マンション売買では大きなお金が動くため、食品や洋服など通常の買い物とは違う手続きや流れを踏みます。売買で損をしないためにも、事前に手続きや流れを把握しておくことが大切です。この記事では、初めてマンション売買する人が参考になるよう、手続きや流れの基礎知識を解説しています。

マンション売買の基礎知識

1.売買の流れを把握

マンション売買をするためには、まず売買のスケジュールを組むことから始めます。いつまでに売却したいのかを考えて、逆算してスケジュールを立てましょう。マンション売買には査定から引き渡しまで平均で半年程度の期間がかかります。そのため、半年前からスケジュールを組む必要があるのです。

売買の流れ

スケジュールが決まったら、不動産会社に査定を依頼します。査定してもらう不動産会社を探すには、一括査定サービスが便利です。一括査定で不動産会社を絞り、仲介を依頼したい業者に訪問査定してもらうことになります。
仲介を依頼したい不動産会社が決まったら、次は会社と媒介契約を結ぶというステップです。媒介契約には一般媒介契約、専属専任媒介契約、専任媒介契約の3種類があります。

一般媒介契約

一般契約は、複数の不動産会社と媒介契約を結ぶという契約方法です。契約の縛りがゆるいため、売却する側にとって有利な条件で売れる可能性がありますが、不動産会社にとっては売り出しにくいというデメリットもあります。

専属専任媒介契約・専任媒介契約

専属専任媒介契約と専任媒介契約は、1つの不動産会社に依頼する契約方法です。不動産会社には不動産共有データベース、レインズへの登録や売主への状況報告などの義務が生まれます。専属専任媒介契約のほうがより縛りが強く、レインズへの登録期間が短めで、状況報告の頻度も多くなるのが特徴です。

契約後は売り出し、内覧、広告活動といった流れになります。売り出しや広告は契約した仲介業者が請け負いますが、内覧は売主が対応します。最後のステップは、購入申し込み、売買契約、引き渡しです。買主と売主で売買契約をかわし、引き渡し時には売主も現地で立ち会うことになります。

売却までの流れ
備考
売買のスケジュールを組む
半年ほど前から準備
不動産会社に査定を依頼、訪問査定へ
一括査定が便利
3種類の中から媒介契約を選ぶ
  1. 一般媒介契約
  2. 専属専任媒介契約
  3. 専任媒介契約
その後売りに出される
内覧・広告活動(内覧は売り主担当)
購入申し込み

売買契約

引き渡し
現地では売り主も立ち会う

2.必要書類を把握

マンション売買では多くの書類が必要になります。書類を取得するのに数日かかる場合もあるので、あらかじめ必要な書類は何かを確認しておきましょう。

必要書類を確認しておく

マンション売却の最初のステップとなる査定には、身分証明書や実印印鑑証明書などが必要です。共有名義になっている場合には、名義人全員の書類を用意します。名義人が遠方に住んでいる場合は書類をそろえるのに時間がかかるため、早めに用意しておきたいものです。登記されている住所と現住所が異なる場合は、住民票も必要です。ただし、使用できる書類は3カ月以内に発行されたものに限ります。

また、売買契約の際には登記名義人がその物件の所有者であることを証明するものとして、登記済権利書または登記識別情報が必要になります。一般的に権利書といわれるもので、平成17年より前に取得した物件の場合は法務局から交付された登記済権利書となります。登記識別情報とは、平成17年以降に物件を取得した名義人に通知されている登記名義人を識別するための符号や情報のことです。

そのほか、固定資産税の納税額を確認するための書類として、固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書を準備する必要があります。物件の取得時期により納税額の一部が売主に払い戻しとなる場合に、納税額の情報が必要となるからです。また、移転登記の際に登録免許税額を算出するためにも使われます。

マンション売買にはマンションの管理規約や、管理費・修繕費などのマンション維持費に関する書類も必要です。さらに古い物件の場合は、耐震診断報告書やアスベスト使用調査報告書なども求められることがありますので、事前に準備しておきましょう。

