「親から実家を相続したけれど、誰も住む予定がない…」
「将来自分が戻るかもしれないから、売却せずに有効活用したい」

近年、日本全国で「空き家問題」が深刻化する中、このように空き家の扱いに頭を悩ませている方が増えています。
空き家をそのまま放置しておくと、維持費(固定資産税や管理費用)がかかり続けるだけでなく、建物の老朽化が進んで資産価値が落ちてしまうという大きなリスクがあります。

そこで有力な選択肢となるのが「空き家を人に貸して、賃貸経営を行う」という方法です。

「本当に借り手が見つかるの?」
「リフォーム費用で赤字になるのでは?」

そんな不安を抱える初心者の方に向けて、本記事では空き家を賃貸に出すメリット・デメリット、発生する費用や税金、成功するための手順まで、分かりやすく徹底的に解説します。

この記事の目次

空き家を賃貸に出す5つのメリット

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空き家を売却せず、あえて賃貸物件として活用することには、主に5つの大きなメリットがあります。

1. 毎月安定した家賃収入が得られる

最大のメリットは、何と言っても定期的な不労所得(家賃収入)が得られる点です。
毎月一定の収入が入ることで、空き家の維持にかかるコストを相殺できるだけでなく、老後の資金や生活費の足しにすることができます。

また、現役世代の方であっても、子どもの教育資金や住宅ローンの繰り上げ返済資金、あるいは日々の生活を豊かにするための余剰資金として活用可能です。
空き家という、そのままでは1円も生み出さない空間が、毎月数万〜十数万円を稼ぎ出す存在へと生まれ変わるインパクトは非常に大きいと言えます。

2. 建物の老朽化を防ぐことができる

家は「人が住まなくなると一気に傷む」と言われていますが、これは科学的な事実に基づいています。
人が住んでいない家は、窓が閉め切られたままになるため室内に湿気が猛烈にこもり、壁紙の裏や床下にカビが大量発生します。
これが木材の腐食を早め、建物の寿命を縮める最大の原因です。
さらに、給排水管の中に長期間水が通らないことで配管がサビつき、いざ使おうとしたときに赤水が出たり漏水したりするトラブルも頻発します。

賃貸に出して入居者に住んでもらうことで、日常的な換気や通水、掃除が自然と行われる環境が作られます。
また、入居者がいれば「雨漏りが起きている」「給湯器の調子が悪い」といった不具合にすぐ気づいて報告してもらえるため、建物の致命的なダメージを未然に防ぎ、資産価値を高く維持することに繋がるのです。

3. 固定資産税などの維持費をカバーできる

不動産は、所有しているだけで毎年「固定資産税」や「都市計画税」がかかります。
さらに、一戸建てであれば敷地内の雑草対策や庭木の剪定を定期的に業者へ依頼しなければならず、放置すれば近隣からのクレームに発展します。
マンションであれば、毎月の管理費や修繕積立金が容赦なく口座から引き落とされます。

これらをすべて持ち出し(自己負担)で支払うのは大きな経済的ストレスですが、空き家を賃貸に出せば、これらの維持管理コストを入居者から得る家賃で完全に相殺、あるいはそれ以上の黒字を出すことが可能になります。

4. 将来、自分や親族が住む選択肢を残せる

「今は仕事の都合で東京に住んでいるけれど、定年後は生まれ育った実家に戻りたい」「将来、子どもが結婚して独立したときに住まわせたい」など、現時点では使わなくても、将来的に活用の可能性があるケースは多々あります。
しかし、一度売却して他人の手に渡ってしまえば、二度とその家を取り戻すことはできません。

賃貸を選択すれば、所有権はあなたの手元に残ったままになります。
さらに、日本の法律に基づいた「定期借家契約(ていきしゃっかけいやく)」という貸し出し方を採用すれば、「3年間だけ貸す」「子どもが成人するまでの5年間だけ貸す」といったように、期限付きで運用することが可能です。
未来の選択肢を狭めることなく、今使っていない期間だけをピンポイントでお金に換えることができるのは、賃貸ならではの柔軟なメリットです。

5. 「特定空家」に指定されるリスクを回避できる

近年、日本の「空き家問題」は法規制が非常に厳しくなっています。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、適切な管理がされずに放置され、倒壊の危険がある物件や、衛生上有害・景観を損なうと判断された空き家は自治体から「特定空家(とくていあきや)」に指定されるリスクがあります。

