不動産売買をするのなら覚えておくべきなのが土地鑑定委員会の存在です。国の機関である土地鑑定委員会は不動産取引をするうえでは欠かせないと言えるでしょう。

また、土地鑑定委員会が発行している土地取引状況調査票についても知っておくべきです。

これらが不動産取引にどのように関わってくるのかについて詳しく見ていきましょう。

不動産売買に関わる土地鑑定委員会って何?

土地鑑定委員会とは、国土交通省の機関の1つです。1969年に設置された機関であり、地価公示法と不動産の鑑定評価に関わる法律に基づいて権限を執行します。土地に関しては基本的に不動産鑑定士によって評価され、価格を設定されますが、その標準的な正常価格を判定し、公表するのが土地鑑定委員会の主な役割です。

毎年1月1日時点の価格が発表されるので、その公示地価を算定の基準として土地の価値は決められます。

土地の価格はもちろん、評価の均衡化や適正化を図るため、相続税や固定資産税の評価額を決めるために調査をするのも土地鑑定委員会の役割です。そのため、土地鑑定委員会は土地の買主に対して「土地取引状況調査票」として不動産取引のアンケート調査を発送し、集計をとったうえで判定しています。

土地取引状況調査票のアンケート内容はどういうもの?

アンケート内容は難しくない

簡単シンプルな内容

土地鑑定委員会から直接送られてくるアンケートといっても、そこまで堅苦しく考える必要はありません。アンケート内容は比較的簡単に答えられるシンプルなものです。

氏名や法人名といった基本的な情報を始め、契約年月日や仮換地番号、取引価格といった土地の売買に関わる情報を提供することになります。取引価格は土地や建物の内訳について記入し、実測面積についても提示することになるでしょう。

また、建物の概要や取引した理由に関する記入事項もあります。

個人情報の取り扱いは大丈夫?

個人情報も関わる内容をアンケートで答えるとなると抵抗感を抱く人もいるかもしれません。しかし、国の機関が直接発行しているものですから、悪用されてしまうということはまずないと考えていいでしょう。個人あるいは法人が具体的にどのような不動産取引をしたのかについて情報が公開されてしまうということはないです。

それではなぜ氏名まで記入する必要があるのかですが、それはあくまでも正確なアンケート結果を求めているからに過ぎません。取引の実状をアンケートによって把握することで、土地鑑定委員会はより正確性の高いデータの作成を行なえます。

土地取引状況調査票はどのように活用されるの?

土地取引状況調査票によるアンケートに回答することでできることと言えば、まず挙げられるのは公示地価基準地価の判定です。先述したように、公示地価は土地を取引する際の基準として利用されるものです。一般的な土地取引だけではなく、公共用地の取得価格を算定するためにも用いられています。

都道府県知事が発表する基準地価は適正な土地価格にするために、土地取引の規制で価格審査の基準とするものです。そのため、土地の価格に大きく関わってくるアンケートだと言えます。

また、不動産取引価格情報の提供も、土地取引状況調査票を発行する目的のひとつです。国土交通省は実際に行われた取引の価格を公表することで不動産市場の透明性を高めようとしています。実際の取引価格の実態を知ることができるわけですから、不動産市場に参入としている個人や団体は参考文献として大きく役立てられるのは間違いないでしょう。

ただ、個人情報を保護するために、氏名や会社名、取引された不動産物件の所在など、特定できてしまうような情報は伏せています。

しかし、それでも国の機関が集めたうえで公表している情報ですから、不動産市場への信頼性は必然的に高まります。信頼性が高まることで不動産取引がより積極的に行われるようにもなるので、アンケートはそれも意図していると考えられるでしょう。

それから、公共用地の取得に役立てるため、調査や研究の資料としても活用されています。アンケート結果があることで、取得時の損失補償額の算定や適正な地価の形成が行えるというわけです。このように、土地取引状況調査票は不動産取引に関するさまざまな点で大いに役立てられています。

土地取引状況調査票のアンケートの流れ

個人あるいは法人によって土地の取引が行われた場合に土地鑑定委員会は買主に対してアンケートの発送

土地鑑定委員会が発行する土地取引状況調査票の流れはそう複雑なものではありません。

まず、個人あるいは法人によって土地の取引が行われた場合、土地鑑定委員会は買主に対してアンケートの発送をします。発送されたアンケートが買主に届いたら、買主は氏名や取引価格などの必要事項を記入し、付属の封筒で返送するだけです。買主側から見れば取引後に届いたアンケートに答えるだけですから、至ってシンプルだと言えるでしょう。

土地鑑定委員会に届けられたアンケートは集計され、公表用のデータに加工されます。用途別にデータをまとめたら、あとは国土交通省のホームページ上で公表されるだけです。買主が回答した内容はアンケート結果の一部として利用されたり、土地取引の事例として発表されたりすることになります。

土地取引状況調査票は提出しなければいけない?

