マンションを購入予定の場合、どうせ買うなら資産価値が落ちない物件を選びたいところでしょう。人気の路線である・駅が近い、それだけでは資産価値は測れません。プロの目線で資産価値を考えるポイントをまとめたので解説します。

立地条件だけではない「マンションの資産価値」

マンションの資産価値は立地条件に大きく左右されます。しかし、それが100%というわけではありません。「マンション全体で見た場合」「個別の部屋で見た場合」それぞれに多くの条件がありますので、視野を広く見ることがとても大事なのです。

マンションの資産価値

まずは、過去の事例から学ぶ視点で見てみましょう。

ヴィンテージマンション/広尾ガーデンヒルズ

ヴィンテージ・マンションなどといわれ、マンションの資産価値が下がっていない物件の多くは、マンション敷地全体での管理状況が資産価値を守っていると言えます。日本でも代表的なヴィンテージ・マンションのひとつに「広尾ガーデンヒルズ」があります。

広尾ガーデンヒルズは約6.6haの敷地に全15棟・合計1,181戸のマンションと管理センター、スーパーマーケット(ザ・ガーデン)、レストラン(シェ・松尾)、銀行(三菱東京UFJ銀行)、医院等があります。

ヴィンテージ・マンションの代表としてよく名前が上がる同物件は、都心にありながら緑に囲まれて静かな住環境を維持していることが評価されて、中古市場でも未だに高い人気があります。

敷地内は同じデザインコンセプトで建設された「ヒル (Hill)」全部で5つのゾーニングがされており、駐車場は屋内外いずれも全て平置式駐車場となっています。各戸の間取りは53.4-362.2m²、新築時の分譲価格は8,000万円~4.9億円でした。

発売当初から人気が高く、即日完売しています。抽選倍率は平均40.8倍で、最高倍率は209倍を記録し、完成後にはバブル景気が到来したため、新築時に76-127万円/m²程度だった価格が、最高900万円/m²程度まで上昇しました。

その特徴から、資産価値の高い物件の特徴を見てみると

  1. 大規模開発である
  2. 管理体制が良い
  3. 緑に囲まれた良好な環境
  4. 平置き駐車場で便利
  5. コンセプトを感じられるデザイン

などがあげられます。最近流行のタワーマンションとは一線を画していると感じます。

タワーマンションは、今現在は築浅の中古で値上がりしているものも多く、相続税の評価上も有利だといった理由などから、投資用としてのニーズも拾って人気が高いのですが、今後どのように推移していくか非常に注目されるところです。

必ずしも駅前の必要はない

資産価値が高い物件は必ずしも駅前ではありません。広尾ガーデンヒルズは、一番近い所で徒歩5分。敷地が広大なため、駅から遠い棟まではかなり時間もかかります。

それよりも時間をかけて醸成されてきた周辺の雰囲気や、住まう人たちの意識の高さ、行き届いた管理によって資産価値を保って来ていると言えます。 

広尾ガーデンヒルズは、丘の上につくられた物件で、元々、地盤の良いとされる丘の上なので、災害にも強い立地であるということも、長年その価値を守ってくることができた要因かもしれません。

私たち不動産のプロは数多くの物件を見るチャンスがあります。物件を見に行ったときに、現地で感じる「空気感」が、資産価値には大きく影響していると思います。

これは、駅徒歩何分であるとか、生活利便施設へ徒歩何分といった「数字で表される立地条件」ではありません。
それよりも、丁寧に管理されていて、住んでいる人達自身もその価値を守るために努力されている物件は、おのずと資産価値が高いまま維持されていると感じます。

とはいえ、新しい物件を選ぶときには、そういったこれからのことはわかりませんよね。そのために、参考にすべき指標や、見ておくべきポイントを挙げておきます。  

参考にしたい「路線価」の見方とは

路線価は、国交省が毎年発表しているもので、相続税の計算などに使うために付けられている基準価格です。道路一本一本に対して基準価格が決められていて、そこに敷地面積をかけることでその土地の価格を出すことが出来ます。

