供することができません。

検査済証
建築物が
■敷地
■構造
■建築設備

に関する法令に適合していることを証明する書類

紛失しても再発行はできないので保管には最新の注意を払う必要があります。なお、検査済証がない場合でも、関連法規に適合しており、違法建築ではないことを証明する方法があります。まず、建築士に

「現況調査報告書(げんきょうちょうさほうこくしょ)」の作成を依頼する

のです。この報告書を特定行政庁や指定確認検査機関に提出して「法適合状況調査(ほうてきごうじょうきょうちょうさ)」を受け、適合判定をもらいます。

確認済証と検査済証が必要な理由

建築確認済証と検査済証は、主に以下のような理由で必要になります。

確認済証と検査済証が必要な理由?

建物建築費用のローンの申請時に

住宅ローンを組む際の申請書類として、建売住宅の場合には建築確認が完了していることを証明する書類の提出が必要です。

建物を売却する際の証明として

戸建住宅を売買する際には、建築基準法に適合した建物であることを証明する書類として、確認済証と検査済証が必須です。なお、売却の際には、設計図書一式と工事記録書の提出もあわせて必要な場合があります。

家のリフォームの際に

リフォームの規模によっては「増築」にあたるため確認申請をします。防火地域や準防火地域内の10平方メートルを超える建築行為は増築扱いです。増築の確認申請を出す前提として、既存の建物の検査済証が必要になります。

確認済証・検査済証は大切に保管しよう

建築確認済証や検査済証は、その建物が建築基準法などの法令に適合して建てられたものであるかどうかを判定するための重要な書類です。将来、家をリフォーム・増改築する際や売却する際には、必要になる場合がほとんどなのです。

たとえば、検査済証を紛失したまま増築しようとすると、現況調査報告書などを改めて作成する必要があります。建築確認済証や検査済証は、建物の資産価値を担保する大切な書類なので、保管場所には十分留意することが望まれるのです。