この記事でわかること ・不動産登記は、物理的状況や権利関係を明らかにするために行う ・登記費用は、大きく分けて「登録免許税」「専門家への報酬」「その他の実費」で構成される ・登録免許税は計算可能であり軽減措置がある |
「登記費用って何?」「いったい、いくらかかるの?」「なんだか難しそう…」
不動産の購入や相続など人生の重要な節目で「登記」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、その「登記費用」については、漠然としたイメージしかなく、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、そんな不安を解消し、具体的な行動に移せるよう、登記費用の種類や相場、計算方法や軽減措置、安く抑えるコツに至るまで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。
この記事の目次
不動産登記とは?
不動産登記とは、売買や相続などにより不動産を購入・取得した際にその不動産の物理的状況や権利関係を明らかにするために行います。
物理的状況は、住所や面積、建物の構造などを指し、権利関係は、所有権や抵当権などを指します。
不動産登記をすることで、所有権の証明ができ安心して不動産取引を行うことができます。
ちなみに、権利関係の登記は法律で義務付けられていません。
しかし、物理的状況については登記が義務付けられているため注意が必要です。
また、登記を行うとこれらの情報は法務局が管理する登記簿に記載されます。
手数料を支払えば誰でも閲覧することができ、登記内容が記載された登記簿謄本の交付を受けることができます。
不動産登記には、いくつか種類があり不動産の購入・取得時には以下のものを行う必要があります。
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所有権移転登記:不動産の所有者が変わった際に行う登記です。売買、相続、贈与などが主な原因となります。中古物件を購入した場合や、親から不動産を相続した場合などがこれに該当します。
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所有権保存登記:新築された建物など、まだ一度も登記されたことのない不動産について、初めて所有権を記録する登記です。注文住宅を新築した場合や、新築分譲マンションの最初の購入者などがこの登記を行います。
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抵当権設定登記:住宅ローンなどでお金を借りる際に、購入した不動産を担保として提供する場合に行う登記です。金融機関がその不動産に対して持つ担保権(抵当権)を記録します。
- 表題登記:新築した建物について、その物理的な状況(所在地、家屋番号、種類、構造、床面積など)を初めて登記簿に登録する手続きです。この登記は、権利に関する登記(所有権保存登記など)の前提として行われ、主に土地家屋調査士が代行します。
これらの登記の種類と目的をまとめたのが、以下の表です。
登記の種類 | 主な目的 | 一般的なケース |
---|---|---|
所有権移転登記 | 不動産の所有者が変わったことを記録する | 中古物件の購入、不動産の相続・贈与 |
所有権保存登記 | 新築建物に初めて所有権を記録する | 注文住宅の新築、新築分譲マンションの最初の登記 |
抵当権設定登記 | 住宅ローンなどの担保権を記録する | 住宅ローンを利用して不動産を購入 |
(建物)表題登記 | 新築建物の物理的な情報を初めて登録する | 建物を新築したとき |
ご自身が不動産を取得した経緯(新築か中古か、ローンを利用したかなど)によって、これらの登記を組み合わせて行うことになります。
登記費用の相場
不動産登記には、具体的にどのような費用がかかるのでしょうか。
登記費用は、大きく分けて「登録免許税」、「専門家への報酬」、そして「その他の実費」で構成されます。
登録免許税
登記手続きを行う際に国に対して支払う税金です。
登記の種類や不動産の評価額、借入額などによって税額が計算され、多くの場合、登記費用の中で最も大きな割合を占めます。
登録免許税の費用は、「固定資産税評価額(円)×税率(%)」で算出します。
登録免許税率は登記の種類によって異なるため、以下の表を参考にしてください。
登記の種類 | 内容 | 登録免許税率 |
---|---|---|
土地の所有権移転登記 | 土地購入時 | 2.0% |
建物の所有権保存登記 | 新築建物購入時 | 0.4% |
建物の所有権移転登記 | 中古建物購入時 | 2.0% |
抵当権設定登記 | 土地・建物のローンを組む時 | 0.4% |
相続登記 | 土地・建物を相続した時 | 0.4% |
「土地の所有権移転登記」「建物の所有権保存登記」「建物の所有権移転登記」は、令和8年3月31日まで軽減税率が適用される場合があります。
詳しくは、国税庁ホームページ「No.7191 登録免許税の税額表」を参考にしてください。
専門家報酬
不動産登記の手続きは非常に複雑であるため、専門的な知識が必要になります。
そのため、一般的には司法書士や土地家屋調査士といった専門家に依頼します。
その際に支払うのが専門家報酬です。
司法書士は主に権利に関する登記(所有権移転、抵当権設定など)を、土地家屋調査士は主に表示に関する登記(建物表題登記など)を担当します。
登記の種類ごとの報酬の目安は以下のようになります。
【司法書士】
