この記事の概要
  • 登記簿謄本とは、土地や建物の権利関係を公的に証明する法務局発行の文書のこと
  • 取得方法は、オンライン申請、窓口申請、郵送申請の3種類がある
  • 種類がいくつかあり、用途によって最適な証明書が異なる

不動産取引や相続手続きで必要となる登記簿謄本。

窓口での申請やオンライン請求など、取得方法はいくつかあり、初めての方は手続きに不安を感じるかもしれません。

登記簿謄本は、法務局で1通600円から取得可能です。 

本記事では、目的に応じた種類の選び方から、窓口、オンライン、郵送それぞれの具体的な申請手順、必要書類まで、スムーズな取得のポイントについて解説していくので、ぜひ参考にしてください。

登記簿謄本とは?

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登記簿謄本は、土地や建物の権利関係を公的に証明する法務局発行の文書です。
所有者や抵当権などの権利関係、面積や用途などの物件情報が正確に記録されています。

不動産の売買や賃貸借契約、住宅ローンの申し込みなど、様々な場面で提出が求められることが一般的です。

不動産取引では、所有者の確認や抵当権の有無を確認するための重要な資料とされています。

登記簿謄本の種類と特徴

登記簿謄本には以下の3種類があり、用途に応じて使い分けることが重要です。

全部事項証明書 過去から現在までのすべての登記事項を確認可能
現在事項証明書 現時点で有効な登記事項のみを記載
閉鎖事項証明書 すでに閉鎖された登記記録の内容を証明

なお、「登記簿謄本」と「登記事項証明書」は同じ内容を指す言葉です。

2004年のコンピューター化以降、正式名称は「登記事項証明書」となりましたが、一般的には「登記簿謄本」の呼び方も広く使われています。

窓口・オンライン・郵送別の申請手続きの流れ

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登記簿謄本の取得方法には、法務局窓口での申請オンライン申請郵送申請の3つがあります。

それぞれの手続き方法や所要時間、必要書類が異なるため、目的に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。

それぞれの手続きの流れは以下のとおりです。

申請方法 手続きの流れ
窓口申請 管轄法務局で申請書を記入し、本人確認書類を提示。手数料として600円を支払い、その場で受け取り可能。
オンライン申請

登記・供託オンライン申請システムで電子署名を用いて申請。
手数料はインターネットバンキングで電子納付することができ、郵送受取の場合は500円、窓口受取の場合は480円、PDFデータダウンロードの場合は所有者事項のみは145円、全部事項は335円。(Pay-easyに対応したATMでも納付可能)

郵送申請 申請書と本人確認書類の写し、手数料分(600円)の定額小為替、返信用封筒を管轄法務局へ郵送。

窓口申請は即日受け取りが可能な反面、業務取扱時間である平日の午前8時30分から午後5時15分までに出向く必要があります。

オンライン申請は平日の午前8時30分から午後9時まで申請でき、自宅でPDFをダウンロードできる利便性と手数料が安くなるというメリットがあります。
電子署名の準備が必要となりますが、複数通の申請も効率的に行うことが可能です。
申請の際は、法務局ホームページ「オンライン申請のご案内」をご確認ください。

郵送申請は来庁が不要で手続きが簡単です。
往復の郵送時間がかかりますが、遠方の法務局への申請時に便利な方法といえます。

取得までの所要時間と受け取り方法

登記簿謄本の取得方法によって、所要時間受け取り方法は大きく異なります。

申請の目的や急ぎ具合に応じて、最適な方法を選択することをおすすめします。

申請方法 所要時間 受け取り方法
窓口申請 10分程度 その場で受け取り
オンライン申請 ・郵送の場合は1週間以内(請求して1~2日後に発送)
・窓口の場合は即日も可能
・PDFダウンロードの場合は即日
郵送か窓口で受取、もしくはPDFダウンロード
郵送申請 1週間程度 返信用封筒で郵送

