土地には、商業地域や住居地域など目的に沿って分けられた地域があります。
マンションや一戸建てなどの不動産の売買をする際に、用途地域を考えることは外せないポイントです。

用途地域のひとつである商業地域はどのようなエリアでしょうか。今回は商業地域の建築制限や近隣商業地域との違い、居住地としてのメリットやデメリットについて解説していきます。

商業地域とは

商業地域は用途地域の1種であり、主に商業とその他の業務の利便性を図ることを目的とした地域です。

用途地域について

用途地域は都市計画法で定められているもので、全部で13の用途地域に分かれています。
都市計画法の目的は「都市の健全な発展と秩序ある整備」そして、「国土の均衡な発展と公共の福祉の増進」で、施工後は何度も改正が行われています。

用途地域は大きく分けて「居住系」「商業系」「工業系」に分かれます。また利便性と発展のためそれぞれの地域でさらに細かく分かれており、詳しくは下記の通りになります。

・居住系

■第一種低層住居専用地域
■第二種低層住居専用地域
■第一種中高層住居専用地域
■第二種中高層住居専用地域
■第一種住居地域
■第二種住居地域
■準住居地域
■田園住居地域

・商業系

■商業地域
■近隣商業地域

・工業系

■準工業地域
■工業地域
■工業専用地域

商業系の用途地域とは

商業系の用途地域は、「商業地域」と「近隣商業地域」の2つに分かれます。一部の倉庫や危険性が高い工場などは建築できませんが、生活に必要な施設を建築できるというのが特徴です。
もちろん家を建てて住むこともできます。ただし、居住性を重視した用途地域ではないので建ぺい率や容積率は他の用途地域に比べて高めに設定されていることが特徴です。

一部の倉庫や工場などは建築できないが生活に必要な施設は建築できる

商業地域で建築できるもの

商業地域で建築できるものについて具体的には下記のような建物が該当します。

◇戸建て・マンション・共同住宅・下宿・寄宿舎などの居住施設
◇店舗・事務所
◇ホテルなどの宿泊施設
◇ボーリング場・スケート場・カラオケボックス・映画館といった娯楽施設と飲食店
◇幼稚園・小学校・中学校・高校・大学・図書館などの教育機関
◇老人ホーム・病院などの健康福祉施設
◇作業面積が150平方メートルを超えない小規模の工場
(※危険物を扱う場合は建築してはいけない)

商業地域で建築できないもの

商業地域では作業面積が150㎡を超える工場や、火薬類、石油類、ガス等の危険物の貯蔵、処理の量がやや多い~多い施設については建築が許可されません。
また小規模な工場であっても、危険性が大きいまたは周辺環境を著しく悪化させる恐れがある工場は建築が許可されていません。

商業地域の建築制限について

商業地域の建ぺい率・容積率は下記のように定められています。

■建ぺい率 80%
■容積率 200%~1300% 

商業地域は居住性を重視した地域ではないため、他の用途地域に比べて規制が緩くなっています。
延床面積の規制や日影規制などが無く、容積率が大きいため、中高層マンションや大型施設の建築も可能です。

商業地域と近隣商業地域の違いとは

商業地域には、ほかに近隣商業地域があります。
近隣商業地域は比較的住宅地の近くに位置し、近隣の住宅地の住民に対する日用品などの供給と、そのほかの業務の利便性を図ることが主な目的です。

近隣商業地域のアピールポイントは利便性と閑静な環境

商業地域と近隣商業地域の違いは、日影規制の有無とパチンコ店やキャバクラなどの風俗店営業許可の可否です。
近隣商業地域では住宅地に住む住民の生活環境を守るため、日影規制が適用されていますが、商業地域では日影規制が適用されていないので一戸建てを建てて住む人は少なく、中高層マンションが多く建築されています。また、商業地域ではパチンコ店やキャバクラなどの風俗営業店は許可されていますが、近隣商業では許可されていません。

近隣商業地域は商業地域と比べるとやや閑静な場所が多いので、近隣商業地域の不動産を売却したいなら、利便性と閑静な環境をアピールできます。

商業地域のメリット・デメリット

ここまで商業地域について建築可能な建物や建築制限について紹介してきました。
次に商業地域の居住地としてのメリット・デメリットについて解説していきます。

商業地域は利便性がよく生活には適しているが静かに暮らしたい人には不向き

商業地域のメリット

商業地域は、駅に近い場所が中心になっており、鉄道や路線バスなど公共交通機関が充実しているという利便性の高さは大きなメリットです。幼稚園や託児所なども建築の対象となっているので、働きながら育児をする世帯が暮らしやすいというメリットがあります。

また駅に近いという立地上、勤務先と住居のいずれも商業地域にある場合には、少ない移動距離で利便性の高い暮らしが可能であり、商売をしている経営者が生活するにも適しています。さらに、病院や介護施設、金融機関といった施設も建築可能なため、高齢者にとっても暮らしやすい地域でしょう。

