法人の不動産売却と個人の不動産売却では、かかる税が異なります。不動産における仕訳は、非常に煩雑です。抜け落ちや勘違いが発生しないように、法人の不動産売却時の仕訳方法について、仕訳例をいくつか用いてわかりやすく解説します。

課税事業者は消費税に注意

不動産売却をした法人が課税業者の場合は、消費税がかかります。しかし、建物と土地の両方に消費税がかかるわけではありません。建物の売却には消費税がかかりますが、土地の売却には消費税がかかりません。

そのため、不動産売却を行った際は建物の代金がいくらで土地の代金がいくらだったのか、内訳を把握するようにしましょう。把握できていないと、決算時の消費税の計算ができなくなります。

個人の不動産売却の場合は、建物・土地ともに消費税はかかりません。

不動産を売却したら固定資産売却損益勘定を使う

不動産のような固定資産を売買した場合、売上勘定ではなく

■固定資産売却損益勘定
不動産のほかに自動車などの固定資産を売買した時にも使われる勘定項目

を使います。

固定資産を売却を行ったら固定資産売却損益勘定を使う

まずは、仲介手数料の基本を抑えておきましょう。

仲介手数料の上限

売買価格200万円以下の場合
売却価格の5.4以内
売買価格200万円超え~400万円以下の場合
売却価格の4.32%以内
400万円を超える場合
売却価格の3.24%以内

仲介手数料の計算

今回は、仲介手数料を下記の割合で設定して計算しましょう。

200万円超~400万円以下の場合
4%
400万円を超える場合
3%

それでは、簿価400万円の土地を売却した前提で仕訳例を説明していきます。

【仕訳例1】簿価400万円よりも、不動産売却価格が高かった場合

土地の価格が500万円で売れた場合

固定資産売却益
500万円-400万円=100万円
仲介手数料
売却価格の3%とする
500万円×3%=15万円
借方
現金・・・4,850,000
支払手数料・・・150,000
貸方
土地・・・4,000,000
固定資産売却益・・・1,000,000

※土地の場合、不動産売却代金400万円は非課税売り上げになるので、消費税は課税されません。

【仕訳例2】簿価400万円よりも、不動産売却価格が低かった場合

土地の価格が300万円で売れた場合

固定資産売却益
300万円-400万円= -100万円
仲介手数料
売却価格の4%とする
300万円×4%=12万円
借方
現金・・・2,880,000
支払手数料・・・120,000
固定資産売却損・・・1,000,000
貸方
土地・・・3,000,000

※土地の場合、不動産売却代金300万円は非課税売り上げになるので、消費税は課税されません。

土地と建物を一括で売却する場合は別々に仕訳する

「土地・建物共に売却益が出た場合」と「土地・建物共に売却損が出た場合」と「建物が売却損となり、土地が売却益となった場合」の仕訳例を説明します。

土地建物を一括で売却する場合は別に仕訳

【仕訳例1】土地・建物共に売却益が出た場合

簿価が800万円の不動産(土地500万・建物300万円)を900万円(土地520万円・建物380万円)で売却した場合

土地
520万 – 500万 = 20万円(売却益)
建物
380万 – 300万 = 80万円(売却益)
借方
現金・・・9,000,000
貸方
土地・・・5,000,000
固定資産売却益・・・200,000
建物・・・3,000,000
固定資産売却益・・・800,000

それぞれの固定資産売却益を計上しましょう。

土地と、土地の固定資産売却益は、非課税売上に対して、建物と、建物の固定資産売却益は、課税売上になります。

【仕訳例2】土地・建物共に売却損が出た場合

簿価が800万円の不動産(土地500万・建物300万円)を700万円(土地460万円・建物240万円)で売却した場合

土地
460万 – 500万 = –40万円(売却損)
建物
240万 – 300万 = –60万円(売却損)
借方
現金・・・7,000,000
固定資産売却損・・・400,000
固定資産売却損・・・600,000
貸方
土地・・・4,600,000
建物・・・2,400,000
土地・・・400,000
建物・・・600,000

それぞれの固定資産売却損を計上しましょう。

この場合、貸方は非課税売上が土地の売却代金460万円となりますが、簿価は500万円で残り40万円の土地代金も逆仕訳で貸方に出てきます。

これは土地自体の売却代金ではなく元帳から売却した土地の帳簿価格を消すために仕訳しているだけです。だから売上だけれど課税をされない非課税の売上高ではなく、元々消費税が課税されない非課税取引という扱いになります。

建物での販売金額も同じように、実際に販売して課税対象となる240万円は課税対象となりますが、残りの簿価60万円は非課税となります。

【仕訳例3】建物が売却損となり、土地が売却益となった場合

簿価が800万円の不動産(土地500万・建物300万円)を800万円(土地600万円・建物200万円)で売却した場合

土地
600万 – 500万 = 100万円(売却益)
建物
200万 – 300万 = -100万円(売却損)
借方
現金・・・8,000,000
固定資産売却損・・・1,000,000
貸方
土地・・・5,000,000
固定資産売却損・・・1,000,000
建物・・・2,000,000
建物・・・1,000,000

それぞれの固定資産売却益を計上しましょう。

土地は600万円全額が非課税ですので、簿価の逆仕訳500万も固定資産売却益100万も非課税売上になり、建物は売却代金が200万円ですので、簿価のうち200万円が課税売上、残りの簿価と固定資産売却損は非課税、となるのです。

まとめ

土地を売却する際は、固定資産売却損益で仕訳をしましょう。土地と、建物を売却する時は、土地と建物は別々に仕訳しましょう。土地は非課税、建物は課税対象になる場合があるので注意。売却損が出た場合は売却価格と売却損を分けて記入しましょう。