3.売買にかかる諸経費

売買にかかる諸経費も様々

マンション売買を行う際には、売主にも買主にも諸経費がかかります。決して安くはない経費なので、売買契約を結ぶ前に必ず確認しておきましょう。

まず、売主にかかる諸経費ですが、マンション売却には登記費用、印紙税、一括繰上返済手数料などがかかります。

登記費用

登記費用とは、登記変更する際に必要となる費用で、登録免許税や司法書士に支払う手数料のことです。

登録免許税には、所有権移転登記と抵当権の記載を削除する際にかかるもの、抵当権抹消登記にかかるものがありますが、このうち抵当権抹消登記にかかる登録免許税を売主側が負担します。司法書士に支払う手数料は、抵当権抹消代理手続きにかかる手数料です。登録免許税は不動産1個で1,000円、司法書士手数料は一般的に15,000円程度かかります。

印紙税

印紙税は不動産売買契約書や建築請負契約書、領収書などの課税文書に貼り付ける印紙にかかる税金のことです。契約書の種類や書類に記載された金額によって納税額が変わってきます。たとえば、1,000万円から5,000万円以下の不動産売買契約書には10,000円の印紙が必要です。印紙税は、書類を2通作成する場合は売主と買主双方が1部ずつ負担し、1通作成する場合は保管する側が負担することが多くなっています。

一括繰上返済手数料

一括繰上返済手数料は、住宅ローンの繰上返済にかかる手数料のことで、銀行や手続きの方法によって金額が異なるので確認しましょう。一方、買主には印紙税や登録免許税、司法書士への報酬、固定資産税などがかかります。

登録免許税

登録免許税は、土地や建物の所有権を移転登記する際に課税されるものです。土地の評価額×0.015建物の評価額×0.003で算出されます。ただし、マンションの場合は、土地の評価額は「敷地権の割合」によって決められます。その際に、司法書士に手続きを依頼した場合は、司法書士へ支払う報酬も必要です。さらに、マンション購入後は固定資産税の支払い義務も生じます。

マンション売買で損をしない方法とは?

適正な価格なのか見極めが肝心

売主も買主も、マンション売買ではできるだけ損をしたくないものです。しかし、仲介手数料や査定額、売却価格は相場より高かったり安かったりすることがあります。マンション売買で損をしないためには、その価格が適正なのかどうかを見極めることが肝心です。仲介業者へ支払う報酬は仲介手数料のみで、上限が法律で決まっているため、上限より高い手数料は法律違反となります。

仲介手数料の上限

上限は不動産の売買価格によって決められていて、200万円以下の場合は5%、200万円から400万円以下では4%+2万円、400万円を超える物件の場合は3%+6万円が上限です。

たとえば、1,000万円の物件なら388,800円が仲介手数料の上限となります。また、査定額や売却価格の適正を知ることも大切です。適正価格を知るためには、周辺マンションの売価相場を調べるとよいでしょう。

算出方法の種類

不動産査定は算出方法によっても変わってきます。算出方法には、一戸建ての算出によく用いられる原価法、投資用不動産の査定で用いられる収益還元法、周辺の不動産取引を参考に査定額を算出する取引事例比較法の3つがあります。

中古マンションの取引に最も多く用いられるのが取引事例比較法です。
取引事例比較法では、実際に近隣エリアで取引された事例をもとに算出します。マンションの築年数や駅からの距離、間取りなども査定額を決める重要な項目です。査定額は不動産会社によって多少差が出ることがあります。相場と極端に違う場合は、なぜその査定価格なのかを仲介業者に確認することも必要です。その際、査定の根拠となる算出方法やデータを明らかにしてもらいます。

さらに相場と照らし合わせてみることで、適正かどうか見極めることが可能です。査定で損をしないためにも、できるだけ売主自ら情報収集しましょう。

【マンションの売却価格の調べ方】

中古マンションの売買で気をつけたいポイント

中古マンションの売買には何を気をつける?