窓口での申請は、本人確認書類を提示すれば即日発行が可能です。
手数料を支払い後、その場で謄本を受け取れます。

オンライン申請は平日の午前8時30分から午後9時まで申請可能で、システムでの処理が完了次第PDFをでダウンロードもできるため、急ぎの場合に便利です。

郵送申請は、申請書類の到着から処理、返送までの時間を含め、約1週間程度かかります。 返信用封筒を同封することで、自宅まで謄本が届きます。

申請前に確認すべき必要書類リスト

登記簿謄本を申請する際は、申請方法に関わらず基本的な必要書類を事前に準備しておく必要があります。

申請時のトラブルを防ぐため、以下の書類や情報を確認しましょう。

  • 本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、住民基本台帳カードのいずれか1点
  • 申請対象の物件情報:所在地・地番・家屋番号(建物の場合)
  • 申請手数料:窓口申請は現金、オンライン申請はクレジットカード等、郵送申請は定額小為替
  • 印鑑(窓口申請の場合):認印で可

特に物件情報は、登記簿謄本を取得する上で最も重要な情報です。
住所や地番を間違えると目的の物件の謄本が取得できないため、固定資産税の納税通知書や売買契約書などで正確な情報を確認してください。

また、法人による申請の場合は、代表者印や代表者事項証明書など追加の書類が必要となります。
不明な点がある場合は、事前に法務局へ問い合わせることをおすすめします。

不動産登記簿謄本の種類と取得費用がすぐにわかる5つのポイント

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不動産登記簿謄本の取得にはいくつかの種類があり、用途によって最適な証明書が異なります。

全部事項証明書では完全な権利関係、現在事項証明書では最新状況、一部事項証明書では必要な箇所のみを確認できます。

また閉鎖事項証明書では過去の抹消された記録まで調べられます。

窓口や郵送にて申請した場合、取得費用は1通600円で、支払方法は申請方法により異なりますが、これらの特徴を押さえることで、目的に応じた適切な証明書を選択できます。

1. 全部事項証明書で物件の権利関係を完全把握

全部事項証明書は、不動産登記簿謄本の中で最も詳細な情報を網羅した証明書です。

土地・建物の所有者情報から抵当権設定まで、物件に関するすべての権利関係が記載されています。
登記された内容は時系列で確認できるため、所有権の移転履歴や抵当権の設定・抹消など、物件の権利変動を完全に把握できます。

これにより物件の法的な状態を正確に理解することが可能です。

主な記載事項 確認できる内容
表題部 所在地、地番、地目、地積など
権利部(甲区) 所有権に関する事項
権利部(乙区) 抵当権等の所有権以外の権利

不動産取引や住宅ローンの審査では、権利関係を完全に把握する必要があるため、全部事項証明書の提出が求められる場合があります。

これにより、所有権の所在や担保権の設定状況を正確に確認できます。

2. 現在事項証明書で最新の登記情報を確認

現在事項証明書は、不動産登記簿に記録されている最新の権利関係のみを証明する書類です。

過去の抹消された登記事項は省略されているため、現在の権利状態を素早く確認できます。

現在事項証明書で確認できる主な情報は以下の通りです。

  • 不動産の所在地、地番、地目、地積などの基本情報
  • 現在の所有者の氏名・住所
  • 抵当権や地上権などの有効な権利設定状況
  • 所有権移転や住所変更などの最新の変更履歴

不動産売買の事前確認や住所証明書として使用する場合など、現時点での権利関係の把握が目的であれば、現在事項証明書で十分な場合がほとんどです。

全部事項証明書と比べて情報量が少なく、確認作業も容易なため、一般的な権利確認の用途では現在事項証明書の取得をおすすめします。

また、金融機関への提出書類としても、多くの場合は現在事項証明書で対応できます。
ただし、過去の権利関係の確認が必要な場合は、全部事項証明書の取得を検討する必要があります。

