不動産投資は多額の資金を必要とするため、銀行から融資を受けているケースがほとんどです。万一、不動産投資で多額の損失が出た場合は自己破産も頭によぎりますが、任意売却などで破産という最悪のケースを避けられる方法もあります。今回は不動産投資に失敗し、損失が出た場合の対策と自己破産のデメリットについて解説します。

自己破産のデメリット

自己破産はデメリットだらけ!?

自己破産は債務整理のなかでも最終手段ともいわれ、主なデメリットは下記の通りです。

•    数年間ローンが組めなくなる
•    職業制限や官報への掲載も
•    99万円以上の現金+20万円以上の財産も処分
•    連帯保証人に多大な責務

自己破産をすることで、信用情報機関(ブラックリスト)にも登録されるため、5~10年間は新たなローンを組めなくなるほか、クレジットカードも作れなくなるでしょう。
加えて、職業制限や官報への掲載もあるため、自己破産したことが周囲に知られてしまう可能性があります。
また、財産の処分については生活に必要なものは残すことができ、すべて処分されることはありませんが、99万円以上の現金に加えて20万円以上の財産も処分することになります。

さらに大きな影響を与えるのが連帯保証人で、破産者が免責を受けたとしても、返済義務を引き継ぐことになり、一括返済を求められることになります。

これだけのデメリットや影響を考えれば、やはり自己破産だけは避けたいという気持ちが増すことでしょう。次に自己破産となるまでの流れについて説明していきます。

自己破産となるまでの流れ

多額の借金が残る競売より任意売却

銀行などの金融機関から借り受けた貸付などの返済ができなくなると、金融機関は裁判所に強制競売の手続きを申し立てます。

流れとしては、1~3カ月程度滞納した状態が続くと、金融機関から催促状・督促状の通知が届きます。さらに滞納した状況が続くと、期限の利益の喪失に該当するとして一括返済を求められることになります。ここまでは、ほかのローンの返済でも同じです。

次に金融機関が実行するのが代位弁済です。代位弁済により保証会社に債権が移り、さらに事態が進むと裁判所から競売開始決定通知が届きます。こうして早い場合では返済が滞ってから半年ほどで競売にかけられることになります。競売となった場合は相場よりも安い価格で売却されるだけでなく、売却資金も手元に戻ってきません。

また、貸付の返済に苦慮しているなかでは、固定資産税などの滞納しているケースも見られます。こちらも、滞納期間によっては役所が対象不動産の差し押さえに入ります。競売では安く買い叩かれることも多いので、借金と税金の支払いの二重の負債を抱える可能性があります。

競売となれば、不動産は相場の5~8割程度の安い価格での売却となるため、多くの場合では、競売後も債務が残るでしょう。残った債務は、基本的に一括返済を求められます。
月々の返済も苦慮している債務者が、一括返済することは難しいでしょう。その結果、返済不能に陥ってしまい、自己破産の選択を迫られることになります。

任意売却とは

しかし先程説明した通り、自己破産には多くのデメリットがあるため避けたいものです。

そこで手を打ちたいのが「任意売却」という方法です。通常の不動産売却のことを一般売却と呼びますが、損失が出て返済計画に狂いが生じている段階では早期の売却が必要になります。任意売却は融資を受けている金融機関、税金の支払いでは役所と話し合いの場を持ち、できるだけ高い価格で不動産を売却して少しでも借金を減らす方法です。
次は任意売却とはどのようなものかについて説明します。

任意売却は金融機関にとってもメリットがある

任意売却とは、ローンなどの返済が滞っている段階で銀行などの金融機関と交渉し、同意を得ることを条件に進める不動産売却方法です。また、物件を差し押えられている場合は役所の同意を取り付ける必要が出てきます。

本来は抵当権がついている段階では自由に不動産を売却できません。そこで抵当権を外してもらう必要があります。抵当権を外してもらうには、不動産を売却した金額が貸付の返済総額を上回る、つまり住宅ローンを全額返済することで可能になります。

借金が残る場合でも差額を用意できればよいのですが、返済に苦慮しているなかで新たに資金を用意するのは容易ではありません。そのため、貸付のすべてを返済できないケースでも銀行などは任意売却に応じています。

