この記事の概要
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一戸建てを売りたいけれどなにから取りかかっていいのかわからず、とりあえず査定からはじめようとしている方もいるでしょう。
一戸建ての売却をスムーズにおこなうためには、不動産査定前の事前準備も重要です。
本記事では、一戸建ての売却に焦点を当てた売却の流れやコツ、注意点などを解説します。
不動産の売却時には、諸費用や税金がかかります。
トータルの費用もあわせて把握し、物件それぞれに合った一戸建て売却のベストな方法を確認しておきましょう。
この記事の目次
一戸建て売却の流れ
一戸建ての売却には次の通りです。不動産査定前の事前準備も重要です。
事前準備 |
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---|---|
不動産査定・媒介契約 |
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売却活動 |
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契約・売却後 |
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一戸建てはマンションに比べ個別性が高い不動産であるため、マンションの売却期間の目安が3〜4ヶ月であるのに対し、一戸建ての場合は3〜6ヶ月が売却期間の目安と長めです。
住み替えなどを希望している方は、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
それぞれの流れでなにをすべきか、売却を失敗しないために知っておきたいポイントを詳しく解説します。
住宅ローンの残高確認
住宅ローンを利用して一戸建てにお住まいの方は、原則、売却時は住宅ローンを完済させる必要があるため、住宅ローンを返済中の場合は残高を把握しておきましょう。
確定申告用に送られてくる住宅ローン残高証明書のほか、ローン契約時の返済予定表などで、現在の大まかな金額は確認できるでしょう。より詳細の金額を確認する場合には、金融機関が用意している住宅ローン利用者向けに提供しているインターネット上のマイページなどで確認するか、金融機関へ電話するほうが望ましいでしょう。
住宅ローンの残高を知ることは、どれくらいの価格で売り出したらいいかのひとつの目安になるでしょう。
一戸建ての売却相場を把握
査定前には、自分で周辺エリアの一戸建ての売却相場を調べておくとよいでしょう。
ある程度の相場を把握し予備知識として蓄えておけば、不動産会社の査定額の妥当性を判断しやすいためです。
過去の成約価格や売り出し中の物件から、売却相場を把握できるサイトは次の通りです。
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
- 不動産流通機構「REINS Market Infomation」
- 不動産売買・住宅情報サイト
上記のサイトを活用し、売却価格の相場感を掴んでおきましょう。
不動産の所有者名義や境界線の確認
不動産の売却時は、不動産の所有者名義と境界線を確認する必要があります。
「登記簿謄本」が手元にない場合は、法務局で取り寄せてから不動産の所有者名義を確認しましょう。
隣地との境界線が確定していない不動産であると、売却後の敷地利用の際にトラブルの起こる恐れがあります。
境界線が確定していない場合、土地家屋調査士に依頼して確定測量をおこなう必要があります。
>> 土地売却時に必要となる測量に欠かせない地積測量図とは?
不動産会社へ査定依頼・査定実施
不動産がどれくらいの値段で売れるのかを知るため、不動産会社へ査定を依頼しましょう。
不動産の売却査定では、次のように複数の査定方法があります。
- 机上査定
- 訪問査定
売却へと着実に進めていきたいのなら、訪問査定を選ぶほうがよいでしょう。
机上査定は書類などをもとに査定するのに対し、訪問査定では現地で不動産の現況を確認しながら査定を行うため、机上査定よりも精度が高くなる傾向があるからです。
不動産査定は、信頼できる不動産会社を見つけるための重要な工程であることも理解しておくとよいでしょう。
売却査定は、築年数などを加味して査定額を算出することになります。
なお、売却査定を行う不動産会社によって査定額は異なるため、複数の不動産会社に査定を依頼し、比較したうえで媒介契約を締結する不動産会社を決めるのもよいでしょう。
その他、査定依頼時の注意点や伝えるべきことなど不動産の売却査定について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
