不動産の売買をする場合には、普段は馴染みのない言葉を耳にすることが少なくありません。たとえば「指値(さしね)」もそのひとつに挙げられるでしょう。言葉の意味を知らないままでは取引の際に混乱してしまうこともありえます。
「指値」の意味やその活用法など、詳しく確認していきましょう。
指値とは具体的にどんな行為?
「指値」とは、不動産売買においてだけでなく株式投資の場でも頻繁に使われる言葉です。
そもそもの意味は「買い手が購入価格を指定すること」であり、その価格の高低は関係ありません。しかし、不動産売買においては「指値」といえば値下げ交渉を指すことが一般的です。なぜかというと、不動産売買では買い手はなるべく安く買いたいと考えるのが基本であり、売り手が示す価格以上の購入価格を指定することは非常に稀なことだからです。
そのため「指値=売り手が示す価格以外を指定する=値下げ」という意味で使われているのです。
「値下げ交渉」と言うと「買い手のわがままではないか」などと考える人もいるかもしれません。しかし、こういった値下げ交渉は不動産の売買では頻繁に行われていることであり、むしろ不動産の適正価格を探るために必要なプロセスと考えられています。
そもそも、不動産には“相場”はありますが“定価”はありません。
そのため、売り手は自分が売りたいと思う価格をつけることができます。その価格が妥当かどうかは買い手との交渉のなかで探っていかなければなりません。もし相場を大きく上回るような金額を提示していたり、値下げしてしかるべき理由があったりするのならば調整のために値下げ交渉されることも珍しいことではありません。
特に不動産は「相対取引」であり、売り手と買い手の合意によって取引価格が決定します。そのため、価格に関しての交渉は売り手だけでなく買い手の権利でもあると言えますから、買い手からの交渉には丁寧に対応するようにしましょう。
買い手にもマナーはある!
しかし、どんな交渉にも応じるべきかといえばもちろんそうではありません。
たとえば、あまりに常識を外れた金額を提示してきたり交渉の途中で礼を欠いたりするような人には応じられない、と思うのは不自然なことではないでしょう。
指値を入れること自体は非常識なことではありませんが、その際には買い手にも守るべきマナーがあります。
基本的に買い手が指値を入れるべきタイミングは、買い付け申し込み時です。買い付け時に「○○万円なら購入する」という意思表示があり、それを売り手が承諾すれば指値が成立します。
価格以外にも希望条件があるときには、しっかり条件を提示して売り手にそれを認めてもらうよう買い手は交渉しなければなりません。
買い手は交渉のタイミングをしっかり守り、売り手が納得してスムーズな契約ができるようにするのがマナーです。
ちなみに買い付け申し込みをした段階では、まだ法的な拘束力はありません。たとえ提示条件を売り手がすべて承諾したあとでも、契約書を交わさない限りは内容の変更が可能です。だからといって、そのタイミングでの条件変更は売り手からすれば気持ちの良いものではありません。
変更内容を聞き、相手都合の一方的なものではないのか、こちらも納得できるものなのか、また相手の態度は誠意のあるものなのかといったことをよくチェックしましょう。
もし理不尽な要求があったり、礼を欠くような態度があったりした場合には取引そのものを考え直したほうが無難です。
指値に応じられないことも
たとえ相手がきちんとマナーに則って交渉をしてきたとしても、すべての指値に応じられるとは限りません。
たとえば、提示されている価格で購入の意思を示している人が既にいる場合にはそちらを優先したいと考えるのが自然です。また、交渉途中でも後から申し込みをした人の価格の方が高ければ、申し込みの順番に関係なくそちらを優先することもあるでしょう。
売る側からすれば、一番高く買ってくれる人に売りたいと思うのは当たり前のことですから、必ずしも買い手からの指値に応じられるわけではありません。
あるいは住宅ローンの残債がある場合は指値に応じづらくなります。売却したお金でローンを完済しようと考えるのが通常ですから、それ以下のお金を提示されても承諾はしづらいでしょう。
仮に残債があるまま売却した場合には、その物件の抵当権が解除されないままになります。抵当権とは住宅ローンを組むときに担保としてその物件を確保する権利のことで、抵当権が設定されていれば金融機関は債務者が住宅ローンの支払いができなくなったときにその物件を取り上げることが可能です。
支払いが終わらなければ当然抵当権は残ったままになり、そうなると新たな買い手がその物件に対し住宅ローンを組むのは難しくなります。もし住宅ローンを組まずに現金で購入するとしても、抵当権が解除されない限りはその物件が取り上げられる危険性は残りますので、積極的に購入したいと考える人はあまり多くないのではないでしょうか。
抵当権は確実に解除する必要がありますので、残債がある場合にはその金額が売り手にとって指値のリミットと言えます。
値下げ交渉のプロセスとは
では、実際に買い手が指値を入れて値下げ交渉してくるのはどんなときなのでしょうか。
指値を入れる具体的な方法はいくつかありますが、代表的なものはその物件のマイナス面を指摘するという方法です。「水道管が老朽化しており、購入後すぐに修繕工事の必要があるので100万円安くしてもらえないか」「塗装が劣化しており補修費50万円が必要なので、その分価格を下げてもらえないか」など、値下げして然るべき理由と具体的な数字を示してくるパターンです。
また、自分が出せる金額を根拠に指値をする人もいます。銀行融資などの具体的な資金計画を伝え、この価格ならば確実に購入できることを伝えることで売り手を説得しようとするのです。
「住宅ローンの支払いが月○万円、固定資産税が年間○万円、それに対し銀行融資と自己資金が○万円で、これ以上の金額を出すことは難しいです」などと自身の状況やそれ以上の金額が出せない理由を具体的に伝えて「それなら」と売り手が折れるように説得しようと試みるのです。もちろん、指値に応じるかどうかは売り手次第です。
しかし、こういった交渉でも相手の人となりが見えてくることもありますので、話を聞くだけでも無駄にはならないでしょう。
ちなみに、実際に値下げ交渉をするのはお互いの仲介人である不動産会社の担当者です。売り手と買い手が顔と顔を合わせて話し合いをしていくわけではありません。そのため、納得できる不動産売買をするためには不動産会社選びも慎重に行う必要があります。自分の意思をきちんと伝えることができ、かつそれに対し誠意ある対応をしてくれる不動産会社を見極めましょう。
その条件に納得できる?