商業地域のデメリット

一方、商業地域ではパチンコ屋や麻雀店、キャバクラといった風俗業も許可されているため、治安の面で心配な点が出てくるかもしれません。近隣に学校がある場合には、風俗業の営業に規制があるものの、それでも生活圏内から大きく外れる可能性は低いと考えたほうがいいでしょう。

住居を建築する場合、近隣の施設によっては騒音もデメリットです。娯楽施設やショッピングモールなど、外から人が集まりやすい条件がそろっているため、静かに暮らしたい人には向いていません。
また、駅が近く交通利便性が高く、容積率が大きいため大型の建築物が建てられることから、土地の価格は一般的な住宅地に比べ高くなります。

 

ここまで商業地域の居住地としてのメリット・デメリットについて解説してきました。商業地域は店舗や娯楽施設、遊技場などの割合は高くなるものの、店舗を兼用した住居や店舗兼事務所なども多い地域です。
実際に建築する場合は、建築制限のほかに建築基準法が絡んではきますが、用途地域は変更されることもあります。
将来的な都市計画に向けて調整を図ることも多いので、地域の行政にこまめに確認するのも良いでしょう。

無指定区域とは?建築の制限は?

土地にはさまざまな用途地域が指定されている中で「無指定区域」という区域も存在します。
「無指定区域」には、いくつかの考え方がされています。ひとつは、都市計画区域内の「市街化調整区域」及び「非線引き区域(市街化区域にも市街化調整区域のいずれにも指定されていない区域)で用途地域の指定がない地域(非線引き白地地域)」を指します。また広義に「都市計画区域外」または「非線引き区域」のことを指す場合もあります。

無指定区域の場合、建築や開発に制限がないわけではありません。たとえば都市計画区域内であれば、住居を目的にした建築物の建築自体には特に問題は出ません。ただし、建ぺい率や容積率については確認した方がいいでしょう。建築は可能とされていますが、実際には地方自治体の定める条例による部分が大きいのが特徴です。

無指定区域の土地を売却する場合、行政の関連部署で確認し、売るタイミングを考えてみましょう。

商業系地域の土地や建物の売却時の注意点

マンションや一戸建てなどの不動産を売却する際は、それがどの用途地域であるかを考えることが重要です。そして、その用途地域ではどこまでの建築が可能か、どのような使い方ができるかを改めて確認しておくことで売却方法やターゲットを絞りやすくなります。
病院や学校がある地域なら子育て世帯向けとして、娯楽施設などがある地域なら事業用物件として考えたほうがいいでしょう。

商業地域は駅の周辺などの繁華街が中心であるため、交通においても生活面においても利便性が高い地域といえます。ただし、用途地域について深く考えずに住居を建築したときに隣が空き地であっても、思わぬ建物が建設されてしまうことがあります。
初めは静かに暮らせていても、施設や店舗によっては騒音問題や治安の面で不安な点が出てくるかもしれません。また高層の建物が建築されれば、日照問題に悩まされるかもしれません。

住居として売却するなら、風俗業などがある場合も同じです。こうした施設や店舗は、建築できる地域が限られているためです。不動産を購入した時点では建っていなかったものでも、後から建築されてしまった場合は売り方を工夫しましょう。一般の住居より住居兼事務所または住居兼店舗などのほうが売れる場合があります。
また、あとから建設された建物や施設で悪い影響を受けている場合、更地にしたほうが買い手は付きやすいかもしれません。

さらに、古くから住んでいる場合に多いのが、建築基準法に関わる問題です。ずいぶん昔に購入した不動産や、親から受け継いだ住居の場合、セットバックしなければならない場合もあります。
厄介なのは、再建築不可物件です。セットバックは、隣接する道路を拡張することが目的で、決められた面積を空ければ特に問題はありません。しかし、建築不可物件に該当している場合には、建て替えができないなどの制限が出てきます。可能であれば、売却前にセットバックしておくのもひとつの方法です。

まとめ

目的に合った用途地域を選ぶ

不動産はどう使うかを考え、その目的に合った用途地域から選んでおくと売りやすくなります。
たとえば、事務所や店舗が兼用された住居であれば、商売に重点を置くのか、暮らしに重点を置くのかでは選ぶ条件が変わってきます。静かに暮らすなら、第一種低層住居専用地域か第二種低層住居専用地域が向いていますし、買い手は付きやすいと言えます。商業地域や近隣商業地域の中に不動産があれば、収益が見込める事業用として売りやすいでしょう。

使い方に合った場所にある不動産であれば、手放す場合でも大きな値崩れや売れないという心配もありません。不動産は周囲の環境で価値が変わるため、目的に合った用途地域を選ぶことが重要といえます。

不動産会社選びが重要

用途地域や不動産売却に関する知識がなく、所有している不動産をどのような方法で売却すればいいかわからないという方は「一括査定サイト」の利用をオススメします。
一括査定サイトは、フォーム内に物件情報を入力することで複数の不動産会社から売却査定金額を確認することができ、簡単に相場を知ることも可能です。また信頼できる担当者が見つかれば、そのまま不動産会社に仲介を依頼することもできるので、安心して売却活動を進めることができるでしょう。
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