不動産売買は大きなお金が動く取引であり、一般の人にとっては一生のうちでそう頻繁に経験するものではありませんよね。そのため、契約書もどこをどう見ればいいのか分からないということもあるでしょう。
そこで、実際に契約を取り交わす前に、しっかりチェックしておきたい不動産売買契約書のポイントをご紹介します。
不動産を売買するときの流れは?
仲介業者の数で変わる契約書
所有している不動産を売却したいという場合、通常は不動産会社に仲介を依頼して買主を探してもらいますよね。そのとき、どの不動産会社に依頼するかは売主の自由ですが、必ずしも1社に決めて依頼しなければならないわけではなく、複数の会社に依頼することが可能です。
そして、まず買主探しをスタートするにあたり、不動産会社とのあいだに媒介契約を結んで依頼します。その媒介契約書は不動産の売却に関してどのような業務を行うか、仲介手数料はいくらになるかなどの内容を明確にしているものです。
ただ、媒介契約書は一種類ではなく、1社のみに仲介を依頼するときと複数の会社に依頼する場合で異なります。
複数の業者に依頼する場合
一般媒介契約になり、会社ごとにそれぞれ一般媒介契約書を取り交わします。売主は実際どの会社に売却を依頼するかは自由で、最も条件の良い買主を紹介してくれたところに決めればいいのです。
仲介を1社に決めて依頼する場合
専任媒介契約・専属専任媒介契約という2種類の契約方法があります。
専任媒介契約と専属専任媒介契約
自分で買主を見つけてきた場合
(たとえば親戚や知人など、買ってくれる人が見つかった場合)
その相手と売買契約を進めることが可能
■専属専任媒介
自分で見つけた相手でも契約ができない
それぞれの媒介契約のメリット
複数の会社に依頼することで、広く物件が世間の目に触れる機会がある
■専任媒介・専属専任媒介
依頼主への報告義務や指定流通機構への登録義務がある
請け負っているのは自社だけのためより一生懸命に買主探しをしてくれる可能性が高い
不動産売買契約書を作成する作業の流れ
必ず契約書などを作成しましょう
不動産売買契約に限らず、民法では口約束でも契約は成立します。
しかし、実際には何かトラブルが起きたときに書面で取り交わした契約書が無いと、解決が難しい場合が多いというのも現実です。高額な金額が動く不動産売買の取引では、特にしっかり契約内容を記載しておくことが必要になります。
不動産売買契約書の冒頭には、対象となる物件の概要が記載されています。
詳細を記載するために現地調査を!
契約書を作成するためには物件の詳細を知る必要があり、売主に話を聞くほか実際に現地調査を行います。その際、接面道路の状況や境界線・電気・ガス・給水などライフラインの状況など多岐に渡って調べます。
さらに家屋の場合、雨漏りや設備に不具合が無いかもチェックしておかなければなりません。また、日当たりが良いか悪いか・買い物しやすい商業施設が近くにあるか・近隣の自治会はどうなっているのかなどの生活環境も買主にとっては知りたいポイントです。
さらに詳細を調べるようにしましょう
また、物件の調査は現地調査だけではなく、登記簿記載事項や公図・建物図なども法務局に出向いて調べます。
契約書には土地ならば地番のほか地目や地積、家屋ならば所在地や構造、床面積などを記載。ほかにも対象の土地が都市計画法や建築基準法でどんな規制があるかなども調べ、固定資産評価証明も取得しておきます。
さらに、買主とのあいだで交渉が進めば、契約日時や売買代金・支払時期、手付金と手付金解除に関する内容、引き渡し時期なども詰めていき、不動産売買契約書に盛り込みます。
契約書は一般的なひな型などを利用して作成されることが多いですが、ローン特約付きの契約や抵当権を抹消してから売却する契約など、詳細は個別に異なるため確認しながら契約書を作成していきます。
契約書でチェックするポイント
不動産売買契約書を確認するときは、まず売買物件の情報に誤りがないかどうか確認が必要です。もちろん不動産会社も契約書作成時にはしっかり確認しているはずですが、これが間違っていたら大変ですよね。物件の情報に関しては登記簿上の情報と現況が異なっているケースもあります。
その際は、記載した情報が登記簿に記載された情報なのか、実測したものなのかが分かるように契約書に記載されているため、何を情報元としているかを確認しておくことが大切です。
登記簿情報と実測が異なる場合、売買代金の差額を精算することもあります。売買代金や支払いの期日に間違いがないか、手付金の金額は妥当かなどもチェックしましょう。
