不動産を売却しようと思ったら、なるべく多くの人にその情報を知ってもらうことで売却のチャンスが広がります。しかし、具体的にどのように情報を必要とする人に届けられるのかとお悩みの人はいませんか。今回は、そんな人の悩みを解決してくれる「オープンマーケット」について紹介します。

情報を広く公開する便利なシステム

オープンマーケットには情報が広く公開されている

オープンマーケットとは、中古物件や新築物件など不動産の売却に関する情報を複数の不動産業者のあいだで共有する仕組みです。インターネットなどを通して情報を広く交換することで、早期に不動産の買主を見つけることを目的として生まれたシステムです。

この仕組みがあることによって、売主は一社に依頼するだけで複数の不動産業者に情報を公開することができ、物件売却に関する情報を素早くあちこちへ知らせることができます。

競合であるはずの業者が協力し合うことで成り立つこのシステムは不動産業界特有のものです。不動産業界では競合他社はライバルでありながらも、一緒に手を取って取引を進めていくパートナーでもあるのです。

この独特なシステムが生まれたのは、1980年代にまで遡ります。

不動産流通の黎明期

現在の不動産業界の基礎が築かれたのは1964年、宅地建物取引業法が改正されてからといわれています。

それまで業者登録は「届出制」でしたが、この年の改正により「免許制」へと変わったのです。不動産業者を名乗るには一定の資格が求められるようになり、より専門的な知識やノウハウが求められる「プロ」の仕事へと変化しました。

1964年といえば高度経済成長の真っただ中であり、人口の移動に伴い不動産業界もにわかに活気づき始めたころです。そのなかで、不動産会社や業界全体の信頼性を高めるためにこの改正が行われました。

1970年代になると、国の都市開発計画が首都圏のみならず地方へも広がっていき、新築マンションの供給も増えていきました。それに伴い中古マンションの売買取引も頻繁に行われるようになり、1976年には住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)が中古マンションに対する融資を開始しました。

中古マンションの売買が活発になり始めた当初は、不動産会社は物件情報をオープンにすることなく、なるべく自社内で取引を行いたいという志向がありました。しかし、流通市場が大きくなるにつれ売り手と買い手をスムーズに結び付けるために、仲介役となってほかの不動産会社へ公開するビジネスモデルが確立されていきました。

売り手と買い手のそれぞれから手数料をもらい、不動産会社で分け合う形へと変化していったのです。

誰もが驚く新サービス

そのような流れのなかで、消費者や業界内から不動産情報の透明化を求める声が挙がり始めます。

業者同士が協力しているといっても、業界全体で情報交換のシステムが共有されていた訳ではないので、情報供給には偏りがあり情報格差が生まれてしまっていたのです。そこで、物件情報を素早く交換し取引をスムーズに進めるために不動産業者大手5社が連携し、1984年に「不動産流通促進協議会」を立ち上げました。

誰もが驚く新サービス「オープンマーケット」

各会社が依頼された物件情報を共有し、協力して売却先を探す仕組みです。翌年にはさらに2社も協議会に加盟し、大手7社が協力して中古物件売買を行うようになりました。そして、協議会は通称「オープンマーケット」と呼ばれるようになります。ちなみに、中小規模の不動産業界でもこれより少し前に情報共有の仕組みが生まれています。

不動産流通は情報産業であるといわれています。なるべく早く情報をキャッチし、なるべく多くの情報を持つことが自社の利益に繋がります。自社の商品を販売するわけではなく、物件情報の供給によって買い手と売り手の仲立ちし手数料によって利益を得るサービスだからです。

情報共有が「当たり前」に

オープンマーケットの功績はスムーズな情報共有システムの構築だけではありません。加盟している各社から実務担当者が集まり、売買契約書のひな形作成・売買契約におけるルール作り・瑕疵保証制度の導入など、不動産流通市場の基礎固めを行ったのです。

また、不動産取引に関する紛争の未然防止や処理を推進する「不動産適正取引推進機構」、不動産に関する学術的研究を行う「日本不動産学会」も1984年に設立されています。不動産取引をスムーズに、かつ安全に行うための取り組みが業界全体で行われていったのです。

