不動産売却の取引をすると、いろいろなことを質問されることがあります。売ろうと思った理由も尋ねられるでしょう。そのとき、どのように伝えるべきか迷う場合もあると考えられます。
そこで今回は、不動産売却の理由として多いものや伝え方のポイントなどを紹介します。
不動産売却の理由で多いのは?
不動産売却の理由は人によって異なります。そのなかでも多いのは、その不動産で生活を送るのが難しくなったという事情です。具体的には、離婚するので夫も妻も退居するようなケースがあります。反対に、結婚して引っ越す必要があるため、一人暮らしをしていた不動産を売る人もいます。
不動産売却の理由に、親や子どもが関係していることも少なくありません。高齢化社会になり、同居している親のためにバリアフリーの住宅へ移ろうとして売りに出すケースが増えています。子どもの独立によって広いスペースが不要になり、小さな住宅に転居しようとして売却する人も多いです。
また、よくある理由として経済面の事情も挙げられます。住宅ローンを支払えなくなって、売却せざるを得ないケースなどです。リストラなどによって家計が苦しくなり、そのような状態になってしまう人が見受けられます。キャッシングなどの借金が大きく膨らんで、一気に返済するための手段としても選ばれやすいです。
また、投資目的で購入しておいた不動産を利益のために売るというのも理由のひとつです。近隣の都市開発の影響などにより、地価が高まったタイミングでよく売りに出されます。さらに、心理的な事情も売却につながります。近隣住民との相性が悪くて引っ越したいと感じたり、出世したのでグレードの高い住宅に住みたいと思ったりするケースです。
上記は代表的なものであり、ほかにもいろいろな理由が考えられます。なぜ売りたいのかを説明できないと交渉がスムーズに進まないかもしれません。売却したい理由を自分のなかで明確にするところからスタートしましょう。
嘘はNG!正直に伝えるのが基本
理由を伝えるときに迷いがちなのは、どれぐらい詳しく伝えるのかということです。あまり詳細に話すと、印象が悪くなってしまう理由もあるからです。
買主が見つからなくなったり、売り値が下がったりすることを心配する人は多いでしょう。しかし、どのような理由であっても正直に話すのが基本です。少なくとも嘘をついてはいけません。不動産の売買は多額のお金が動くので、虚偽があったことが判明すると問題になってしまいます。揉めた結果、損害賠償を請求されたり裁判に発展したりするおそれがあるのです。
不動産が売却できなくなるどころか、無駄な出費が生じることになりかねません。
また、理由をごまかしたいと考えていると行動や言動が不自然になりがちです。購入を検討している人から直接いろいろと質問されたときに、怪しいと思われると成約に至らなくなります。多くの人は、非の打ち所のない素晴らしい不動産であることを期待しているわけではありません。そのような不動産なら手放そうとしないと考えられるからです。つまり、マイナスな点があることを前提としておりそれを確認することも質問の目的ということです。
そのような視点を持っている人に対して、ごまかしは通用しないと思っておいたほうが良いでしょう。いったん不信感を持たれると、正直に話して取り繕っても払拭するのは難しいです。
以上のように、後で問題になる可能性や成約を阻害する可能性を考慮すると嘘をつくのは得策とは言えません。誠実な態度で取引に臨み、伝えるのに抵抗がある内容でも正直に話すように心がけてください。
印象が悪くならない言い回しを
不動産売却の理由を正直に話すことは大切ですが、与える印象をまったく考慮しないで良いというわけではありません。同じ理由であっても表現の仕方によって、聞いた人が受ける印象は大きく異なります。
本来マイナスと見なされる理由であっても、表現を工夫すればそのように感じにくくなるということです。たとえば「敷地面積が狭くて不便だから」と伝えると、暮らしにくい住まいだと思われてしまいます。購入意欲を大きく削ぐことになるでしょう。そうではなく「子どもが走り回るのでもう少し広い家に移りたいから」と言えば、住まいの問題というより子どもの過ごし方の影響が大きいように感じられます。
前者も後者も、広さが不十分であることを理由に挙げているのは一緒です。しかし、聞いた人が不動産に対して持つ印象には違いがあります。ただし、後者を理由として述べる場合はもちろん事実でなければなりません。くれぐれも嘘をつかないように気を付けたうえで、できるだけ否定的な表現を避けることがポイントです。
購入を検討している人の多くは、その不動産で暮らすことをイメージします。否定的な言い回しをすると、そのイメージがネガティブなものになりやすいので気を付けましょう。
