住宅の購入を予定している人は、「すまい給付金」と呼ばれる給付金について理解を深めておかなければ、損をする可能性があります。どのような条件を満たせば利用できるのか、どのように申請するのか、すまい給付金制度の内容から申請までの流れを見ていきましょう。
この記事の目次
すまい給付金って一体?
すまい給付金とは、消費税が8%に引きあげられたことにより新設されました。平成26年4月~平成33年12月までのあいだに住宅を購入した人に対して、増税による負担を軽減させるための政策です。増税の負担を軽減させる政策には、主に2種類があります。
1・住宅ローン減税の拡大
住宅ローン減税については、高収入かつ、借り入れ金額が多い人が住宅を購入した際にメリットがある制度となります。
2.すまい給付金
収入が低い人が住宅を購入した際にメリットが大きい制度がすまい給付金です。定められた条件を満たしている住宅購入者に対して、現金が給付されます。
購入者に対する給付条件
すまい給付金の給付対象となるための3つの条件
■収入が一定以下であること
■償還期間が5年以上の住宅ローンを利用していること
です。ただし、償還期間については、50歳以上の人は例外となります。なかでも重要な内容は、収入が一定以下であることという条件です。すまい給付金の給付対象者は、目安の収入が年収510万円以下であるとされています。
ただし、都道府県民税の所得割額によって対象になるか、いくらの給付金を受け取れるのかが異なるのです。そのため、年収が510万円以上である場合も、すまい給付金の給付対象者になる可能性があります。
すまい給付金制度においては、全国一律で収入(所得)を把握することが困難であるため、収入に応じて決定する都道府県民税の所得割額を使用して給付基礎額を決めているのです。
都道府県民税の所得割額は、課税証明書(住民税非課税者は非課税証明書)で確認をします。課税証明書とは、発行される年度の前年の収入で決められた都道府県民税の所得割額を証明できるものです。
住宅に対する給付条件
住宅の条件
■床面積が50平方メートル以上であること
■中古住宅の場合は、売主が宅地建物取引業者であること
が挙げられます。床面積が50平方メートル以上であることについては、不動産登記上の床面積を指し、共同住宅の場合は契約書にかかれている内法寸法である点に注意しましょう。
さらに、住宅に対する給付条件のなかで大切な内容は、住宅の品質です。施工中に、すまい給付金の条件として定められた検査を受けて、一定の品質が確認された住宅が対象となります。原則として施工を開始してからは検査を申し込めないため、着工の前に工事会社へ申し込みを行わなければなりません。検査の内容や各条件は住宅やローンの有無により異なるため、購入する住宅に当てはまる内容を確認しておきましょう。
新築住宅で住宅ローンを組んでいる場合
検査内容は、建設業許可を取得していない人が加入している住宅瑕疵担保責任任意保険を含めた住宅瑕疵担保責任保険に加入などです。住宅瑕疵担保責任保険法人で保険と同じ検査を行った住宅の場合、建設住宅性能表示を利用していることも条件とされています。
新築住宅で住宅ローンを組んでいない場合
年齢制限もあり、住宅取得者が50歳以上であることが条件に加えられることが特徴です。検査の内容は、新築物件で住宅ローンを組んでいる場合の内容に加えて、耐震等級2以上もしくは免震建築物でなければなりません。
一次エネルギー消費量等級・断熱等性能等級・省エネルギー対策等級のいずれかが4以上、バリアフリー等級3、劣化対策等級3もしくは維持管理対策等級2であることも条件です。
中古住宅で住宅ローンを組んでいる場合
新築住宅と比較をするとハードルは低いといえます。既存住宅売買瑕疵保険への加入、耐震等級1以上、建設後10年以内、住宅瑕疵担保責任任意保険を含めた住宅瑕疵担保責任保険に加入している住宅もしくは建設住宅性能表示を使用している住宅です。条件の内、いずれかに該当する住宅が対象となります。
中古住宅で住宅ローンを組んでいない場合
年齢制限は住宅取得者が50歳以上と定められているものの、検査はありません。中古住宅ほど、検査内容のハードルが低くなると認識しておきましょう。
給付の対象外となるケース
すまい給付金を申請する前に、対象外となるケースに当てはまらないかも確認しましょう。
まず、実際に住宅へ入居をしていなければ、給付の対象にはなりません。例えば、新婚夫婦の住宅購入時の頭金を、一緒には住んでいない両親が負担し、登記のときに共有して持分を割るなどです。すまい給付金は、購入済みの住宅に入居をすることが条件であり、同居していない両親は給付の対象外となります。両親の持分についても、すまい給付金の対象外であるため、登記は入居して住宅ローンを組む人の持分比率を高くすることが重要です。
また、基本的には住宅ローンを組む人を対象とした給付金制度であり、住宅ローンを組まない場合には50歳以上でなければすまい給付金の給付対象となりません。
50歳未満で、住宅を現金で購入する人は対象外となります。さらに、中古住宅では多くの売主が個人となり、すまい給付金の対象外であるため注意が必要です。不動産会社が住宅を扱っている場合も、売主が個人であるケースは非常に多いといえます。そのため、不動産会社が売主である、中古再販住宅と呼ばれる住宅のみが対象となることを認識しておきましょう。
給付される金額はいくら?