特定空家に指定され、自治体からの改善勧告を受けると、それまで適用されていた土地の固定資産税の優遇措置(小規模住宅用地の特例)が解除されてしまいます。
その結果、土地にかかる固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍に跳ね上がるという恐ろしいペナルティが課されます。
空き家を賃貸物件として流通させ、適切に管理・運用していれば、自治体から「放置された危険な空き家」とみなされることは絶対にないため、この大増税リスクを確実に、かつ合法的に回避することができます。

空き家を賃貸に出す5つのデメリット・注意点

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メリットが多い一方で、空き家を他人に貸すことには特有のデメリットや注意点も存在します。
事前の対策が重要となるため、しっかり把握しておきましょう。

1. 初期費用(リフォーム・修繕費)がかかる

人が快適に住める状態にするためには、多くの場合、事前のリフォームやクリーニングが必要です。
特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)の設備が古い場合、数十万〜数百万円の初期費用がかかることがあります。
家賃収入でこの初期費用を何年で回収できるか、事前のシミュレーションが不可欠です。

2. 空室リスク(借り手が見つからない)がある

賃貸経営である以上、「募集をかけても借り手が見つからない」という空室リスクは常に付きまといます。
特に、駅から遠い、利便性が悪いといった地方の物件では、需要が限られるため苦戦するケースがあります。空室の間は、当然ですが家賃収入はゼロです。

3. 借主とのトラブルや修繕義務が発生する

入居者が入った後も、大家としての責任が生じます。

  • 「雨漏りが発生した」「給湯器が壊れた」といった場合の修繕義務(費用は大家負担)
  • 家賃の滞納リスク
  • 騒音やゴミ出しを巡る近隣住民とのトラブル

これらは自主管理を行う場合、すべて自分で対応しなければなりませんが、管理会社に委託することで負担を大幅に減らすことができます。

4. 簡単に立ち退きを要求できない(普通借家契約の場合)

日本の法律(借地借家法)では、入居者(借り手)の権利が非常に強く守られています。
一般的な「普通借家契約」で貸し出した場合、大家側の「自分で住みたくなったから」「売りたくなったから」という理由だけで、入居者に退去を求めることは原則できません。
立ち退きを求めるには「正当な事由」や「立ち退き料」が必要になります。

5. 売却したいときに「オーナーチェンジ物件」となり価格が下がりやすい

入居者が住んでいる状態のまま不動産を売却することを「オーナーチェンジ」と呼びます。
オーナーチェンジ物件は、購入者が「自分で住む」目的で買えないため、購入層が投資家に限定されます。
その結果、自分で住む用の一般の中古住宅として売るよりも、売却価格が安くなってしまう傾向があります。

空き家を賃貸に出す際にかかる初期費用と維持費

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空き家を賃貸経営する場合、どのようなお金がかかるのでしょうか。
初期費用と維持費に分けて解説します。

初期費用(貸し出す前にかかる費用)

物件を人に貸せる状態にし、入居者を迎えるまでに発生する「最初の投資」です。
ここの出費をいかにコントロールできるかが、その後の黒字化へのスピードを左右します。

費用項目 概要・目安
リフォーム・修繕費 壁紙の張り替え、ハウスクリーニング、水回りの交換など。状態により数万〜数百万円。
残置物の処分費用 元々あった家具や家電、生活用品を処分する費用。専門業者に頼むと10万〜50万円程度。
仲介手数料 入居者を募集してくれた不動産会社に支払う報酬。一般的に「家賃の1ヶ月分+消費税」が上限。

リフォーム・修繕費

空き家を賃貸に出す上で、最大の割合を占めるのがこの費用です。
自分が住むわけではないため「どこまで綺麗にするか」の線引きが非常に重要になります。
入居者が特に重視するのは「水回り(キッチン、浴室、トイレ)」です。
これらが古く不衛生な印象を与えると、どれだけ家賃を下げても借り手が見つかりません。

逆に、すべての部屋の壁紙や床を最新の最高級素材にする必要はありません。
地域の家賃相場に対して「清潔感があり、普通に暮らすのに不自由しないレベル」を目指すのが鉄則です。
状態が良ければハウスクリーニング(数万円〜)だけで済むこともありますが、築古で設備交換が必要な場合は100万〜300万円程度かかるケースもあります。

残置物の処分費用

残置物とは、前の住人が残していった家具、家電、衣類、仏壇、日用品などのことです。
「エアコンや冷蔵庫はそのまま置いておけば、入居者が使えて喜ぶのでは?」と思われがちですが、これは避けた方が賢明です。
なぜなら、元々置いてあった家電が壊れた場合、大家の費用負担で修理・交換しなければならない義務(設備責任)が生じるからです。

