この記事の概要

高額な査定額は営業戦略の可能性がある

高額な査定額を鵜吞みにすると囲い込みや売却期間の長期化、相場以下の価格で手放すことになるリスクがある

不動産会社選びで重要なのは査定額の高さではなく、担当者への信頼感

家の売却を考え、査定に出した際に思ったよりも高額の査定結果を受け取ると誰しもが嬉しい気持ちになると思います。

しかし、「本当にこの額で売却できるのなら売却したいけれど信用していいのだろうか?」と不安に思ってしまいますよね。

こちらの記事では、高額の査定結果におけるカラクリやリスク、信頼できる不動産会社の見極め方についてご紹介していきます。

この記事の目次

不動産売却における3つの「価格」の違い

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不動産売却において、多くの人が混同しがちなのが「査定価格」「売出価格」「成約価格」という3つの価格です。
まずは、この違いを正確に理解しておきましょう。

  • 査定価格: 不動産会社が「この物件なら3ヶ月以内に売れるだろう」と予測する価格です。あくまで専門家の「意見」や「目安」であり、売却を保証する金額ではありません 。   
  • 売出価格: 査定価格を参考に、売主自身が「この価格で売りたい」と決めて市場に公開する価格です。
  • 成約価格: 最終的に買主と売主が合意し、売買契約書に記載される実際の取引価格。これが、売主が実際に手にする金額の基礎となります。

重要なのは、「査定価格はゴールではない」ということです。
いくら高い査定額が出ても、それが成約価格に繋がるとは限りません。

不動産の査定額と実際の売却額が異なるカラクリについて詳しく知りたい方は、以下の記事でもご紹介しているので、参考にしてください。

つぎに「なぜ、高額な査定額が出てくるのか?」という疑問を解き明かしていきましょう。
その背景には、不動産会社側の様々な事情や戦略が複雑に絡み合っており、以下のような5つの要因が影響しています。

媒介契約を獲得するための営業戦略

最も多い理由がこちらになります。
不動産会社にとって、売主と「媒介契約」を結ぶことがビジネスの第一歩となります。
媒介契約とは、家の売却活動を正式に依頼する契約のことをいいます。
この契約がなければ、不動産会社は仲介手数料を得ることができません。

特に、複数の会社に同時に査定を依頼できる「一括査定サイト」を利用した場合、不動産会社は最初から競合他社の存在を意識しています。
多くの売主が、提示された査定額を比較して契約する会社を選ぶため、「他社よりも少しでも高い金額を提示して、まずは自社を選んでもらおう」という戦略をとります。

そのため、ここで提示された査定額は売却価格を保証するものではなく、あくまで契約を獲得するための「入口戦略」である可能性が高いです。

悪質な「囲い込み」で両手仲介を狙っている

これは非常に悪質で、売主が最も警戒すべきケースです。
囲い込み」とは、媒介契約を結んだ不動産会社が、意図的に他の不動産会社に物件情報を共有せず、自社だけで買主を見つけようとする行為を指します。

なぜ、そんなことをするのかというと、それは「両手仲介」を狙うためです。

以下で、片手仲介と両手仲介の違いについて解説します。

片手仲介と両手仲介の違いのイメージ画像

  • 片手仲介: 売主側の不動産会社Aと、買主側の不動産会社Bが協力して取引を成立させるケース。A社は売主から、B社は買主から、それぞれ仲介手数料を受け取ります。
  • 両手仲介: 不動産会社Aが、売主と買主の両方を自社で見つけて仲介するケース。A社は売主と買主の双方から仲介手数料を受け取れるため、利益が2倍になります。

高すぎる査定額で売主の気を引き、売却活動を自社に一任させる「専任媒介契約」を結ばせ、物件情報を市場に広く公開せず、自社の顧客だけで取引を成立させようとします。

この「囲い込み」が行われると、本来出会えるはずだった多くの購入希望者の目に触れる機会を失ってしまいます。
結果として、売却期間が不必要に長引いたり、最終的には不動産会社主導で大幅な値下げをさせられたりするなど、売主にとって大きな不利益に繋がる恐れがあります。

もし、囲い込みなど不動産会社からの悪質な行為にお困りの方は、イエイの「お断り代行サービス」にご相談ください。
サポートデスクの相談員が売主であるあなたに代わって不動産会社へ代行連絡し、お断りのご連絡をさせていただきます。

一括査定サイトの仕組みが過当競争を生んでいる

一括査定サイトは非常に便利なツールですが、そのビジネスモデルが高額査定を生む原因となっています。

不動産会社は、一括査定サイト経由で売主の査定依頼を1件受け取るごとに、サイト運営会社に対して1万円程度の手数料を支払っています。
つまり、不動産会社はコストをかけて見込み客の情報を得ているのです。

