この記事の概要
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老後の生活資金に不安を感じている方にご注目いただきたいのが、自宅を担保に老後資金を借りられるリバースモーゲージです。
住み慣れた自宅に住み続けながら、毎月の返済負担を抑えて資金を調達できる金融商品として評価が高まっています。
本記事では、リバースモーゲージの仕組みや申し込み条件、メリット・デメリット、相続人の権利関係まで、具体的な活用法を交えて分かりやすく解説します。
ご家族との話し合いや専門家へのご相談に向けた判断材料として、ぜひお役立てください。
この記事の目次
リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージの基本的な仕組みと利用条件について、誰でも理解しやすいように解説します。
この制度は、自宅を担保に老後の生活資金を借り入れできるもので、原則として60歳以上(金融機関により55歳〜65歳と異なる)~80歳までの方が利用できる金融商品です。
住み慣れた自宅に住み続けながら毎月定額で融資を受けられ、契約者の死亡時などに物件を売却して一括で返済する仕組みとなっています。
住宅ローンとは逆の仕組みで、所有している不動産の評価額に応じて融資を受けられます。
住宅ローンとの比較を以下の表にまとめたので、違いを把握しておきましょう。
| 特徴 | リバースモーゲージ | 住宅ローン |
|---|---|---|
| 目的 | 老後資金の確保、生活の充実 | 住宅の購入・建築 |
| 借入残高 | 時間と共に増加する | 時間と共に減少する |
| 毎月の返済 | 原則、利息のみ | 元金+利息 |
| 元金の返済時期 | 契約者の死亡後に一括返済 | 契約期間中に毎月分割で返済 |
| 対象年齢 | 主に50歳以上のシニア層 | 主に現役世代 |
融資限度額は、担保となる不動産評価額の50%〜70%です。
融資の受け取り方法は、金融機関によって異なりますが、以下のようなものがあります。
| 年金タイプ | 毎月一定額ずつ融資を受ける方法 |
|---|---|
| 一括タイプ | まとまった金額を一括で受け取る方法 |
| 都度融資タイプ | 定められた枠内で必要に応じて希望の金額を受け取る方法 |
このように、利用者は自宅の資産価値を活用しながら、年金のような定期的な収入を確保できます。
融資金の使途は生活費や医療費、住宅の修繕費用などに幅広く使えるため、老後資金の計画を立てやすいという特徴があります。
制度の普及にともない、金融機関によって融資条件や金利設定にも多様な選択肢が用意されています。
自治体による制度と民間金融機関の商品では、担保評価や融資条件に違いがある点にも注意が必要です。
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージの最大の特徴は、契約者が自宅に住み続けながら融資を受けられる点です。
契約書には居住継続の権利が明確に規定されており、借入期間中に金融機関から立ち退きを求められることはありません。
自宅を担保として提供しても、所有権は契約者に残ります。
物件の修繕や維持管理、火災保険への加入、固定資産税の納付など、通常の所有者としての権利と義務はそのまま継続します。
配偶者がいる場合は、契約者が死亡した後も配偶者の居住権が保護されます。
多くの金融機関では、配偶者が存命中は自宅での生活を継続できる制度設計となっています。
| 契約者の権利 | 継続居住、物件の管理・処分 |
|---|---|
| 契約者の義務 | 物件の維持管理、固定資産税の納付 |
| 配偶者の権利 | 契約者死亡後も居住継続が可能 |
リバースモーゲージの種類
リバースモーゲージは、提供主体によって大きく3つの種類に分けられます。
それぞれ目的や対象者が異なるため、以下を参考にご自身の状況に合ったものを選ぶようにしましょう。
【社会福祉協議会の「不動産担保型生活資金」】
各都道府県の社会福祉協議会が窓口となる公的な福祉制度です。
商業的な金融商品ではなく、収入が少なく生活に困窮している高齢者世帯を支えるためのセーフティーネットとしての役割を担っています。
利用するには、世帯の収入が住民税非課税程度であること、年齢が原則65歳以上であることなど、所得に関する条件が厳しく設定されています。
