不動産投資を行う場合は物件選びが重要になります。多くの物件から投資に適した物件を見つけ出す必要がありますし、見つけ出した物件の価格が希望する利回りが得られる水準かどうかについても判断する必要があります。そこで、投資対象不動産の価格判断に役立つ収益還元法についてご紹介します。

不動産投資は買って良い価格かどうかを知ることから

買っていい価格か判断できるようになりましょう

不動産投資は良い賃貸物件を見つけるところから始まるといわれています。良い物件を取得できれば、不動産投資を有利に進めることができるでしょう。
物件選びにおいては、入居者の需要がある立地や物件の管理状況、設備などが重要な判断要素となりますが、仮に条件を満たす物件であっても、価格が高ければ取得するのは避けるべきでしょう。

物件の取得価格が高くなれば、借入金の額も大きくなる可能性があり、返済できないリスクが生じます。また、相場とかけ離れた水準の家賃を設定することは難しいですので、物件の価格が高ければ投資利回りは下がってしまいます。

そのため、期待した利回りが狙えるような価格の物件を見つけることも重要になります。物件の適正な価格がわかれば、売り出されている価格が高いのか安いのかを判断することはできます。

しかし、不動産には定価がありませんので、どのように適正価格を把握すればよいのかわからないという人も多いでしょう。そのため不動産投資を行う場合は、まず不動産価格を算出する方法を正しく理解することが必要です。

不動産価格の算出法3つ

不動産価格を算出する主な方法は3つあります。

1.原価法

原価法とは、価格算定時点の不動産の再調達原価を求め、その原価に対して時の経過によって価値が下がる分を考慮する減価修正を行い、積算価格を求める方法です。ただし、土地の評価をする場合は減価修正の必要はありません。

再調達原価とは、不動産を新品で取得する場合の価格のことです。この方法は、すでに市街化している土地には適用しにくいとされていますが、造成地などの場合は見積もることができます。

一方、建物の場合は比較的容易に新築価格である再調達価格を見積もることができます。中古の建物を取得する場合は減価修正が必要になります。

2.取引事例比較法

その名の通り、投資対象不動産と似たような条件を持つ不動産の取引事例を参考にして比準価格を決める方法です。参考にした取引事例は、取引の時期や面積、近隣環境などさまざまな違いがあるはずです。

そこで、その違いを事情補正や時点修正、標準化補正さらには地域要員格差補正などを行うことで対象不動産の参考になるように価格を修正します。

3.収益還元法

収益還元法とは、投資対象不動産が将来生み出す利益を基準に収益価格を算出する方法です。これら3つの方法を併用して総合的に対象不動産の価格評価を行うのが一般的です。

投資用不動産で一般的な「収益還元法」

収益還元法とは

収益還元法は不動産投資物件の価格を評価する場合によく利用される方法です。この手法は投資対象不動産の原価や実際の取引価格に注目するのではなく、将来の収益に注目することが最大の特徴です。

対象不動産に投資をした場合に得られる将来のキャッシュフローがいくらかを予想し、その収益が期待する利回りになるような理論価格を算出します。また、復帰価格と呼ばれるものも考慮します。

復帰価格

復帰価格とは、投資対象の物件を売却して投資を手じまいする場合の売却価格から売却諸費用を引いた金額に相当するものです。家賃から必要経費を引いた利益の合計に、最後に得る売却金額を足したものが収益価格になります。

また、将来得られる家賃や売却金額といったキャッシュフローは、発生する時期が異なりますので金額をそのまま同列で扱うことは適切とは言えないため、現在価値に割引いて計算することも大きな特徴です。

不動産に投資するのは現時点ですので、1年後の収益は現在の価値に直さないと比較ができないことになります。そこで、将来のキャッシュフローを現在価値に割引いて投資額と比較できるようにします。