そのため、「なんとしてもこのコストを回収し、利益を出さなければならない」というプレッシャーが働きます。
その結果、契約を獲得するために、まずは魅力的に見える高額な査定を提示するという競争が激化しやすくなるのです。

担当者の経験不足やデータ解釈の誤り

悪意はなくとも、単純に担当者のスキルや経験不足から、相場からかけ離れた査定額が提示されることもあります。

不動産査定は、過去の成約事例データを基に行われますが、そのデータをどう解釈し、査定対象の物件の個別性(日当たり、眺望、内装のコンディション、周辺環境の特殊要因など)をどう価格に反映させるかは、担当者の腕の見せ所です。

そのため、経験不足な担当者が相場からかけ離れた査定額を提示してしまった場合は、以下のような要因が考えられます。

  • 地域の特性を深く理解していない
  • 類似物件の選定が適切でない
  • 将来的な価格上昇など、希望的観測を査定に盛り込みすぎている

このような場合、客観的な根拠に乏しい、高すぎる査定額が算出されてしまうことがあります。

純粋に物件のポテンシャルを高く評価している

もちろん、すべての高額査定が悪意や誤りによるものとは限りません。
ごく稀に、他の会社が見抜けなかった物件の価値を正しく評価した結果、高額な査定につながるケースもあります。

例えば、以下のような場合です。

  • 近隣での大規模な再開発計画を把握している
  • 特定のニーズ(例:二世帯住宅、趣味の部屋など)を持つ購入希望者のリストを独自に持っている
  • そのエリアでの売却実績が豊富で、独自の販売ノウハウがある

重要なのは、その高い査定額に「客観的で納得できる根拠」があるかどうかです。
もし担当者が明確なデータと論理に基づいてその価格を説明できるのであれば、それは信頼に値するかもしれません。

高額査定を鵜呑みにする4つのリスク

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「理由はどうあれ、高く売り出してくれるなら良いのでは?」と思うかもしれません。
しかし、それは非常に危険な考えです。
相場からかけ離れた高額査定を信じて売却活動を始めてしまうと、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。

リスク1:売却期間が長期化する

購入希望者は常に複数の物件を比較検討しています。
インターネットで物件情報が簡単に手に入る現在、相場観は買い手側にも浸透しています。

その中で、突出して高い価格で売り出されている物件は、購入希望者の検討リストにすら入らず、問い合わせや内覧の希望はほとんどなく、時間だけが過ぎてしまう危険性があります。

リスク2:値下げの繰り返しで「何か問題がある物件」という悪評が立つ

売れない状況が続くと、不動産会社は必ず「値下げ」を提案してきます。
悪質な会社の場合、これは最初から計画されている「値こなし」と呼ばれるやり方の可能性もあります。

一度や二度の値下げでは買い手の反応が薄く、何度も価格変更を繰り返すうちに、購入希望者に「何か欠陥があるのではないか?」「人気がないのには理由があるはずだ」といったネガティブな印象を与えてしまいます。

さらに、「もう少し待てば、もっと価格が下がるかもしれない」という買い控えの心理も働き、ますます売れにくいという悪循環に陥ってしまうのです。

リスク3:最終的に相場以下の価格で手放すことになる

長期間売れ残った末、売主は精神的にも追い詰められていきます。
「もう、いくらでもいいから手放したい」という心境になり、最終的には足元を見られ、相場よりも大幅に安い価格での売却を余儀なくされるケースが後を絶ちません。

そうなると「最も高く売り出そうとした結果、最も安く売ることになってしまった」という事態になってしまいます。
最初から適正な価格で売り出していれば、もっと早く、もっと高く売れたはずの機会を永遠に失ってしまうのです。

リスク4:住み替えなど、人生計画が大幅に狂う

家の売却は、多くの場合、新しい家への住み替えや、老後の資金計画など、人生における重要な計画と連動しています。

「高額査定の金額をあてにして、新しい家の購入契約を進めてしまった」「売却代金で住宅ローンを完済するはずだったのに、足りなくなってしまった」など、売却が計画通りに進まないことで、新しい家の購入がキャンセルになったり、予期せぬ自己資金が必要になったりと、ライフプラン全体が根底から覆される危険性すらあります。

高額査定と適正査定におけるリスクの比較表

こちらでは、高額査定で進めた場合適正査定で進めた場合のリスクの比較を表でご紹介していきます。
ぜひ参考にしてください。

比較項目 高額査定で進めた場合 適正査定で進めた場合
想定売却期間 6ヶ月~1年以上(長期化) 3ヶ月~6ヶ月程度
最終的な売却価格 相場以下になる可能性が高い 相場通り、またはそれ以上を狙える
買い手からの印象 「売れ残り」「問題物件」という悪評 「適正価格」という好印象
売主の精神的負担 大きい(焦り、不安、不信感) 比較的小さい(計画的に進められる)
人生計画への影響 計画が破綻するリスク大 計画通りに進めやすい