そのような大きな流れのなかで不動産情報共有の動きはさらに大きく広がり、やがて宅地建物取引業法に基づいて情報共有を行う通称「レインズ」が設立されます。建設省と不動産流通近代化センター(現不動産流通推進センター)が共同で開発した不動産情報共有のためのオンラインシステムです。

全国各地にホストコンピューターを置き、会員の不動産業者の端末と結び物件情報をオンラインでやり取りできるようになりました。これは1990年のことです。

インターネットによる変化

1990年代後半になると、不動産業界はまたも大きな転換期を迎えます。IT革新によりADSLや光回線が登場し、インターネットの利用者が爆発的に増加しました。誰もが情報に容易にアクセスできるようになり、買い手は事前に物件情報を見てから不動産会社へ足を運ぶようになりました。

それまで行われていた情報共有はあくまで業者間でのやりとりであり、消費者が直接それらの情報に触れていたわけではありません。しかし、インターネットの普及により情報がダイレクトに消費者に届くようになり、買い手は事前に物件の比較検討ができるようになったのです。
IT革新により大きな転換期を迎えた不動産業界

このように不動産流通市場は急激にオープンになり、そのなかで不動産業者は買手・売手双方の話に耳を傾け、それぞれのニーズを素早く察知し解決策を示すといったような、コンサルティングのスキルが必要になったのです。

それに伴い、経営の在り方も変化が求められています。それまでの80年代・90年代はスピード重視の経営で、たくさんの顧客をさばくことで利益を生むことができました。

しかし、情報化が進んだ現代では一人ひとりと丁寧に向き合う時間が増えたため、必然的に営業のスピードは落ちます。消費者の満足感を最大限引き出し、友人を紹介してもらったり継続的に取引を続けてもらったりという「リピート型」ともいえるスタイルへと変換しないと安定して利益を出すのが難しい状況になっています。

新たなサービスでより便利に

2000年代以降は、IT革新による情報公開がさらに進んでいます。インターネットのおかげで消費者が情報を容易に獲得できるようになりましたが、依然として不動産会社とのあいだには情報量に差があります。その差を埋めるべくIT技術と不動産を結びつけた「不動産テック」と呼ばれるサービスの開発がベンチャー企業によって始められたのです。

たとえば、所有する不動産の評価額を知ることができたり、買手から売手へ直接連絡を取れたりあるいは買手の情報を公開して売手が買手を選べたりと、こういった新たなサービスを提供しているウェブサイトも登場しています。

パソコン、そしてスマートフォンの普及により誰もがインターネットにアクセスできるようになり、“情報”はもはや共有されるべきものになっています。しかし、それでもなお実際に不動産を売却する際にはウェブ上ですべてを終わらせることはなかなか難しいのが現状です。商品である不動産はひとつとして同じものがなく、それぞれに対して知識と経験を持つ人でないと取り扱いが難しいからです。

この状況を打破すべく、2017年には不動産流通大手6社が結託して不動産売却に関する情報をやりとりする新たなポータルサイトが生まれました。

売り手にうれしい新たなサービス

イエイ査定サイトを使えば、売却したい不動産の査定を大手6社にまとめて依頼することができます。

ひとたび査定を依頼すれば、売り手の希望と各社が持っている購入希望者情報を照らし合わせ、売り手と買い手の双方にとって満足のいく取引ができるようマッチングしてくれます。またマッチングをしたあと、契約時におけるサポートも充実しています。

物件に関する調査や契約締結、決済手続きなど、経験と知識を持ったプロによるバックアップ体制が全面的に整っていますので、安心安全な取引が目指せるでしょう。

加えて、瑕疵担保責任や税務に関する相談など、売却後に発生しうるさまざまなトラブルの相談にも応じてくれます。参画している6社はそれぞれ全国に店舗を持っており、その数は830にも及びます。6社すべてを合わせると年間10万件以上の実績があり、知識や情報だけでなく経験も豊富と言えます。

 実際にこのサイトを使って不動産売却をしたいと思ったら、まずはウェブ上で不動産に関する情報を入力し査定に出します。ページの案内に沿って必須項目を埋めるだけですので、簡単に入力可能です。その後で各社から査定結果が届き、売却可能額や各種条件が知らされます。その内容を比較検討して、最も納得できる業者を選ぶだけです。

そこから先は前述の通り充実したサポート体制が整っていますから、安心して取引を進めることができるのではないでしょうか。