この記事でわかること

  • 空き家は所有し続けるとリスクがある
  • 空き家の処分に利用できる補助金がある
  • 自治体は明確な利用目的がないと空き家を買い取ってくれない

相続などにより、空き家を所有した場合、管理をする手間や税金などの費用がかかり、早めに手放したいですよね。

そこで、自治体が買取を行ってくれないだろうかと考える方も多いかと思います。

こちらの記事では、自治体の取り組みや補助金などについてご紹介していきます。

空き家を所有し続けるリスクや売却以外の活用法についてもご紹介していくので、ぜひ参考にしてくださいね。

全国の空き家の現状

全国の空き家の現状のイメージ画像

空き家は年々増加しており、「空き家問題」が日本の深刻な問題の一つとなっています。

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、空き家の数は2018年の849万戸から2023年の900万戸へと51万戸も増加しており、過去最多の状態となっています。
図2 空き家数及び空き家率の推移-全国(1978年~2023年)

引用:総務省統計局

このように空き家数の推移は、年々増加が続いている傾向にあり、30年間で約2倍となっています。

空き家を所有し続けるリスク

空き家を所有し続けるリスクのイメージ画像

空き家を所有し続けると、税金や管理面でもさまざまなリスクが発生します。

具体的には、以下のようなリスクがあります。

  • 固定資産税と管理費用がかかる
  • 近隣に危害や損害を与えると賠償金を請求される
  • 特定空き家に指定される恐れがある

固定資産税と管理費用がかかる

空き家は使用していなくても、所有しているだけで毎年固定資産税がかかり、管理費用も発生します。

固定資産税とは、土地や建物などの固定資産の所有者に対して課される税金になります。

金額は以下の計算式で算出することができます。
固定資産税=固定資産税評価額×1.4%

また、空き家を所有し続けるには管理費用がかかり、所在地や管理方法によって金額は異なりますが、主に以下のものが必要になります。

管理費用 金額 詳細
火災保険料 年間数万円~ 空き家を使用していなくても毎年必ず支払いが発生する
水道料金・電気料金 年間数万円~ 解約していない場合、最低でも基本料金が発生する
交通費 年間数千円~ 空き家が遠方にあり、自分で管理をする場合に発生する
委託費 年間数千円~10万円超え 空き家管理代行サービスに委託する場合には、毎月委託費が発生する

近隣に危害や損害を与えると賠償金を請求される

放置されている空き家は劣化が進行しやすく、台風や地震などの自然災害時に倒壊するリスクもあります。

その際に、近隣に危害や損害を与えてしまった場合、損害賠償を請求される可能性があります。

もし、死亡事故に繋がってしまうようなケースが起これば、億単位での損害賠償が発生する深刻な問題となることもあるのです。

こういった事故を避けるため、日頃から適切な管理が必要となりますが、その場合は管理費用がかかり続けてしまうので、放置している空き家は早めに手放したほうが良いでしょう。

特定空き家に指定される恐れがある

空き家を放置すると、自治体から特定空き家に指定される恐れがあります。
特定空き家とは、管理不足により著しく危険な状態であると判断された空き家を指します。

これに関しては、空き家対策特別措置法により以下の条件が定義されています。

  • 倒壊など著しく保安上危険となる恐れのある状態
  • 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
  • 適切な管理が行われていないことで著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態

出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項」

特定空き家に指定されると、自治体から適切な管理に向けた指導等を受け、従わなければ住宅用特例から除外されて固定資産税が6倍になったり、50万円以下の罰金が科されます。

また、最悪の場合、空き家を強制的に解体させられることもあります。
その場合、解体費用等は空き家所有者負担になってしまうので、注意が必要です。

空き家問題における自治体の取り組みや補助金について

空き家問題における自治体の取り組みや補助金についてのイメージ画像

空き家の処分方法に困った時、自治体ではどのような取り組みをしているのか気になる方もいるかと思います。

こちらでは、空き家問題における自治体の取り組みや補助金についてご紹介していきます。
具体的には以下のようなものがあります。

  • 空き家バンク
  • 空き家バンクに登録すると利用できる補助金
  • 空き家の解体に利用できる補助金
  • 空き家のリフォームやリノベーションに利用できる補助金

空き家バンク

空き家バンクとは、自治体や自治体から委任を受けた団体によって運営されている空き家の所有者と利用者をマッチングするシステムです。

このシステムを利用することにより、空き家の売買や賃貸の取引を行うことができます。

しかし、営利目的ではないので、自治体は契約や仲介に関与しません。
そのため、所有者と利用者は直接交渉する必要があります。

詳しく知りたい方は、国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」をご確認ください。

空き家バンクに登録すると利用できる補助金

空き家バンクに登録すると、自治体によっては補助金制度が利用できる可能性があります。

空き家バンクに登録すると利用できる補助金には以下のような事例があります。

【玄海町空き家バンクリフォーム等促進事業補助金】
玄海町の空き家バンクに登録した空き家所有者や、空き家バンクを介して売買又は賃貸を行った人等であれば、下記いずれかの補助金申請が可能になります。