また、手付金については解約手付かどうかもチェックしておくポイントのひとつです。解約手付の場合は、買主が代金の一部を払ったり売主が引渡や登記に着手したりするまでのあいだなら、解約が可能だという契約です。
支払った手付金を放棄すれば解約できる
■売主
受け取った手付金の2倍の金額を買主に支払えば解約できる
※途中で売るのをやめたいと気が変わった場合、支払う手付金の負担は必要になるが、契約を取り消すことはできる
実際に契約が進んで引き渡しになると、通常は同時に所有権移転の手続きも行われることが多いです。引き渡しだけ済んで、登記情報が買主に変更されなければ、後々のトラブルにもなりかねませんから、所有権移転の記載がされているかどうかも確認しておきましょう。
家屋取引の場合
家屋の取引の場合は、室内設備の引継ぎや、売買契約成立後から引き渡しまでの期間に天災などで建物が滅失・破損した場合の危険負担についての記載もチェックが必要です。
天災によって対象物件が被害を受けることは多くないかもしれませんが、実際に起きてしまったときに、売主に修復する義務があるのかどうかで負担が違ってきます。
買主がこの状態ではとても住むことができないなど、当初の目的を達成できない状態になった場合は契約解除を申し出てくる可能性もあるからです。
また、公租公課等の精算という項目がありますが、これは固定資産税や都市計画税は毎年1月1日に不動産を所有しているものに課される地方税です。そのため、その年の固定資産税は売主が納付しています。不動産を売却する場合、引渡日を基準にして日割りし、買主が引渡日以降の分を売主に支払う契約をしている場合が多いため、チェックしておきます。
ほかにも、契約違反による解除やローン特約に関する項目などもありますから、契約の詳細によって個別に間違いがないかどうか確認してください。
契約締結日当日は何をどうする?
忘れ物の内容に準備しよう
契約締結当日にはいくつか準備して持参していく必要のあるものがあります。
不動産売買契約書
◇売主・買主それぞれ署名・捺印
実印
印鑑登録証明書
◇印鑑登録した役所で交付してもらう
※もし、売却する物件が複数の人物の共有名義になっている場合は、人数分の実印と印鑑登録証明書が必要
運転免許証や住基カード・パスポートなどの本人確認書類
収入印紙
※仲介してくれる不動産会社が用意する場合もある
ほかにも、契約時に仲介手数料の一部を支払う場合があったり、登記関係や物件情報の書類を求められる場合もあったりするため、あらかじめ必要になるのかどうか聞いておく必要があります。
そんなに時間はかからない
実際の契約は売主と買主が直接顔を合わせて物件に関する説明をして、契約書の確認、署名・捺印、収入印紙を貼付します。そして手付金を受け取り、引き渡しまでのスケジュール確認などを行って終了です。不動産会社の事務所などで契約が行われるのが一般的で、買主は契約までに重要事項説明書の交付を受けます。
物件については、ある程度は把握・納得しているため、契約の手続き自体は1時間から1時間半程度で終了します。
不明な項目は納得できるまで確認しよう
長年住んだマイホームや両親の思い出が残る実家など、売却する不動産はケースによってさまざまでしょう。ただ、何かしら思い入れのある場所であることも多いはずです。また、一般の人にとっては一生に一度経験するかどうかの大きな取引。
そのため、あとで後悔することがないように、納得できる形で売却したいのではないでしょうか。
しかし、不動産売買契約書は専門的ですし難しい用語も入り混じっている書類ですから、慣れていない人には分かりにくいこともありますよね。ただ、分からないことを曖昧にしたまま契約をしてしまうと、あとになってやっぱり納得がいかないと言っても遅いのです。
契約日当日は慣れないことばかりで何かと緊張することも多いでしょうが、不明な項目があればきちんと質問して納得できるような説明をしてもらうようにする必要性があります。もちろん買主側から質問されたら、真摯に答えて対応することも必要です。
買主も大きな買い物をするわけですから、同じように心配事や不安を抱えている可能性もありますよね。お互いに不明な部分を無くして気持ちよく契約を締結できるようにすることが大切です。
まとめ
売主にとっても買主にとっても大きな決断を要するのが不動産売買です。その契約を形にした不動産売買契約書は、お互い納得できるものでありたいですよね。今回は不動産売買契約書のチェックすべきポイントや契約日の流れを紹介しました。
実際に不動産の売却を決めたら、あとで後悔することのないようにポイントを押さえながら契約を進めてみてください。