提出義務は特にない

土地取引状況調査票はランダムに送られるというわけではなく、土地を購入した際に送られてきます。

例外なく買主に対して発行されるものですから、不動産を購入した際には必ず届くものだと思っておいたほうがいいでしょう。ただ、発行されるタイミングについてはまちまちですから、予告なく突然自宅に届いたり、不動産取引のことを忘れた頃に届いたりする場合もあるので注意しておいてください。

アンケートといっても国土交通省の土地鑑定調査のために回答するものだと考えると、必ず記入して提出しなければならないのかと思うかもしれません。しかし、結論から言えば、土地取引状況調査票に回答義務はありません。つまり、そのまま無視してしまっても問題はないということです。

義務ではないですから、回答しなかったからといって罰則が設けられるということもないので安心していいでしょう。ただ、土地取引状況調査票が届いたらなるべくなら回答することをおすすめします。

なぜなら、適切な地価の形成に役立てるためです。また、期日内にアンケートに回答して返送しなかった場合、2週間経過してから再度同じアンケートが届けられます。土地鑑定委員会は、それだけ土地取引状況調査票を提出して欲しいと考えているということです。

記入するのは面倒だと感じるかもしれませんが、無視をするとアンケートを再度目にすることになりますから、なるべくなら答えるのが賢明な判断だと言えるでしょう。

土地価格の調査に貢献するメリットは?

土地価格の調査に貢献する最大のメリットは、土地総合情報システムを活用できることです。国土交通省は実際に行われてきた不動産取引の情報を、この土地総合情報システム上で公開しています。

取引をした買主のアンケート回答を元に作られたデータですから、非常に信憑性の高い情報となります。つまり、アンケートに答えることでこのデータの正確性をさらに高められるということです。土地総合情報システムを活用して実際の取引に至った経験があるのなら、より一層貢献すべきだとも言えるでしょう。

それから、税金面への対処という意味でもアンケートに回答する価値は十分にあります。土地取引価格の情報は公示価格に反映されますが、公示価格に影響するということは、固定資産税や相続税にも関わるということです。土地の取引価格が下がれば固定資産税も下がりますから、税金を減らしたい場合には有効となるでしょう。

ただ、固定資産税を少しでも安くしたいがために虚偽の申告をするのはNGです。任意のアンケートである分だけ、嘘をついたとしても罪に問われるわけではありませんが、データの信憑性が薄まるのでアンケート必ず正確な内容で記入するように心がけてください。

土地価格の調査に回答するデメリットはあるの?

無視すると再度届いてしまう

土地価格の調査に回答することで何かデメリットがあるのではないかと懸念しているかもしれません。しかし、特に心配することはないと言っていいでしょう。デメリットとして強いて挙げるのなら、調査のためのアンケートに答える手間や時間がかかってしまうくらいです。回答することで得られるメリットのほうが大きいですから、答えて損はないと言えるでしょう。

アンケートを無視してしまうと再度届くことになりますからスムーズに回答したほうが煩わしく感じないという見方もできます。

個人情報の漏洩のリスクは低い

個人情報の漏洩リスクは低い

土地取引状況調査票が届いたとき、多くの人が懸念するのが個人情報の漏えいです。たしかに、2017年6月にはweb上のアンケート回答に不正アクセスがありました。国土交通省は電子回答システムを緊急停止させ、流出の有無の調査と再発防止のための対策について検討したという事例が過去にはあります。

そのときに流出したとされているのは、氏名や契約日、取引価格などのアンケート回答が最大で4,335件、所有権移転登記情報は最大で19万4,834件だといわれています。しかし、あくまでもイレギュラーなケースですし、国土交通省も再発防止に努めているので、リスクは低いと考えられるでしょう。

国の機関である国土交通省が管理している情報ですし、悪徳業者のようにアンケートに回答することで国土交通省によって情報が盗まれたり、売られたりといった心配はまず考えられません。ハッキングによる情報漏えいのリスクが心配であれば、送られてきた書類に直接書き込んで郵送で提出するのが望ましいでしょう。

現に2017年の不正アクセス問題では、郵送で受け取った分のアンケート回答に関しては全く流出していないという事例があります。提出する意思はあるものの個人情報の流出を懸念しているのなら、郵送で回答してみてください。

土地鑑定委員会発行のアンケートに答えよう

 土地鑑定委員会が発行している土地取引状況調査票のアンケートは正確な土地の価格を把握するために欠かせないものです。公示地価と基準地価の判定に関わってきますし、固定資産税などの税金にも影響してきます。土地を購入したすべての人が回答しているわけではありませんし、回答を義務付けられているわけでもありません。

しかし、少しでも多くの人が貢献することで土地総合情報システム上の情報はより正確なものになっていきます。アンケート自体は簡単に答えられるものですから、不動産業界をより活性化させるためにも回答することをおすすめします。