たとえば、利息が1%つく預金100万円は、預け入れる現時点では100万円の価値しかありませんが、1年後には利息を含めると101万円になります。

この場合、1年後の101万円を現時点の価値に割引いたものが100万円だと考えるのです。

収益還元法の直接還元法とDCF法とは

収益還元法には、簡便法である直接還元法と、予想収益率などを使って収益を割引いて現在価値を求めるDCF法の2種類があります。

ともに将来の価値を使って対象不動産の価値を算出する点は共通しています。違いは、予想収益率などを使って現在価値に割り戻す計算をするかしないかという点です。

直接還元法

直接還元法は面倒な割引計算をせずに、予想収益率などから直接価値を導きます。計算方法は、家賃収入などの総収入から管理会社への委託料などの総費用を引いて、予想利益を求め還元利回りで割って収益価格を算出します。

還元利回りとは、一般的な賃貸不動産から得られる利回りに、個別事情などを考慮して対象不動産の実情に合わせて修正した利回りのことです。

1年あたりの予想利益と還元利回りさえ用意できれば、簡単に算出できるメリットがあります。そのため、多くの物件から絞り込んでいくときなどに利用されることが多いです。

DCF法

もう1つのDCF法の「DCF」とは、ディスカウント・キャッシュ・フローの頭文字をとったものです。

この方法は、投資対象物件が生み出す毎年の予想利益や復帰価格を、一定の割引率を用いて現在価値に割引いてから合計することで収益価格を算出する方法です。収益面から見た精度の高い対象不動産の理論価格を算出できる点が特徴です。

最終的な物件投資可否判断を行う場合には、最低限DCF方法で算出した収益価格を確認することをおすすめします。

直接還元法で計算してみよう

直接還元法やDCF法は、実際の計算例を確認したほうがわかりやすいでしょう。たとえば、投資対象として年間100万円の利益が得られる賃貸マンションがあり、還元利回りが10%の場合は、100万円を10%で割った1,000万円が直接還元法による収益価格となります。

この物件が1,100万円で売り出されていた場合は、10%の利回りは得られませんので投資を見合わせる、900万円で売り出されていた場合は10%以上の利回りが得られる見込みがあるため投資するといった形で収益価格を投資判断に利用します。

同じ例で還元利回りが5%の場合は、100万円を5%で割った2,000万円が収益価格となります。還元利回りは期待する予想利回りとも言えますが、利回りを何%に設定するかによって投資判断に大きな影響を与えることも理解しておきましょう。

DCF法で計算してみよう

DCF法も同じように計算例で理解しましょう。年間100万円の利益が得られる賃貸アパートを取得して3年間保有したあとに、2,000万円で物件を売却する場合に、期待予想利回りに相当する割引率が5%だったとします。

DCF法では、1年後の利益100万円を1年分5%で割引いて(1÷1.05)現在価値に戻して約95.2万円、2年後の利益100万円は2年分割引いて(100÷1.05÷1.05)約90.7万円、3年後の利益100万円と売却金額2,000万円も同様に3年分割り引いて(2,100÷1.05÷1.05÷1.05)約1,814.4万円といった形で割引計算を行います。

そして、すべてを合計して約2,000万円という収益価格が算出します。 投資対象の売り出し価格が2,000万円を超えていたら「5%の利回りがとれないので高い」、2,000万円を下回っていたら「5%以上の利回りが期待できるので安い」などと判断します。

DCF法で計算

まとめ

不動産投資を行う場合は物件選びが重要だということは多くの不動産投資家が認識しているでしょう。しかし、立地についてはこだわっても価格が適正かどうかは、感覚だけでしか判断していなかったという人もいるかもしれません。

今後は、ご紹介した収益還元法を使って、収益価格を計算して投資判断に活かすことをおすすめします。

多くの家賃を稼ぐ物件を手に入れても取得時の価格が高ければ希望する利回りは得られません。収益還元法を賢く活用して不動産投資を成功させましょう。