3. 一部事項証明書で必要な情報だけを取得

一部事項証明書は、登記事項のうち必要な部分だけを証明する書類です。

全部事項証明書の一部を抜粋した形となり、用途に応じて表題部、権利部(甲区)、権利部(乙区)から必要な箇所のみを選んで取得できます。

窓口や郵送にて申請した場合の手数料は1区分につき600円で、複数区分を同時に請求する場合は区分数×600円となります。

全部事項証明書と比べて必要な情報だけを取得できるため、コストを抑えられる利点があります。

一部事項証明書の主な活用シーンは以下の通りです。

  • 表題部のみ:所在地や地積、家屋の構造などの確認
  • 権利部(甲区)のみ:所有権に関する事項の証明
  • 権利部(乙区)のみ:抵当権や地上権などの担保権の確認

申請時には、法務局の窓口や登記・供託オンライン申請システムで、必要な区分を明確に指定する必要があります。

住所変更の証明や簡易な権利確認など、限定的な用途での利用に適しています。

4. 閉鎖事項証明書で抹消された過去の記録を確認

閉鎖事項証明書は、不動産登記簿から抹消された過去の記録を確認できる公的証明書です。

現在有効な登記事項ではなく、すでに閉鎖された登記簿の内容を証明する役割を持ちます。
過去の所有者情報や抵当権設定、差押えなどの権利関係について、抹消された履歴をすべて確認することができます。

以下のような場面で特に重要な役割を果たします。

  • 相続手続きで過去の権利関係を確認する場合
  • 不動産取引の経緯を遡って調査する必要がある場合
  • 訴訟対応で過去の権利関係の証拠が必要な場合
  • 抵当権の抹消履歴を確認する場合

取得費用は他の登記事項証明書と同様に、窓口や郵送にて申請した場合1通600円です。

ただし、閉鎖された時期が古いものは、保管場所の関係で取得までに通常より時間がかかる可能性があります。

また、閉鎖された登記簿が複数冊にわたる場合は、必要な冊数分の費用がかかります。

5. 取得費用と支払方法をチェック

登記事項証明書の取得手数料は、窓口や郵送にて申請した場合は600円、オンライン申請した場合は窓口受取が480円郵送受取が500円PDFダウンロードした場合は所有者事項のみが145円全部事項が335円となっています。

この料金は全部事項証明書、現在事項証明書、一部事項証明書のいずれの種類でも同一です。

支払方法は申請方法によって異なります。

以下が主な支払方法となります。

申請方法 支払方法
窓口申請 現金のみ
オンライン申請 インターネットバンキングで電子納付、Pay-easyに対応したATMでも納付可能
郵送申請 定額小為替

郵送での申請時は、定額小為替での支払いが必須となります。
手数料分の定額小為替を申請書類と一緒に送付する必要があるため、事前に郵便局で購入しておくと手続きがスムーズです。

なお、複数通の証明書を請求する場合は、必要な通数分の手数料を用意する必要があります。
請求通数が多い場合は、オンライン申請が便利でしょう。

法務局での登記簿謄本の受け取り手順と必要書類

法務局での登記簿謄本の受け取り手順と必要書類のイメージ画像

法務局で登記簿謄本を取得する際の手続きをスムーズに進めるため、必要な本人確認書類の準備から申請書の記入方法、不動産情報の確認手順までを詳しく解説します。

窓口での受付から謄本受け取りまでの流れに沿って、一般的な申請と代理人申請それぞれの場合に必要な書類と注意点を分かりやすくまとめました。

  • 本人確認書類の種類と有効期限の確認
  • 委任状作成と代理人申請時の必要書類
  • 不動産所在地・地番の調べ方
  • 申請から受け取りまでの具体的な手順

本人確認書類の準備と注意点

登記簿謄本を取得する際に必要な本人確認書類は、申請者が個人か法人かまた本人申請か代理人申請かによって異なります。

必要な本人確認書類

申請区分 必要な本人確認書類
個人(本人) 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートのいずれか1点
法人 代表者印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)、商業登記簿謄本
代理人申請 委任状、代理人の本人確認書類、委任者の印鑑証明書