家の査定とは?事前準備、依頼時の注意点や伝えるべきことを解説 - イエイ
不動産査定とは?依頼方法や売却を成功させる2つの注意点を解説
不動産査定とは?査定方法や査定の流れ、査定額の決定方法などを解説 - イエイ
不動産会社との媒介契約締結
売買仲介を依頼する不動産会社を決めたら、売却活動をするために必要な媒介契約を結びます。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。売却の進め方に応じて適切な媒介契約を選択しましょう。
契約内容 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社との 契約 |
〇 | × | × |
自分で買主を見つけての 取引 |
〇 |
〇 | × |
レインズ(不動産流通機構)への登録義務 | 任意 | 媒介契約締結後7日以内 | 媒介契約締結後5日以内 |
契約期間 |
法令上の制限なし (3ヶ月以内を推奨) |
3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
営業成果の 報告頻度 |
義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
個別性の高い一戸建ての売却に関しては、仲介担当者と密に連携が取りやすい専任媒介契約または、専属専任媒介契約を選ぶのが一般的です。
売却活動
ここからが売却活動のスタートです。
まず、不動産会社はWEBやチラシ等を活用し売却不動産の広告を行い集客に注力します。
査定価格や周辺相場などを参考に売り出し価格を決めますが、相場より価格を高く設定する場合、安く設定する場合において、相場価格と比較した際のそれぞれのメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
相場より高い | 売却益が増える | 売却までに時間がかかる可能性あり |
相場より安い | 早く売却できる可能性あり | 売却益が減る |
早めに売却したい場合は周辺相場よりも安く設定するなど、状況に応じて価格設定を決めるとよいでしょう。
内覧に向けた片付けや掃除
内覧者の購買意欲が増すよう、内覧前には丁寧に掃除をしておきましょう。
庭や玄関アプローチのほか、室内では水回り周辺をとくに綺麗に掃除しておくと、印象がよく見えます。
空き家の場合は、定期的な換気をおこなうほか、電気、ガス、水道が使えるか事前に確認しておきましょう。
内覧の立ち合い・アテンド
内覧者が内覧する際は、原則、売主も立ち会います。
売却不動産のアピールポイントなどがあれば、内覧者に積極的に伝えていくとよいでしょう。
どのような売主から一戸建てを購入するのか、売主の人柄も重視する買主もいるため、印象よく対応するのが望ましいでしょう。
内覧者の感度確認
内覧後は、不動産会社の担当者に、内覧者の感想を確認してもらうようにしましょう。具体的に、どういった点がよいと思ったのか、どういう点が悪いと思ったのか、また売却不動産に対する購入意思の感度について、担当者を通じてしっかりとヒアリングすることで、次回以降の内覧時に、役立てることができることもあるでしょう。
買主との条件交渉
売買契約の前には、売却価格や引き渡しのスケジュールなど条件交渉がおこなわれるケースが多いです。
買主の意図も汲み取りながら交渉してみましょう。交渉前にどこまで条件を譲歩するかを決めていくと、当日スムーズです。
不動産売買契約の締結
不動産売買契約では、売主・買主・不動産会社の三者が揃い、次の通りに進行します。
- 不動産売買契約書、重要事項説明書の読み合わせ
- 不動産売買契約書、重要事項説明書への署名・捺印
- 手付金の受領
- 不動産会社へ仲介手数料の半金の支払い
重要事項説明書は、売買の対象となる物件や取引条件にかかわる重要事項が記載された書面です。
また、不動産売買契約書が交渉時の条件と相違がないかをしっかりと確認しておきましょう。
決済・引き渡し
不動産の引き渡し日に決済がおこなわれ、その当日に、司法書士が所有権移転登記等をおこないます。所有権移転が完了した後、鍵を引き渡します。
その後、不動産会社へ仲介手数料の残金を支払うほか、司法書士へ登記にかかる報酬を支払います。
確定申告
不動産の売却で出た売却益の金額によって譲渡所得税がかかります。譲渡所得の申告および所得控除を利用するためには確定申告が必要です。
確定申告は引き渡した年の翌年の2月中旬から3月中旬におこないます。
納税は義務となるため、忘れずにおこないましょう。
>> 不動産売却の確定申告は必要?不要なケースと必要書類も解説!