信頼できる不動産会社と「本当に売れる査定額」を見極める5つのコツ

信頼できる不動産会社と「本当に売れる査定額」を見極める5つのコツのイメージ画像

どうすれば危険な高額査定に惑わされず、本当に信頼できる不動産会社を見つけられるのか知りたいですよね。
ここからは、信頼できる不動産会社選びの方法本当に売れる査定額を見極めるコツについて解説します。

自分で相場を把握する

不動産会社と対等に話をするためには、売主側も客観的な相場観を把握しておく必要があります。
査定を依頼する前に、公的なサイトなどを利用して、ご自身の家がいくらくらいで売れそうか、大まかな見当をつけておきましょう。

相場を把握するには以下のサイトを活用するのがおすすめです。

  • REINS TOWER:全国の不動産会社が利用する情報システム「レインズ」に登録された、実際の成約価格を検索できるサイトです。
  • 不動産情報ライブラリ:国土交通省が運営するサイトで、不動産の実際の取引価格をアンケート調査に基づいて公開しています。

これらのサイトで、ご自身の物件と似た条件(エリア、広さ、築年数など)の物件が、実際にいくらで取引されたのかを調べることで、不動産会社が提示する査定額が妥当な範囲にあるのかを判断することができます。

3社以上の不動産会社に査定を依頼する

1社だけの査定では、その金額が高いのか安いのか、妥当なのか、客観的に判断することができません。
必ず、最低でも3社の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定額と提案内容を比較検討してください。

この時、大手不動産会社、地元に強い中小の不動産会社など、タイプの違う会社を組み合わせると、より多角的な視点から比較できるためおすすめです。

株式会社じげんの運営する「イエイ」であれば、信頼のおける複数の不動産会社のなかから一括査定を受けることができて大変便利です。
ぜひ、ご活用ください。

査定額の「根拠」を徹底的にヒアリングする

複数の査定結果が出揃ったら、いよいよ各社と面談です。
ここで最も重要なのが、「なぜ、この査定額になったのですか?」という根拠を徹底的に問いただすことです。

曖昧な答え(例:「このエリアは人気ですから」「高く売れますよ」)でごまかそうとする会社は信用できません。
信頼できる担当者は、必ず具体的なデータを用いて論理的に説明してくれます。

  • 比較対象とした成約事例は何か?
  • その事例と、あなたの家を比べて、どこをプラス評価し、どこをマイナス評価したのか?
  • 現在、周辺で売りに出されている競合物件の状況はどうか?

これらの質問に対して、納得のいく説明ができるかどうかを厳しくチェックしましょう。

担当者の「売却戦略」と「人柄」を確認する

査定額は、あくまで「これくらいの価格で売れるだろう」という不動産会社の「見込み」に過ぎません。
本当に重要なのは、その価格を実現するために「どうやって売るのか?」という具体的な売却戦略です。

  • どのような広告活動を行うのか?(ポータルサイト、チラシ、オープンハウスなど)
  • どのような層の購入希望者にアプローチするのか?
  • もし、最初の1ヶ月で反応がなかった場合、次にどのような手を打つのか?

熱意を持って、家を売るための具体的な計画を語ってくれる担当者こそ、信頼できるパートナーです。

また、メリットだけでなく、売却に伴うデメリットやリスク(例:「この設備は買い手によってはマイナス評価になるかもしれません」など)についても正直に話してくれるかどうかも、その担当者の誠実さを見極める重要なポイントです。

査定額の高さではなく「納得感」で会社を選ぶ

最終的にどの会社と媒介契約を結ぶか決める時の判断基準は、査定額の数字の大小ではありません。

「この会社の査定額と売却戦略が、最も論理的で納得できた」
「この担当者なら、自分の大切な家を安心して任せられる」

このように「納得感」と「信頼感」で選ぶことが、不動産売却を成功に導く最善の方法と言えるでしょう。

以下で、不動産会社の実力を見抜くために有効な質問例をいくつか用意してみました。
質問し、その答えをメモすることで、冷静に各社を比較することができるでしょう。
不動産会社との面談の際にぜひご活用ください。