本人確認書類は、原本の提示が必要です。
コピーは受け付けられません。

写真付き身分証明書は、有効期限内のものを用意してください。

代理人申請の場合、委任状には委任者の実印を押印し、その印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)の添付が必要となります。

法人からの委任状には、代表者印の押印と印鑑証明書が求められます。

不明な点がある場合は、事前に法務局へ確認することをおすすめします。
本人確認書類の不備による申請の遅延を防ぐため、準備は慎重に行いましょう。

代理人申請時の必要書類と委任状の書き方

代理人による登記簿謄本の申請には、委任状各種証明書類の提出が必要です。

一般的な本人申請と比べて準備する書類が多くなるため、事前に確認しておきましょう。

代理人申請の際に必要となる書類は以下の通りです。
申請前に漏れがないか確認してください。

  • 委任状(委任者の実印を押印)
  • 委任者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
  • 委任者の本人確認書類のコピー
  • 代理人の本人確認書類の原本
  • 申請書

委任状には、委任者の住所・氏名・実印に加え、代理人の住所・氏名、委任する内容(登記事項証明書の取得)、対象となる不動産の所在地・地番を明確に記載します。

法人からの委任状の場合は、会社の代表者印と会社印の両方の押印が必要です。
印鑑証明書と代表者事項証明書も忘れずに添付しましょう。

これらの書類が不備なく準備できれば、代理人でもスムーズに登記簿謄本を取得できます。

不動産の所在地と地番の調べ方

不動産の所在地や地番を正確に確認するには、いくつかの方法があります。
固定資産税納税通知書や評価証明書には、対象不動産の正確な所在地と地番が記載されているため、これらの書類を確認することをおすすめします。

不動産登記の申請に必要な情報を得るためには、法務局が提供する地図システムも有効な手段です。
登記所備付地図」や「地番参考図」を利用することで、対象物件の位置関係や正確な地番を確認できます。

地番確認の主な情報源

公的書類 固定資産税納税通知書、住所表示証明書、登記済証
地図システム 法務局地図システム、地番参考図、登記所備付地図
その他の方法 不動産登記簿、建物図面、住居表示台帳

建物の場合は、家屋番号の確認も必要です。

建物図面や登記所備付地図を参照し、正確な家屋番号を特定しましょう。

不明な点がある場合は、管轄の法務局や市区町村の窓口で確認することができます。

申請から受け取りまでの具体的な流れ

 

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登記簿謄本の申請は、法務局窓口での受付番号札の取得から始まります。
窓口に到着したら、まず受付機で番号札を取得し、呼び出しを待ちます。

窓口では申請書を受け取り、必要事項を記入します。
不動産登記簿謄本の場合、物件の所在地や地番、建物番号などを正確に記入する必要があります。
申請書の記入例が窓口に用意されているため、それを参考にしながら記入を進めましょう。

手続きの流れ 所要時間の目安
受付番号札取得 1〜2分
申請書記入 5〜10分
窓口での手続き 10〜15分
謄本受け取り 15〜30分

申請書の提出時には本人確認書類を提示し、手数料を支払います。
手数料は現金のみの取り扱いとなっています。

その後、謄本が作成されるまでしばらく待機します。
受け取り時には、記載内容に誤りがないか確認します。

謄本が複数枚の場合は、各用紙に契印が押されているかも確認しましょう。

事前に把握してスムーズに登記簿謄本を取得しよう

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登記簿謄本の取得方法と費用について、主なポイントを整理しました。

不動産取引や住宅ローンの申し込みなど、様々な場面で必要となる登記簿謄本。

オンラインや窓口での申請方法、必要書類、費用の目安など、基本的な情報を確認しておきましょう。

  • 取得方法:オンライン申請、窓口申請、郵送申請
  • 費用:窓口や郵送にて申請した場合は600円、オンライン申請した場合は窓口受取が480円、郵送受取が500円、PDFダウンロードした場合は所有者事項のみが145円、全部事項が335円
  • 必要書類:本人確認書類、申請書