土地の転売は極めてシンプルなビジネスです。土地を安く買って高く売るだけなので、それがうまくいけばわずかな労でどんどん利益が膨らんでいくことになります。
ただ、バブルの頃とは違い、土地は必ずしも値上がりするものではなくなっています。購入後に値を下げて大きな損につながる可能性もあるのです。
ここでは、土地の転売をビジネスにするにはどうすればよいのかポイントを解説していきます。
この記事の目次
短いサイクルでの土地の転売は損!
バブルの頃と比べて転売によるビジネスが難しくなっているのは、土地の値段が上がりにくくなっているのだけが原因ではありません。土地売買に関する税制も大いに関係しています。土地の転売をビジネスとして行う際には、比較的短いサイクルで購入と売却を繰り返すのが基本です。
ところが、それをすると支払うべき税金が大きくなってしまうのです。
不動産などを売却して利益が出るとその利益分に譲渡所得税が課税されるのですが、不動産の所有期間が5年以下だと税率が30%にもなってしまいます。さらに、9%の住民税も課税されるうえに、2037年までは譲渡所得税に2.1%の復興特別税が加算されます。
仮に、土地の転売で1,000万円の利益を得たとしましょう。すると、譲渡所得税が300万円、住民税が90万円、復興特別税が300万円×2.1%で6万1,000円となり、払うべき税金の合計は396万1,000円となります。つまり、利益の4割近くを税金として取られてしまうのです。
税金が高い理由は?
1.投資家に対して課税がしやすい
なぜここまで税金が高いかというと、ひとつには税金は取りやすいところから取るという税制の基本的な考えがあるからでしょう。土地転売で儲けている不動産や投資家に対しては比較的課税がしやすいというわけです。
2.土地の売買を簡単にさせないため
もうひとつの理由には、バブルとその崩壊に対する反省があります。土地を買ってはすぐさま売るという土地ころがしの過熱化がバブル崩壊の一因となったため、重い税金をかけて短いサイクルでの土地の売買を抑制しようとしているのです。
転売をするなら5年以上経ってから!所有期間と税率の関係
購入した不動産をすぐに転売すると非常に重い税金が課せられるわけですが、逆に、転売をせずにしばらく所有を続けていると状況は変わってきます。
不動産の所有期間が5年を超えると、それまでは短期譲渡所得という扱いだったものが長期譲渡所得となり、取引時の税金の額が一気に下がるのです。具体的には、譲渡所得税が15%になり、住民税が5%となります。
仮に、転売で1,000万円の利益を得たとします。すると、課せられる税金の額は譲渡所得税が150万円、住民税が50万円、復興特別税が150万円×2.1%で3万500円となり、その合計は203万500円です。5年以内に転売した場合の396万1,000万円と比べるとかなり安くなることがわかります。
したがって、土地の転売は買い手からよほど良い条件を提示されない限りは、5年以上所有してから行ったほうが得という話になるわけです。
やむを得ない事情の場合の例外
ただし、これには例外もあります。
そもそも、この税制は過剰な土地ころがしを抑制するために定められたものです。しかし、転売目的以外にも所有5年以内で不動産を売りに出すケースはあるはずです。それに対しても同じ額の税金を課すと負担が大きすぎることになってしまうため、やむを得ない事情の場合は税金を一定額控除できるように定めています。
たとえば、公共事業のための売却は控除額5,000万円、特定土地区画整理事業に伴う売却は控除額2,000万円、マイホームの売却は控除額3,000万円といった具合です。
つまり、土地の売却を考える際にはこうした条件に当てはまるかを確認することも大切になってきます。
土地は所有しているだけで課税される!おすすめの税金対策
土地を転売するなら5年以上所有する方が税金は安くなります。ただし、土地を所有し続けていると毎年固定資産税と都市計画税を支払う必要が出てきます。
どのぐらいの額を払うかというと、まず固定資産税は固定資産評価額の1.4%です。一方、都市計画税は自治体によっても異なりますが、固定資産評価額のおよそ0.3%ほどです。それほど高くないようにも思えますが、何年間もその土地を所有し続けていると無視できない金額となってしまいます。
それを考慮せずに、得られる利益だけを考えて土地を購入すると思わぬ損失を被ることにもなりかねません。したがって、転売目的の土地を購入する際には固定資産税と都市計画税を払っても利益が得られそうなのかを慎重に検討する必要があります。
損失の補填
また、同時に考えなくてはならないのが土地を保有し続けることで生じる損失をいかにして補填するかです。
たとえば、駐車場を経営したり資材置き場などの貸地にしたりして利益を税金などのコストに当てるという手があります。ちなみに、ここで挙げた固定資産税と都市計画税の税率はあくまでも更地の場合であり、建物が建っているともっと低くなります。
したがって、マンション経営などを行って税率を下げるというのも選択肢のひとつだと言えるでしょう。
とはいっても、そこまでお金を掛けてしまうと、初期コストを取り戻すまでに長い年月が必要になってしまいます。その点、たとえ税率が高くても、初期コストが安くて転売もしやすい駐車場や素材置き場なら固定資産税や都市計画税などの補填にぴったりというわけです。
日頃の人間関係が大切!ネットワークを構築して有力な情報を入手しよう
転売ビジネスで重要なのは、いかに安く土地を購入するかです。安く購入さえできれば相場通りの価格で売却するだけでも利益を得られることになります。それを行うには何よりも情報力が大切です。
インターネットだけではだめ
情報力と聞いて多くの人はインターネットを思い浮かべるのではないでしょうか。インターネットには全国から数多くの不動産情報が集められています。しかし、転売目的の土地を探すのであればインターネットはあまりおすすめできません。