生活保護を受給する前に、まずは持ち家という資産を活用して自立した生活を送ることを目的としています。
【住宅金融支援機構の「リ・バース60」】
独立行政法人である住宅金融支援機構が、民間の金融機関と提携して提供するリバースモーゲージ型住宅ローンです。
最大の特徴は、資金の使いみちが住宅関連に限定されている点です。
具体的には、住宅の購入や建築、リフォーム、サービス付き高齢者向け住宅への入居一時金、そして既存の住宅ローンの借り換えなどに利用できます。
一般的な生活費には使えません。
相続人に残債が請求されない「ノンリコース型」が基本となっており、相続人の安心に繋がる点が魅力です。
【民間金融機関のローン】
都市銀行、信託銀行、地方銀行などが独自に提供する商品です。
最大のメリットは資金使途の自由度の高さにあります。
生活費はもちろん、旅行や趣味、子や孫への資金援助など、事業・投資目的以外であれば幅広く利用できます。
その分、対象となる不動産の条件(評価額や所在地など)が厳しく、金利も公的制度よりは高めに設定される傾向があります。
商品ラインナップが豊富で、極度額方式など柔軟な借り入れ方ができるのも特徴です。
リバースモーゲージとリースバックと違い
自宅を活用して老後資金を調達する方法として、リバースモーゲージとよく比較されるのが「リースバック」です。
両者は似ているようで、その仕組みには違いがあるのでこちらでご紹介していきます。
両者の最も大きな違いは、自宅の所有権の扱いです。
リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りますが、所有権は自分(契約者)のままです。
あくまで「借金」であり、固定資産税などの支払い義務も継続します。
対してリースバックは、自宅を不動産会社などに一度売却し、所有権を完全に手放します。
その後、買主と賃貸借契約を結び、家賃を払いながら元々の自宅に住み続ける仕組みです。
つまり、リバースモーゲージは「融資」、リースバックは「売却+賃貸」という全く異なる契約形態なのです。
どちらがご自身に適しているか判断するために、両者の特徴を比較してみましょう。
| 項目 | リバースモーゲージ | リースバック |
|---|---|---|
| 所有権 | 自分(担保設定あり) | 売却先に移転 |
| 毎月の支払い | 利息 | 家賃 |
| 固定資産税 | 支払い義務あり | 支払い義務なし |
| 資金使途 | 制限がある場合も | 原則自由 |
| 対象者 | 年齢・収入等の条件が厳しい | 条件が比較的緩やか |
| 相続 | 自宅は売却され相続できない | そもそも売却済みのため相続財産ではない |
リバースモーゲージは、あくまで所有権を維持したい、月々の支払いを利息のみに抑えたい方向けです。
一方、リースバックは、年齢や物件の条件でリバースモーゲージを利用できないが、まとまった資金をすぐに得たい、固定資産税などの維持費から解放されたいという方に向いていると言えるでしょう。
リバースモーゲージの手続きの流れ

リバースモーゲージの申し込みから契約までの流れは、事前相談から始まり複数のステップを経て進んでいきます。
金融機関への相談時には、収入や資産状況の確認に必要な書類を準備する必要があります。
申し込みから審査までの流れ
以下の手順で申し込みから審査、契約までの手続きが進められます。
- 金融機関での事前相談(収入証明書・資産状況の確認)
- 担保物件の評価(不動産鑑定士による現地調査)
- 融資条件の提示と審査申し込み(必要書類の提出)
- 審査結果の通知と契約内容の確認
- 重要事項説明と契約締結
契約締結後は、担保物件の定期的な調査や評価の見直しが行われます。
また、融資実行後も年1回程度の面談で返済計画の確認が必要となります。
契約時には、相続人への事前説明も推奨されています。
将来の返済方法や物件処分について、ご家族間で十分な話し合いをしておくことが重要です。
なお、申し込みから融資実行までは通常1~1ヶ月半程度かかります。
スムーズな手続きのため、必要書類は事前に準備しておくことをおすすめします。
リバースモーゲージの利用条件と担保物件の評価方法
リバースモーゲージの利用には、それぞれ金融機関が定める厳格な条件をクリアする必要があります。
代表的な機関の利用条件をまとめたので、参考にしてください。