一戸建て売却にかかる費用
一戸建ての売却時にかかる費用は次の通りです。
かかる費用の種類 |
かかる金額 |
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---|---|---|
必ずかかる費用 |
仲介手数料(不動産会社に支払う) |
(売買価格の3%+6万円)+消費税 ※売買代金が400万円を超える場合 |
印紙税(不動産売買契約書の作成時) |
200円~48万円 (軽減税率適用) |
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住宅ローンを利用している場合 |
抵当権抹消登記費用 |
不動産1個につき1,000円 (司法書士に依頼する場合は約1万~1万5,000円) |
住宅ローン返済手数料 |
金融機関によりかからない場合もある |
|
売却益が 出た場合 |
譲渡所得税(譲渡所得にかかる所得税と住民税) |
(譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額) × 税率 |
場合によって必要になる費用 |
解体費用(更地にして売却する場合) |
約3万~8万円/坪 |
測量費用(境界線の未確定時) |
約30万~60万円 |
|
ハウスクリーニング費用 (プロに清掃を依頼する場合) |
約6万~20万円 |
売却益だけではなく、売却にかかる費用や税金なども含めてトータルでどのくらい手元に残るのかを計算すると計画的です。
一戸建て売却に必要な書類
一戸建て売却時に必要な主な書類は次の通りです。
- 登記簿謄本または、登記事項証明書
- 不動産売買契約書
- 重要事項説明書
- 権利証または、登記識別情報通知書
- 固定資産税納税通知書
- 固定資産評価証明書
- 測量図
- 境界線確認書
- 建築設計図書
- 建築確認済証・検査済証 など
必要書類について不足がないか不動産会社に相談すると安心でしょう。
売却益にかかる税金を抑える特例制度
売却益には売却益の金額によって税金がかかります。
しかし、特例制度を活用すれば所得税や住民税を抑えられるほか、譲渡損失のある場合にも次の特例が活用できます。
売却益が出た場合 |
売却損失が出た場合 |
---|---|
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なお、特例制度を受けるには確定申告を行う必要があるため、忘れずに申告しましょう。
一戸建ての売却をスムーズに成功させるコツ4選
一戸建ての売却を成功させるため、どんなコツがあるか紹介します。
- ピックアップしたアピールポイントを内覧時に伝える
- 一戸建ての売却に強い不動産会社を選ぶ
- 積極的に不動産会社へ連絡して報告をうける
- 早期に売却したいのなら不動産会社の買取も視野に入れる
それぞれを詳しく解説します。
①ピックアップしたアピールポイントを内覧時に伝える
内覧者に売却不動産をアピールするため、魅力的なポイントをリストアップしましょう。
-
品ぞろえのよいスーパーマーケットが近くにある
- 閑静で住みやすい
- 公園や学校が近い
- 病院が近い
- 公共交通機関が近い など
どのようなポイントがあればイメージがプラスに働くのか考え、まとめておきましょう。
②一戸建ての売却に強い不動産会社を選ぶ
地域に根付いた不動産会社のほうが、一戸建ての売却が得意な場合もあります。
査定額だけでなく、不動産会社の過去の売買実績なども考慮しながら、仲介を依頼する不動産会社を選ぶとよいでしょう。
なお、営業担当者との相性も重要です。査定時にきちんと話を聞いてくれるのか、真摯な対応をしてくれるかなどを見極めましょう。
③積極的に不動産会社へ連絡して報告をうける
問い合わせはあったのかなど、積極的に営業担当者へ確認することも大切です。
営業担当者では、多くの売却物件を抱えています。
自分の不動産の売却活動を積極的におこなってもらうためにも、定期的に連絡を取り、コミュニケーションを深めるとよいでしょう。
④早期に売却したいのなら不動産会社の買取も視野に入れる
早期に売却したい場合や需要の少ないエリアにある不動産の売却を検討する際は、不動産会社の買取も視野に入れましょう。
なお、仲介では相場と同じくらいの価格で売れる可能性が高いですが、買取となると相場の7割~8割程度に価格が下がるのが一般的ですが、その分、売却までの期間は、仲介と比べると短いというのが特徴です。
一定期間、売却活動をおこなったが売れなかった場合に買取を行う「買取保証」を取り扱っている不動産会社もあります。
売却スケジュールなども考慮したうえで、どの売却方法を選ぶのがよいのか検討しましょう。
一戸建ての売却が難しい・売れない時の対処法
首都圏にある戸建ての売却が成約に至るまでの期間は、おおよそ3~6ヶ月以内です。
売却活動をしているが「内覧の申し込みがあまりない」や「内覧はあっても契約に至らない」といった悩みを抱えている方も多いと思います。
こちらでは、それぞれの原因と対策についてご紹介していきます。
【内覧の申し込みがあまりない】
原因 | 対策 |
---|---|
物件が需要の少ないエリアにある | そのエリアに詳しい不動産会社に依頼しアピールポイントを探す |