任意売却は、金融機関にとってもメリットがあります。抵当権があれば、競売にかけることができても回収できるお金は融資した金額よりも少なくなるのが通常です。任意売却であれば相場に近い金額で売却することができるため、競売のケースよりも多くのお金を回収できます。

抵当権を外すことは不動産の売却を自由にすることでもあり、買い手もつきやすくなります。不動産投資の損失でローンなどが返済できなくなった場合の対策として、まず任意売却できないか金融機関と早期に交渉を進めることが重要です。

任意売却でも多額の借金が残る場合とサービサーの存在

任意売却できたとしても、問題となるのはどれだけ借金を減らせるかです。もし、任意売却でも多額の借金が残った場合ですが、金融機関によっては債権を他社に売却することがあります。

先の競売の流れのなかで、金融機関は債権を代位弁済により保証会社に移します。不動産投資のような多額の資金を要する貸付では、多くの場合で保証会社をつけることが条件になっています。任意売却ではこの保証会社と手続きを進めることもあるのですが、任意売却後の残債の状況によっては債権をサービサーに売却することがあります。

サービサーとは

サービサーとは債権回収会社のことで、法律が改正される前までは弁護士だけしか認められていませんでした。

債権回収に関する法律の改正を受けて、取り扱うことができる債権を限定したうえで民間企業でも行えるようになっています。もし、債権譲受通知が届いた際は、サービサーが債権を買い取ったということです。

それでは、債権の額面のとおり残った借金を今度はサービサー相手に返済することになるかと言えば、そうではありません。サービサーが債権を安く買い取り、手数料をつけて販売しているのですが、その売買価格は1%~10%程度です。つまり、サービサーに債権が移った場合に返済すべき金額は残債の1%となることがあるのです。

たとえば、任意売却しても500万円の借金が残ったとした場合、返済は5万円になります。ただし、サービサーが買い取るタイミングはまちまちで、時間が相当経ってから通知で知ることも多くあります。

任意売却で不動産を売却しても自己破産はできる

次に任意売却と自己破産の関係を見ていきます。

任意売却で不動産を売却したとしても売却額によってはローンを完済できるとは限りません。任意売却をしても債務が残ったままで借金が返済できない場合、自己破産せざるを得なくなります。

自己破産の手続きでは不動産を含めた財産は裁判所から選任された破産管財人が管理・売却して、債権者に公平に分配します。しかし、手続きの前に特定の業者や家族・友人などにのみ優先して返済を行った場合は、自己破産ができなくなります。これは偏頗(へんぱ)弁済というもので、自己破産に限らず、特定調停や個人再生でも特定の業者だけに返済することで公平性の観点から手続きができなくなることがあります。

一方で、任意売却も銀行などの金融機関と交渉のうえ、不動産を売却して弁済していることになりますから、これも偏頗弁済にあたるのではと思われるかもしれません。しかし、住宅ローンについては抵当権がついているので売却後、ローンを組んだ金融機関を優先的に返済しても、偏頗弁済にはあたらないため自己破産が認められるのです。

また、自己破産の免責不許可になる事由のひとつにギャンブルや投資による借金があります。不動産投資が自己破産の免責不許可になる事由にあたるかは裁判所の判断によるところが大きくなっていますが、債務者に反省が見られ、経済的に更生できる意欲がある場合ほとんどのケースで免責となり、借金の返済義務がなくなっています。

それぞれの裁判所の判断によることを裁量免責といいますが、手続きに非協力的な態度をとっている場合や無計画で無謀な不動産投資でない限り、免責許可が下りています。

自己破産は手続きにも費用がかかる

ここまで述べてきた通り、不動産を任意売却の方法で処分した場合、売却価格次第では借金を大幅に減らすことができます。一方で、自己破産となった場合、手続きに費用がかかります。

自己破産にかかる費用は収入印紙代切手代こと予納郵券代官報への掲載費用にあたる予納金の3つが必要になります。このうち、多く費用がかかってくるのが予納金です。自己破産には2種類あり、管財事件となるか、それとも同時廃止となるかで発生する費用が大きく違ってきます。