路線価は、インターネットで誰でも参照することが出来ます。算定の仕方は、国税庁のHPに記載がありますのでご覧になってみてください。

国税庁/路線価図・評価倍率表
http://www.rosenka.nta.go.jp/

マンションの場合は接している道路をみよう

マンションなどで比較をする場合には、興味のある物件の接している道路の路線価を比較してみてください。

例えば3物件で比較する場合 ①:路線価 400C ②:路線価、250B ③:路線価、600Dと書かれていたとします。①・②は土地建物所有権のマンションで、③は定期借地権のマンションです。

上記の場合の各物件の路線価格は、①坪132.2万円、②坪82.6万円、③は借地権分の割合をかけて、119.0万円となります。③が一番高いように見えて、借地権が関係する場合は逆転することがあるので注意が必要です。

また、路線価はあくまで参考にしかなりません。路線価格は、広い道路の方が高く出やすくなっています。なので、交通量が多く実際住んだ場合に排気ガスの影響を受けやすかったり騒音が気になったりするような物件でも、路線価のみで比較すると高く出ることもあります。

また、同じような住宅街に立地して、戸数も同じくらい、最寄駅が違うという場合に、どちらの方が将来的に価値が高まりそうかなどの想定をするために、路線価をチェックしてみるのは有効です。  

資産価値を左右する条件一覧

マンションの場合は「人気路線」「人気駅」であることに加え、駅からの距離が重要になります。それ以外にも条件があるので、一覧にまとめてみます。  

1.最寄駅から徒歩10分以内である

日本の人口は減少傾向にあり、上下水道・道路などのインフラ管理にも費用がかさむため、中心市街地に人口を集中させようという政策がすでに地方都市などで進められています。駅から距離の離れた物件は、それだけで資産価値が下がる可能性が大きいのです。  

2.分譲戸数の多い大規模物件

分譲戸数が多いと、スケールメリットが働きますので、維持管理にかかる費用が安く済みます。また、大規模ならではの充実した共用施設があったり、中古の売買事例が多くなるため、中古価格のマーケットが安定するという面もあります。

驚くほど素晴らしいエントランスや共用設備がある物件もあります。部屋だけを買うのではなく、建物トータルを買うという感覚が持てるのは大規模物件ならではです。

3.ペット可でペット用の施設が充実・マナーが確立されている

ペットは、もはや家族と同じです。ペット用施設が充実していることは、物件の差別化の1つです。

最近のマンションでは、エレベーターにペットボタンがあり、ペットと同乗している場合は他の方が乗らないように(各種アレルギーなども可能性があるため)して、ペットがいる家族とそうでない家族が共存しやすい空間づくりをしているものもあります。

4.管理費・修繕積立金が高額でない

分譲戸数が多い物件のほうが、管理費・修繕積立金が安く済みます。スケールメリットの差が大きく出るのが、維持管理費用についてです。

マンションの管理には、非常にお金がかかります。その維持管理を300世帯でまかなうのと20世帯でまかなうのでは、当然1人当たりの価格差があるのが当たり前ですよね。  

5.買い物などの生活利便施設が至近

この条件は当たり前なので、注意点をお伝えします。広告表記上の徒歩分数は近くても、幹線道路を渡らないといけないなど、実際は意外と使いづらいということがあります。最寄り駅からの帰り道の動線上に生活利便施設があることがベストです。

これは意外と盲点です。同じ徒歩5分でも自分が普段使わない方向に買い物のためだけに5分歩くのは結構面倒なので要注意です。  

6.ファミリータイプの場合は子育て環境

子育て環境と一口に言っても、全て把握するのは不可能です。地元出身の方にヒアリングをしたりして、情報を得ておけば安心できます。

教育熱心な高収入層が住んでいるエリアだと、通える小学校の学区に立地しているかどうかで、資産価値が大きく変わることもあるそうです。通える学区は、各行政のHP等で確認出来ます。  

7.再開発が期待されるエリア

行政などのHPにて、周辺の再開発予定を調べてみると、意外な再開発予定が見つかることがあります。工事期間中は、騒音・交通渋滞等のマイナス要因もあるかもしれませんが、開発によって環境が良くなると資産価値の維持・向上に大きな影響があります。

