不動産業界で働いたことがない多くの人は「マイソク」と聞いても何のことかわからないでしょう。しかし、このマイソクが不動産の販売活動では重要な役割を果たしています。ここでは、マイソクの意味や役割を説明しながら、不動産売却を成功させる不動産会社選びについて説明していきます。
この記事の目次
まずは基本を押さえよう!マイソクとは?
マイソクとは、売却不動産の物件情報をまとめた資料の呼び名です。不動産会社から収集した物件情報を資料にして配信する会社の社名が、マイソクという言葉の由来となっています。
マイソクに掲載されている情報は、大きく分けて4つあります。
1.物件概要
物件の種目や価格、間取りや所在地、土地の建蔽率や容積率その他の条件などが文字情報で掲載されています。
2.間取り図
部屋の方角を含め、建物全体の間取りが把握できる情報を図面で表現しています。土地の場合は、方位と土地の形やサイズがわかる図面です。
3.物件写真
外観や建物内部の様子を撮影した写真データが掲載されます。
4.物件の取扱業者に関する情報
会社の商号や宅地建物取引業の免許番号、連絡先などが表示されます。
これらの情報が、A4やB4の片面1ページにコンパクトにまとめられているのがマイソクと呼ばれるものです。不動産会社のガラス窓などに何枚も貼られているのを見たことがある人も多いでしょう。
マイソクはたった1枚の簡易な資料ですが、不動産取引の現場では重要な役割を担っています。まず不動産の購入希望者に不動産会社が最初に渡す資料がマイソクです。購入希望者の物件への第一印象を左右する重要な広告と言えます。
また、売却を依頼した不動産会社(元付会社)が、ほかの不動産会社(客付会社)に買い手の探索を依頼する場合も、まずマイソクを渡すところから始めます。
客付会社は自社に来た購入希望者にこの物件を紹介しますが、この場合もこのマイソクを使うのが通常です。多くの場合、客付会社は取扱業者の部分だけを自社の情報に差し替えて、元付会社が作成したマイソクを流用しています。そのため、元付会社が作成したマイソクは、販売活動においてとても大切なものなのです。
仲介業者選びはマイソクをチェック!業者によって差が出る個性
不動産仲介業者によって違うデザイン
不動産の広告では、誇大広告や不当表示など防ぐために守らなければならない一定のルールがあります。ただ、このルールを守っていれば、マイソクの作り方にこれといった決まりはありません。そのためマイソクには不動産仲介業者の個性が出ます。
デザイン
デザイン面で言えば、印刷色が単色なのか2色なのか、あるいはフルカラーなのかによって印象は大きく変わります。もちろんフルカラーが最も表現力が豊かですが、物件の種類と色の使い方によっては物件が安っぽく見えてしまう場合もあり、一概には言えません。
間取り図
間取り図も個性が出る部分です。不動産業者の多くは専用ソフトウェアを使用して間取り図を作成していますが、そのでき上がりはソフトウェアの違いと業者の腕によってまちまちです。なかには、非常に簡単な情報しか載っていない間取り図を作成する業者もいますが、その場合は購入希望者が間取りをイメージすることができません。
また、物件が古臭く感じられる場合もあります。間取り図が不正確だと、内見のときに購入希望者からの信頼感を失うこともあるでしょう。この点をよく理解して、正確で詳細な間取り図を作成する業者もいます。
写真
写真についても差が出る部分です。平気でピントがぼけている写真を載せたり、露出調整がうまくいっていない薄暗い写真を載せたりする業者もいるのです。一方で、物件を際立たせるアングルを良く考え、室内は広範囲に撮影できるレンズを使用して広く見せるなどの工夫をする業者もいます。
また、マイソクには必要最低限の情報だけしか載せない業者もいれば、物件の状態を把握できるように、できる限り詳細な情報を載せる業者もいます。物件のアピールポイントを上手なキャッチコピーで表現する業者もいるように、大きく差が出る部分だと言えるでしょう。
いいマイソクを作成してくれる業者選びのポイント
売却を依頼するなら、物件を正確かつ魅力的に見せるマイソクを作成してくれる業者を選びたいものです。良いマイソクを作成する業者であれば、購入希望者のみならず、客付会社への情報提供にも熱心で、販売活動を積極的に行ってくれることも予想できます。