| 金融機関/制度 | 年齢条件 | 対象物件 | 主な対象エリア | 資金使途 | 相続人同意 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社会福祉協議会 | 原則65歳以上 | 戸建てのみ(評価額1,500万円以上目安) | 全国 | 生活資金 | 必要 |
| 住宅金融支援機構(リ・バース60) | 満60歳以上(一部50歳以上) | 戸建て・マンション | 取扱金融機関による | 住宅関連資金のみ | 金融機関による |
| りそな銀行 | 満50歳以上 | 戸建て・マンション | 営業エリア内 | 自由(不動産購入プランもあり) | 原則必要 |
| 三井住友信託銀行 | 満55歳以上 | 戸建て・マンション(評価額4,000万円以上) | 首都圏・愛知・関西 | 自由(遺言信託の利用が条件) | 必要 |
| 東京スター銀行 | 満55歳以上 | 戸建て・マンション | 首都圏・主要都市 | 自由 | 金融機関による |
| JAバンク | 満50歳以上 | 戸建て・マンション | 営業エリア内(一部取扱いなし) | 自由 | 必要 |
担保物件として認められるのは、新耐震基準を満たす戸建てやマンションが中心です。
築年数は一般的に戸建ては30年以内、マンションは20年以内が目安となります。
物件評価額は、公示価格や近隣の取引事例を参考に算出されます。
将来の資産価値が下がるリスクを考慮し、実際の評価額よりも低めに設定されることが一般的です。
リバースモーゲージのメリットとデメリット

リバースモーゲージは、老後の生活資金を確保しながら住み慣れた自宅で暮らし続けられる住宅金融サービスとして注目を集めています。
持ち家を担保に老後資金を調達できる利点に加え、返済負担を抑えられる柔軟性も魅力です。
相続対策としての活用も可能ですが、将来の不動産価値の変動リスクなど、慎重に検討すべき課題もあります。
リバースモーゲージの主なメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット①住み慣れた自宅で暮らし続けられる安心感
リバースモーゲージの最大の特徴は、大切な自宅を手放すことなく、これまでと変わらない生活を続けられる点です。
住み慣れた我が家で老後を過ごせることは、高齢者の心の安定に大きく関わりますよね。
リバースモーゲージを活用すれば、長年築いてきた近所付き合いや、かかりつけ医との関係も途切れることなく維持できます。
自宅の所有権は引き続き借入者にあるため、バリアフリー化や介護に備えた設備の設置など、必要に応じた改修工事も自由に行えます。
庭の手入れや模様替えといった日常的な住まいの管理も、これまでと同様にご自身の判断で進められます。
- 近隣住民とのコミュニティ関係を維持できる
- 通い慣れた病院や商店での生活が継続できる
- 自宅のリフォームや改修を自由に行える
- 愛着のある住まいでの生活が保証される
メリット②毎月の返済負担を最小限に抑えられる
リバースモーゲージは、通常の住宅ローンと比べて返済方法の自由度が高いこともメリットのひとつです。
契約時に借入者の状況に応じて、最適な返済プランを選択できます。
| 返済方法 | 特徴 |
|---|---|
| 利息のみ返済 | 毎月の利息分のみを支払い、元金は契約満了時に一括返済 |
| 元利一括返済 | 利息と元金をまとめて契約満了時に返済 |
| 一部返済 | 任意のタイミングで元金の一部を返済可能 |
特に、毎月の支払いを利息分だけに抑える返済方法は、年金収入で生活する高齢者にとって大きなメリットとなります。
将来的に収入状況が変化した場合でも、返済方法を途中で見直すことができる柔軟な仕組みとなっています。
このように、借入者の生活設計に合わせて無理のない返済計画を立てられることが、リバースモーゲージの重要な特長の一つと言えます。
メリット③老後の生活資金を計画的に確保できる
リバースモーゲージは、契約時に融資条件が確定するため、将来にわたって計画的な資金調達が可能になります。
融資額や返済条件が明確に定められるため、長期的な生活設計を立てやすい金融商品といえます。
年金収入だけでは十分とはいえない高齢者世帯にとって、毎月の定期的な融資による追加収入は、家計の安定性を高める重要な収入源となります。