そのため、原則として家の中は「完全な空っぽ」にするのが基本です。
自分で片付けるのが最も安上がりですが、一軒家丸ごとの片付けを専門業者に依頼する場合は、荷物の量に応じて10万〜50万円ほどの費用がかかります。

仲介手数料

無事に入居者が決まった際、募集や案内、契約手続きを代行してくれた不動産会社に支払う成功報酬です。
法律によって上限が「家賃の1ヶ月分+消費税」と定められています。
例えば、家賃7万円の物件であれば、約7万7,000円が初期費用として必要になります。
入居者が決まるまでは支払う必要はありません。

維持費(貸し出している間にかかる費用)

入居者が決まり、毎月家賃が入るようになってから発生する経費です。
これらは毎月の家賃収入から差し引いて手元にお金を残す(手残り)計算をします。

費用項目 概要・目安
固定資産税・都市計画税 毎年1回支払う税金。賃貸中も所有者(大家)が払い続けます。
管理委託手数料 不動産管理会社に管理を委託する場合の費用。毎月の家賃の3%〜5%程度が相場。
火災保険・地震保険料 建物にかける保険料(※入居者が入る家財保険とは別に、大家自身が建物に対して加入します)。
修繕積立金(マンションの場合) 分譲マンションを貸し出す場合、毎月管理組合に支払う費用。
突発的な修繕費 エアコンや給湯器の故障、雨漏りなど、経年劣化による設備の修理・交換費用。

固定資産税・都市計画税

不動産を所有している限り、毎年春に自治体から届く税金です。
「人に貸しているんだから、入居者が払うのでは?」と勘違いされることがありますが、納税義務者はあくまで「所有者(大家)」です。
賃貸経営中も毎年支払い続ける必要があるため、年間の税額を12で割り、毎月の固定経費としてあらかじめ家賃収入から差し引いて考えておきましょう。

管理委託手数料

入居者からの「お湯が出ない」「隣の部屋がうるさい」といったクレーム対応や、毎月の家賃の回収、滞納時の督促などを、不動産管理会社に丸投げする場合に支払う月額費用です。
相場は「毎月の家賃の3%〜5%」程度です。
例えば家賃7万円で5%なら毎月3,500円(+消費税)となります。
自主管理をすればこの費用はゼロになりますが、働きながら大家さんをする人や、遠方に住んでいて物件を見に行けない方は、トラブル防止のためにも支払ってプロに任せるのが一般的です。

火災保険・地震保険料(建物分)

賃貸物件であっても、建物全体の火災保険や地震保険は大家自身が加入し続ける必要があります。
入居者にも「借家人賠償責任保険(いわゆる火災保険)」に加入してもらいますが、これはあくまで「入居者が自分の不始末で部屋を汚したり燃やしたりしたときの補償」です。
落雷や、原因不明の近隣からのもらい火、地震による倒壊などから大切な資産を守るためには、大家側の保険が不可欠です。

突発的な修繕費(設備の交換・修理)

賃貸経営で最も見落としがちで、かつ一番怖いのがこの「突然の出費」です。
民法上、賃貸物件の設備(エアコン、給湯器、換気扇、雨漏りなど)が経年劣化で故障した場合、大家の責任と負担で速やかに修理・交換しなければなりません。

特に「冬場に給湯器が壊れた」といったトラブルは死活問題なため、即座に対応する必要があります(給湯器の交換は15万〜30万円ほどかかります)。
毎月の家賃収入をすべて使ってしまうのではなく、万が一の設備トラブルに備えて、家賃の5%〜10%程度は「修繕積立金」として大家個人の口座に確保しておくのが経営を安定させるコツです。

空き家を賃貸に出すときの手順

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1.物件の現状把握と片付け(残置物の処理)

まずは、家の中に残っている家具や荷物を片付けます。
思い入れのある品は整理し、不要なものは不用品回収業者などを利用して処分します。
この際、雨漏りや床のきしみ、設備の故障がないかもチェックしておきましょう。

2.不動産会社への相談と賃料査定

自分だけで「いくらで貸せるか」を判断するのは困難です。
地域の賃貸需要に詳しい不動産会社に依頼し、物件を見てもらった上で「想定家賃」の査定を出してもらいます。

3.リフォーム・クリーニングの実施

不動産会社のアドバイスを受けながら、必要なリフォームを行います。
お金をかけすぎると回収に時間がかかるため、「ターゲット層(単身かファミリーか)が好む最低限の修繕」に留めるのがコツです。

