マンションの価格は、市場の動向に大きな影響を受けます。 “定価”がなく、常に変動する“時価”だということです。
これからマンションの売買をお考えの方は、今までと今後のマンション相場価格の推移が気になるのではないでしょうか?マンションは非常に高額な資産ですから、「今、売るべきなのか」「もう少し待ってから買うべきなのか」…など、悩むのは当然のことです。
そんな方々のために、本記事では2019年のマンション価格の推移とともに、2020年以降どうなっていくかについて解説していきます。
この記事の目次
2019年までのマンション価格推移をグラフでチェック!
まずは、2019年までにマンション価格がどのように推移してきたか見ていきましょう。結論からいえば、2019年現在、マンション価格は非常に高い水準で推移しています。
(出典:国土交通省)
上記グラフは、“不動産価格指数”の推移を表しています。
不動産価格指数とは、年間およそ30万件の不動産取引の価格情報を元に、国土交通省が不動産価格動向を指数化したものです。
グラフを見ると、黄緑色の折れ線グラフが2013年頃から急激に伸びているのがわかります。これは、マンションの不動産価格指数です。
上記グラフは2010年の平均値を100としていますが、2019年のマンションの不動産価格指数の平均は147。つまり2019年のマンション価格は、2010年から約1.5倍の価格水準となっているということです。
東京・大阪を含む首都圏と近畿圏の中古マンションの価格推移
では続いて、首都圏と近畿圏における中古マンションの価格推移を見ていきます。
(出典:東日本レインズ)
上記グラフは、首都圏の都道府県別でみた成約平米単価の推移を表したものです。成約平米単価とは、1㎡あたりいくらで売れたかということ。例えば「50万円/㎡」であれば、60㎡のマンションなら「50万円×60」で3000万円となります。
グラフを見ると緩やかに上昇しているように見えますが、平米単価は1万円変われば60㎡のマンションで60万円の価格差が生じます。東京はこの3年間で平米単価が5万円以上上昇しているため、60㎡のマンションなら300万円以上高く取り引きされているということです。
(出典:近畿レインズ)
一方、上記は近畿圏における中古マンション価格の推移を表したグラフです。この1年は、ほぼ横ばいといえるグラフ推移ですね。近畿圏は2025年の大阪万博をはじめ、IR(統合型複合リゾート)の誘致やインバウンド需要の増加などにより、今後マンション価格がどう推移していくか注目されます。
首都圏と近畿圏、及び各都道府県の2019年7~9月期の中古マンション平米単価を、以下に抽出しました。
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2019年7~9月期マンション平米単価 |
首都圏計 |
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53.72万円 |
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東京都 |
70.56万円 |
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埼玉県 |
32.10万円 |
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千葉県 |
28.24万円 |
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神奈川県 |
43.27万円 |
近畿圏計 |
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33.4万円 |
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大阪府 |
36.53万円 |
築年数によってマンション価格はどう変わる?
これからマンションの売買を考えている方は、築年数によって価格がどう変わるのかも気になるポイントなのではないでしょうか?
当然ですが、マンションは築年数が浅いほど高価格で売れる傾向はあります。
しかし近年では、築30年を超えた築古マンションの需要も高くなってきているのです。
(出典:東日本レインズ)
上記グラフは、首都圏における中古マンションの築年数ごとの成約比率を示したものです。徐々にですが、築15年以下のマンションの成約比率が減っており、築31年以上の築戸物件の比率が増えてきていることがわかります。
(出典:東日本レインズ)
東京都の2019年7月~9月期の値で築年数ごとの平米単価を見てみると、30年以上のマンションでも、築5年までのマンションのおよそ半額の値がついています。
築30年以上のマンションは、住宅ローンを返済し終わっているケースも多いもの。売りやすく、価値も付きやすい昨今では、築古マンションも売り時だといえるでしょう。
ただでさえ好条件で売れる築浅物件は、今のマンション売れ行き好調を受けて、予想を大きく上回る価格で取引される可能性があります。
2020年に向けて今後はどのようにマンション価格は推移していくのか?
2019年現在、マンション価格は高い水準で推移しています。では2020年以降、マンション価格はどのように推移していくのでしょうか?
