マンション売却には、税金や手数料など細かい諸経費がかかります。これらの費用はまとまるとかなりの金額になるので、発生してから用意したのでは間に合わないかもしれません。売買契約が成立したときにあわてることがないように、諸経費の内容や支払うタイミングなどを把握しておきましょう。
マンション売却で必ずかかる諸経費とは?
マンション売却でかかる諸経費には、必ず見積もっておかなければならない項目と、状況によるものがあります。必ずかかる諸経費には、不動産仲介会社に支払う仲介手数料、マンション売却における納税となる印紙税、売却によって変更される登記の登録手続きの手数料が挙げられます。
不動産会社への仲介手数料は、売買を成立させたという成功報酬です。そして、マンション売却では売るための宣伝や営業などに費用をかける関係から、売主は売買契約の成立時にまず支払うことになります。手数料無料の不動産会社もありますが、それは買主に対してのものです。
また、不動産の売買契約は契約書を作成してお互いに同意すると成立します。その契約書には、売買の契約金額ごとに定められている額の収入印紙を購入して貼り、それをもって納税に換えます。
印紙税は不動産の契約金額に比例して段階的に上がっていき、50万円以下の取引では400円、それを超えて100万円以下までは1,000円です。100万円から500万円までは2,000円、そこから1000万円では1万円と、少なくはない金額がかかるようになります。段階的に上がるのは50億円までの取引で、それ以上になると一律60万円です。ただし、平成30年の3月までは軽減税率が適用されるため、印紙税は通常の税額の約半分となります。
それから、マンションという不動産が売却されると、登記簿謄本から所有権の名義を移さなければなりません。住宅ローンの残債があれば、抵当権を抹消する必要も出てきます。登記を書き換えること自体にかかる手数料である登録免許税の金額はそれほど多くはありません。しかし、手続きに必須の書類や確認しなければならない事柄が専門的なために、申請は司法書士に依頼するのが一般的です。
そこで、司法書士への報酬も、登記費用として計算する必要があります。
人によってかかる諸経費とは?
諸経費で状況によりかかるものは、一括繰り上げ手数料やリフォーム費用などの売却に関係して発生するもの、売主の引越しに関わるものなどです。売却時に住宅ローンが残っていると、マンションには抵当権が設定されたままになっています。抵当権が設定された不動産は、住宅ローンを融資した金融機関に差し押さえられるリスクを持ち続けるので、そのままでは売却ができません。そのために、売買契約が成立し、売却価格が支払われた時点で残債を一括返済して抵当権を外します。
この一括繰り上げ返済を行うには、金融機関に所定の手数料を払わなければなりません。一括繰り上げ返済の手数料は、住宅ローンの金額によりますが数万円はかかります。また、マンションを売却するときには、丁寧に掃除をして売りに出します。そのとき、経年劣化によって床や水回りが傷んでいるような場合は、売りに出す前に修繕やリフォームもしておく必要があるのです。
さらに、住居であるマンションを売却すると、売主は新居に引っ越さなければなりません。その際に、家具や家電を新調することも多いので、思わぬ出費になることがあります。引越し費用は、運んでもらう荷物の量や移動距離でかなり違います。荷物の種類や距離によって業者に得意不得意があるため、得意分野の業者に依頼するとコストを抑えられることがあるのです。
引越しについての諸経費を節約したいときは、人手が足りなくなり価格が上がる引越しシーズンを避けたり、計画的に家電を買いそろえたりするなどの対応もして対策しましょう。
マンション売却時に戻ってくる費用とは?
マンション売却では、売却代金以外にも売主の手元に入るお金があります。マンションが人手に渡ったことで、戻ってくる費用があるのです。
例えば、今までマンションにかけられていた固定資産税や、市街化区域内であれば都市計画税などです。移転したあとの分をすでに納めている場合は、買主に売却時に清算してもらいましょう。
固定資産税や都市計画税は、1月1日の時点で不動産を所有している人に請求されます。そこで、納税額を365で割り、起算日から所有権を移転した日までがその年度の売主の負担する納税額、というやり方で売主と買主で計算することになります。この起算日は地域によって差があり、関東方式では1月1日ですが、関西方式では4月1日です。起算日をどちらの方式にするかで負担する納税額は変わるので、契約書を作成するときに確認しておきましょう。
他にも、住宅ローン保証料を支払っていれば、一括繰り上げ返済をしたときに戻ってきます。返済が早まった期間分は、保証される必要がないからです。住宅ローンの金融機関系列の保証会社から返金してもらいます。マンション購入の際に加入する火災保険も、手放したあとの期間の保証分が戻ります。ただし、解約手続きを取らないと返金されないため、忘れないようにしましょう。
マンションの管理費や修繕積立金も、所有権移転日以降の支払い分は返してもらえます。マンションの管理組合が返金するのではなく、移転日以降の金額を売主と買主で日割り計算をして清算します。管理組合に納めたお金は、組合の財産となるので直接戻ってはこないのです。
マンション売却で諸経費が発生するタイミングとは?
諸経費がかかるタイミングは大体決まっています。不動産会社への仲介手数料は、売買契約が締結され成立したときにまず半額を支払います。そして、実際に売主の口座に売却代金が振り込まれ、買主に物件が引き渡された取引成立時に残りを払うのです。
引渡しのときに一括で支払うというパターンもあります。
印紙税は、売買契約成立時に必要です。抵当権の抹消や所有権の移転などの登記の手続き、住宅ローン残債の一括返済は、売却代金と物件の引渡し日に行います。修繕やリフォームについては、きれいにしてから売り出したいのか、引き渡すときまでに行えば良いのかで変わるでしょう。引越しに関わる費用も、売主がいつ転居するかという問題なので、ある程度融通が利きます。
節約できる諸経費はある?
諸経費は、自分の行動次第で節約できる項目もあります。
まず、仲介手数料は不動産会社との交渉によっては下げられます。仲介手数料の上限は決まっていますが、それ以下だといけないというものではないからです。しかし、必ず値引きに応じてもらえるわけではありません。マンションがほとんど傷んでいなければ、修繕やリフォームをする必要はないので、それに関する経費はまったくかからないことになります。ですが、自分では気にならなくても、買主にとっては問題となる劣化などもあるかもしれません。
節約して買い手が付かず、売却できなければ元も子もないため、程度によってきちんと修繕などをしたほうが得になります。
まとめ
マンションの売却では、諸経費という項目でもそれなりに費用がかさみます。雑費だと考えて油断していると、資金計画に狂いが出たり必要な日までに用意できなかったりする可能性もあるのです。売買契約に必要な諸経費の項目を理解して確かめ、契約前に必要な金額を用意しておくと焦らないで済みます。
事前に諸経費のおおむねの金額を把握できれば、それを節約して圧縮することもできるかもしれません。必須のものと状況によるものをきちんと計算し、余裕を持たせて準備しておきましょう。