財産がある場合は多額の金額がかかる

自己破産にも費用がかかる

自己破産の手続きで、財産がある場合は管財事件となり、20万円~50万円程度かかります。対象となる財産には不動産をはじめ、車・貴金属・骨董品・絵画なども含まれます。一方、同時廃止は目ぼしい財産がない場合で、早期に免責となる制度もあり、費用も2万円程度で済みます。

不動産投資で物件を任意売却した場合では、財産が残っていなければ同時廃止となると考えられがちですが、ギャンブルや投資などのケースでは少額管財事件となることがあり、費用も多くかかることがあります。

任意売却を行えば、自己破産の費用を捻出することができます。費用がなくて自己破産ができないというケースもあり、不動産投資の資金以外に借金がある人の場合は、たちまち返済に苦慮することになってしまいます。いかに最良の方法で不動産を売却できるか、投資で要した貸付以外に借金もあれば、なおさらです。
自己破産をできないリスクを避ける意味でも、投資した不動産を任意売却で整理する必要があるのです。

不動産投資の失敗事例と成功させるためのポイント

ここまで自己破産となるまでの流れや任意売却について解説してきました。ここからは不動産投資での失敗事例と、不動産投資を成功させるためのポイントについて解説していきます。

表面利回りのみで判断しない

不動産投資においてよく聞かれる利回りには、表面利回り実質利回りがあります。表面利回りとは家賃収入と物件価格のみを用いて計算する利回りのことです。一方実質利回りとは、家賃収入と物件価格のほかに、経営にかかる費用や諸経費を含めて計算される利回りのことを指します。

表面利回りは管理費や修繕費、税金、家賃の値下げなどのコストを考慮していないため、表面利回りだけを元に判断すると、実際の収入と大きく異なることがあるので注意が必要です。どれくらいの利益が期待できるかを知るには実質利回りを計算しましょう。そして表面利回りはあくまでも投資の際の目安として考えるとよいでしょう。

リスク管理は十分におこなう

不動産投資には下記のようなリスクが生じることがあります。

・入居者が家賃を滞納している
・周辺に新しい競合物件が建ち、当初の想定より空室が発生している
・人口減少に伴い、資産価値が下がっている
・大規模修繕が行われ、多額の費用が発生した

このような事態が発生すると、家賃収入が入らなくなる場合や、まとまった修繕費用が必要になる場合があります。更に災害リスクは予想しにくい部分もあります。

ローンの返済プランは計画的に

ローンを組む際の返済プランを十分に考えていなかったために、失敗するケースも多いです。

空室時に返済が滞ってしまう場合や返済期間を短めに組みすぎために、月々の返済額が高く、返済が困難になる場合があります。また、金利が高く、利益を出しにくい状況といった場合もあるでしょう。
ローンを組む際は、「自分は何とか返済できるだろう」と無理をするのではなく、余裕を持った資金計画を行うことが重要です。

不動産投資をする際はこのようなリスクを抱えるということも把握しておく必要があります。また他人の意見のみで判断するのではなく、自分自身でも不動産投資や物件についてよく調べ、起こりうるリスクについては事前に対策を講じておくことが重要です。

まとめ

不動産投資で大きな損失が出た場合、すぐに自己破産を考える必要はありません。自己破産はデメリットもあり、連帯保証人がついている場合は影響も多大です。

まず考えることは、抵当権を外すなど任意売却の方法で相場に近い価格で売却すること、そして自力で返済できる範囲まで借金を減らすことです。それでも残る借金は、自己破産を含めた債務整理で返済していくかを考えていきます。売却価格次第では借金を大幅に減らすこともできますし、自己破産せざるを得なくなった場合は費用を捻出することができます。

一般売却では時間がかかるため、損失が出ている状況で返済を迫られている場合には向いていません。返済が滞る状態になれば、金融機関は早い段階で競売の手続きをとります。競売となれば、相場よりも安い価格での売却となるため、抱える損失も大きくなります。

早い段階で、任意売却など投資物件の整理について実績のある専門家の力を借りて、手続きを進めることをおすすめします。

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