土地や建物を購入した際に、引き渡しと同時に登記の申請をします。この登記申請時に必要となるのが登録免許税という国税です。これらは誰しもが通る道と言っても過言ではなく、高額な金額がかかることが多いので、簡単には見過ごせません。

正しい知識を持って対応できるように、登録免許税とはどのようなものなのか見ていきましょう。

不動産の登録免許税とは?

不動産の登録免許税とは、不動産を「登記」のときにかかる税金のことを登録免許税といいます。

「漫画の中で見かけたことがある」という方なども含めて、登記とは誰もが一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか?

あまり良くない話題でよく、お金のトラブルに関連した漫画に出てきたりします。こんなことを書くと、登記に対してネガティブな印象をもたれてしまうかもしれませんが、登記は不動産の権利を保証してくれる大切なものです。

法務局及び地方法務局、その支局や出張所を総称して「登記所」と呼ばれている

「登記所の登記簿に誰の名前が書かれているか」そのことが、その不動産の権利者が誰なのかを決めます。※登記所とは通称です。法務局及び地方法務局、その支局や出張所を総称して「登記所」と呼ばれています。登記とは、とても大切な記録です。

そんな登記のときにかかる手数料(税金)が、登録免許税です。

ちなみに、登録免許税法では不動産や商業法人の登記だけでなく、船舶の登記、航空機の登録、著作権・特許権の登録・漁業権の登録や、 弁護士・税理士・公認会計士・不動産鑑定士などの登録、金融機関や信託会社、宅地建物取引業の事業免許など、50以上の項目での登記・登録・免許などについて規定されています。

登録免許税というのは不動産のためだけの税ではないのです。 だから、本当は「登記」税という名称だったらわかりやすいのに…と思うのですが、ほかの分野も絡んでくるので、登録免許税という名称になってしまっています。

義務ではなく権利を保証する税金

不動産の登録免許税は不動産登録税が県税だったのに対し、国に納める税金・国税になります。

不動産取得税のように、一瞬でもその不動産を所有したら納税しなくてはならないという納税義務はありません。その代わり、不動産の登録免許税を納めない(登記しない)と、不動産を所有してくれる権利を保証してもらえないことになります。

登録免許税は義務ではなく、権利を保証してくれる税金だと考えるとわかりやすいかもしれませんね。

口約束と書類手続き

例えば、あなたがAさんから不動産を購入したとしても、不動産の登記を自分の名義に変更しなければ、不動産の正式(公的)な所有者はAさんのまま、ということになります。

また、もしもAさんがお金に困っていて 「確かにお金はもらったけれど、(あなたが)登記しようって言ってこないし、まだあの不動産は私のもの。 よし、他の人にも販売しよう!」と、Bさんにアナタに販売したのと同じ不動産を販売したとします。

そして、しっかり者のBさんは、AさんからBさんへと不動産の所有名義の登記を書き換えました。そうすると、その不動産はBさんのものになってしまいます。 そしてBさんが「その不動産は自分のものだ!」と主張したら、あなたは逆らえません。

もちろん、AさんとBさんが共謀してあなたを騙そうとしていたら詐欺になるので、不動産に対して権利を主張できます。

けれども、もしBさんがAさんとあなたの売買のことを知らなかった場合、権利を守られるのは先に不動産を購入したあなたではなく、登記されているBさんということになるのです。

なぜなら、あなたとAさんは口約束、AさんとBさんは書類手続きを踏んだ、と判断されてしまうからです。それほど、登記簿は価値の重い書類なのです。

不動産業者に頼むのも手

登記書き換えの手続きは、不動産売買両者が共同で行うのが原則なので間に不動産業者が入っている場合は、すべて算段をつけてくれるはずです。不動産の引渡しと同時にかかるのが不動産登録税だと考えておくといいかもしれませんね。
(しかし、ご自分のことなので注意してください!) 

一方、個人間で不動産売買(及び贈与)取引をする場合は、しつこいようですが必ず登記をしてください。

登記の必要がある場合

不動産登録免許税は、もっとも節税してはならない税金のひとつです。では、そんな不動産の登録免許税の実際をみていきましょう。

不動産の登録免許税が発生する(登記の必要性がある)のは

所有権移転登記
不動産の売買、相続及び贈与が発生したとき
所有権保存登記
建物を新築したとき
登記名義人表示変更登記
不動産所有者の住所や姓名が登記簿上と異なったとき
抵当権抹消登記
住宅ローンなどを完済して不動産の担保が解消されたとき
抵当権設定登記
住宅ローンなどを利用して不動産を購入するとき

登記に必要な登録免許税の額は住所変更や抵当権の抹消手続きなど、不動産ひとつあたり1,000円ですが、それ以外は不動産の評価価格(固定資産台帳に書かれている固定資産税評価額)や抵当権額に、規定税率を掛けたものになります。

売買
不動産の価額×1,000分の20
相続
法人の合併又は共有物の分割
不動産の価額×1,000分の4
その他(贈与・交換・収用・競売等)
不動産の価額×1,000分の20
建物の登記(登録免許税)
■住宅用家屋の所有権の保存
不動産の価額×1,000分の4

■売買又は競売による所有権の移転
不動産の価額×1,000分の20

■相続又は法人の合併による所有権の移転
不動産の価額×1,000分の4

■その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等)
不動産の価額×1,000分の20

となります。

※土地売買に関すると登記は、平成23年4月1日〜平成24年3月31日まで1,000分の13、平成24年4月1日〜平成25年3月31日まで1,000分の15と、軽減税率が適用されています。

※個人用住宅用家屋(建物部分のみ)についても、特例で税率が軽減されています。1,000分の1〜1,000分の3まで、と条件により軽減率が異なります。
【参考】国税庁のホームページ内 No.7191 登録免許税の税額表

以上、不動産の登録免許税額の明細でした。

どれくらいかかる?

例えば5,000万円の土地を売買した場合の登録免許税は100万円ですが、高いとみるか安いとみるかは人それぞれかもしれません。しかし、決して小銭ではありませんよね。売り手、買い手のどちらが負担するかは、気になるところだと思います。

登録免許税はいくら?

不動産売買の場合は、買い手が負担することがほとんどです。確かに、登録免許税法の規定では、登記権利者(買い手)と登記義務者(売り手)が連帯して納付義務を負うこと、と規定されています。

わかりやすく言うと、別に売り手としては登記されなくても何も困らないということです。なので、登録免許税及び手続きをしてくれる司法書士への報酬は、買い手が全額負担するのが一般的です。

ただ、その考え方だと住宅ローンに対する抵当権の登記費用(もとい登録免許税額)は金融機関が負担するというように考えると思うのですが、住宅ローンの登記費用は、不動産購入者(住宅ローンを利用する人)が負担することのほうが、多いようです。

住宅ローンを利用して得をするのは、借り手という発想なのかもしれませんね。

まとめ

以上が、不動産の登録免許税についての解説でした。 最後にもう一度繰り返しますが、登録免許税は「不動産所有者の権利を守ってくれるための法律」です。 面倒だったり複雑だったりしますが、専門家に相談しつつ必ず手続きをしてください。