厚生労働省の調査によると、高齢者世帯の平均所得は月額約22万円(2021年)であり、リバースモーゲージによる追加収入は生活水準の維持に貢献します。
| 融資形態 | 毎月定額での融資 |
|---|---|
| 融資期間 | 契約時に確定(終身または一定期間) |
| 融資条件 | 金利以外の条件変更なし |
株式投資などと異なり、金融市場の変動の影響を受けにくいのも特徴です。
契約期間中は安定した融資を継続して受けられるため、老後の生活資金を確実に確保できる手段として評価されています。
メリット④相続対策として活用できる
リバースモーゲージは、相続対策の観点からも有効な選択肢となります。
不動産を担保に借入を行うことで、相続税の納付資金を事前に確保できる一方、自宅での生活を継続できる点が大きな特徴です。
相続人の将来的な権利関係を明確にするため、契約時に相続人から同意を得ておくことをおすすめします。
これにより、相続発生時のトラブルを未然に防ぐことができます。
| 相続対策のメリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 納税資金の確保 | 相続税支払いのための現金化が可能 |
| 課税対象の圧縮 | 不動産評価額から借入金を差し引き可能 |
| 居住権の維持 | 自宅に住み続けながら対策が可能 |
また、相続税の課税対象となる不動産の評価額から借入金額を差し引くことで、相続税を抑える効果も期待できます。
ただし、具体的な税務対策については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
デメリット①不動産価値下落のリスク
不動産価値の変動は、リバースモーゲージ利用時の重要なリスクとなります。
特に地価の継続的な下落により担保としての価値が減少すると、当初設定された融資限度額が見直される可能性があります。
このリスクに対応するため、金融機関は融資時に慎重に不動産の価値を判断します。
そのため、実際の市場価値と比べて融資可能額が低く抑えられる傾向にあります。
| リスク要因 | 想定される影響 |
|---|---|
| 地価下落 | 融資限度額の減額や追加担保の要求 |
| 市況悪化 | 物件売却時の価格低下による返済負担増 |
| 担保評価 | 市場価値より低めの融資額設定 |
将来の不動産売却時に市況が悪化していた場合、想定以下の価格でしか売却できない事態も考えられます。
その場合、借金を返すための資金が不足し、相続人が追加で返済負担を強いられるケースも想定されます。
デメリット②変動金利で利息が増える可能性
多くのリバースモーゲージ商品は変動金利を採用しています。
これは、将来、市場金利が上昇すると、毎月支払う利息額も増加することを意味します。
年金などの固定収入で生活している場合、利息の支払いが増えることは家計を直接圧迫する大きなリスクです。
また、利息を元金に繰り入れるタイプの場合、想定より早く借入残高が融資限度額に達してしまう可能性もあります。
対策としては、契約前に金利の変動ルールや上限設定の有無について詳しく確認しておくようにしましょう。
住宅金融支援機構の「リ・バース60」のように全期間固定金利の商品もあるので検討してみてくださいね。
デメリット③想定より長生きし、融資限度額に達してしまう
リバースモーゲージには必ず融資の限度額が設定されています。
平均寿命が延びる現代において、想定以上に長生きすることで、生存中に融資の枠をすべて使い切ってしまう「長生きリスク」があります。
限度額に達すると、それ以降は一切の資金を受け取れなくなります。
さらに、契約期間が定められている商品の場合、期間満了時に元利金の一括返済が必要となり、返済できなければ自宅を売却せざるを得ない状況に陥ることもあります。
デメリット④利用したくてもできないケースがある
リバースモーゲージは、どんな家でも利用できるわけではありません。
金融機関は将来的に売却して資金を回収する必要があるため、資産価値が安定・向上しやすい首都圏や主要都市部の物件を好む傾向があります。
地方や郊外の物件は対象外となることが多いです。
また、土地の評価が重視されるため、戸建てに比べてマンションは対象外とされたり、非常に厳しい条件(都心部、築浅、高評価額など)が課されたりするケースが一般的です。
リバースモーゲージはどんな人におすすめ?