最寄の駅舎の建替えや急行停車駅の変更等も同じような効果が期待できます。  

8.希少間取りの部屋

マンションの中でも、角部屋は絶対的に人気があります。新築物件の販売時に現場で言われるのが「薄皮まんじゅう」という用語です。マンションの角部屋・各タイプの最上階・ルーフバルコニーがある部屋などは先に成約することが多く、これをまんじゅうの薄皮に例えた表現です。

新築時に先に売れるということは、それだけ魅力があるということで、中古で出た際にも、希少性を感じる方が多いということです。分譲当初、他のタイプよりも値段が高くても、それを補って余りある資産価値を期待できるのです。  

9.低層住宅地域に建つマンション

低層住宅地域に建つマンションは、根強い人気があります。そこまで大きな物件は少なく、一般的には駅からすぐというわけではありません。

しかし、落ち着いた環境で、戸当たりの平均㎡数が大きく、品のある雰囲気を保った物件が多く、長く資産価値を維持しているマンションが多くみられます。  

その他資産価値が下がる要因・リスクについて

資産価値が上がる物件ばかりではなく、大多数の物件は資産価値が経年とともに下がっていきます。資産価値が通常よりもさらに下がってしまうようなリスク要因は、なるべく無いに越したことはありません。

以下に、リスク要因についてまとめました。  

1.眺望を売りにした部屋

「富士山が見える」等、特別な眺望を売りにしている場合に、他の建物が建つことによってその特徴が消える恐れのある物件はリスクがあります。

バルコニー側に空き地・大きな既存施設などがある場合にも、開発されて眺望・陽当りが悪くなるリスクがあります。  

2.過剰な共用施設

素敵な共用施設は大規模マンションの魅力ですが、その共用施設に過剰な設備があると、その維持管理には無駄なお金がかかります。

例えば、要注意なのは【水】に関連するものです。新築して数年もたつと、「共用部に水を流すのにお金がかかるから止める」というような事例がたくさんあります。  

3.このマンションのためだけのサービス

駅から遠いマンションで居住者専用のシャトルバスを走らせる場合など、マンション居住者のためだけのサービスが用意されている場合があります。

実際は、採算が取れないことも多く、利用者が少ないとそのサービスは無くなることがあります。  

4.居住者のマナー違反

昨今では、外国人の方が多く買うマンションもあります。世界中から投資が集まる日本です。特にアジア諸国からの投資目的で不動産購入ツアーを組まれて、現金で買うというような事例もあるようです。

そこで問題になるのが、「文化の違いによるマナー違反」です。特に共用施設の決められた使い方を守らないなどの問題が多いのです。

管理・修繕などの積立金も、しっかり払われているうちはいいのですが、これがもし支払われなくなった場合に、海外の方からどうやって徴収するのかなど、トラブルの種はかなり多くあるということですね。  

5.築古のリフォーム物件

最近では、リフォーム再販を専門で手がける業者も多く、築古物件をリフォーム販売している事例が非常に多くなっています。

お部屋の中は新築同様で、魅力ある物件も多いのですが、築古の物件は現在と工法が違うので、配管などの不具合が起きたときに自室の改修だけでは済まない場合もあります。旧耐震以前、昭和50年代前半くらいの物件からは特に注意が必要です。

購入を検討する際は、主要設備の修繕の履歴をチェックしたり(仲介業者に依頼すれば管理会社から取り寄せられます)、不具合が起きたらどのように対処できるのかを具体的に説明してもらう必要があります。

まとめ

マンションの資産価値という観点で色々説明をしましたが、購入するときにこれだけチェックすればいいというものでもありません。資産価値が上がることが、マンションを買う目的でもないはずです。

ご自身の人生設計をきちんとして、何のために買うのかを、ご自身が納得いって購入することが何よりも大事です。投資用ワンルームマンションを買うのと、家族で実際に住まうために買うのでは、また見るべき観点は変わってきます。

ご自分のライフステージと、購入すべき物件を的確にアドバイスしてくれる専門家にぜひ相談してみてください。