中古住宅の売買のうち、約半数が中古マンションの取引といわれているように、マンションへの人気が高まっています。そのようななか、中古マンションを売りたいと考えている人も多いのが現状です。しかし、中古マンションが人気とはいっても、築年数が古くなるほど価格は下がってしまいます。そのため、中古マンションの資産価値を見極め、売るタイミングを図ることも重要なのです。

中古マンションは、築5年から10年くらいの物件が最も人気があります。新築よりは安く購入でき、外観や内装にまだそれほど古さを感じないからです。中古マンションを売りたいと考えているなら、築15年までというのが目安とされます。築15年を超えると古さが目立つうえ、マンションの修繕積立金も高くなる傾向があるからです。
さらに、キッチンやバスルームなどの水回りの設備も買い替えが必要となってきます。

リフォームにかける費用はそれほど安くはないため、それまでに売却を考える人も多いようです。購入する側にとっても、築15年目までの物件購入には大きなメリットがあります。築25年目までに適用される住宅ローン控除をフル活用するためには、築15年目までの物件を購入する必要があるからです。住宅ローン控除は10年間適用されることになっているため、築15年なら最大の築25年目まで控除適用となります。

また、マンション売買は、築年数が古いほど建物の状態が重要です。売却の際には耐震診断報告書や住宅性能評価書など、建物の状態を示すデータを求められることもあります。住む人の安全を守る建物の構造はもちろんのこと、室内環境の快適性もポイントです。買主は修繕やリフォームはされているか、付帯設備は古いままかなど購入前にしっかりと確認しましょう。

築年数の古い物件でも高く売買できるケースとは?

中古マンションは、築年数の経過とともに価値が下がっていくのが一般的です。しかし、なかには築年数が経過しているマンションでも高く売買されているケースもあります。その理由の1つが景気の影響です。

不動産の価値は、景気の状態がよくなると上がる傾向があります。新築で購入したときに比べて、景気が回復している時期なら、それほど価値を下げることなく売却することも可能です。年間を通じて中古マンションの需要が高まる時期もあります。引っ越しの多い1月から3月です。この時期は転勤や入学シーズンと重なるため、購入や住み替えを考える人が多くなります。需要が多ければ、高く売買できる可能性が高まることが予想されます。

また、人気エリアにあるマンションや駅チカマンションなどは、築年数が古くても需要があるので、高い売却価格が期待できます。特に都心のタワーマンションは人気が高く、価格が下がりにくいのが特徴です。都市の再開発によって近隣の地価が上昇し、それに伴いマンションの価格が上がるケースもあります。新築分譲時よりマンション周辺の利便性が高まり、近隣エリアのマンション需要が高くなるからです。

マンション周辺の利便性

東京の芝浦周辺や豊洲周辺などがこのケースにあたります。不動産の価値は時期によって変動があるうえ、素人では見極めが難しいものです。売却のタイミングを見るうえでも、一括査定サービスを利用するなどして、定期的に査定してもらうことをおすすめします。ほんの少しのタイミングで損をしないように、普段から周辺の不動産情報には耳を傾けるようにしましょう。

【マンション売却の注意点!少しでも金額を高くするには?】

まとめ

マンション売買には、多くの手続きや書類が必要です。売買の際には、手続きにかかる手数料や税金などの諸経費もかかります。諸経費には売手が支払うものと買手が支払うものがあるので、取引前に確認しておくと安心です。あらかじめ手続きの流れや必要書類、諸経費を把握し、スムーズな取引ができるようにしておきましょう。また、売買価格についても、仲介を依頼する不動産会社や売買するタイミングによって変わってきます。

マンション売買で損をしないためには、売買に関する基礎知識をしっかりと学んでおくことが大切です。