給付される金額は、収入の額によって異なります。
給付基礎額:30万円
■収入額が425万円超~475万円以下、かつ都道府県民税の所得割額が6.89万円~8.39万円以下の人
給付基礎額:20万円
■収入額が425万円超~475万円以下、かつ都道府県民税の所得割額が6.89万円~8.39万円以下の人
給付基礎額:20万円
すまい給付金申請の必要書類
給付基礎額については、持分保有者が1人のケースでの給付額であり、共有にするのであれば給付基礎額に持分割合を乗じて算出します。また、消費税が10%に引き上げられた場合には収入額の目安や給付基礎額が変わり、年収650万円以下、かつ都道府県民税の所得割が13.30万円となる予定です。
すまい給付金を受け取るための申請には、複数の書類が必要です。
書類内容
すまい給付金申請窓口もしくはすまい給付金制度のホームページからのダウンロードで入手できる
■住民票の写し、個人住民税の課税証明書
■通帳のコピー
■建物の登記事項証明書・謄本、工事請負契約書もしくは不動産売買契約書のコピー
■住宅ローンの金銭消費貸借契約書のコピー
■住宅瑕疵担保責任保険法人検査実施確認書など売買時の検査実施が確認できる書類
住宅ロ-ンがない場合
⇒フラット35S基準の適合が確認できる書類
中古住宅の場合
⇒中古住宅販売証明書も必須
給付金の申請をするには?
すまい給付金は、住宅を取得した本人が入居を開始してから、申請が可能になります。
申請は、すまい給付金事務局に必要書類を郵送する、もしくはすまい給付金申請窓口に必要書類を持参することでも可能です。すまい給付金の申請書類を提出してから実際に給付金を受け取るまでには、およそ2カ月の期間がかかります。
申請後、申請の必要書類を受け取ったすまい給付金事務局によって書類審査が行われ、審査完了後、問題がなければ給付決定となるのです。給付が決まると、給付金額と振り込み予定日、振り込み予定口座が記載されたハガキが郵送されるという流れです。
申請期限は引っ越しから1年以内となるため、早い段階で申請をしておきましょう。
申請するうえでの注意点
申請時期には期限があるため、後回しにしないように注意が必要です。
引っ越し作業や片付けが落ち着いたあと、可能な限り早く申請を済ませます。また、必要書類を用意しなければ要件を満たしていないことになるため、すまい給付金を受け取れません。
引っ越し作業や片付けの際に、誤って紛失しないよう注意が必要です。申請書や中古住宅販売証明書など、自分で作成しなければならない書類や、住民票の写しなど取り寄せなければならない書類もたくさんあります。そのため、期間に余裕をもって準備に取りかりましょう。
住宅購入に役立つ他の支援制度
すまい給付金以外にも、住宅の購入に役立つ支援制度として2つの制度が存在します。
住宅ローン減税
住宅ローン減税制度とは、正式名称が「住宅借入金等特別控除」であり、「住宅ローン控除」と呼ばれるケースもあります。
住宅ローンを組んで住宅を購入した際、一定期間、住宅ローンの年末残高のうち一定割合となる金額を、所得税や住民税といった税金から控除されるものです。年間控除額は
一般住宅の場合
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合
最高50万円認定長期優良住宅
認定基準として
・劣化対策
・維持管理
・更新の容易性
・耐震性
・バリアフリー性
・可変性省エネルギー性
・住戸面積
・居住環境
・維持保全計画
といった9つもの性能がある住宅を指す
認定低炭素住宅
省エネ法に基づく省エネ基準と比較をして
・一次エネルギー消費量が10%以上もしくはHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入している
・節水対策
・木材の使用
なども挙げられる
ただし、あくまでも支払う予定の所得税や住民税から控除されるため、控除される金額が最高額の40万円ないし50万円とは限らない点に注意しましょう。
贈与税非課税措置
一定額までの贈与税が非課税扱いになる贈与税非課税措置によって、贈与税を非課税扱いにするためには、いくつかのパターンがあります。
贈与税の対象外
贈与税の課税対象
また、贈与が暦年ごとであれば、贈与対象者1人につき年間で110万円まで非課税であり、年間110万円以下の場合には、申告の必要もありません。
税額に関わらず申告するパターン
例外となる3つのパターンについては、税額が0円の場合でも申告を行います。
夫婦で居住用の不動産を贈与すると
婚姻期間が20年以上であることが条件となるため注意が必要
相続時精算課税制度において
60歳以上の父母・祖父母と20歳以上の子ども、孫のあいだで行われる贈与のみ対象となる
※ただし、1回適用されてしまうと、同一の贈与者からの贈与については年間110万円の非課税枠が使用できない
父母や祖父母から住宅取得資金を贈与された際は、一定額が非課税
住宅を購入する際にも築年数や延床面積など条件がある
領主書が必要なパターン
資金を引き出した際には、金融機関への領収書の提出が義務付けられている贈与もあるのです。
父母や祖父母から教育資金の一括贈与があった際
父母や祖父母から結婚・子育て資金として一括贈与があった際
教育資金口座にて資金の管理を行う
※資金の引き出し時には、教育費の領収書が必要
すまい給付金を受け取ろう!
国が打ち出した政策である「すまい給付金」は、購入者の条件や住宅の条件など、一定の条件を満たしていることで受け取れる給付金です。
住宅の条件として、新築の場合は着工前に検査の申し込みを行わなければなりません。検査結果の書類は、すまい給付金の申請時に必要な書類となるため、注意が必要です。すまい給付金の給付条件を満たしているのであれば、受け取るための準備をします。
しかし、申請を行うにあたり必要な書類を取り寄せたり申請書を作成したりと、ある程度の手間と時間がかかるものです。給付条件を満たしているのであれば、早めに準備や申請手続きをしましょう。