登記の種類 | 報酬の目安 |
---|---|
所有権移転登記 (売買の場合) | 2万~8万円 |
所有権移転登記(相続の場合) | 3万~10万円 |
抵当権設定登記 | 2万~5万円 |
所有権保存登記 | 1万~5万円 |
【土地家屋調査士】
登記の種類 | 内容 | 報酬の目安 |
---|---|---|
建物の表題登記 | 新築で建物を建てた際に、その建物の場所や面積など物理的状況を調べて行う登記のこと | 8万~12万円 |
土地表題登記 | 今まで登記されたことのない土地に対して、所在や面積など物理的状況を調べて行う登記のこと | 7万円~ |
上記は、これらはあくまでも目安のため、実際の報酬額は登記する不動産の面積や地目などによって異なります。
そのため、専門家に登記の手続きを依頼する際には、必ず見積もりを取り、報酬額を確認するようにしましょう。
その他の実費(書類取得費用など)
上記以外にも、登記手続きを進める上で必要となる細かな費用が発生します。
これには、以下のようなものが含まれます。
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必要書類の取得費用:住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書、登記事項証明書(登記簿謄本)など、登記申請に必要な各種証明書の取得手数料です。1通あたり数百円程度ですが、複数の書類が必要になるため、合計すると数千円から1万円程度になることがあります。
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交通費・郵送費:ご自身で法務局へ足を運んだり、書類を郵送したりする場合の費用です。専門家に依頼した場合でも、書類の取り寄せなどで実費として請求されることがあります。
- 登記情報提供サービスの利用料:「登記情報提供サービス」とは、法務局が保有する登記情報をインターネットを使い閲覧できる有料サービスのことです。事前に登記情報をオンラインで確認する場合などに利用するサービスの費用として、1物件あたり332円などがかかります。
これらの実費は、登録免許税や専門家報酬に比べれば少額ですが、予算を立てる際には見込んでおく必要があります。
登記費用の計算方法と軽減措置
先述したように、新築物件と中古物件では、主に行う登記の種類が異なります。
こちらでは、「新築物件の場合」、「中古物件・土地の場合」、「住宅ローン利用時の場合」の3つのケースに分けてそれぞれの登録免許税の計算方法を軽減措置も踏まえて解説していきます。
登録免許税は、不動産の登記費用の中で最も大きな割合を占めることが多い税金です。
計算方法と軽減措置を理解し、最大限に活用することが費用節約における重要なポイントです。
新築物件(所有権保存登記の税率)の計算方法
新築物件の計算式は以下のようになります。
不動産の固定資産税評価額 × 0.4% |
【軽減措置】
ご自身が居住するための住宅(床面積50㎡以上など一定の条件を満たすもの)の場合、令和8年3月31日までの登記であれば、税率が 0.15% に軽減されます。
さらに、長期優良住宅や認定低炭素住宅と認定された新築住宅の場合は、税率が 0.1% にまで軽減されます。
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用できるように、構造や設備、居住環境、維持管理などについて、国が定めた基準を満たした住宅のことを指し、認定低炭素住宅とは、二酸化炭素排出量を抑え省エネ性能が高いと認められた住宅のことを指します。
【計算例】固定資産税評価額が2,000万円の新築住宅の場合
2,000万円 × 0.4% = 8万円 軽減税率(0.15%):2,000万円 × 0.15% = 3万円 軽減税率(長期優良住宅等 0.1%):2,000万円 × 0.1% = 2万円 |
このように、軽減措置の適用有無で税額が大きく変わることが分かります。
中古物件・土地(所有権移転登記の税率)の計算方法
中古の建物の計算式は以下のようになります。
固定資産税評価額 × 2.0% |
【軽減措置】
ご自身が居住するための住宅(一定の条件を満たすもの)の場合、令和8年3月31日までの登記であれば、税率が 0.3% に軽減されます。
土地の計算式は以下のようになります。
固定資産税評価額 × 2.0% |
【軽減措置】
令和8年3月31日までの登記であれば、税率が 1.5% に軽減されます。
【計算例】固定資産税評価額が土地1,500万円、中古建物1,000万円(居住用、軽減措置適用)の場合
土地の登録免許税:1,500万円 × 1.5% = 22万5,000円 建物の登録免許税:1,000万円 × 0.3% = 3万円 合計:25万5,000円 |
土地の軽減措置の期限が建物と異なる点に注意が必要です。
住宅ローン利用時(抵当権設定登記の税率)の計算方法
住宅ローン利用時の計算式は以下のようになります。
債権額(住宅ローンの借入額)× 0.4% |
【軽減措置】
ご自身が居住するための住宅の取得資金の貸付け等に関す係る抵当権設定登記(一定の条件を満たすもの)の場合、令和8年3月31日までの登記であれば、税率が 0.1% に軽減されます。
【計算例】住宅ローン借入額が3,000万円の場合
3,000万円 × 0.4% = 12万円 軽減税率:3,000万円 × 0.1% = 3万円 |
住宅ローンを利用するほとんどの方がこの軽減措置の対象となるため、大きな節税効果があります。
固定資産税評価額とは?