このような業者を選ぶ方法は、既に販売しているほかの物件のマイソクをチェックすることです。ほとんどの場合、各業者は一定のフォーマットを使ってマイソクを作成しているため、過去のマイソクを見ればその傾向は把握できます。
同じソフトウェアや、加盟する不動産ポータルサイトのシステムを使ってマイソクを作成する業者もあるため、多くの業者のマイソクが似通っているのも現実です。
しかし、似通ったフォーマットのなかでも、写真や間取り図、キャッチコピーなどには大きく差がつきます。そのため、良いマイソクを作成する業者かどうかを判断する場合には、大まかな見た目を確認するだけでなく、買い手の気持ちになって掲載情報全般をチェックしてみると良いでしょう。
広告費を請求されるケースも!事前に確認すること
マイソクをチラシとして配布する場合の印刷費や人件費、あるいは他の媒体を利用した物件広告の費用などを、売主が負担する必要はありません。国土交通省の報酬規程が、仲介手数料の上限を超えた報酬は、いかなる名目であっても受け取ってはならないとしているからです。
広告宣伝活動に必要な費用は、不動産会社が仲介手数料を受け取るための営業経費に過ぎないと考えられています。
ただ、報酬規程には、売主の依頼によって行った広告の費用は別途請求できるかのように読める部分もあるため、これを根拠に別途広告費を請求してくる業者も稀にいます。しかし、報酬規程によって広告費の請求が許されるのは、普通は行わないような特別な広告活動を売主が依頼をして、その費用支払について事前に承諾しているという場合に限られると判例でも判断されています。
そのため、売主が事前に特別な承諾を与えていない限り、広告費を請求されることは一切ありません。広告費を請求されるトラブルを避ける方法は、媒介契約締結時のしっかりとしたチェックです。不動産会社に対して、仲介手数料以外の費用がかからないこと確認するとともに、安易に広告費支払いの承諾を与えないようにしましょう。
営業マンをやる気にさせるマイソクの条件は?
マイソクは売却を依頼した不動産会社から、買い手を探してくる客付の不動産会社に渡ります。この客付会社の営業マンが、真剣に買い手を探したくなるようなマイソクであれば、不動産売却が成功する確率は高まるでしょう。マイソクは基本的に購入希望者に見せることが前提になっていますが、実は客付会社へのメッセージとして重要な部分もあります。
たとえば連絡先情報です。買い客の候補になりそうな物件を目にした客付会社の営業マンは、すぐにでも物件の詳細を確認してお客に伝えたいと考えます。その場合に連絡先として携帯電話番号や対応可能時間についてもしっかり掲載されていれば、営業マンとしても安心して早急に連絡を取ることができるのです。
また、お客の急な物件見学の希望が入った場合でも、早急な連絡ができれば販売機会を逃すことがありません。
さらに重要なのが、仲介手数料の配分についての情報です。
元付会社と客付会社が、売主と買主からそれぞれ仲介手数料を受け取る「分かれ」と呼ばれる配分が通常ですが、客付会社に有利な配分方法をとる場合もあります。たとえば、元付会社の受け取る手数料の一部を、客付会社にインセンティブとして支払う方法です。
この場合、客付会社の営業マンは張り切って販売活動を行ってくれます。この情報も問合せをして初めてわかるのではなく、最初からマイソクに掲載されていれば確実に営業マンの目に留まるのです。
これらの情報は購入希望者に知らせる必要はないため、マイソクでは目立たない最下部に小さく記載されています。しかし、営業マンはこの部分をチェックすることで、やる気を出す場合も多いのです。
まとめ
マイソクは購入希望者を探すための重要な広告ツールです。ほかの不動産業者に、物件情報とともに仲介手数料収入の配分などを知らせる伝達ツールでもあります。そのため、マイソクのでき具合によって販売活動の行方が左右される場合もあるのです。不動産会社に売却を依頼する前に、各社のマイソクを見比べると、不動産会社選びの参考になるでしょう。
その場合、購入希望者の視線でマイソクをチェックすると同時に、買い手を探す営業マンの視点で確認してみるのがおすすめです。