補助内容 交付割合 交付上限
仲介手数料補助 全額 5万円
家財処分等補助 全額 10万円
空き家登録者改修補助 2分の1 100万円
空き家解体補助 2分の1 100万円

詳しく知りたい方は、「玄海町ホームページ」をご確認ください。

【新島村定住化対策事業交付金】
新島村内の空き家の改修や除却等費用の一部を助成する助成事業で、村税等の滞納がなく、下記の対象者要件を満たしていれば申請することが可能です。

  • 空き家バンク登録済みの空き家所有者
  • 空き家バンクを利用して村内の家屋や土地を購入または賃借した移住者

工事内容と交付率および交付上限は以下のようになります。

工事内容 交付割合 交付上限
改修等 2分の1 100万円
除却 2分の1 100万円

空き家の解体に利用できる補助金

条件を満たしている場合、空き家の解体(除却)を行う前に補助金を受け取れる可能性があります。

ただし、多くの場合50万円が上限となっており、補助金の交付は工事完了後になる場合が多いので注意が必要です。

空き家の解体に利用できる補助金には、以下のような事例があります。

【秋田県羽後町空き家除却費補助金制度】
自発的に空き家等を除却する空き家所有者に対して、費用の一部を補助する制度になります。
申請時点で空き家である戸建て住宅かつ事業等を目的としない空き家等であり、以下の要件を満たしている場合に申請が可能です。

  • 補助対象空き家の登記事項証明書に所有権を有する者として登録されている者(所有者)
  • 所有者の相続人
  • 公的機関が発行する書類により、不在者財産管理人、成年後見人等の補助対象空き家を処分する権限を有する者

工事対象と補助金交付率および交付上限は以下のようになります。

工事対象 交付割合 交付上限
危険空き家 2分の1 50万円
空き家 3分の1 30万円

危険空き家とは、自治体と建築士等が判定表に従って老朽度・不良度判定を行い、評点が100点以上となった空き家のことを指します。

詳しく知りたい方は、「羽後町ホームページ」をご確認ください。

空き家のリフォームやリノベーションに利用できる補助金

条件を満たしている場合、空き家のリフォームを行う前に補助金を受け取れる可能性があります。

ただし、交付額に上限があるため、工事内容によっては金銭的に大きな負担を負う可能性もあるため注意が必要です。

空き家のリフォームやリノベーションに利用できる補助金には、以下のような事例があります。

【群馬県渋川市空き家活用支援事業】
空き家所有者や、居住目的で空き家を購入した人を対象に、リフォーム費用の一部を補助する支援事業になります。
下記の要件にあてはまる場合に交付率に対して20万円が加算されます。複数該当の場合も20万円までになります。

  • 居住誘導区域内にある空家
  • 市外からの転入者
  • 若者夫婦世帯(夫婦いずれかが40歳未満)
  • 若者パートナーシップ宣誓世帯(パートナーいずれかが40歳未満の世帯)
  • 子育て世帯(15歳以下の子供を扶養している世帯)

ただし、補助対象とならない工事内容もあるため予定している工事内容が対象になっているかは事前に確認しておきましょう。
補助金の交付率は10分の1までとし、上限は50万円(加算額込み)です。

詳しく知りたい方は、「渋川市ホームページ」をご確認ください。

自治体に空き家の買取を依頼する方法

自治体に空き家の買取を依頼する方法のイメージ画像

空き家の処分方法に困った時、自治体に買取の依頼をしたいと考える方も多いかと思います。

自治体に空き家の買取を依頼するには、自治体ごとに土地買取希望申請書のフォーマットがあるためそちらで申請を行います。

主な記入内容としては以下の通りです。

  • 申請者の住所、氏名
  • 土地の地番や地目(土地の用途)、面積
  • 土地上にある建築物等の用途や構造
  • 買取希望価格

買取希望価格は、高すぎる価格で申請してしまうと、買い取ってもらえる可能性が低くなってしまいます。

そのため、事前に相場を調べておくことが重要です。

空き家の買取における相場の調べ方については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

売却以外の空き家の活用法

売却以外の空き家の活用法のイメージ画像

空き家問題における自治体の取り組みや自治体に空き家の買取を依頼する方法についてご紹介してきましたが、必ずしも空き家を手放すことができるとは限りません。

空き家バンクは、利用者が現れないと取引が完了せず、自治体に買取を依頼する際も、自治体にとって明確な使用目的がある場合でないと難しいケースがほとんどです。

しかし、空き家を所有し続けるのにはリスクがあるため、なるべく早く手放したいですよね。

こちらでは、売却以外での空き家の活用法についてご紹介していきます。

売却以外の空き家の活用法には、以下のようなものがあります。

  • 賃貸やシェアハウスとして活用する
  • 駐車場として貸し出す
  • 民泊として活用する
  • シェアキッチンとして貸し出す
  • サテライトオフィスやコワーキングスペースとして活用する
  • 飲食店として活用する
  • 倉庫やガレージとして貸し出す
  • セーフティネット住宅として活用する