物件の築年数が古い | 不動産会社の売却サポートであるインスペクション(専門家が行う住宅診断)や瑕疵担保保険(修繕費用を補償する保険)を活用する |
物件の間取りが個性的 | リノベーションすることを前提としている顧客へアピールする |
アピール不足 | 不動産会社の広告の見直しを依頼する 広告戦略が得意な不動産会社へ依頼の変更を検討する |
売り出し価格が相場よりも高い | 市場相場に詳しい担当者に相談し、価格の見直しを行う |
【内覧はあっても契約に至らない】
原因 | 対策 |
---|---|
内覧者の購買意欲を高められない | 掃除をするなど物件をきれいな状態に保ち、場合によっては不動産会社の売却サポートであるハウスクリーニングを依頼する |
内覧時に売主が内覧者に悪い印象を与えてしまっている | 不動産会社の営業担当者に内覧対応について相談し、好印象を持ってもらえる対応を心がける |
一戸建ての売却における特有の注意点
一戸建ての売却時には、次の注意点があります。
- 抵当権の抹消登記を行う
- 契約不適合責任を負わないように建物のチェックを徹底する
あらかじめ確認し、失敗しない売却をしましょう。
抵当権の抹消登記を行う
不動産の売買では、所有権移転登記とともに、抵当権の抹消登記が必要になる場合があります。
住宅ローンを利用している場合、土地・建物に抵当権が設定されます。
引き渡しのタイミングで、司法書士に抵当権の抹消登記も行ってもらいましょう。
契約不適合責任を負わないように建物のチェックを徹底する
不動産に欠陥があった場合「契約不適合責任」となり、売主側に責任が課されるため、売却前は建物をしっかりとチェックする必要があります。
チェックする主な項目は次の通りです。
- 雨漏り
- シロアリの被害
- 給排水管の不具合
- 地中埋没物 など
不具合箇所をしっかりとチェックし、重要事項説明書に記載するほか、契約時にも説明するとよいでしょう。
瑕疵が発覚しトラブルとなった場合、欠陥部分の補修費用を請求されたり、売買代金の減額を請求されたりする場合があります。
>> 不動産売却における契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いを解説
一戸建てにおすすめの売却方法とは?物件別によくある疑問点
古い一戸建ての売却方法と、相続時における売却方法について解説します。
古い一戸建ての売却は更地のほうが売れやすいのか
古い建物をそのまま売却するよりも、建物を解体して更地にしてから売却するほうが好まれる場合があります。
しかし、それぞれ次の通りにメリット・デメリットがあります。
メリット |
デメリット |
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---|---|---|
そのまま売却 |
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解体して更地にしてから売却 |
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築年数や劣化状況に応じてどちらを選択するのがよいかは異なります。また、リフォームしてからのほうが売却しやすいケースもあります。
一戸建てをそのまま売却するときは以下のようなポイントがあれば、内覧者の購買意欲が増す可能性もあるでしょう。まずは、信頼できる不動産会社に相談してみましょう。
- ホームインスペクション済みであることを訴求する
- 「古家付き土地」「更地での引渡しも可能」として購入条件を緩和させる
- 引き渡し条件や価格など交渉に応じる
【ホームインスペクションとは?】
ホームインスペクションとは「住宅診断」のことです。
住宅診断士が専門的な知識をもって、住宅に欠陥があるか、劣化の状況や改修すべき箇所(時期や費用も含めて)などのアドバイスを行います。
相続した一戸建てはどうやって売却するのか
自分ひとりが相続した一戸建ての場合は、所有者名義はご自身ですので売却可能です。
相続人は原則として、遺言書に記載された人物や、配偶者や子どもなどの法定相続人です。
複数人の相続人がいる(共有者)場合では、共有者全員の同意がないと不動産を売却できません。
また、相続が開始された日から3年10ヶ月以内に相続不動産を売却すると、譲渡所得が抑えられる「取得費加算の特例」を活用できるため、期間内での売却も検討してみましょう。
>> 共有持分は売却できる?方法やトラブルの防止・対処法を解説!
一戸建ての売却は査定から本格的にスタートする!
一戸建ての売却は不動産の売却査定から本格的にはじまりますが、事前準備も重要です。
住宅ローンの残高確認や売却相場、諸費用などを調べて計画を事前に立てましょう。
スムーズに売却を成功させるためには、不動産会社選びも重要です。
一戸建ての売却に強いのか、売却実績は豊富か、営業担当者は信頼できそうかなど、さまざまなポイントから仲介を依頼する不動産会社を検討しましょう。
「イエイ」では、不動産売却一括査定をおこなっています。複数の不動産会社に一度に査定依頼ができ、不動産会社の比較ができるため、自身に合った売却活動が可能です。
一戸建ての売却をご検討の方は、最適なパートナー探しをお手伝いする「イエイ」を、ぜひご活用ください。