どれだけ言い回しを工夫しても、相手によっては意味がないかもしれません。結婚予定のカップルが、離婚によって売りに出された不動産に悪い印象を持つケースなどです。表現に関係なく、離婚という事実があるだけで選択肢から外されることがあります。そのように脈がないと分かった場合は、慌てて嘘のアピールをするようなことはせず素直に諦めて次のチャンスを待ちましょう。
瑕疵物件は告知義務があるので注意
購入を検討している人に不動産売却の理由を正直に伝えることには、もうひとつ重要な意味があります。それは、売主に課せられている告知の義務を果たすということです。
すべての理由を告知しなければならないという決まりはありません。しかし、一部の理由に関しては告知を怠ったことが発覚すると訴訟に発展して責任を追及されるおそれがあります。契約を取り消されたり、買主の引っ越しにかかった出費の負担を命じられたりするケースも見受けられます。
具体的には、瑕疵物件であることが該当します。瑕疵があるという事実は、不動産の価値に大きな影響を与えるからです。多くの人は、瑕疵があるとわかった時点で購入を避けようとします。そのため、瑕疵のある不動産をそうでない不動産と同じ条件で売るのは難しいです。一般的な売り値の相場より、はるかに安くなってしまいます。瑕疵と言っても、その種類はさまざまです。害虫被害や雨漏りといった物理的な瑕疵もありますし、殺人や自殺の現場になったというような心理的な瑕疵もあります。
以上のことを知ると、瑕疵物件は売れないと悲観する人もいるでしょう。しかし、絶対に買主が現れないとは限りません。価値観には個人差があるため、多少の瑕疵があっても気にならないという人もいるからです。そのような人は、格安であることをメリットに感じて購入したいと考える場合もあります。
瑕疵物件の扱いに慣れている不動産業者に依頼すれば、予想より高い値がつくこともあるでしょう。このように、告知義務を果たしても売れる可能性はあるので隠そうとしないでください。口頭で伝えるだけでなく、重要事項説明書などに詳細を明記することも大切です。
事前に不動産業者に相談しておこう
自分だけで、不動産売却の理由が与える影響を判断しても的外れになる場合があります。
たとえば近隣住民との相性が悪いことが理由で売却する場合、近隣トラブルを恐れて買主が現れないと心配する人もいるでしょう。しかし、近所付き合いという概念がなく近隣トラブルなど気にしないという独身者も珍しくありません。そのため、不安をよそにすぐに売れる可能性も十分あります。
一方、売主にとってはささいに思える理由でも買主にとっては大きな問題である場合もあるでしょう。買主と売主の考え方やライフスタイルは異なるため、そのような差が生じるのは仕方がないことです。
それなのに、自分ひとりで伝え方について悩むのは望ましくありません。第三者に聞いてもらって、どのような印象を持つのかを確認したほうが良いです。仲介の実績が豊富な不動産業者であれば、単なる感想ではなく予想される一般的な反応や印象を良くするためのアドバイスをしてくれます。そのため、まずは不動産業者に理由を正確に伝えておきましょう。
仲介の不動産業者のホームページやチラシを見て興味を持った人は、売主ではなく不動産業者に理由を尋ねる場合があります。そういう意味でも、事前に不動産業者に伝えておくことは重要です。
また、事前に相談しておくことで告知義務があるかどうかもわかります。自分が瑕疵だと思っていても、そうでない場合もあるので気を付けましょう。特に心理的な瑕疵については、基準が明確ではないため自分だけで判断するのは難しいです。該当すると思っていても、事件や事故の時期などによってはそうでない場合もあります。
不動産業者は正しく判断してくれるので、早めに尋ねておくと良いでしょう。
不動産売却の理由を気にする人は多い!誠実な対応を心がけて
購入を考えている人にとって、不動産売却の理由は気になるポイントです。特に、長く住もうと考えている場合は重点的に質問してくることが想定されます。
そこで重要になるのは、相手の気持ちに寄り添って対応することです。しつこく尋ねられても、面倒と思わずに納得するまで答えましょう。その際、なるべく安心しやすい伝え方をするのはもちろんですが不安を和らげられる情報を追加で教えることも効果的です。たとえば、狭いことが理由の場合は、自分がスペースを確保するためにしていた工夫なども伝えましょう。
一般的に売主は買主に何度も会うわけではありません。最初の内覧などで顔合わせをしたあとは、契約まで不動産業者がすべて対応してくれるケースも多いです。しかし、わずかな機会だけしかなくても会ったときに誠実に対応することが大切です。それによって良い印象を与えられると、不動産を購入する意欲の向上につながります。
理由をごまかさずに伝えることは誠実さの基本です。あとからトラブルが起こるのを回避するためにも、非常に重要であると認識しておきましょう。それを理解したうえで、今回紹介したような言い回しのテクニックなども使ってみてください。