不動産投資に関する資格は数多くあります。そのため、どれが本当に役に立つ資格なのかがわからずに迷ってしまうかもしれません。資格取得には少なくない時間と労力を要するため、取得してから「大して役に立たなかった」などと後悔する事態は避けたいものです。
そこで、本当に役に立つ資格はどれなのか具体的にどういった面で役に立つのかといった点について解説をしていきます。
不動産投資を行うのに資格は必要なのか?
結論から先に言うと、不動産投資において資格の必要性は極めて低いです。なぜなら、特定の職業に就く場合は資格がなければ待遇に差をつけられたり就職自体ができなかったりというケースがありますが、不動産投資は資格がなくても自由に行えるからです。
もちろん、資格を取得する過程で不動産投資を成功させるために必要な知識を学べるので、そういう意味ではプラスになる側面はあります。ただ、分からないことを知るだけであればそのつど調べるか詳しい人に尋ねるかすれば事足ります。要するに、問題となるのは対費用効果です。資格を取得するには膨大な時間がかかります。しかも、受験勉強で学んだ知識がすべて不動産投資の役に立つわけではありません。それに時間を費やすくらいなら、実際に不動産物件を見たり経験豊富な人から直接話を聞いたりした方が有益な知識を学べるといったケースも少なくないのです。
とはいうものの、資格取得には実践だけでは得られないメリットも存在します。それは体系的な知識を学べるという点です。
実践からの学習は自分の血肉にはなりやすいものの、どうしても得られる知識にはムラが出てきます。それをカバーできるのが資格取得のための学習というわけです。そして、実際に資格を取得すれば一定以上のスキルを有しているのだという自信にもなりますし、対外的な信用にもつながります。
まずはそういった面を踏まえたうえで本当に役に立つ資格はどういったものなのかを考えていきましょう。
不動産に関する法律を熟知してトラブルを回避!宅地建物取引士
宅地建物取引士は不動産に関する法律知識を持っていることを証明するための資格です。それを取得することで
■重要事項説明書への記名・押印
■契約書への記名・押印
の3つの業務を独占的に行うことができるようになります。
資格取得のためには民法や借地借家法・建築基準法・都市計画法・宅地建物取引業法などといった不動産関連の法律を一通り学ぶ必要があります。そのため不動産取引に関するトラブルを回避したり、トラブルに巻き込まれても素早く解決に導いたりできる点が資格取得のメリットだと言えるでしょう。
また、日本では宅地建物取引士の取得を推奨している企業も多いためサラリーマンをしながら不動産投資を行っているのであれば資格手当がついたり、転職が有利になったりという副次的なメリットも期待できます。ただ、合格率は20%程度と難易度は高めです。
不動産会社の社員も受験する本格的な資格なので、合格するには腰を据えて勉強しなければなりません。資格取得までに要する勉強時間の目安は350時間~400時間です。1日平均1時間~2時間程度学習するとして半年~1年ほどの期間を要することになります。
不動産の投資戦略に必要な知識が得られる!FP技能検定2級
FPとはファイナンシャル・プランナーの略であり個人や中小企業といった顧客から相談を受けて、資産に関するアドバイスを行う専門家のことです。
具体的に求められる能力としては「顧客の資産に関する情報の収集や分析」「顧客の人生設計やニーズに合わせた資産運用プランの立案及びアドバイス」などが挙げられます。つまり、FP技能検定とはそれらの能力を保証する資格ということになります。
ただし、FP技能検定3級程度では能力保証としては不十分ですし不動産投資に活用するにしても十分とは言えません。逆に、FP技能検定1級は実務経験を5年以上積まなくてはならないので、取得が困難です。そのため、不動産投資に役立てたいという目的だけで取得を目指すのであれば、狙うべきは2級ということになります。
FP技能検定2級はそれほど難しい資格ではないので、3カ月~半年ほど勉強すれば取得は十分可能です。この資格を取得すれば、いくらお金を投資して何年で回収しいつ売却するのがベストかといった投資戦略を立てる際に、そこで学んだ金融資産の知識が役立ちます。
また、保険や証券・税金などの知識も身に付くため不動産に限らず、資産全般に関する悩みの解消にもつながります。2級資格取得者なら専門家の力を借りずに自分で資産運用の設計やライフプランニングが行えるでしょう。
ちなみに、FP技能検定2級は大学生でも取得している人がいる資格です。したがって、最初に手ごろで実用的な資格を何か取得しておきたいという人にはおすすめです。
所有しているマンションの管理について学べる!マンション管理士
マンション管理士はマンションの管理組合の運営や建物の構造上の問題点について助言や指導などを行う、マンション管理に関するスペシャリストです。ただし、宅地建物取引士などのように業務独占資格ではないので、この資格がなければそれらの業務ができないというわけではありません。それでも、学習を通して管理組合についての理解が深まるため、マンション投資の実務で役に立つはずです。
ちなみに、管理組合とはマンションの共有部分をオーナー全員で共同管理するための組織です。投資目的であってもマンションを所有すれば自動的にこの組織の一員になります。その際に、管理費だけを払って無関心でいることも可能ですがそうなると共有部分が荒れ放題になるなどしてマンション自体の不動産価値が低下してしまうおそれもあります。そこで、マンション管理士の資格を取得した上で積極的に意見やアドバイスをしていけば、そうした事態を防いでいくこともできるというわけです。