今のマンション価格高騰を形成しているもの
まずはなぜ今、マンション価格がこれほどまでに高騰しているか考えてみましょう。
マンション価格が高騰を始めたのは、2013年から。この年には、東京オリンピックの開催が決定しました。それとともにマンション価格に大きな影響を与えたのは、政府による金融緩和政策です。「異次元」ともいわれる金融緩和政策もまた、2013年から実施されています。
オリンピックの開催決定でまず高騰したのは、東京の新築マンションです。需要の高まりに呼応して、新築マンションは2013年頃から多く建設されています。と、同時にオリンピック関連施設の建設ラッシュが重なり、建設費や資材、人件費が高騰。それによってさらにマンション価格は高騰していきます。
また2013年から実施された「異次元」な金融緩和政策によって住宅ローン金利は徐々に低下していき、さらに不動産の需要が上昇します。
(出典:住宅金融支援機構)
上記グラフは、「全期間固定金利」でおなじみ、フラット35の金利推移を表したものです。2019年10月時点の住宅ローン最低金利は、1.110%となっています。2010年~2013年のフラット35の金利は2.5%前後で推移していましたから、今がどれだけ低金利なのかお分かりいただけるでしょう。
各金融機関の変動金利は「0.5%以下」という数字も見られ、それこそ「異次元」な値で推移している住宅ローン金利。マンションを購入する人の多くは住宅ローンを組みますから、月々の返済額が少しでも抑えられる今が買い時だと考える消費者が多いのは当然のことだといえるでしょう。
不動産経済研究所によれば、2013年以降、新築マンションの平均価格は7,000万円に迫るときもあり、2019年も6,000万円前後と非常に高い水準で推移しています。もはや新築マンションは、一般的な年収の人には手が届く価格帯ではありません。そこで注目されるようになったのが、中古マンションです。
中古マンションは新築マンションに比べ、価格はもちろん、立地や築年数、広などの選択の幅が広がります。さらに近年のリフォーム・リノベーションブームも相まって、新築マンションが買えない人ともに、自分たちらしい暮らしをしたい人の需要も高まっているといえます。
消費税増税に伴う冷え込みは最小限に抑えられる見込み
2019年10月には消費税増税がありましたが、増税前後は不動産に限らず、駆け込み需要や消費の冷え込みが見られるものです。
ただ実は、今回の増税は不動産流通に大きな影響を与えないとの見方が強いのです。
新築マンションは、19年3月末までの契約分については8%を適用する経過措置があることから、3月の契約率は70%に達しなかった。政府の対策が駆け込み需要の発生を抑えたとみられる。(引用:日経新聞)
消費税引き上げが近づいても今回は目立った駆け込み需要は起きていない。政府が需要の振幅を抑える対策を手厚くしたことが奏功しているのか、自動車や住宅など高額品でも駆け込み購入の動きは限られている。増税直後の10~12月期の経済成長率のマイナス幅は、2014年4月の8%への増税時よりも小さくなるとの見方がある。(引用:日経新聞)
今回の増税に伴い、政府は以下のような支援策を実施しています。
- 住宅ローン控除の延長
- すまい給付金の増額
- 親や祖父母からの住宅資金援助にかかる贈与税非課税枠の拡大
- 次世代住宅ポイント制度開始
これらの対策が奏功してか、10%への消費税増税に伴う不動産市場の冷え込みは最小限に抑えられるとの見方が強いのです。
今後のマンション価格に影響を与えるのは、やはり東京オリンピックと金融緩和政策の行方がメインになるものと考えられます。
2019年現在、すでにオリンピック関連施設や新築マンションの建設ラッシュによる建設資材や人件費の高騰は収まりを見せつつあります。新築マンション価格もピークを越えた感があり、2020年夏を待たずしてマンション価格が下落に転じる可能性はあるといえるでしょう。
また気になる金融緩和政策の行方ですが、昨今は世界的にみても「異次元」な金融緩和政策が続いています。日本の情勢だけで判断できる状況ではないため、今後も今の低金利状態が続くかの見通しをつけることは容易ではありません。今の低金利状態が続くとなれば、オリンピック閉会を経ても「買い時」という風潮は継続する可能性もあります。
また以下のような事柄も、マンション価格に大きな影響を与える可能性があるものです。
- 国内外の景気情勢
- インバウンド需要
- 外国人労働者の増加
- 空き家問題
- 万博など国際的なイベント
- 生産緑地問題
これからのマンション価格の推移を断定することはできません。また市場が好調だとしても、マンション価格はその地域の需要にも大きく影響を受けます。そのため重要なのは、自分のマンションの価値を定期的にチェックしておくこと。市場の動きが大きくなると予想される2019年、2020年はとくにその重要性は高いといえるでしょう。
まとめ
マンションの価格は、常に推移しています。2019年現在、マンション価格は高騰していることは確かですが、これからさらに上がるのか、2020年以降、急降下するのかは定かではありません。
オリンピックや金融緩和政策など、国際的、政治的な要因が今後マンション価格に大きく影響していくと見られます。市況が読みにくいことで、不動産会社によって査定額にも大きな開きが生じる恐れもあります。そのためマンションの価値を知るには、必ず複数社の見解を聞くようにしましょう。