不動産の登記簿とは、その不動産がどのようなもので、所有者が誰であるかを記したものです。また、増築や売却など、過去にその不動産に何を行っているのかも把握できます。
不動産登記は、そのような登記簿に登記することをいいます。そして、不動産登記の1つとして行うのが滅失登記です。滅失登記がどのような登記なのかを、これから紹介していきます。
この記事の目次
滅失登記とは何なのか?
滅失登記は、正確には建物滅失登記といいます。
現在ある建物の登記簿を除去するために必要な登記で、それによって建物がもう存在しないことの証明になるのです。説明を分かりやすくするために、不動産が新たにできた際に行う表題登記を不動産の出生届、滅失登記を死亡届に例えるケースも多くあります。
滅失登記は、解体して建物が無くなってから1カ月以内に法務局に申請する義務があります。申請義務を怠った場合には、10万円以下の過料という罰則も定められているので、注意が必要です。
滅失登記の申請を行うと、法務局から居住する市町村役場に通知が行き、施主が手続きをすることなく課税台帳から外れます。また、滅失登記が完了したとき、登記簿は除去されて閉鎖登記簿になります。
滅失登記がうまく完了しない間は、固定資産税を払い続けるといったケースもあり得る話です。固定資産税をいつまでも徴収されないためにも、滅失登記は大切な手続きといえるでしょう。
滅失登記に必要となるもの
登記申請書
解体業者から発行してもらう取毀し証明書
・建物の表示
・所有者
・滅失の理由などが記載
・解体業者名と実印が押されている
解体業者の印鑑証明書
業者本人の印鑑証明書
■解体業者(法人)
会社の印鑑証明書が必要
■滅失届の提出が必要な土地を管轄する法務局
=業者の本店所在地を管轄する法務局
(同一の場合)
⇓
印鑑証明書の添付を省略することが可能
建物があった場所の住宅地図
手書きであっても構わない
登記申請書のコピーが1部
他者に委任する場合には委任状
滅失登記を依頼する方法
登記に関する事柄は、土地家屋調査士や司法書士に依頼するのが一般的です。その中で、滅失登記に関しての依頼は
土地家屋調査士に依頼をする場合には、手続きには1~2週間程度の期間がかかります。そのため、土地家屋調査士に依頼するのであれば、建物が無くなったら速やかに手続きを進めなければなりません。
また、登記に関する依頼は司法書士に対して行うイメージがありますが
土地家屋調査士に滅失登記を依頼する場合、費用は4万円から5万円ほどかかります。滅失登記の場合は、費用については土地家屋調査士に対する報酬のみとなります。
滅失登記を自分でする方法
滅失登記は、自分で行うことも可能です。自分で行う場合には、慣れない作業が多くなることが予想されるので、必要書類の確認や準備は早目に行った方が良いでしょう。
建物滅失登記申請書の作成が必要
■申請書
鉛筆以外の黒色のボールペンかインク、パソコンなどで作成
■申請人の欄
登記簿謄本に記載されている名義人の住所及び氏名を記載
■申請書の欄にある不動産番号や所在・家屋番号
登記簿謄本に記載されている通りに記入
■記入し終えた申請書のコピーが必要
自治体によって必要枚数が違うため、管轄の法務局出張所への確認をしておくと安心
■法務局には登記に関しての相談窓口が設置されている場合もある
書類などに不安な点があれば、相談を受けておくとよい
登記申請書の作成が終わったら
登記が完了した場合、登記完了証を受け取ることができる
■法務局に直接提出する場合
平日に行かなければならない
■郵送によって申請を行う場合
封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記入したうえで書留郵便で送る
切手を貼った返送用封筒も忘れずに同封する
(登記が完了した際の登記完了証を返送してもらうため)
※書類に不備があった場合や補正が必要となったときに余計に手間がかかるため、可能であれば平日に直接法務局に行って申請を行った方が安全
登記にかかる費用
・滅失登記には登録免許税がかからないため
・建物の登記簿謄本を受け取る費用
・法務局への郵送代
・交通費
程度で済む
滅失登記をする際の注意
滅失登記申請を行う前に、その建物の登記情報を取得して、建物の登記について確認しておく必要があります。中には、表題登記申請を行っていない建物もあるからです。
建物の登記情報の取得は、建物のある地域を管轄する法務局や支局に行って、交付申請書と手数料を出すことによって誰でも可能です。建物の所有者が行う必要はありません。
申請人の住所氏名と建物の所在地番などを記載して窓口に申請をすることで、その所在地番の上で登記されているすべての建物の登記情報を取得することができます。
登記情報には登記事項証明書と登記事項要約書がありますが、滅失登記の申請を行う際の確認であれば登記事項要約書で十分です。登記事項要約書であれば、登記事項証明書よりも手数料を安く済ませることができます。
建物が登記されていなかった場合には、申請書に書かれた所在地番上に登記がないことを窓口で伝えられます。
登記がされていない場合には、最終の登記情報が記された登記事項要約書があれば、登記されていないことの証明になります。また、登記がされていない建物を解体した場合には、建物の所在する市区町村の税務課窓口に「家屋滅失届」を提出しなければなりません。
家屋滅失届を提出する際には、解体業者が発行する取毀し証明書を添付する必要があります。家屋滅失届を提出すると、役所の職員によって現地調査が行われることもあるので確認が必要です。家屋滅失届が未提出のままでは、市区町村で確認することができないため、引き続き固定資産税が徴収されてしまうこともあり得ます。
建物の登記がされていなかった場合でも、家屋滅失届の提出は忘れずに行いましょう。ちなみに、登記してある建物を解体した場合には、家屋滅失届の提出だけでは滅失登記の完了にはなりません。
取り壊したら速やかに登記を!
滅失登記は、建物を取り壊してから1カ月以内にする必要があります。1カ月という期間は、確認などに手間取った場合にはかなり短い時間になってしまいます。そのため、できるだけ速やかに登記の手続きを済ませなければなりません。
滅失登記は通常それほど難しくはないため、自分で行うことも可能です。ただし、1カ月以内に行うために時間が取れない場合は、土地家屋調査士に依頼をして速やかに登記を済ませましょう。