そのほかにも、マンション管理を行う上での必要な知識を学べるため、マンションを所有するのであれば取得して損のない資格です。
合格率は7%前後と低く、難易度は宅地建物取引士よりも高いと言えます。その代わり、出題範囲は宅地建物取引士とかなり近いので宅地建物取引士の試験に合格したあとで受験に挑戦すればスムーズに取得できる可能性も高くなるでしょう。
競売物件を扱う際のトラブル回避に役立つ!競売不動産取扱主任者
競売物件とは裁判所の差し押さえを経て入札に出された不動産物件のことですが、それに関連する資格が競売不動産取扱主任者です。この資格を取得すると、不動産競売のプロとして競売参加者に対してアドバイスやサポートができるようになります。
競売物件は価格が相場より安いのが魅力ですが、差し押さえ物件のために売主が存在しません。つまりそれは、引き渡し義務や瑕疵担保責任などといった責任を果たす人間が誰もいないということを意味するのです。そのため、安易に競売物件を購入すると「修理費に莫大なお金がかかってしまった」「入居者がいて立退きに応じてくれない」などといったトラブルに巻き込まれる可能性がでてきます。
その点、競売不動産取扱主任者のサポートを受ければ安心して取引が行えるようになります。
逆に言えば、この資格を取得しておけば専門家に頼らずとも独力で競売物件の取引を行うことができるわけです。具体的には、競売の入札や落札から引渡しまでの知識を得られるほかに、民事に関する法律・宅建・税金などといった知識を学ぶこともできます。
もちろん、競売物件を扱うには経験や実践的な知識がなによりも大切なのですが法的根拠などに基づく知識をしっかりと学んでおけばより安全に取引を進めていくことができるでしょう。
合格率は40%程度で難易度も宅地建物取引士などと比べると低めです。したがって、もし競売物件の利用を検討しているのであれば早めに取得しておくことをおすすめします。
中古住宅の価値を正しく判断するために必要!公認ホームインスペクター
少子化や空き家の増加によって、中古住宅をより安く入手できるようになってきています。それに伴い、注目されているのが安価で入手した住宅にリノベーションを施して賃貸住宅にするといった手法です。しかし、これをビジネスとして成功させるには家屋の劣化状況などを正確に診断できる能力が必要となります。それが欠如していると、欠陥住宅を掴まされる可能性が生じてきますし正しい価格交渉も行いにくくなってしまうからです。そして、そうした需要に応えた資格が公認ホームインスペクターです。
この資格を取得すると、屋根や外壁・室内・床下などの劣化状況を目視で正しく診断できる証となります。本来、この資格は第三者の立場から住宅の劣化状況や欠陥の有無についてアドバイスをするためのものです。しかし、もちろん自らが中古住宅を購入する場合にもそのスキルを活用することは可能です。
値段交渉のほかにも建物の維持や管理をする際にも役に立つため、不動産投資として中古住宅を扱うのであれば取得しておくと何かと便利でしょう。
資格試験の合格率は30%ほどで難易度はそれほど高くないのですが、受験者のほとんどは建築士や宅地建物取引士などの資格所得者です。そのため、建築関連の基礎知識を有していることが前提の試験となります。
不動産関連資格の最難関!不動産鑑定士
不動産鑑定士は不動産の適正価格を評価するための資格です。
地価公示価格・基準地地価・相続税路線価などといった公的な不動産価格のほとんどにはこの資格取得者がかかわっています。いわばこの資格は不動産価格のプロである証です。不動産鑑定士を取得していれば本格的に不動産投資のビジネスを始めた際に箔がつき、大きなビジネスチャンスが舞い込んでくるきっかけにもなります。また、銀行から融資を受ける場合にもこの資格があれば相手からの印象が良くなるうえに、不動産評価額を自分から理論的に導き出せるので取引を有利に行えます。
ただし、不動産鑑定士は司法試験や公認会計士試験と比較されることもあるように不動産関連のなかでは最難関の資格です。取得するのは並大抵のことではありません。ちなみに、試験は論文形式で不動産関係の科目以外にも経済学・会計学・民法などの知識が問われます。
標準的な勉強時間は2,000時間以上といわれ、資格取得までは通常数年を要します。したがって、安易なチャレンジはするべきではなく一通りの知識や経験を得たあとに大きく飛躍をしたい場合に初めて取得を検討するべき資格だと言えるでしょう。
必要な資格を厳選して不動産投資に活かしていこう!
不動産投資を行うのに資格は必要ありません。その代わり、取得しておくと仕事上有利に働く資格というものは存在します。
宅地建物取引士やFP技能検定2級などはその代表例だといえるでしょう。ただ資格の取得には時間がかかるため、費やした時間と得た効果のバランスが取れているかが問題になってきます。いくら有用な資格でも取得までに何年も勉強を続けなければならないのであれば、そのあいだに実践経験を積んだほうが得られるものが大きかったということにもなりかねません。
そうならないためには、その資格がどのような場面で役に立つのかそれを取得するにはどのぐらいの時間が必要なのかといった点を把握することが大切です。そのうえで、資格を取得する価値があるかどうかを慎重に検討するのです。
本当の意味で役に立つ資格を厳選し、不動産投資にうまく活かせるようにしていきましょう。