不動産にまつわる書類のなかで、土地台帳という言葉を耳にすることがあります。ただ、ほかにも不動産の登記に関しては不動産登記簿もあり、どこがどう違うのか皆さん知っているでしょうか。そこで、この記事では土地台帳とはどういうものか、どんな活用法があるのかについて詳しく説明します。

土地台帳とは?

明治時代なると、税の制度が見直されました。1873年に地租改正が行われ、一定の税率で税金としてお金を納める仕組みに変わりました。その後明治政府が、1874年から7年という時間を費やし固定資産税を徴収することを目的に作成したのが土地台帳です。土地台帳は、税金の徴収に使われるものであるため明治から昭和にかけて、税務署等に置かれていました。

1950年に行われた税制改革で、明治時代から続いてきた地租が廃止になりました。その後は、固定資産税の徴収を現在のように市町村が行うようになり、課税台帳としての役割を果たしてきた土地台帳は、法務局が保管するようになったのです。

それ以後、土地台帳は廃止されましたが廃止前まで使用されていた土地台帳は、現在も法務局に保管されています。

土地台帳に記載されている内容

◇一筆ごとの地番や地目、所有者など記載
(不動産登記簿と同じ)

◇等級や面積・課税標準となる金額や実際の評価額なども記載 (不動産登記簿とは異なるところ)

土地台帳には一筆ごとの地番や地目・所有者などが記載されている

昭和時代に、土地台帳は不動産登記簿と一元化されましたが、新しい不動産登記簿に過去の情報がすべて引き継がれたわけではありません。しかし、法務局で保管されている土地台帳には、そのまま昔の情報が記載されて残っています。

そのため、土地台帳を見ることができれば現在の不動産登記簿では得ることのできない、その土地の過去の状況を知ることができるのです。

たとえば

◇その土地がどのような経緯で取得されたのかという情報
(分筆や合筆されている場合)
◇分筆・合筆される以前の面積

などを、知ることができます。そのため、権利関係や境界に関して争いがあるような場合は、参考資料として土地台帳をチェックすることがあります。

さらに、現在の見た目では宅地開発するのに適した場所だと考えられている土地でも、実は調べてみると昔の土地台帳に記載されている地目が田や池沼だったというケースもあります。昔の地目が、田んぼや池、沼だった土地の場合には地盤が弱いかもしれないという可能性があり、宅地造成や建築をする際の参考になります。

土地台帳に付属されている地図

土地台帳は、そもそも固定資産税を徴収するために作成されました。固定資産税をどのくらい徴収するかという金額を決めるためには、面積など土地に関する情報を正確に知る必要があります。

固定資産税を徴収するために作成された土地台帳

そのため、土地台帳を作成するにあたって簡易な測量図である「土地台帳付属地図(公図)」も作成されているのです。土地台帳附属地図は土地台帳と同様に法務局に保管されています。明治時代に作成された公図は、測量技術が未熟だったため必ずしも土地の位置関係や形状などを正確に表しているとは限りません。

1951年以降、正確な土地の地図を作成することを目的として、国土調査法に基づいて地積調査が全国各地で行われるようになりました。最新の、測量技術で行われた地籍調査により作成された地図も公図と呼ばれており、古い土地台帳附属地図とともに一般の人でも閲覧することができます。

ただし、特に建物が密集した市街地では地籍調査が困難な場合もあり、実際にはなかなか進んでいない場所も多いのが現状です。

そのため、地籍調査が行われていない市街地などを管轄している法務局では、明治時代に作成された古い付属地図しか備え付けられていないところも多く残っています。

なお、1960年以降は登記の申請をする際に原則として地積測量図の添付が求められるようになりました。地積測量図を見るとその土地の正確な地積がわかるのはもちろん、公図よりも詳しい土地の形状や位置関係を知ることが可能です。

土地台帳と閉鎖登記簿の違い

土地台帳のほかに、不動産の過去の情報を知ることができるものに閉鎖登記簿もあります。

閉鎖登記簿は、もともと不動産登記簿だったものが公開される対象から外れたことで閉鎖されたものを指します。つまり、古い登記簿といっていいでしょう。なぜ、公開の対象から外れたかという理由には、いくつか種類があります。

土地が合筆されたことで対象の地番が消滅してしまったというケース
区画整理が行われた時に換地処分で、地番がなくなってしまうこともある

地番が存在しなくなれば、その地番の不動産登記簿は閉鎖登記簿になる建物の場合は、取り壊したり火事などでなくなると滅失登記をしなければならない

滅失登記をした登記簿も閉鎖登記簿となる

さらに、登記簿の作成方法は変更されることがあり、近いところでは、昔は紙媒体で残されていた不動産登記簿がコンピューター化されたのが、それです。

昔の紙の不動産登記簿
土地50年間
建物30年間
コンピューター化してからの不動産登記簿
磁気ディスクに保存されている

閉鎖登記簿として残されています。 なお、閉鎖登記簿も閲覧したり交付を受けたりすることができます。

土地台帳を取得する方法

土地台帳は、法務局で閲覧や写しの交付を取得することが可能です。

ただ、法務局に備え付けられている申請書には土地台帳の写しを請求するための、専用の用紙が用意されていません。ただ、登記簿謄本や閉鎖登記簿謄本の写しを請求するときなどに使う、登記事項証明書 登記簿謄本・抄本交付申請書を使って請求することが可能です。

申請書の空白部分に「旧土地台帳写し」と記入すると、土地台帳の写しを交付してもらうことができます。

なお、土地台帳は現行の不動産登記法で定められた帳簿ではないため、閲覧するのも写しの交付を受けるのも無料です。

土地台帳から過去の情報を知ろう

土地台帳からは、現在の登記簿謄本だけでは得ることのできない、その土地にまつわる過去の情報を知ることが可能です。

そのため、自分の住んでいる土地やこれから購入したり家を建てたりしようと考えている土地が、昔どんな人が所有していたのかがわかります。また、地目の現在との相違や、分筆や合筆などでどんな変遷をたどったのかなどについてもわかります。

過去に遡り、土地の情報を知りたいという場合は、現在公開されている不動産登記簿だけではなく土地台帳を閲覧したり写しを取得したりして、調べてみましょう。