登録免許税の計算の基となる固定資産税評価額は、市町村が管理する固定資産課税台帳に登録された価格です。
通常、固定資産評価証明書や毎年の納税通知書で確認できます。
新築物件でまだ評価額が決定していないという場合は、法務局が定める「新築建物課税標準価格認定基準表」などに基づいて評価額が算定されます。
軽減措置の適用条件
上記の軽減措置を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
主な条件は以下の通りです。
- 登記簿上の床面積が50㎡以上であること
- 自己の居住の用に供する家屋であること
- 新築または取得後1年以内に登記されること
- 中古住宅の場合、一定の耐震基準を満たしていること(例:昭和57年1月1日以降に建築されたものなど)
これらの条件を満たしていることを証明するために、市区町村役場で「住宅用家屋証明書」を取得し、登記申請時に提出する必要がある場合があります。
この証明書の取得にも手数料がかかります(通常1,300円程度)
不動産登記費用を安く抑える3つのコツ
不動産の登記費用は、物件の種類や価額、住宅ローンの有無、そして専門家への依頼内容によって大きく変動します。
多額の費用がかかることがありますが、いくつかのポイントを押さえることで、負担を軽減できる可能性があります。
こちらでは、不動産登記費用を安く抑える3つのコツについてご紹介していきます。
ぜひ参考にしてください。
①登録免許税の軽減措置を確実に利用する
登記費用のなかでも、特に登録免許税の軽減措置は節税効果が大きいため、適用条件を事前にしっかりと確認することが重要です。
また期限の確認や、必要な書類(住宅用家屋証明書など)を事前に準備しておきましょう。
登録免許税の軽減措置を確実に利用することが最も効果的な節約方法です。
②専門家報酬は複数見積もりを取る
司法書士や土地家屋調査士の報酬は事務所によって異なります。
そのため、複数の事務所に見積もりを依頼し、サービス内容と費用を比較検討しましょう。
見積もりを比較することで納得のいく依頼先を見つけることができるでしょう。
見積書を確認する際には、以下の点に注意すると良いでしょう。
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詳細な内訳の確認:見積書には、登録免許税、司法書士(または土地家屋調査士)の報酬、その他の実費(書類取得費用、交通費、郵送費など)が明確に区分され、各項目が具体的に記載されているか確認しましょう。
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報酬の明確化:「登記手続き一式」といった曖昧な記載ではなく、どの登記手続きに対していくらの報酬なのかが分かるようになっているか確認します。不必要に項目を細分化して、全体の報酬額を分かりにくくしている見積書には注意が必要です 。
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不明瞭な費用の有無:「調査費用」「立会料」「書類作成費」といった名目で、具体的な内容が不明瞭な費用が計上されていないか確認しましょう。もし計上されている場合は、その内容について説明を求めましょう。
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追加費用の可能性:見積金額以外に、後から追加で費用が発生する可能性がないか確認しておくことも大切です。
- 登録免許税額の妥当性:登録免許税は法律で税率が決まっています。専門家が計算を誤ることは稀ですが、ご自身でも概算を把握しておくと、万が一、明らかに高すぎる請求があった場合に気づくことができます。
③自分でできる手続きは挑戦する(ただし注意が必要)
建物表題登記は、図面作成のハードルはありますが、時間をかければ自分で申請することも不可能ではありません。
これにより土地家屋調査士報酬を節約できます。
しかし、所有権移転登記や抵当権設定登記、特に住宅ローンが絡む場合は、金融機関が司法書士を指定することが多く、自分で手続きを行うのは難しいのが現状です。
無理に自分で行おうとして手続きに不備が生じると、かえって時間や費用がかかるリスクもあります。
自身の状況を把握し見通しを立てよう
不動産を取得した後の登記手続きとそれに伴う登記費用は、多くの方にとって馴染みが薄く、複雑に感じられるかもしれません。
しかし、この記事を通じて、登記費用の主な内訳が「登録免許税」と「専門家報酬」であること、登録免許税は計算可能であり軽減措置があること、専門家報酬は変動するため相見積もりを取るべきであることなど、基本的な知識をご理解いただけたのではないでしょうか。
大切なことは、まずご自身の状況を把握し、どのような登記が必要で、どれくらいの費用がかかりそうかを見通すことです。
そして、最新の税率や法制度については、国税庁や法務局の公式情報を確認することが大切になってきます。
不動産の登記費用は、分かりにくい部分もありますが、正しい知識を身につけ、計画的に準備を進めれば、納得のいく形で手続きを終えることができるでしょう。