賃貸やシェアハウスとして活用する

空き家を賃貸やシェアハウスとして貸し出すという活用法があります。

毎月安定した収入が得られるというメリットがあり、シェアハウスの場合は複数人に貸し出すことが出来るためより高い収入を得やすくなります。

しかし、状態の悪い空き家の場合は賃貸やシェアハウスとして貸し出せる状態にするためにリフォームなどのコストが数百万円〜数千万円ほどかかります。

また、入居者が確実に現れるという保証はなく、立地の悪いエリアであればなおさら経営が困難になります。

そのため、多額の初期費用を投じても賃貸やシェアハウスとしての需要があるか見極める必要があります。

駐車場として貸し出す

空き家を解体して更地にし、駐車場として貸し出すという活用法もあります。

空き家を解体してしまえば倒壊のリスクもなく、解体費用だけで経営が行えるようになります。

しかし、駐車場経営は賃貸経営よりも収益性が低いというデメリットがあります。

また、空き家を解体してしまうと、住宅用地の特例が適用されなくなり土地にかかる固定資産税が最大で6倍になる可能性もあります。

そのため、駐車場経営で得た収入が解体費用を上回れる環境かどうかをしっかりと見極めましょう。

民泊として活用する

空き家が建っているエリアが観光地であれば、2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたことにより、一般住宅を宿泊施設として提供できるようになったため民泊として活用することもできます。

しかし、ビジネスとして民泊を行う際には1年のうち180日しか営業できないと法律で定められているため注意が必要です。

収益が見込めない場合は、民泊の経営を始めるにあたってのリフォーム費用や備品の購入費用を回収できない恐れもあるため慎重に検討した方が良いでしょう。

サテライトオフィスやコワーキングスペースとして活用する

サテライトオフィスとは、企業の本社とは別の場所に設置されたオフィスのことを指します。

コロナ禍によりリモートワークが浸透し、家賃の高い都市部よりも賃料の安い地方の空き家をサテライトオフィスとして活用する企業が増えたため、近年サテライトオフィス誘致事業を展開している自治体も珍しくありません。

所有している空き家がある管轄の自治体が、サテライトオフィスの誘致に積極的なら、改修工事費を負担してくれる可能性もあるためコストを抑えることもできます。

コワーキングスペースとは、さまざまな人が設備を共有しながら仕事を行う場所のことを指し、主にフリーランスや個人事業主、起業家、リモートワークをしている会社員などの利用が見込めます。

しかし、サテライトオフィスもコワーキングスペースも交通の便の良さなどの立地が重視される傾向にあり、需要が見込めない場合は経営が困難になってしまう危険性があるでしょう。

飲食店として活用する

自治体によっては空き家の改修工事に際して補助金を支給しているところもあるため、飲食店として活用するのもひとつの方法です。

実際に空き家を飲食店にして成功している方も数多くいます。

空き家が観光地のエリアにあるなど、立地が良い場合は初期費用を回収し、さらに利益を得ることも可能です。

しかし、人通りが少ないエリアなどは売り上げが見込めず、経営が困難になる可能性もあるため、しっかりと検討するようにしましょう。

倉庫やガレージとして貸し出す

空き家の外壁のみを修繕し倉庫として貸し出す活用法や、ガレージハウスへと改装し貸し出すという活用法もあります。

倉庫の場合は、初期費用を抑えた状態で貸し出すことができ、ガレージハウスは駅から遠い土地でも借りたいという方が現れやすくなります。

しかし、どちらも借り手が現れなければ当然収益は見込めないため、事前に需要があるかしっかり調査しましょう。

セーフティネット住宅として活用する

セーフティネット住宅とは、高齢者や障がい者、低所得者、外国人など住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸物件のことを指します。

セーフティネット住宅を経営するには、まず「住宅セーフティネットの情報提供システム」に登録しなければなりません。

登録の際に、空き家を住宅確保要配慮者のみが入居できる「専用住宅」か、それ以外の方も入居可能な「登録住宅」にするかを選択し、専用住宅として登録した場合は、耐震改修工事やバリアフリー改修工事などの補助金を自治体から受け取ることができます。

また、自治体によっては低所得者の入居を受け入れた際に家賃の一部を給付してくれる可能性もあります。

しかし補助金を利用して空き家の改修工事を行なった場合、10年間は専用住宅として運用しなければならず、その間は売却などが行えなくなってしまうため注意が必要です。

空き家の買取は自治体よりも不動産会社がおすすめ

空き家の買取は自治体よりも不動産会社がおすすめのイメージ画像

空き家の買取における自治体の取り組みについてご紹介してきました。

しかし、自治体が進んで空き家の買取を行うのは明確な使用目的がある場合のみが多いのが現状です。

そのため、自治体に空き家を買い取って貰えず、所有し続けるリスクもあるため、空き家の処分に困っている方は多いでしょう。

その場合は、不動産会社に買取を依頼するのがおすすめです。

不動産会社の買取であれば、すぐに空き家を手放すことができ、現金化することが可能です。
株式会社じげんが運営する「イエイ」の一括査定であれば、安心して取引ができる多くの不動産会社から一括査定を受けることができます。
空き家の処分方法にお困りの方は、ぜひお気軽にご利用ください。