先述したように、リバースモーゲージは、特にシニア層の資金問題を解決する可能性を秘めた、多くのメリットを持っています。
具体的には、以下のような不安を抱えている方に向いていると言えるでしょう。
- 今の家に住み続けたい人
- 年金だけでは生活費が少し足りない人
- 家を相続する人がいない・残す必要がない人
また、リバースモーゲージにはいくつかの種類があるため、ご自身の状況や目的に応じて、どの種類が最適か、以下の表で確認してみましょう。
| こんな人におすすめ | 選ぶべき種類 | ポイント |
|---|---|---|
| ・年金だけでは生活が苦しい ・持ち家はあるが収入が少ない |
社会福祉協議会 | 福祉制度としての位置づけ。まずは市区町村の社会福祉協議会窓口に相談。 |
| ・退職後も住宅ローンが残っている ・家をバリアフリーにリフォームしたい |
リ・バース60 | 住宅関連の目的に特化。ノンリコース型が基本で相続人も安心。 |
| ・趣味や旅行など、ゆとりのある老後を送りたい ・急な出費にも備えたい |
民間銀行のローン | 資金使途が自由で柔軟性が高い。金利や条件を複数比較することが重要。 |
契約者が亡くなった後の手続きと注意点

リバースモーゲージは、契約者本人だけでなく、そのご家族、特に将来財産を相続する立場にある方々にとっても非常に重要な問題です。
契約前の重要ポイントから、契約者死亡時の流れと返済方法、配偶者や複数相続人の権利関係、物件売却の進め方まで、相続人が知っておくべきことについてご紹介します。
契約前に確認すべき重要ポイント
リバースモーゲージ契約時には、相続人への事前説明と同意取得が不可欠です。
金融機関は契約前に相続人同席の説明会を実施し、将来の返済義務や権利関係について詳しい説明を行います。
相続人の理解と同意を得るため、以下の重要事項を確認する必要があります。
- 契約者死亡時の返済義務の範囲と期限(金融機関によって異なるが6ヶ月~1年以内)
- 物件売却による一括返済か、相続人による分割返済かの選択権
- 担保物件の評価額と将来の見直し条件
- 相続人が複数いる場合の権利関係と返済負担の分担方法
特に重要なのは、相続発生時の返済方法について事前に話し合いを持つことです。
物件を売却して一括返済する場合は、売却時期や方法についても具体的に決めておくことが望ましいでしょう。
また、相続人の返済負担を軽減するため、生命保険を活用した返済計画の検討も有効な選択肢となります。
契約時には、担保評価額の定期的な見直し条項の有無も必ず確認しておきましょう。
契約者死亡時の流れと返済方法
契約者死亡時には、金融機関が自動的に家を売却して清算してくれるわけではありません。
そのため、相続人が主体となって手続きを進める必要があります。
その際、相続人には主に2つの選択肢があります。
それは、物件を売却して一括返済を行うか、債務を承継して契約を継続するかです。
物件売却による返済を選択した場合、金融機関や契約内容によって異なりますが、一般的に6か月〜1年程度で返済手続きを完了する必要があり、以下のような流れで行います。

売却益が借入額を上回れば、差額は相続人のものになります。
売却益が借入額を下回る場合でも、多くの金融機関では物件評価額以上の返済を求めない「ノンリコース型」を採用しているため、相続人に追加の返済義務は発生しません。
相続人が物件に居住継続を希望する場合は、相続人の年齢が60歳以上であれば債務承継を選択できます。
この場合、金融機関の審査を経て新規契約を締結することになります。
新規契約では、相続時の物件評価額と残債務を考慮した新たな借入限度額が設定されます。
手続きの詳細は金融機関によって異なるため、契約時に相続人とともに確認しておくことをおすすめします。
配偶者や複数相続人がいる場合
リバースモーゲージ契約者に配偶者がいる場合、配偶者にはその不動産に対する居住権が保護されます。
契約者が死亡しても、配偶者は引き続きその物件に住み続けることができる制度が一般的です。
この権利保護により、高齢の配偶者が住み慣れた自宅から退去を迫られるリスクを軽減できます。
ただし、配偶者が居住を継続する場合でも、相続人には借入金の返済義務が生じます。
| 相続人の種類 | 返済義務の優先順位 |
|---|---|
| 配偶者 | 第1順位(居住継続の場合) |
| 子 | 配偶者と協議または第2順位 |
| その他相続人 | 法定相続分に応じた按分 |
複数の相続人がいる場合、返済義務は原則として法定相続分に応じて分配されます。
相続人同士で返済負担の調整が必要な場合は、遺産分割協議の中で具体的な分担方法を決定します。
円滑な相続のためには、契約者の生前から相続人全員で権利関係を確認し、返済方法について事前に話し合っておくと良いでしょう。
リバースモーゲージの賢い活用法

リバースモーゲージの活用では、金利タイプの選択と返済計画の立案が重要となります。
担保評価額に基づく借入限度額の設定から、追加借入れの活用、さらには契約見直しまで、長期的な視点での資金計画が必要です。