4.媒介契約の締結と入居者募集

信頼できる不動産会社と、入居者探しを依頼するための「媒介契約」を結びます。
その後の募集業務はプロに一任し、WEB上の広告などを活用して、あなたの空き家に住みたいと思ってくれる人を効率的に探してもらいます。

5.賃貸借契約の締結・賃貸経営のスタート

入居希望者が現れたら、入居審査を行います(家賃の支払い能力や人柄の確認)。
問題がなければ「賃貸借契約」を締結し、鍵を引き渡して賃貸経営がスタートします。

知っておくべき「2つの契約形態」

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空き家を貸す上で、最も重要と言っても過言ではないのが「契約の種類」選びです。
これを知らないと、「将来自分が住む予定だったのに、入居者が立ち退いてくれない」というトラブルに発展します。

① 普通借家(ふつうしゃっか)契約
一般的な賃貸契約です。
契約期間(通常2年)が終わっても、入居者が希望すれば自動的に更新されます。

メリット デメリット
入居者側が安心して長く住めるため、借り手が見つかりやすい。 大家側の都合で契約を終了させることが極めて難しい。

② 定期借家(ていきしゃっか)契約
あらかじめ「○年○月まで」と契約期間を完全に限定する契約です。
期間が満了すれば、更新はなく確実に契約が終了します(お互いの合意があれば再契約は可能)。

メリット デメリット
「3年後に子どもが使う」「5年後に売却する」といったスケジュールに合わせられる。 期間が限定されるため入居者側のメリットが少なく、相場より家賃を低く設定しないと借り手が見つかりにくい。

将来的に自分で使う、または売却する可能性が少しでもあるなら、家賃が多少下がったとしても「定期借家契約」を選ぶのが安全です。

空き家賃貸で失敗しないための成功のコツ

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空き家を賃貸に出して「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、以下の3つのポイントを意識してください。

1. リフォーム費用は「必要最低限」に抑える

綺麗にしたい一心で、最新のシステムキッチンや全面フローリング化などにお金をかけすぎると、初期費用の回収に10年以上かかってしまうこともあります。
「壁紙と床だけ綺麗にする」「水回りはクリーニングで対応し、壊れている部分だけ直す」など、コストと家賃収入のバランス(利回り)をシミュレーションしましょう。

2. 地域密着型の信頼できる管理会社を選ぶ

賃貸が始まった後の入居者対応、クレーム処理、家賃回収、修繕の手配などを素人が働きながら行うのは至難の業です。
手数料を払ってでも、地元の賃貸市場に強く、トラブル対応が迅速な管理会社に管理を委託することを強くおすすめします。

3. 「貸す」以外の選択肢(売却など)と比較検討する

空き家の状態や立地によっては、どうしても賃貸需要がなく、リフォーム代ばかりがかかって赤字になってしまうケースもあります。
「賃貸に出すこと」に固執せず、「いっそ売却して現金化してしまった方がトータルでプラスになるのではないか?」という視点を持つことが極めて重要です。

空き家を売却する方法については、以下の記事で詳しくご紹介しているのでぜひ参考にしてください。

迷ったらどうする?「賃貸」か「売却」かの判断基準

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空き家を「賃貸」に出すべきか、それとも「売却」してしまうべきか、迷った際の判断基準をまとめました。

賃貸に向いている物件・人

  • 物件の立地が良く、今後も賃貸需要が見込める
  • 将来、自分や親族がその家に住む(または使う)可能性がある
  • リフォーム費用を早期に回収できる見込みがある(建物の状態が良い)
  • 長期的な資産として不動産を持ち続けたい

売却に向いている物件・人

  • 駅から遠い、人口減少エリアなど、賃貸需要が極めて低い
  • 建物の老朽化が激しく、数百万円規模の大規模なリフォームが必要
  • 将来もその家に住む予定が一切ない
  • 固定資産税の負担や、管理の手間・トラブルから今すぐ解放されたい
  • まとまった現金(売却益)を今すぐ手に入れたい

あなたの空き家の「本当の価値」を知ることから始めよう

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空き家を賃貸に出すことは、安定した収入を得ながら大切な資産を守る素晴らしい方法です。
しかし、物件の立地や状態によっては、リフォーム貧乏になってしまったり、空室に悩まされたりするリスクもゼロではありません。

「貸すべきか、売るべきか、それとも他の活用法があるのか…」

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