カテゴリ 質問例 回答のチェックポイント
査定の根拠について ・ご提示の査定額の算出に用いた、最も参考になる成約事例を3つ見せてください。
・その事例と比較して、私の家のプラス点とマイナス点は具体的に何ですか?
・事例が具体的か?自分の物件との共通点・相違点を説明できるか?
・建物、土地、周辺環境など多角的に評価しているか?
売却戦略について ・この査定価格で売り出した場合、どのような広告・販売活動を計画していますか?
・もし最初の1ヶ月で問い合わせが少なかった場合、どのような対策を考えますか?
・具体的な媒体名や活動内容を挙げられるか?ターゲット層は明確か?
・価格変更以外の具体的な次の一手を考えているか?(例:写真の撮り直し、広告文の変更など)
リスク説明について ・この価格で売却する上での、懸念点やリスクはありますか?
・売却にかかる諸費用(仲介手数料、税金など)は総額でいくらになりますか?
・正直にデメリットも話してくれるか?誠実さはあるか?
・概算でも良いので、手残りがいくらになるか具体的に示してくれるか?
会社・担当者について ・このエリアでの、直近1年間の売却実績を教えてください。
・売却活動の進捗は、どのくらいの頻度で、どのような方法で報告してくれますか?
・地域に精通しているか?実績に裏付けられた自信があるか?
・コミュニケーションを密に取ってくれる姿勢があるか?

よくある質問

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最後に、高額査定において多くの方が抱きやすい疑問について解説していきます。
自分自身の状況に当てはめながら、問題解決のヒントとしてぜひご活用してくださいね。

一番高い査定額と一番低い査定額、どちらを信じればいい?

どちらも鵜呑みにせず、3社以上の査定額の中央値に近い金額で、かつ査定の根拠が最も明確なものを「基準」として考えるのが安全です。

極端に高い査定額は、これまで述べてきたように営業戦略である可能性が高いです。
一方で、極端に低い査定額も、その会社が安く買い叩こうとしているか、あるいは物件の価値を正しく評価できていない可能性があります。
複数の査定額を比較し、その「中央値」あたりが、現在の市場におけるあなたの家の適正な価値に近いと考えるのが合理的です。

すでに高額査定の会社と専任媒介契約を結んでしまった場合はどうすれば?

媒介契約には通常3ヶ月の有効期間が定められています。
そのため、以下のような対策をとると良いでしょう。

  1. 売却活動の進捗を厳しくチェックする: 担当者に、どのような販売活動を行っているか、問い合わせ状況はどうなっているかなどを、定期的に(最低でも2週間に1回)報告を求めましょう。
  2. 改善が見られない場合: 契約期間が満了すれば、あなたには契約を更新せずに他の不動産会社に切り替える権利があります。
    もし、担当者の活動に誠意が見られない、明らかに「囲い込み」をされていると感じる場合は、契約期間の満了をもって他社への変更を検討しましょう。

AI査定の結果が高く出たのですが、信用できますか?

AI査定は、あくまで「参考値」として捉えるべきです。

AI査定は、過去の膨大な取引データを基に、入力された物件情報(所在地、面積、築年数など)から統計的に価格を算出する便利なツールです。
しかし、以下のような「物件の個別性」までは正確に反映できません。

  • 眺望や日当たりの良さ
  • 内装や水回り設備のコンディション
  • リフォームの履歴
  • 隣人トラブルの有無など、周辺環境の細かな情報

そのため、AI査定の結果と、プロが実際に物件を見て行う「訪問査定」の結果が大きく異なることは珍しくありません。
AI査定は相場観を掴むための第一歩として活用し、最終的な判断は必ず複数の訪問査定の結果をもとに行いましょう。

高額査定のカラクリを理解して信頼できる不動産会社を見極めよう

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この記事では、家の高額査定に潜むカラクリとリスク、そしてそれに騙されずに信頼できる不動産会社を見抜くための具体的な方法について解説してきました。
最後に、最も重要なポイントを振り返ります。

高額査定のリスク
高額査定の多くは、媒介契約を獲得するための営業戦略です。
その言葉を鵜呑みにすると、売却が長期化し、値下げを繰り返した結果、最終的に相場より安く手放すという最悪の事態を招くリスクがあります。

信頼できる不動産会社を見つけるための注意点
不動産会社選びで最も重要なのは、査定額の「高さ」ではありません。
その査定額に至った「根拠への納得感」と、担当者への「信頼感」です。
そのためには、不動産情報サイトで相場を把握したり、必ず複数社を比較し検討することが重要です。

以上のことを踏まえて、信頼できる不動産会社を見極めることに役立てましょう。
高額な数字に心を揺さぶられるのは当然のことです。
しかし、正しい知識を持つことによって、惑わされるリスクを回避することができます。
最も誠実に、そして本当の意味で最も高く評価してくれる不動産会社を見つけましょう。

不動産会社選びでお悩みの方は、ぜひ株式会社じげんの運営する一括査定サイト「イエイ」をご活用ください。