こちらでは、金利タイプごとの特徴や将来への影響、効率的な資金調達の方法、返済計画の立て方、そして専門家への相談時のポイントまで、実践的な活用法をご紹介します。
金利タイプの選び方
リバースモーゲージの金利タイプは、固定金利型と変動金利型の2種類から選択できます。
長期の借入となるため、金利タイプの選択は将来の返済計画に大きな影響を与えます。
| 金利タイプ | 特徴 | 適している人 |
|---|---|---|
| 固定金利型 | 金利が一定で将来の支払額が確定。金利は変動型より高め | 安定志向で計画的な資金管理を重視する人 |
| 変動金利型 | 市場金利に連動して変動。当初金利は固定型より低め | 金利上昇リスクを許容できる人 |
変動金利を選択する場合は、金利上昇による毎月の返済額増加や借入可能額への影響を考慮する必要があります。
一般的に、借入期間が15年を超える場合は固定金利型が推奨されます。
借入時の年齢が若いほど、将来の金利変動リスクは大きくなるためです。
75歳以上の場合は、残存期間が比較的短いため変動金利型も選択肢となるでしょう。
金融機関との契約時は、途中での金利タイプの変更可否も確認しておくことをおすすめします。
借入限度額と追加借入れについて
リバースモーゲージの借入限度額は、担保となる不動産の評価額と契約者の年齢をもとに算出されます。
一般的に、担保評価額の50〜70%程度が上限となり、年齢が高いほど借入可能額は増加する傾向にあります。
借入方法には、一括借入れと分割借入れの2つの選択肢があります。
以下の特徴を踏まえ、ご自身のニーズに合わせた活用が可能です。
| 借入方式 | 特徴と活用ポイント |
|---|---|
| 一括借入れ | 住宅リフォームなど大型支出に最適。金利負担を抑制可能 |
| 分割借入れ | 生活費補填など定期的な支出に対応。将来の資金需要に備えた借入枠確保が可能 |
追加借入れは、当初の借入限度額の範囲内で複数回にわたり実行できます。
ただし、不動産価値の変動や金利環境の変化により、借入条件が見直される可能性もあるため、計画的な資金調達が重要となります。
将来の資金需要を見据え、余裕を持った借入枠を確保しておくことで、柔軟な資金計画が可能になります。
返済計画と期限前返済のポイント
リバースモーゲージの返済計画を立てる際は、まず現在の収入と将来の収入見込みを正確に把握することが大切です。
年金収入や不動産収入など、安定的な収入源を基準に、無理のない返済額を設定しましょう。
返済計画を立てるコツ
- 毎月の収入から固定費を差し引いた金額の20%以内を返済額の目安とする
- 将来の収入減少を見込んで、返済額に10%程度の余裕を持たせる
- 期限前返済資金は退職金や相続資金など、まとまった収入を計画的に充当する
- 金利上昇リスクに備え、返済額の5%程度を予備費として確保する
期限前返済を検討する際は、手数料と金利負担の軽減効果を比較することが重要です。
一般的な期限前返済手数料は返済額の1〜3%程度で、返済時期が早いほど金利負担の軽減効果は大きくなります。
収入が大きく変動した場合や金利が変更された際は、速やかに金融機関に相談し、返済計画の見直しを検討しましょう。
返済額の変更や返済期間の延長など、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
契約見直しのタイミングと専門家相談のコツ
契約条件の見直しは、金利変動や不動産市況の変化に応じて検討する必要があります。
特に、変動金利型を選択している場合は、金利上昇局面での見直しが重要となります。
リバースモーゲージの契約見直しが必要となる具体的なケースと対応方法について、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 金利が1%以上上昇し、月々の利息支払いが増加した場合
- 担保物件の評価額が20%以上下落し、借入限度額への影響が懸念される場合
- 収入状況が変化し、返済計画の見直しが必要となった場合
- 介護施設入居など、新たな資金需要が発生した場合
専門家へのご相談は、契約見直しの3ヶ月前までに行うことをおすすめします。
金融機関との交渉に向けて、直近の年金支給額や預貯金残高、固定資産税評価額などの資料を準備しましょう。
審査には収入証明書や不動産評価額の資料が必要となり、場合によっては保証人との面談も求められます。
早めのご相談と準備で、円滑な契約見直しを進めることができます。
リバースモーゲージを利用するか検討しよう

リバースモーゲージは、高齢者の方が持ち家を担保に、老後の生活資金を借り入れる仕組みです。
これは、資産を活用する上での選択肢の一つとなります。
利用する際は、制度の内容を十分に理解し、ご自身の計画に合うかを慎重に判断することが大切です。

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