なぜなら、情報にアクセスしやすい分だけ、格安の物件があったとしてもあっという間に売れてしまう確率が高いからです。多くの人が目を光らせているなかで、いち早く条件のよい物件を確保するのは至難の業です。大抵の場合はインターネットをチェックしても利ざやの見込めない物件しか残っていないでしょう。
しかも、これはインターネットに限った話ではありません。情報源が何であれ、表に出た情報をチェックするだけでは有望な物件を見つけるのは難しいのです。
情報が出る前に本人と交渉
本気で利益を得ようと思えば、情報は表に出る前にキャッチすることが大切です。
たとえば、相続や離婚などでなるべく早く土地を売却したい人がいたとします。その情報が表に出る前に本人と交渉ができればどうでしょうか。安く土地を仕入れられる可能性はぐっと高くなるはずです。
そのためには日頃から人脈を築く努力をし、人間関係のネットワークを構築していくことが大切です。そうした情報網を持っていれば、それだけビジネスチャンスをつかめる可能性も高くなるでしょう。
不動産の価値を自ら高める!リフォームしてからの転売
安い土地の見極めが大事
より大きな利益を得ようと思えば安い土地を探すだけでなく、その土地が値上がりしそうかどうかの見極めも大切です。いくら安く土地を入手したとしても、それを保有しているあいだに価値が下がってしまえば大きな損失につながりかねません。
逆に「近くに集客力がある施設ができる」「有名な企業が進出してくる」「駅が開通する」などといった変化があれば土地の相場は一気に上がり、莫大な利ざやを稼ぐことができるでしょう。
ただ、こうした情報は特定の人に流れ、その瞬間に買い占められている場合が多いものです。そのため、素人が先回りして購入するのは困難です。その結果、手に入れた土地の値段が上がるかどうかは運に任せるしかないといったケースが大半を占めることになってしまいます。
付加価値をつけて売却
一方、裏ワザ的な手段として「格安の戸建て物件を購入する」という方法があります。
たとえば、古びた家をリフォームし、新築同然の見た目にして売りに出すといった具合に、付加価値をつけて不動産の価値を人為的に高めていくのです。それなりのノウハウが必要となってくるので初心者にはおすすめできませんが、うまくいけばリフォーム費用以上の利ざやを稼ぐことができます。
転売成功の大きな鍵となる!不動産仲介業者の選び方
土地の転売を成功させようと思えば不動産仲介業者の存在は欠かせません。個人で土地の買い手を見つけるのは困難ですし、もし見つかったとしても専門家をあいだに挟んでいないと契約後にトラブルが発生しやすいからです。
ただ、不動産仲介業者なら誰でもよいというわけではありません。依頼する業者が異なると、同じ土地でも売値に数百万円の差が出たなどといった場合があるため、できるだけ慎重に選びたいところです。
免許の確認
選択のポイントとして、まず重要なのが免許の確認です。
不動産仲介業を行う際には国土交通大臣または都道府県知事の免許を受ける必要があり、それがなければ無免許営業ということになります。免許を取得した業者であれば営業所内に宅地建物取引業者票が掲げてあるはずですし、多くの場合は名刺にも免許番号が記載されています。
ちなみに、免許番号のフォーマットは「免許権者(更新回数)免許番号」となっているのでそれがあるかを確認してみましょう。
各業者の得意分野を確認しておく
また、免許を取得している仲介業者であっても得意不得意があるのでそれを調べておくことも重要です。具体的には、その業者のホームページや広告を見た際に、一番アピールしている部分が得意分野ということになるのでそれである程度の検討はつきます。
それでもわからなければ、これまでの担当実績や主な販売活動について担当者に尋ねてみるのがよいでしょう。
担当者との相性も確認
同時に、担当者との相性も確認します。
会社の実績があっても担当との相性が悪ければうまく話がまとまらない場合があるからです。最初に話をする際には「こちらのニーズを理解したうえで提案をしてくれるか」「物件の細かい情報まで確認をしてくれるか」「こちらの質問に丁寧に応えてくれるか」などといった点をよくチェックするようにしましょう。
そのうえで、これはと思う業者をピックアップし、査定を依頼してみるのです。もちろん、高い査定額を提示したからといってその価格で売れるとは限りませんが、少なくとも自分の希望より査定額が大幅に低い場合は候補から外すことができます。
また、インターネット上には、一括で複数社に査定を依頼できるサービスもあります。それを利用して最初に査定額を提示してもらい、それから依頼する業者を絞っていくというのもひとつの手です。以上のようなポイントを総合的に考慮し、最も信頼できると思える業者と契約することが転売を成功させる近道となります。
意外な落とし穴!売却コストの計算も忘れずに
転売を成功させるには、それに要する諸経費の計算も重要なポイントとなってきます。土地を売却する際に必要な経費としては、先に説明した税金のほかに仲介業者への仲介手数料、測量費用、土地を更地にするための費用などがあります。
これらの売却コストを考慮せずに買値と売値だけで取引を決めてしまうと結果的に赤字だったなどということにもなりかねません。土地を売却する際にはそれらのコストも含めたうえでトータル的にいくらの利益が出るのかを考えることが大切です。
ポイントを押さえて上手な転売をしていこう!
土地転売で利益を出そうと思えば押さえておくべきポイントがいくつかあります。「いかにして安い土地を手に入れるのか」「税金はいくらかかるのか」「売却までのあいだ、土地を有効活用する方法はないか」「不動産仲介業者をどうやって選ぶのか」などといった事柄です。それらのポイントを外さなければ転売で利益を得られる確率は高くなります。
この記事などを参考にしつつ、上手な転売をしていきましょう。