指値に応じるかどうかは売り手次第ですが、頑なに拒否し続けるとなかなか買い手がつかないこともあります。
立地や築年数、間取りなど人気の条件が揃っていて買い手が多数いるような物件ならまだしも、そうでない場合には売る側も「売り方」を考える必要があります。なぜ自分がその物件を売ろうとしているのかを振り返り、譲れる点と譲れない点をリストアップしてみましょう。
たとえば前述のように、ローンの残債がある場合にはそれ以下の金額での売却は難しくなります。その金額を最低売却価格とし、それ以下の交渉には応じられない旨をあらかじめ伝えておきましょう。
ほかにも、本業でまとまったお金が必要になった、相続税を支払うために物件を売却しなければならなくなったなど、それぞれ売却には理由があるはずです。
そこから導き出される「最低売却価格」のラインははっきりさせておく必要があります。
また、買い手は価格以外の条件変更の代わりに値下げを提案してくることもあります。
たとえば「決済時期を早めるので、多少値下げしてもらえないか」といったような具合です。その条件が自分にとってメリットがあるものなら、多少金額が下がっても納得したうえで取引できる可能性があります。
価格以外にも決済時期や手付金の金額などいくつかポイントを絞り、どういった内容なら自分が満足できるのかを事前に考えることでスムーズな取引の実現が目指せます。
いずれの場合も「何となく」で指値を入れてくるような買い手とは気持ちの良い取引をするのはなかなか難しいでしょう。「なんでもいいからとりあえず値下げして!」というような無理な要求をしてくる相手では、その後の取引でも無理難題を言い出す可能性があります。
指値に応じるにしろ応じないにしろ、その過程でしっかり相手を見極めることが重要です。
不動産会社との関係性も大事!
前述のとおり、実際に交渉の矢面に立つのは仲介役の不動産会社です。
買い手の人となりや態度、様子は担当者から聞き出す必要があります。売り手と買い手を結ぶ不動産会社がひとつである「両手取引」であれば、担当者の話から買い手について知るのはそれほど難しいことではないでしょう。
しかし、売り手と買い手の双方に不動産会社がついている場合には、お互い第三者を挟んでいるので印象が大きく変わってしまうおそれがないとは言い切れません。また、買い手が礼を欠くような行動をしていても、担当者が交渉を先に進めるために黙っていたということも残念ながら起こりうることです。
トラブルを避けるためにも、自分が「この人が言うなら」と信頼できる不動産会社選びも納得できる取引をするための大事なポイントになります。そのために
不動産の売却を考えたら、信頼できる不動産業者探しも始めましょう。しかし、自ら足を運び自身が信頼し安心して任せられる不動産業者を探すことも容易ではありません。探し出すまで不動産会社を一軒一軒回らなくてはいけませんし、時間もかかってしまいます。
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しかし、「高額査定額=自身に合う業者」ではありませんし「高額査定額=信頼できる不動産業者」ではありません。そのことを念頭に、業者選びをしっかりと行ってください。
以上のように、不動産売却の際には買い手から値下げ交渉をされることがあります。必ず応じなければならないわけではありませんが、売り手が値下げのためにいろいろと出す条件には、自分にとってメリットがあることもあります。また、交渉する段階で買い手の性格や人となりが見えてくることもありますので、頭ごなしに拒否するのではなく話を聞いてみてもいいかもしれません。
不動産会社と協力しながら、買い手と売り手の双方が納得できる着地点を探っていきましょう。