不動産を売却するにあたっては、不動産業者に査定してもらって売り出し価格を決めることが欠かせません。不動産売却を検討している人にとってはどのような方法で査定するのかは気になるところでしょう。
そこで、査定額の算出方法や査定に関する基礎知識などについてお伝えします。
この記事の目次
査定前に相場価格を知る重要性
不動産を売却するにあたっては、不動産業者などに査定を依頼することになるのが一般的です。売り出し価格を決めるにあたり、購入時よりも高い価格や希望する価格を設定したくなるものですが、その価格を買主が承諾してくれなければ売買契約は成立しません。
そのため、売りたい価格ではなく売れる価格を売り出し価格に設定する必要があります。
不動産業者の査定額は売り出し価格を決める参考として有用です。ただし、査定を依頼する前に、売主自身が周辺の不動産相場を調べて適正売却価格を確認しておくことが大切でしょう。
査定に関する考え方や査定方法は不動産会社によって違います。そのため、査定額は相場よりも高いケースもあれば低く算定されるケースもあることを知っておくことが必要です。不動産業者が算定した査定額が適正なものかどうかを判断するためにも、査定を依頼する前に周辺不動産の売買価格相場をチェックしておくことをおすすめします。
査定額イコール売却価格ではないことに注意
不動産業者から提示された査定額は、その金額で必ず売却できる価格ではありません。結果的に、実際の売却価格とは異なってくるのが一般的です。不動産業者は査定額を算定するにあたってさまざまな要素を勘案して適正価格の算出に努めます。
考慮する要素としては
◆建物の築年数や維持管理状態
◆周辺環境が価格に与える影響
◆建物が向いている方角などの要素
があげられます。そういった要素を総合的に判断して決まるのが査定額です。算定した査定額が表している価格は対象不動産の理論的な価値といえます。
しかし、理論的な価値と売却価格は違うものです。売買取引は相手がある取引で、売主が希望を持っているように買主にも独自の考え方や事情があります。そのため、査定額そのままで売り出したとしてすぐに売却が決まるとは限りません。なかなか売却が決まらない場合は大幅な値下げを余儀なくされるケースもあります。
最終的には、売却価格は売主と買主の交渉で決まり、査定額がそのまま売却価格になるわけではないということを理解しておきましょう。
4つの不動産価格の査定評価方法
不動産の売却を検討している人は、不動産価格の査定方法にも興味があるでしょう。提示された査定額が妥当なものかどうかを判断するためにも、不動産業者はどのように対象不動産を査定しているかについてある程度知っておくことをおすすめします。
不動産価格の査定評価方法は主に4つあります。
1.取引事例を比較
対象となる不動産の最終的な価格は、実際に売買契約が成立するまでわかりません。しかし、対象物件の周辺エリアで実際に売買取引された事例があれば大いに参考になるはずです。
ただし、まったく同じ土地であっても、市場動向の変化や環境の変化などによって売買価格は変わります。そのため、取引事例に対応した価格をそのまま使用するのではなく、補正して適正な価格に修正する方法もあります。
2.時点修正
◇取引事例等比較法とセットで行われるのが一般的
例えば、取引事例の時点よりも査定時点の相場が10%下がっている場合は、取引事例の売買価格から10%下げた価格を査定額にするのが時点修正です。
3.原価法
◇一戸建てやマンションの査定に使われることが多い方法
再調達価額とは新品を再取得する場合の価格のことで、減価修正分とは建築後何年か経過して古くなり下がった価値のことをいい、新規購入金額と時の経過による価値の減少を考慮して査定額を出します。
4.収益還元法
◇売却対象の不動産を利用して賃貸経営による運用をした場合に、将来どの程度の収益が得られるかを予想してその総収益額から不動産の価値を算定する
将来の収益額は期待利回りの率などで割り引いて現在価値に修正して収益総額を算出する方法をとります。実際の査定においては、これら4つの方法を複数組み合わせて査定することが多いといわれています。
机上と訪問!2つの査定方法
不動産業者が行う査定には、机上査定と訪問査定の2種類があります。
机上査定
机上査定とは文字通り机の上で査定することです。簡易査定と呼ばれることもあります。実際に対象不動産を訪問して調査をすることなく、不動産の概要に関する情報が記載された書類や売主からのヒアリングで得た情報、不動産業者として把握している周辺環境などのデータだけで判断して査定額を決める方法です。
売却にあたってどの不動産仲介会社にするかまだ決めていない場合は、この机上査定を依頼するとよいでしょう。机上査定であれば現地での立会などの負担なしで査定額情報が得られます。また、不動産の相場を知りたい人にも机上査定は有効です。
実際の不動産を見ることはありませんが、机上でもかなりの情報を集めて査定額を理論的に出すことは可能です。短時間で査定額が得られるメリットがあります。
訪問査定
一方、訪問査定は査定対象となる不動産の現地調査まで行う査定方法です。実査定とよばれるもので、机上査定で用いられるデータはもちろん、それに加えて現地を訪問して実際の対象物件の状態を確認し、現地で得た情報も加味して査定額を算定します。机上査定よりも精度が高い査定額が得られるため、実際の売り出し価格を決める際に役立つ点が特徴です。
不動産価格の査定に必要な書類とは?
不動産業者が物件の査定を行う場合は、さまざまな情報を集めることになります。数多くの情報源の中でも欠かせないものが、書類に書かれた情報です。査定額算定に使用する主な書類について5つ紹介します。
登記簿抄本
1つ目は登記簿謄本です。不動産登記簿は、所定の料金を支払えば誰でも手に入れることができます。登記簿を管理しているのは法務局です。土地・建物に分かれていて、それぞれ1つの不動産ごとに表題部と権利部があります。表題部には不動産場所や大きさなどの概要が、権利部には所有権や抵当権などの権利関係がまとめられています。
登記簿謄本とは登記簿の内容のすべてを含むコピーだと理解するとよいでしょう。
公図
2つ目は公図で、登記簿とセットで保管されている図面です。土地についてはどんな形の土地でどのような道路付けになっているかが価値を大きく左右する要因です。公図はそれほど正確な図面ではないものの、おおまかな形状や位置関係は把握できます。
建物の詳細図面
3つ目は建物の詳細図面です。建物の査定時には建築設計図や工事記録書などを入手して建物の詳細を調べます。場合によっては建築確認済証などを取得することもあるでしょう。
登記済権利証
4つ目は登記済権利証です。これを持っている人が物件の真の所有者とみなされるものですが、新たな発行は行われておらず登記識別情報に置き換わってきています。
測量図
5つ目は測量図です。土地測量図などを入手することで物件の配置や構造の把握が可能です。
まとめ
不動産の売却を成功させるために必要なことは、正確な査定額を得ることです。そのためには、複数の不動産会社に見積り依頼をして情報収集するのがよいでしょう。しかし、査定額が適正かどうかを判断するためには、売主自らも相場をチェックしておかなければいけません。
また、適正な査定額を得るためには、信頼できる不動産会社を見つけることも大切です。信頼できる業者が見つかれば安心して取引できるようになるはずです。信頼できる業者を見極める目を養いましょう。